PwC Japanグループの障がい者雇用に学ぶ、個人の強みを生かすチームのつくり方

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日本では2000年代からダイバーシティへの取り組みが叫ばれており、多様な人材をチームに組み入れていこうとする流れが加速している。だが、それに伴いチームマネジネントの難易度は格段に上がっている。

多種多様なメンバーをどのようにまとめ、個人の強みを生かしたチームをつくっていけばいいのか。そんな課題に頭を悩ませる人も多いのではないだろうか。

そこで、監査、アドバイザリー、税務、法務に関するプロフェッショナルサービスを提供しているPwC Japanグループの「Office Support Team(以下OST)」を訪ねた。多彩な人材が互いに融合し合いながら活躍できる場づくり「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進している同社では、その一環として障がい者雇用にも力を入れている。OSTは障がいのあるスタッフで構成された、9チームからなる部署だ。

障がいの種類も度合いもさまざまなメンバーの個性をどのように生かし、チーム形成やマネジメントをしているのか。OST全体を統括するマネジャーの桐野さんと、チームの指導リーダーを務める八木沼さんにお話を伺った。

(写真左:八木沼さん、写真右:桐野さん)

(写真左:八木沼さん、写真右:桐野さん)

「多様性を生かして新たな価値を創造する」をビジョンに取り組む、障がい者雇用の2つの軸

PwC Japanグループの障がい者雇用の軸は大きく2つ。一つは「多様性を生かして新たな価値を創造する」をビジョンに掲げ、2015年に立ち上がったOSTだ。PwC Japanグループ内のさまざまな業務を請け負う社内のアウトソーシング組織として機能している。

もう一つは、障がい者アスリートの採用・支援プログラム『Challenged Athlete Program』の『デュアルキャリア』の実現だ。デュアルキャリアでは、アスリートとしての競技活動と、会社員としての業務という2つのキャリアを同時に積んでいくことを目指す。

「企業が宣伝活動の一環としてスポンサー費用を障がい者アスリートに支払い、アスリート本人は企業で就業をしていないというケースは少なくありません。その場合、アスリートは現役引退後、会社員としての就業経験がない状態で仕事を探すことになってしまう。こうした現状に対してPwC Japanグループでは、競技から業務へと活動の軸をスムーズに移行できるように、デュアルキャリアを進めています」(桐野さん)

デュアルキャリアを実現している障がい者アスリートは、OSTに9つあるチームの指導リーダーを務めている。八木沼さんもその一人だ。

「私は車いすバスケットボール競技の選手です。今は基本的に週5日オフィスで仕事をして、仕事が終わった後に練習をするスタイルで、双方のキャリアを両立中です。『競技も仕事のうち』という扱いなので、遠征の際はお休みを取るなど、しっかり競技にも集中できる環境が整っています」(八木沼さん)

目指したのは“障がい者だけで仕事が回る”チーム。
自分で将来をつかみ取る力を身に付けてほしい

OSTを立ち上げた最初の1年は、ゼロから手探りで組織づくりを行った。まず手をつけたのが、マニュアルの整備だ。

「PwC Japanグループでは、『業務は実践の中で覚える』という文化が強く、部門によってマニュアルの整備状況にばらつきがありました。ですが、障がいがある方の中には、マニュアルがなければ業務をスムーズに進めることが難しい方もいます。逆を言えば、マニュアルやフローが整っていれば遂行能力はとても高い。その能力を最大限生かしつつ、他部門からアウトソースされた業務をきちんと請け負えるよう、まずは全体的なフレームを整えるところから始めました」(桐野さん)

「精神障がい、身体障がい、発達障がいなど、OSTメンバーの障がいの度合いや種別はさまざまです。人によって得意・不得意にばらつきがあるので、マニュアルをきちんと用意し、曖昧な指示をしないことを徹底しています。いろいろな部門から幅広い業務を受けているので、教える側がしっかり業務内容を理解するためにも必要なことだと思っています」(八木沼さん)

