適度な不幸さが人気の秘密? 壇蜜さんが世間から求められる理由
仕事は頑張りたい。でも、一心不乱に仕事だけに打ち込むのはちょっと違う。
女性らしさやプライベートを大事にする余裕や人間的魅力を持ちながら、仕事の実力もある、できることならそんな“いい感じ”の女性でありたいもの。
とはいえ、実際それを体現するにはどうすればいい?
お手本になる女性を周囲で探してみてもなかなか見えてこない。
考え方や行動など、取り入れるべき具体的なポイントを注目の知識人たちに教えてもらった。
これからの時代に目指すべき、自然体でムリのない働く女性の理想像が見えてくるはず。今の自分にプラスワンとなる新しい視点やアクションを見出そう。
太宰治の『斜陽』が生き方の参考?
少女時代から気づいていた「働く女性の未来は明るくない」
グラビアアイドルとしては遅めの29歳でデビュー後、妖艶なルックスと過激パフォーマンスで大ブレイクを果たした壇蜜さん。知的で独特な発言も注目を集めており、「エロいのに媚びていない」「どこか品がある」「生き様が潔い」と同世代の女性達からも支持されている。そんな壇蜜さんは「現代社会で女性が働くこと」をどのようにとらえているのだろうか?
「社会や組織で働く上で、女性は男性と比べてあらゆる面で弱く、不利だと思っています。また、女性は“成功”の種類やそれまでの道筋も男性と違って複雑。だから、強さを全面に押し出すのではなく、相手の力を使って技をかける合気道のような戦い方が合っているのではないでしょうか。社会に出るからって男性のように強くならなきゃ、とは思わないんです」
少女時代から「働く女性の未来は明るくない」と予想していたという壇蜜さん。女性の社会進出が声高に叫ばれていた当時は、テレビなどでも“強い”女性像が打ち出されていたが、大きなギャップを感じていたと振り返る。
「太宰治の『斜陽』に出てくるお母さんが、いわゆる、おとなしくて男性の後ろを3歩下がって歩く良妻賢母タイプだったんですね。で、それを読んだ後に見た『テレビタックル』では強い女性が社会進出でどうのこうのとやってると・・・。
そのときに『これからの社会は揉めるだろうな』と直感的に感じました。中学生のときでしたね。わたしの日本舞踊の師匠は斜陽タイプの女性でありながら、ご自分の仕事もあり、ご主人の仕事のサポートもし、お子さんを育てて、と全部両立されていたんです。その姿を見て、わたしもこの生き方を選ぼうと決めました」
自分をなるべく遠くから客観視して
自己認識を低く持つ
現在、映画やテレビ、雑誌や広告など様々なメディアで壇蜜さんの姿を見ない日はない。また、男性だけではなく、女性や学生などあらゆる層からニーズがある。
「自分はテレビに出られるような人間ではない」と公言している壇蜜さんだが、人気の理由を次のように分析している。
「今の人たちって、自分がどう思われているのかが気になる、みんな“敏感肌”の時代ですよね。だから、わたしのような“程良く不幸そう”な存在がいいのではないでしょうか。
絶世の美人でもない、学歴もない、資格を持っているのに活かせてない、部屋着は出て行った男のパーカー・・・。この、程よく不幸な感じに安心してもらえるのかもしれませんね」
人に「不幸そう」と思われることが自分の存在価値――普通の人ならばプライドが邪魔して受け入れられないような自己認識だが、壇蜜さんはさらにストイックだ。
仕事が増えて天狗になりそうな時は、もう一人の自分が「お前ごときが調子に乗るな!」と鼻をへし折ってくれるという。
「昔から、自分のことを脅迫的なくらい客観的に見るタイプです。一人の人間の客観と主観って少しくらい重なる部分があると思うのですが、わたしの場合は完全に分離していて、しかも遠くに離れている。だから、今の自分の状態が当たり前だとはまったく思わないんです。普通の人が金庫にしまってでも隠しておきたいような見せたくない部分こそ、お見せして楽しんでもらえるならぜひどうぞ、と常々思っています」
『所詮、女なんで』くらいの気持ちで
心にゆとりを
日々の仕事の中で、さまざまな女性と働く機会も多い壇蜜さん。壇蜜さんの目から見て、仕事ができる女性には共通点があると言う。
「わたしが仕事ができるなぁと思う方たちは、総じて口数が少ないように思います。じっくり考えられて発する言葉に深い意味が込められている感じ。また、他人の情報を鵜呑みにすることもなく、簡単に人を褒めないのも特徴かと。そういう方に褒めてもらえると、『あぁ本当に良かったんだな』と信頼できます。
メディアでよく使われるような流行語もあまり使われないですね。わたし自身も、“流行り言葉に中身なし”と思っていますが、美魔女とか肉食女子とかゴロの良さと雰囲気だけで使われる流行語って、モノを売るための仕組みでしょう。何も考えないで使っているような方は、仕事ができるようには見えないかもしれませんね」
最後に、働く女性たちにアドバイスをお願いしたところ、「自分はそんなこと言える立場ではないですが・・・」と前置きしつつ、こんな答えが返ってきた。
「女性が働くということには、苦労も衝突も多いのが現状だと思います。だから、真正面からぶつかっていくのではなく、『所詮、女なんで』くらいの気持ちで心身を痛めないようにして欲しいです。
たいしたアドバイスはできませんが、弱い生き物である女性こそ使えるテクニックを一つ。おじさまの長~い話は決して遮らずに聞き流しきり、最後に出てきた話題に関してだけ質問を返すとちゃんと話を聞いているように見えて悦ばれますよ。対女性にも使えますし、ラクしていい女に見える便利な技なので、ぜひ活用してください(笑)」
写真/竹井俊晴 取材・文/仲間麻美