05 SEP/2017

これまで食べたラーメンは4千杯以上! 日本初の女性ラーメン評論家・本谷亜紀がパラレルキャリアを続ける理由

これからの働き方を考えよう!
パラレルキャリアが創るオンナの未来

「ずっと会社員でいいのかな」「このままの仕事で、私の人生楽しいの?」。多くの女性が抱える、“仕事”と“未来”への不安。“自分らしいキャリア”を実現できていると胸を張れる人は、決して多くない。 そこで注目されているのが、何かの仕事をしながらそれ以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指す、「パラレルキャリア」という新しい生き方。報酬目的ではない仕事によって、叶えられる“キャリア”とはどのようなものだろう。 実際にパラレルキャリアによって自分の“未来”を変えてきた先輩ウーマンたちの言葉から、ヒントを見つけてみよう

「ラ―メンは、1000円以下で食べられる完全食です!」

そう自信たっぷりに語るのは、女性初のラーメン評論家・本谷亜紀さん。学生時代に“ラーメン女子大生”として一躍有名になり、女性も気軽に楽しめるラーメン店の紹介などを通じて誰もがラーメンを楽しめるカルチャーづくりに力を注いできた。

ラーメン評論家 本谷亜紀

サイエスト株式会社 
本谷亜紀(ほんや・あき)さん

1日1杯ペースでラーメンを食べ歩く女性初のラーメン評論家。女子目線のラーメン店舗紹介に定評があり、飲食店のプロデュースやメニュー監修なども行う。現在はラーメン評論家およびタレント活動と平行し、人材系企業サイエスト株式会社の広報としても活躍中
ブログ:https://ameblo.jp/aki-honya/
Instagram: akichi0518

現在は人材系企業の広報も務める本谷さんだが、会社員生活とラーメン評論家としての活動の両立が、自身の人生にさまざまなメリットを与えてくれたと感じているそうだ。ラーメン研究と、人材系企業の仕事。全く親和性の無い仕事のようにも思えるが、なぜ本谷さんはパラレルキャリアを続けているのだろうか。

店は清潔? 長くいても気まずくない?
「女子目線×ラーメン」でブログが話題に!

子どもの頃からラーメンが大好きでした。意識的に食べ歩きを始めたのは、高校で予備校に通い始めた頃。味のバリエーションが豊富でお手頃に食べられるラーメンは、学生時代の私の強い味方でした。食べれば食べるほど探究心がくすぐられ、味やお店の雰囲気などのメモを取り始めるようになりました。

大学に入ってからは、もっと本格的にラーメンの素晴らしさを伝えようと思い、ブログを開設。「女子目線×ラーメン」という組み合わせが刺さり、ブログにアクセスしてくださる方が一気に増えていきました。

これまでに食べたラーメンは4000杯以上だと思います。今も1日1食は必ずラーメンを食べていますが、学生時代はもっと時間があったので1日2~3杯食べる日も珍しくなかったです(笑)。

ラーメン評論家 本谷亜紀

ブログが話題になり、“ラーメン評論家”としてお仕事を始めたのも大学生のときです。ラーメン屋さんの紹介記事を書いて、お金をいただけるようになりました。

就職活動を始めたタイミングでは、「ラーメン評論家一本で仕事してみたい」とも思いましたが、インターンシップに参加させてもらっていた企業の人事担当の方から「会社員の仕事と両方やってみたら?」と言ってもらえたことをきっかけに、パラレルキャリアをスタートさせました。

会社の仕事は思いもよらないところで興味や視野を広げてくれる

新卒で入社した有機・無添加食品の通信販売を行う会社では、広報の仕事を任せてもらうことに。学生時代から行っていたサイト運営のスキルやインフルエンサーマーケティングのノウハウ、タレント活動を通じて築いてきた人脈が、ダイレクトに活かされる仕事だったので、非常にやりがいを感じました。

その道を極めるなら、思い切って仕事を一本に絞った方がいいのでは? と考える人もいるかもしれません。でも、私の場合はラーメン評論家の仕事と、会社員の仕事と、両方あるからこそ人生が豊かになっていると感じますし、気持ちとしてはそれぞれに優劣はなく五分五分なんです。「やりたいことは全部やればいい」とも思っています。

一方、会社の仕事って、正直なことを言えば「やりたいこと」ばかりができるわけではないですよね。でも、会社に所属しているからこそ出会える人がいたり、思いもよらないところで自分の興味や視野を広げてくれる仕事があることも事実。2つの名刺を持って活動することは、20代で自分の世界をもっと広げていくために最高の働き方だなと思っているんです。

「伝えたい」原動力は、見えないところで素晴らしい仕事をする人たちの存在

ラーメン評論家 本谷亜紀

今は転職して、エグゼクティブシニアの人材派遣を行うサイエストという会社で広報の仕事をしています。基本的には10時~18時までフルタイム勤務ですが、会社全体が一人一人にカスタマイズされた働き方をサポートしてくれるので、両立生活が続けられています。

ただ、最近は静岡県でテレビのレギュラー番組に出させて頂いたり、飲食店や企業の商品プロデュースを任かされることも増えてきて、ラーメン評論家としての活動の幅も広がってきています。それだけに、時間のやりくりは少し大変ですね。

これから私が挑戦したいのは、「自分にしかできない広報」をすること。会社のことも、ラーメンのことも、自分の視点と言葉でオリジナルのストーリーを世の中に伝えていきたい。皆が見ていないところで素晴らしい仕事をしている人はたくさんいるし、まだ世の中では知られていないけれど素晴らしいサービスや商品あります。モノ作りってすごく大変なことだから、作っている人たちはそれで手一杯になりがち。個人のラーメン屋さんなんて、特にそうです。その人たちがまかない切れない「良いモノを世の中に伝える」部分を私が担っていけたら。

好きなことを「趣味」から「仕事」にする方法

これからの時代、パラレルキャリアではなくとも、好きなことを仕事にした方が長く仕事を続けていけると思います。私は今2つの仕事を掛け持ちしていますが、実はどちらも「仕事」という感覚がない。どちらもライフワークと呼べるくらい自分にとっては欠かせないもので、それをしていることが自然なものだからです。気付けばいつもラーメンのことを考えているし、ラーメンを食べているときに広報の仕事のことを考えていたりもします。だから、どんなに忙しくても辞めたいという気持ちになることはないんですよね。

ラーメン評論家 本谷亜紀

私が好きなことを趣味レベルから仕事にすることができたのは、「数字に責任を持つ」ことを意識してきたからかもしれません。ラーメン屋さんの記事を書いたら、それがどのくらいの人に読まれていて、その結果どのくらいの人がラーメン屋さんに足を運んだのか、効果を測定してきました。SNSで食べ物の情報を発信している人は多いけど、そこまでやる人はきっとあまりいないはずです。

あとは、他の人とは違う視点を持って情報を提供できるかどうかも大事ですね。私の場合は「女子目線×ラーメン」という特徴に加えて、自分が生まれたころにできたような老舗ラーメン店の紹介もするようにしてきました。新店オープン情報っていろいろなところで出回るけど、古くからあるお店のことってあまり記事になってなかったりするので。でも、若い子たちにとってはそれが新しい情報になったりすることもあるんです。

他の人には無い視点と、他の人には無い経験の組み合わせで、“私らしい”オリジナルのキャリアを今後もつくっていきたいと思っています。

取材・文/栗原千明 撮影/赤松洋太