18 FEB/2019

キャリアコーチ“恵ママ”がつくる「ご縁」で変わる女性たち――やりたいことを実現し、継続する秘訣は「繋がり」にあり

麻布十番駅から歩いて約5分。とある雑居ビルの6階にある『チャーリーズバー(Charlie’s Bar)』のドアを開けると、凛とした知的な笑顔が印象的な、“めぐママ”こと佐々木恵さんが出迎えてくれた。

恵さん

取材当日は平日金曜の昼。店内には、子連れの女性もおり、アットホームな雰囲気が漂う。手際よくドリンクをつくる恵さんだが、実は、本業はフリーランスの「キャリアコーチ」だ。

“スナックママ兼キャリアコーチ”、一見変わった肩書きだが、そこには「女性たちが、やりたいことに向かって、一歩前に踏み出すことができる場所をつくりたい」という恵さんの一貫した思いがある。

「一対一の面談スタイルは自分らしくない」
スナックに立って気付いたこと

京都大学卒業後、新卒でリクルートスタッフィングに入社した恵さん。約5年間人材派遣の営業として派遣スタッフとのキャリア面談を担当。その後も、ベビーシッターのマッチング事業などを手掛けるキッズラインで、女性のキャリア支援に関わり続けてきた。

恵さん

佐々木恵さん
京都大学教育学部卒。リクルート、キッズラインを経て、2018年に独立。一児の母。「女性が自分らしくしなやかに輝く社会をつくる」をミッションとして掲げ、フリーのキャリアコーチとして活動。これまでに支援してきた女性の数は、800名を超える。毎週金曜PM15~18時限定で、麻布十番『チャーリーズバー』にて“スナック恵”を開催
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2018年7月に独立を果たした恵さんだが、スナックのママを始めたのは、会社員時代。飲み会幹事など、人の集まるイベントのアレンジや企画が好きで、いつかお店にも立ってみたいと思っていたのがきっかけだという。

子育てと本業の合間に店に立つため、“スナック恵”は毎週金曜の14時〜17時の3時間限定と決めている。短い時間ではあるが、「得られるものはすごく大きい。本業にも良い影響を与えてくれた」と話す。

「バーやスナックって、属性も価値観も全く違う人たちが集まって、自然と仲良くなっちゃう場所なんですよね。ここでの出会いがきっかけとなって、全然知らなかった人同士が、仕事仲間になってしまうこともよくあるし。お店に立ってそういう化学反応をたくさん見てきて、『私がキャリアコーチとしてやりたいことはこれだ』って気付いたんです」

キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーという言葉を聞くと、一対一で仕事やキャリアの相談に乗ってくれる人、というイメージを持つ人が多いのではないだろうか。それに対して恵さんは、「複数人の人がつながる場をつくるキャリアコーチでありたい」と言う。

恵さん

「キャリアに悩む女性に対し、一対一でじっくり相談に乗ることももちろん好きだし、長年やってきた経験もあるのですが、私の強みをもっと最大限に生かすなら、一緒に仲間探しをしたり、『ご縁をつくる』お手伝いをしたりする方が、もっと得意だし、私らしいなって思うようになったんです」

女性のキャリア支援を行ないたいという気持ちはずっと持ち続けてきたが、それを「どうやってやるのか」がクリアになったのは最近のことだという。今では、「人と人が繋がる場所」を提供することを軸に据え、複数の女性を集めた講演会や、各種セミナーを定期的に開催している。

20〜30代の働く女性たちは「漠然とした不安を抱えている」

佐々木恵

キャリア相談に訪れた女性たちとの座談会の様子

講演会やセミナー、そして“スナック恵”に訪れる20〜30代の働く女性たちと話すうちに見えてきたのは、「将来への漠然とした不安感を持っている」人が多いということだという。

「今の仕事に大きな不満はないし、職場も嫌いじゃない。でも、ずっとここにいていいのか悩んでいるという方が多いですね。結婚したり、転職したり、前に進んでいる友達を見て、焦りを感じているという人も少なくありません。まさに、隣の芝は青いという状態」

こうしたモヤモヤを解消するには、「自分自身がワクワクすることに取り組むのが一番」と恵さん。今の会社である程度キャリアを積んで「もうちょっと何かできるかも」と思っているなら、スモールスタートでいいから、自分の好きなことを深めてみてほしいと話す。

「やってみたいこととか、好きなことがある人は、最初からそれをお金にしようなんて思わなくていいから、好きなことに関われることを小さくスタートしてみて、やり続けてください。そうやって実績をつくり続けていくと、いつかそれが仕事につながる時がやってくるものです」

また、やりたいことがないことに悩む女性もいるが、そういう場合も「心配する必要はない」と優しく微笑む。

「私もずっと、『やりたいこと』が明確にならなくて悩んでいたタイプなので、『やりたいこと』がなくて焦る気持ちはよく分かるんです。でも、よく考えてみると、『やりたいこと』はなくても『自分がどうありたいか』っていう理想は誰しも持っているはずなんですよね。それを言語化してみると、そのために今何をすべきかが見えてくると思います」

一人よりも二人、三人で。「やりたいこと」実現する秘訣

一方、本業をおろそかにせず、自分のやりたいことも新たに始めようと思うと、多くの人が挫折を経験しがちだ。「いつかやろう」とやりたいことを頭の中で描いていても、その「いつか」をずっと延期してしまうパターンもある。そうならないための処方箋は、「仲間をつくること」と恵さんは言い切る。

「ダイエットもそうですが、一人でやるより誰かと一緒にやった方が成功しますよね。それと同じで、何かやりたいことがあるなら、想いを同じくする仲間を見つけるのが一番手っ取り早い。人と一緒にやる方が気持ちも乗るし、やるべきことも分担できるから効率的。忙しい働く女性たちには、そっちの方が現実的だと思うんです」

今、仲間を見つける方法は多種多様だ。SNSやブログなどで自分の想いを発信するも良し。関心のある分野のセミナーやプロボノ活動などに参加するも良し。もちろん、同僚や知人に声を掛けてみるのもありだ。

「小さくてもいいから、何か行動を起こして続けた先に、必ず人生を変える出会いがあります。働き方を急に180度変える必要なんてないし、一人でリスキーなチャレンジをする必要もありません」

恵さん

今日よりも明日、ワクワクして生きるために。「ありたい自分」であるために。今、何をすべきなのかを考えるところから、始めたい。

恵さんの話に、背中を押される人はきっと多いはずだ。


【佐々木恵さん イベント情報】
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