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JAN/2014

周囲の言う「世間体」はその人の考え方を押し付けているだけ! 壁はもっと簡単に乗り越えられる―田中俊之さん×藤井佐和子さん対談・前編

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田中俊之さん×藤井佐和子さん対談

働き方の多様化が進み「自分らしさ」を模索する人が増えています。選択肢がたくさんあるからこそ、迷ってしまうし、悩んでしまうもの。これからの働き方はどう変わっていくのだろう?
2014年新たな年を迎え、今年の目標を考えると共に、自分らしい働き方を描くためのエッセンスを見つけてみよう。

株式会社キャリエーラ 代表取締役 藤井 佐和子(ふじいさわこ)
大学卒業後、大手光学機器メーカーの事務職を経て、インテリジェンスにて女性の転職をサポート。現在は株式会社キャリエーラを設立し、キャリアコンサルタントとして、女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティーサポート、大学生のキャリアデザインなどに携わる。カウンセリング実績は1万2000人以上。オフィシャルブログ「藤井佐和子のキャリアカウンセリングブログ」も好評。
 武蔵大学 社会学部助教 田中俊之さん

【今回のゲスト】武蔵大学 社会学部助教 田中俊之さん

1975年生まれ。社会学の「男性学」研究を専門とする。学習院大学「身体表象文化学」プロジェクトPD研究員、武蔵大学・学習院大学・東京女子大学などの非常勤講師を経て現職。著書に『男性学の新展開』(青弓社)がある ツイッター

田中俊之さん×藤井佐和子さん対談

藤井さん(以下、藤井):田中さんはなぜ「男性学」の研究を始めたのですか。

田中さん(以下、田中):僕が大学に入った90年代は、ちょうどジェンダー論の授業が始まったころだったんです。でもそれは、女性の先生が女性のジェンダーについて講義をする、というものでした。でも僕は男ですから、女性らしさが社会の中で作られていくなら、男性らしさも同じく社会の中で作られるのではないかと考えて、「自分にとって当事者性のある学問をやりたい」と思ったのがきっかけですね。それと僕は、あまり就職とかに興味がない人間だったんです。今でも「できれば働かないで生きていけたらいいな」と思ったりするくらいで。

藤井:そうなんですね(笑)。

武蔵大学 社会学部助教 田中俊之さん

田中:でも実際は、会社で定年まで働いている男性が90%以上という統計があるんです。つまり、働いていない男性はわずか数%程度しかいない。それが僕は疑問だったんです。男性でも仕事に向いていない人はいるだろうし、体調が理由でフルタイムで働くのが難しい人もいるだろうし、僕みたいに単純に働きたくない人もいるだろうし(笑)。そのことに疑問を持てないような社会の仕組みってどうなんだろうと思って。それで、なぜこうした社会が作り上げられたのかを探りたいと考えたのも、「男性学」の道に進んだ理由です。

藤井:男性は働くのが当たり前で、働かなければ「人としてどうなの?」と思われるのが今の世の中ですよね。しかも定年が65歳まで延長されたので、さらに長く働き続けなくちゃいけない。

田中:あれも「長く働けるのは幸せだ」という報道の仕方ばかりですよね。反対にリストラや早期退職についてはネガティブな報じられ方をしていますが、もしお金に余裕があるなら、僕は早期退職もいいことなんじゃないかと思うんです。

藤井:海外だと早期退職を自ら望む人も珍しくないですよね。「早くリタイアして第二の人生を楽しみたいから、若いうちに頑張って稼ぐんだ」という考え方の人、結構いますから。でも日本では、「早期退職をして自分でビジネスを立ち上げたい」と考える人がいると、「やめたほうがいい」とか「どうせうまくいかないよ」と否定的な意見を言う男性が多い気がします。日本社会では「どこかに勤める」という形が正解だと思われているのかもしれないですね。