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立ち上げ2年目には、「自走できるチームづくり」をテーマに掲げた。指導リーダーの一部は健常者だが、チームメンバーは全員障がい者。あくまでも桐野さんは、“障がい者だけで仕事がまわる”チームにこだわった。その背景には、前職で障がい者雇用のコンサルティングを行っていた桐野さんが抱いていた課題感がある。

「企業が法定雇用率を達成する目的で障がい者を雇用し、ごく簡単な業務だけを任せるというのはよくあるケースです。でも、これは本人にとって幸せなのだろうか、自分で将来をつかみ取る力が身に付くような雇用の仕方はできないのだろうか……。個人の成長やキャリア形成を考えた上で障がい者を雇用する企業が少ない現状をその当時目の当たりにして、そんな思いを持っていました」(桐野さん)

仕事の指示がなくても、出社してすぐに仕事を開始し、完結できる体制を目指す。そのためにまず行ったのが、業務の請け負い方と割り振り方の整備だ。

「当初は他部署の社員から個人的に依頼を受けていましたが、部署の特定の業務を丸ごと請け負うやり方に変えました。その上で、OSTで業務を細分化し、障害の特性に合わせて仕事を割り振る。トライアンドエラーを繰り返しながらでしたが、適性のある人に仕事を任せられるようになったことで、それぞれが自走できるようになったと思います」

自走の妨げになりがちなのが、「仕事を任せた人が任せきれない」こと。口を出されてしまうこともあれば、判断を仰ぎにいかなければならないことも少なくない。その点について、案件を請け負う際にきちんとすり合わせを行うことも重要なポイントだ。

「仕事の内容を確認すると同時に、『どこまでこちらの判断でやって良いのか』を確認しています。その上で、『責任を預けてもらっている範囲については口を出さないでほしい』という旨を事前に伝えるようにしています。判断軸さえ整備しておけば、それを元に業務を遂行できる人たちなので、そこは任せてもらえるように整えています」

「この人はどんな人だろう?」多様なチームメンバーの強みを生かした組織づくりに大切なこと

現在は、イレギュラーが発生しない限り、指導リーダーの指示がなくても仕事が回るところまでチームは成長。日々の業務をチームメンバーに任せられるようになった今、各チームの指導リーダーたちは、OSTを組織としてより成長させるためのプロジェクトに取り組んでいる。

「複数のプロジェクトがあって、僕が担当しているのは業務獲得プロジェクト。ミッションは『OSTの新たな業務を獲得する』ことです。他部署からの業務をより受け入れやすくするためのチーム編成を考えたり、広報のプロジェクトチームと連携してOSTの仕事ぶりを社内にアピールしたりといった取り組みを行っています」(八木沼さん)

「実績を残すことが、3年目の今期のテーマ。請け負う業務の種類を増やし、難易度の高い業務も積極的に受け入れています。現在は各社員の経費の確認・承認作業といったファイナンスチームの業務の一部や、リクルーティングチームが従来行っていた入社手続きなどの一連の業務をOSTで行っています。『障がい者に仕事を任せるのは難しいのでは?』という先入観を持たれがちですが、実績を作ることで、周りからの信頼も徐々に得られてきています」(桐野さん)

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OST全体をマネジメントする桐野さんは、多様なチームメンバーの強みを生かした組織づくりに大切なのは、「フラットな目線でその人自身を知ろうとすること」と語る。

「これは健常者・障がい者に限らないことですが、相手に対して好奇心を持つことが大切だと思っています。先入観なく接して、『この人はどんな人だろう?』と、人となりを理解できるように、一人一人と向き合う。そうすることで、自然と個人の強みも見えてくるのだと思います」(桐野さん)

個人の強みを生かすには、まずは相手を理解すること。言葉にすれば当たり前のように聞こえるが、前の部署の実績や周囲からの評判を元に、イメージで相手を判断してしまうこともある。チームメンバーは何が得意で、どんな志を持って仕事をしているのか。改めて耳を傾けることが、きっと皆が能力を生かしてイキイキと働ける環境をつくる最初の一歩となるはずだ。

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取材・文/中村英里 撮影/赤松洋太 編集・構成/天野夏海