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NOV/2013

余計なストレスを抱えないために女性が理解しておきたい男性の心理

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男性と女性では働き方や仕事に対する価値観、将来に対するキャリアビジョンの描き方に相違があることは多いもの。同じ目的を持って仕事をしているはずなのに、ささいなことですれ違い、スムーズに業務が進まないなんてことを誰しも一度は経験しているのではないだろうか。

そこで、今回は「男性学」という、“男性がゆえに抱えてしまう問題”を学術的に研究する武蔵大学の田中俊之助教に男性特有の行動や考え方について教えてもらった。会社の中で男性とストレスなくコミュニケーションを取るためにも心得ておこう。

90年代生まれの男子学生にとって
結婚相手の収入が自分より高いことは「ありがたい」こと

田中俊之
武蔵大学 社会学部 助教 田中俊之さん
1975年生まれ。社会学「男性学」の研究を専門とし、学習院大学「身体表象文化学」プロジェクトPD研究員、武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師を経て、武蔵大学社会学部助教に。市民講座などで講演も行う。著書は、単著に『男性学の新展開』(青弓社刊)、共著に『ソシオロジカル・スタディーズ』(世界思想社刊)、『大学生と語る性』(晃洋書房刊)、『揺らぐ性/変わる医療』(明石書店刊)などがある

かつてはメインの総合職は男性、サポート役の一般職は女性というのが一般的だった。男性はリードする側で、女性はリードされる側と社会全体が認識していたのだ。しかし社会の「男女の役割の感覚」にも少しずつ変化が現れてきている。

田中助教が90年代生まれの男子学生に結婚する際に「妻の収入が自分より上回っていたら気になるか」と聞いたところ、「妻の収入が多いのは単純にありがたい」という回答が数多くあったというのだ。

「不況の時代に育った現代の若者たちは、『共働きでないとやっていけない』ということを肌で理解しているんでしょう。だから世帯収入が増えることは率直に良いことだと感じるんです。また、私が開催している男性学の市民講座の参加者も変化していますね。以前は定年退職後に家庭や社会でのコミュニケーションの取り方が分からなくなった男性ばかりが参加していましたが、今は若い世代も来るようになりました」

働き盛りの30代男性たちの中にも、残業ばかりの働き方に疑問を抱き、家庭生活や育児などを大事に考える人が増えている。

「女性のために育児を手伝うのではなく、父親として積極的に育児をしたいという価値観を持つ男性も増え始めています。例えばIT企業サイボウズ社長の青野慶久さんのように、経営トップが率先して育休を取るケースも登場しました」

男女共同参画の考え方も女性のためでなく、男女のためのものに変わったという今は、まさに社会の変わり目。仕事の価値観も多様化している。

とはいっても、やはり今でも女性は結婚・出産を機に「仕事を辞めるべきか、家庭と両立して続けていくのか」というテーマは付いて回る。一方、男性には結婚や出産で仕事における人生が変わってしまうかもしれないという感覚はない。

「男性の多くは現在も『仕事をこなせば、自分の役割は果たしている』と考えています。しかし、それは個々人の問題ではなく、『男性は仕事をしていればOK』とし、逆に『仕事をしていないのは変』という目で見られてしまう社会全体が持つ価値観による影響も強くあると言えます」

男性特有の価値観が作り上げられる要因は
社会に根付いた古い固定観念

少しずつ社会は変化しているとはいえ、日本の会社の中には「女性はサポート的な役割と考え、仕事上女性を下に見る男性もゼロではない」と田中助教は言う。

世間一般に深く根付いた古い固定観念に強く影響を受けた男性のこうした価値観はそうやすやすと変わるものではない。実際、仕事の現場で男女間のコミュニケーションに齟齬が生じる要因にもなりがちだ。

「例えば、男性上司が頑張っている女性部下に対し、『女性のわりによくやっている』と言うことがあります。これは、明らかに女性を下に見ているわけです。ある企業の方は、入社試験や面接の結果だけを見て採用するなら、男性よりも女性の方が圧倒的に多くなるはずと話していました。つまり個人の能力だけに着目すれば女性の方が高いケースが多いんです」

単純な事実として、男性よりも女性の方が下などということはない。にも関わらず、前述のような物言いを平気でする上司のもとでは誰でも働きにくく、女性は不快な気持ちになる。衝突も起きやすくなるだろう。

そんな上司の部下になってしまったらどうすればよいのだろうか。

「『社会学的に、人と比べて優劣を付けたり、人のことを見下す人は自信がない人だという話を聞いた』とさりげなく言ってしまえばいいんです。自分がそういう行動をしていると見抜かれている状況で、まだそうしようとする人はほとんどいません。そもそも、勝手に見下される側にとっては迷惑行為でしかありませんから」

田中俊之

もう一つ、男性の特徴的な傾向として、人の「感情」を理解する能力や不足がある。これは幼いころから「感情をあらわにしてはいけない」「合理的で論理的な話し方をしなければならない」とされて育ってきた人に多い傾向だという。

「『女性は感情的な生き物』と認識している男性は多い。彼らの大半は合理的で論理的であることの方が上だと考えがちです」

確かに会議などでは感情的にならず、論理的な説明を求められる。ビジネスで成果を出したければ、合理的、論理的思考もなくてはならない要素だ。

一方で、組織の成果をより高めていくためにはチームワークを重視し、仲間同士の関係性をうまく育んでいくことも重要になる。そこでは、人の感情に深くコミットする力も不可欠なはずだ。

「しかし、男性は人の感情を受け止めて共有する力が非常に足りないんですね。女性とは違い、悩みの共有はもちろん、良い面も悪い面も受け止めながら関係を育んでいくこと自体が苦手なのです」

結果、男性上司に女性が悩みを相談しても「それでどうしたいの?」とうまくコミュニケーションが取れないまま結論を急ぎ、誤った誘導をしてしまうケースも少なくないという。

これらのような男性の思考回路をよく理解した上で接すれば、お互いにストレスのないコミュニケーションが可能になり、結果的に女性たちも働きやすい環境を作り出せるはず。

「どんなにお互いに分かり合おうと努めても、すれ違いがおこることもあります。幼いころから“女らしく”と育てられてきたからでしょうか。女性の中にははっきりと自分の意見を主張できない人も多いのかもしれません。しかし、仕事をスムーズに進めるためには率直な意見の交換が不可欠です。男性が感情を理解するのが苦手という部分を女性が汲み取ってあげて、衝突を恐れずある程度自分の意見をストレートに伝えるのも大事なことだと思いますよ」

取材・文/上野真理子 撮影/岩河内 弘美(編集部)

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