「半分農業、半分会社員」といった
柔軟な働き方もこれからの時代には必要

田中:そうですね、雇われて働くのが正しくて、「自由」というオプションは想定外に置かれている気がします。でも実際は自営業という選択肢もあるし、今なら農業もアリですよね。僕の同僚に農業の研究をしている人がいて、彼が「半農半X」という考え方を教えてくれたんです。つまり、半分は農業をやって、半分は塾の先生や事務のアルバイトをするといった生き方ですね。農業をやっていれば自分が食べる分は確保できますし、「非正規は悲劇だ」と言うけれど、掛け持ちすれば意外とうまくやっていけるんじゃないかと思います。

藤井:ダブルワークやトリプルワークだって、いい働き方ですよね。これからの時代は考え方を変えないと、自分を守れなくなる気がします。私自身を振り返ってみても、日本社会に根強く残る「女は家庭に入れ」という考え方にどうしても自分がマッチしなくて苦しんだ時期があるんです。親や周囲からは「早く結婚して仕事を辞めなさい」と言われる一方で、私も「女だから一人では生きていけない」という勝手な固定観念があって、その間でもがき苦しみました。でも思い切って一歩踏み出して、自分らしく生きてみたら、すごくラクになれた。その経験があるから、女性の皆さんにも「自立して活躍することが、自分のためにも社会のためにもなるんですよ」ということを伝えたくて、キャリアカウンセラーの道を選んだんです。

田中:周囲の人が言う「世間体」って、実は世間全体の意見ではないことがほとんどなんです。親や友人が言う「世間体」は、その人の考え方を押し付けているに過ぎない。ただ、藤井さんがおっしゃるように、自分が壁を作ってしまうということもあるでしょうね。「私は女だから、チャレンジングな生き方をしてはいけない」とか。本当はその壁はたいしたことはなくて、思ったよりも簡単に乗り越えられるかもしれないのですが。

会社以外の世界を知らない男性たちの視野の狭さが
男女や世代間のギャップを生んでいる

株式会社キャリエーラ 代表取締役 藤井 佐和子さん

藤井:でもいまだに、「女性は結婚や出産をしたら仕事を辞めるものだ」と考えている人は多いと思います。とくに40代や50代の中間管理職世代の男性には、そういう認識がまだまだ残っているように感じますね。

田中:「世代」というのは、大きなキーワードですね。今の50代くらいの上司と若い世代とでは、そもそも「男女観」が違う。50代男性にとって、定年まで働き続ける女性がいるという事実は想像もつかないし、実際に見たこともない。男性しかいない社会でずっとやってきたから、異質なものが入ってきた時に、うまく対応できないのでしょう。

藤井:男性の場合、仕事ばかりで会社の外の世界を知らない人も多いですよね。だから、どうしても視野が狭くなりがちなのかな。先日、ある企業の管理職男性に「もっと外の世界も見てください」と言ったら、「毎月のお小遣いが3万円しかないから無理」って言われたんですが、こういう人はどうすればいいんでしょう?(笑)

田中:お金をかけないと外の世界を知ることができないという発想自体が、まさに会社的ですよね。まずは、その固定観念から抜け出すべきじゃないでしょうか。僕はよく公民館などで市民講座をやるのですが、そこに来た男性同士で仲良くなって、一緒に将棋を指したりしてますよ。公民館なら500円くらいで部屋を借りられるので、お金もかからない。そういう社会交流もあるんです。

藤井:今度お会いしたら、そのようにアドバイスしてみます。

田中:結局はプライドや見栄なんですよ。「休日に何をしてるんですか」と聞かれた時に、「公民館で将棋を指してる」なんて言ったら、地味でカッコ悪いと思われるんじゃないかと。若い世代の男性は、そこがまったく違います。学生たちを見ても、水筒と弁当率の高さはすごいですよ。僕の世代でさえ、「ペットボトル飲料を買うお金もないのか」と思われるのが恥ずかしいという気持ちがありますが、今の学生は水筒を持つのがごく普通だと思っている。90年代以降に生まれた世代は、生まれた時から我々が不況と呼ぶ状況の中で暮らしているので、その点での適応が進んでいるんでしょう。

藤井:世代間での価値観のギャップは、私たちが想像する以上に大きいのかもしれませんね。

≫≫後編 『男性と女性の世界ではルールが違う?! 男性上司と女性部下が分かり合うのが難しいワケ』に続く

取材・文/塚田有香 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)

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