メンバーからの厳しい視線に空回りする「現場を分かっていない素人上司」の苦悩

上司に対して日々感じている「なんでそんなこと言うの?」「どうしてそういうことするの?」という不満や疑念。それを直接上司にぶつけたいと思っても、「余計に怒られるんじゃないか」「印象が悪くなるんじゃないか」とモヤモヤしたまま自己完結してしまっている女性も多いのでは? そんな働く女性たちの疑問に、最強ワーキングマザー・堂薗稚子さんが、上司の立場からズバッと解説! 上司って、ホントはすごくあなたのことを考えてるのかも!?

こんにちは。堂薗です。
みなさんには、ある日突然、「現場を分かっていない素人上司」がやってきた! という経験がありますか?
現場にいるメンバーの方がよっぽど、色々なことがよく分かっている。それなのに、横からふいにやってきた素人上司が、なんだかんだ、余計な口を出してくる。それが的確ならいいけれど、これまでのやり方を根底から覆すようなことを言い出したり、手間ばかり掛かる工程を増やしてきたり、「○○部署ではね」と別の現場での自慢話をされちゃったり。うんざりして「邪魔したいわけ?」と思わず言いたくなるような上司、確かにいますね!
実は、こういう上司は、ものすごく必死なんですよ。よく知らない現場にやってきて、メンバーたちがベテランだったときのプレッシャーは、とてつもないものなんです。お手並み拝見の目つき、「余計な手出ししないでよ?」「もう私たちのやり方は出来上がってるんだから」とくぎを刺されているような居心地の悪さ。「これ、教えてくれる?」と聞くと、「こんなのも分からなくて上司なの?」とばかりにため息をつかれたりして。きっと同じような立場でもメンバーとして入っていくのであれば、みんな優しく教えてくれるんでしょうけどねえ。上司といえば仕事ができないとダメな立場だから、メンバーたちの視線はとても厳しいのです。
初めての仕事に、初めての部下
メンバーから総スカンを食らったことも
私が上司の肩を持つようなことを言ってしまうのは、正直に打ち明けると、私も同じ苦い経験をしたことがあるからなんです。
私が初めて部下を持ったときは、営業から商品企画の部門への異動と重なったときでした。営業時代は、商品企画の部門に色々意見を言ったりしていたものですから、肩に力が入ったままの赴任でした。初めての商品企画の仕事は、そりゃもう分からないことだらけなのに、優しく教えてくれるメンバーなんて誰もいません。会議中に発言すれば空回りして、メンバーはうつむいたまま黙っているし、それじゃ一人で頑張ろうと思った案件も思ったようには全く進んでいかない。それでも無我夢中だったある日、当時の事業部長に呼ばれて行ってみると、「堂薗さんの下では働けません」と直訴メールが届いた、と言われてしまったのです。頭が真っ白になりました。
でも事業部長は私を責めませんでした。それどころか、毎週、朝の1時間を取ってくれて、私の部下とのコミュニケーションについて、話を聞きアドバイスをしてくれました。まあ、優しいアドバイスじゃなくて、ボロかすの厳しいアドバイスでしたけど(笑)。部下たちから「総スカン」を食らっていることを、知らないふりをしろ、と言われたのが一番しんどかったですねえ。それでもアドバイスに従って、私はとにかく「上司として」とか「年次の高いものとして」などといったスタンス、「出来る人と思われたい」「嫌われたくない」といった感情を、どこかに置いておくしかないくらい、仕事をカラダで覚えることに腐心することにしました。
とても苦しかったけれど、とにかくメンバーたちと全く同じように、企画会議で企画を出したり、たくさん原稿を読んで赤入れしたり、「現場の仕事」を懸命にやったのです。上司としての威厳とか、本質的な発言とかは全く出来なかったけれど、その期間がなければ、ずっとメンバーたちとの関係はぎくしゃくしたままだったと思います。仕事は「勉強する」ものではなく、やはり仕事そのものから「学ぶ」ことが大事なのだ、としみじみ感じた期間でした。
私にアドバイスしてくれた事業部長は、実は、彼自身が本社スタッフ畑で管理職になった人で、営業経験のないままに営業部長としての赴任をした経験のある人でした。彼は赴任すると、新人営業マンと全く同じように、数日、新規の飛び込み営業を一人でやることから始めたという逸話を持っていました。受注が取れたり、ということはなかったらしいですが、現場の彼を見る目は圧倒的に変わった、と聞いたことがあります。それを踏まえたアドバイスだったのかどうかは分かりませんが、私は彼にすごく大切なことを教えてもらった、と今でもとても感謝しているのです。
