比較すべきは●●! 「同期より仕事ができない」と悩むことが無意味な理由
入社前に思い抱いていたイメージとのギャップに戸惑ったり、「この働き方でいいのだろうか?」と漠然とした不安を感じたり……。自分の進むべきキャリアが明確になっていないからこそ、若手女子はさまざまな悩みを抱えているもの。そんなお悩みに『入社1年目の教科書』の著者である、ライフネット生命・岩瀬さんがアドバイス!
「同期と比べて、仕事ができない気がする……」(22歳/入社1年目)
成長曲線は人それぞれ
早いか遅いかは関係ない
赤ちゃんが歩き始めるのは1歳くらいから、話し始めるのは2歳前後と言われています。もちろん個人差があって、生後10カ月くらいで歩き出す子もいれば、3歳近くになってもなかなか言葉を発しない子もいます。面白いもので、早く歩き出したからといって、運動神経の良い子に育つとは限らないし、話し始めは遅かったけれど、気が付けば誰よりもおしゃべりな子になっていたりします。
成長曲線は人によって大きく違います。ほとんどの人は、歩き始めが遅かったからといって気に病んだりしないでしょうし、自分がいつ話し始めたかを意識することさえないでしょう。
社会人1年生を赤ちゃんに例えるのは適切ではないかもしれません。でも大切なことは、自分の足でしっかりと立って歩き、自分の考えを伝えるようになることであり、それが早いか遅いかは大した問題ではないのです。
実は僕自身も、飲み込みの早い方ではありません。コンサルティング会社に入社した1年目の最初の評価は、おそらく同期の中でも低かった方だと思います。仕事のコツのようなものをつかみ始めたのは、1年目の後半に入ってからでした。ですが仕事の経験を積んでいくうちに、どうやら僕は「前半は少し遅れを取っても、後半からは加速できるタイプ」なのだと分かってきた。だから今でも、最初はなかなか思うようにいかなかったからといって、まったく焦りを感じません。
社内を見渡しても、スロースターターの社員は何人もいます。ある女性社員は、新しい仕事に取り組むのが少し苦手で、要領をつかむまで時間が掛かります。でも、何度も何度も繰り返して一度自分のものにすると、誰よりも完璧にミッションをこなしてくれています。
あなたもそのタイプなのかもしれません。今は焦らず、「自分は大器晩成型なのだ」くらいに考えていればよいのではないでしょうか。
「仕事ができる」の意味はさまざま
人と比べるものではない
そもそも同期と比べる必要はありません。
仕事ができる、できないといっても、その基準は一つではない。100メートルを誰が一番速く走るかの競争であれば、タイムの良い人から明確に順位がつきますが、仕事はさまざまな競技が入り混じっているようなもの。陸上の短距離走者もいれば、やり投げの選手もいますし、サッカー選手や、レスリングの選手もいます。
サッカー選手が100メートル走で短距離の選手にかなわないからといって、サッカー選手より短距離選手の方が優秀だと言う人は誰もいないでしょう。そもそも比べることに意味がない。テストの点数のように、一つのものさしで画一的に能力を評価できるはずがないのです。
会社を見渡してみれば、いろいろな部署があり、いろいろな人が、いろいろな役割を果たしていることが分かるでしょう。皆が皆、同じことをしているわけではなく、求められる能力も役割によって当然違ってきます。
さらに言えば、同じ仕事をしていても、持ち味の出し方は人それぞれ異なります。例えば、おとなしくて口数は少ないけれど、常に丁寧で堅実な仕事ぶりが評価されている人もいる。あるいは、緻密さには欠けるけれど、いつも明るく前向きで、ムードメーカーとなって皆を盛り上げてくれる人もいるでしょう。
仕事をしていく上で大切なことは、自分なりの持ち味を生かして、どうチームに貢献できるかです。自分らしい持ち味は、これから時間を掛けて磨き上げていけばいいのです。
比べるべきは「昨日の自分」と「今日の自分」
経営者が新入社員に望むこととは?
特に営業のように結果が数字で表れる仕事の場合、どうしても自分の順位が気になってしまう人もいると思います。しかし、経営者の立場から言うと、新入社員に対して「誰が一番仕事ができるか」などと気にすることはありません。
今少しくらい差が付いても、あくまで新入社員の中での話です。僕から見れば、それこそ歩き始めが早いか、遅いかの違いで、長いキャリアを考えれば大した問題とは思えません。
あなたは、これから始まる長い長いビジネスマラソンのスタートを切ったばかり。入社4カ月目といえば、まだ準備運動をしている段階と言ってもいいくらいです。準備運動で誰が一番うまいかを競ったりしませんし、体を温めるためのランニングで、人を押しのけて速く走る必要もありません。
それよりも、元気に明るくいきいきとしていてほしいというのが僕たち経営者の一番の願いです。そして与えられた仕事に自分のペースでコツコツと誠実に取り組み、実績を積み上げていってほしい。失敗しても、歩みが遅くても、一生懸命頑張っていれば、必ず周囲の人は見ていますし、思い掛けないところで報われるものです。
他の人と比べてどうかではなく、今日の自分は、昨日の自分よりも着実に前に進んでいるかどうかを意識してみることをおすすめします。
取材・文/瀬戸友子