メンバーと現場の仕事が上司を育てる
「手伝って」と声掛けをしてあげて
私とその時のメンバーたちとの関係は、最後まで「信頼関係ばっちり!」とはいきませんでした。教科書みたいに美しい結果ってのはあり得ませんよね。それなりにずっと気まずかったかなあ(笑)。それでも、私には現場の仕事をきちんと自分で覚えたという自信が芽生えていましたし、メンバーたちもそのプロセスだけは認めてくれたと思います。少しずつ仕事の相談をされるようにもなり、私もメンバーの顔色をうかがうことがなくなって、普通に叱ったり褒めたりすることもできるようになりました。1年くらいの時間を掛けて、ようやく上司らしくなれたのかもしれない。メンバーと現場の仕事が、私を育ててくれたのです。
現場のことが分からない上司に苛立つ現場。部下たちが、「邪魔!」「足手まとい」と思う気持ち、「あなたに何が分かるの?」「どうして私たちが上司に教えなくちゃいけないのさ」という気持ち、すごくよく分かります。でも、ほんの少し、引いて考えると、ずっと現場を知らないままで口出しされ続けられるのも迷惑ですし、「どうせボクには分からないんだから、みんなでやっておいて」なんていう開き直り上司になられたら、もっとイライラさせられそうです。
上司はどうやって現場を理解したらいいのか、まだ分からなくて右往左往しているのかもしれませんよ。とにかく、自分の経験から言えそうな意見を述べてみる、上司らしいことを言いたくて改善ポイントを指摘してみる、出来ることを懸命にやっているのだけれど、空回りして焦って、メンバーとの距離がどんどん遠くなっていく……。
もし、そんな上司が現れて、その人なりの「理解したい」という熱意が感じられたら、どうか現場の仕事を振ってあげるようにできないでしょうか。部下から仕事を振られたら、拗ねてしまう上司もいるかもしれないけれど、「手伝ってください!」でもいいし、「一緒にやっていただけないですか?」でもいいので、「教える」のではなくて、その仕事を「してみる」ことをさせてあげてほしいなと。上司になるくらいなんですから、きっとポテンシャルがあり、その現場で活きる力を持っているはず、と期待してあげれば、驚くほど早く現場の仕事を習得し、本来のマネジメント業務も的を得たものになっていくでしょう。そして、その上司はきっと将来、部下たちに感謝すると思いますし、部下たちにとっても、いつの日かそのプロセスが仕事に活かせる瞬間がくるのではないかと思うのです。
後は、その上司が「いっちょ、育ててやるか」という気持ちになれるような人間性を持っているかにかかっているかもしれないですけどね! 「ボクは上司なんだから現場の仕事なんかしないよ!」という上司だったら……。だいぶ救いようがないですねえ。そいつの気持ちは翻訳する自信、ないなあ(笑)
堂薗稚子(どうぞの・わかこ)
株式会社ACT3代表取締役。1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として数々の表彰を受ける。「リクルートブック」「就職ジャーナル」副編集長などを経験。2004年に第1子出産を経て翌年復職。07年に当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用される。その後、第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、ワーキングマザーで構成された営業組織を立ち上げ、女性の活躍を現場で強く推進。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、13年に退職し、株式会社ACT3設立。現在は、女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行う

【著書紹介】
『「元・リクルート最強の母」の仕事も家庭も100%の働き方』(堂薗 稚子/1,404 円/KADOKAWA/角川書店)
「仕事も子育ても両立したい! 」と思っても現実はなかなか難しいもの。それにも負けず、子どもを育てながらてカンパニーオフィサーになった著者の働き方を紹介 >>Amazon