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APR/2019

【荻上直子インタビュー】20代から貫いてきた仕事のポリシー「真面目って大事なことですよ」

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Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』(2019年4月19日より全世界一斉配信)に登場するキャラクターのカオルさんは、真面目なことにちょっとコンプレックスを抱えているアラサーOL。

運気を上げようと風水や占いを試してみたり、後輩から「真面目過ぎ」とウワサされているのを聞いて傷付いたり……。ちょっと冴えない毎日をマイペースに生きていくカオルさんを見ていると、どこか親近感が湧いてくる。

リラックマとカオルさん Netflix

本作の脚本を手掛けたのは、映画『かもめ食堂』や『めがね』などで日本映画に新たなジャンルを確立した荻上直子さん。個性の尊重をさまざまな作品で訴えてきた荻上さんと、“真面目な生き方”について一緒に考えてみた。

すこやかな30代を過ごすために、20代で「覚悟」を固めること

荻上 直子(おぎがみ・なおこ)さん
千葉大学工学部画像工学科を卒業後、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画製作を学ぶ。2000年、帰国。03年に『バーバー吉野』で長編映画劇場デビュー。その後、『かもめ食堂』(06)のヒットで名を馳せるとともに、日本映画の新しいジャンルを確立する。最新作『彼らが本気で編むときは、』(17)は第67回ベルリン国際映画祭で日本初のテディ審査員特別賞、観客賞第2位とダブル受賞に輝き、国内外で高い評価を獲得した

カオルさんは、都内の小さな商社で働くごく普通のアラサー女性。今のところ恋人はおらず、結婚の予定もなし。家に帰ると待っているのは、いつの間にか住み着いたリラックマ、コリラックマ、そして掃除が大好きなキイロイトリ。

細々とした日々の出来事や悩みに一喜一憂するカオルさんとリラックマたちのちょっとトボけた日常が、本作の魅力だ。

リラックマとカオルさん Netflix

「カオルさんは、自分の友達の中に一人はいそうな、そんな普通の女性にしたいと思ってつくったキャラクターです」

そう語る荻上さんは、現在47歳。カオルさんと同じように、悩んだり迷ったりしながら20代後半の時期を過ごした一人だ。

「私は27歳までアメリカの大学院で映画づくりを学ぶ学生でした。そこから、さあ映画をつくるぞと日本に帰国したのが28歳。やる気はあったけれど、資金も人目を引くような実績もゼロ。これからどうなるんだろうか、という不安でいっぱいの時期でした」

荻上さんは、そんな悩ましき20代後半の時期を、「決断の季節」だと表現する。

20代後半は、『自分はこうやって生きていくんだ』っていう覚悟を固める時期。私の場合は、それが自主映画の製作でした。1本映画をつくり上げたことで、たとえこれから貧乏をしようと、どんなかたちであれ映画をつくり続ける人生を送るんだっていう覚悟が決まったんです。おかげで、迷うことの少ない“腹の据わった30代”を送ることができました」

「虚しさだけが残るような仕事はしたくない」

冴えない毎日を送っているカオルさんだけど、どこかすこやかに見えるのは、ちゃんと自分の中に軸があるから。きちんとシャツにアイロンをかける。雨の日は、12年間愛用している傘を使う。日々の生活に対するささやかな愛が、カオルさんの四季をカラフルに彩っている。

でも、そんなカオルさんにもコンプレックスがある。自分の取り柄が「真面目なだけ」ということだ。真面目は美徳でもあるが、行き過ぎるとそれは生きづらさになるし、報われないことにがっかりしてしまうこともある。

荻上直子

「私自身も、『真面目にやっているのになかなか報われない』って思うことはあります。『映画監督とか脚本家って、華やかな仕事なんでしょう?』って人から言われることもあるけれど、現実は全然違うので(笑)。擦り切れたセーターを着て、一日中家に引きこもって脚本を書き続ける地味な日々がほとんどです。そして、一生懸命仕事を頑張っても、入ってくるお金が微妙だったりするとつい顔をしかめたくなるし、『いっそ株でもやっちゃうか』って思ったりもします(笑)」

そう冗談めかしつつ、荻上さんは「でも、やっぱり真面目が一番です」と続ける。

「たとえ今が報われないと感じていても、いつか報われる日は来る。そう信じてひたむきに進み続けていくことが、仕事でも何でも大事だと思います」

荻上直子

そうはっきりと言い切るのには、理由がある。荻上さんが最初に大きく注目を浴びたのは、何と言っても映画『かもめ食堂』。ヘルシンキでのゆるやかな生活を描いた同作で、その名は一気に知れ渡った。新しい才能の出現をエンタメ業界が放っておくはずもなく、各所からさまざまなオファーが舞い込むようになった。

だが、高額なギャラを示されても「自分が『面白い』と思えるものだけ選んで、全ての仕事を受けることはしなかった」と荻上さんは言う。

虚しさだけが残るような仕事はしない。それが、20代から一切曲げていない私のルールです」と明るく答えてから、こんなふうに茶目っ気たっぷりに付け加えた。

「おかげですっかり『映画しかやらない』っていうイメージがついちゃって。テレビの脚本やCMのお仕事とかが全然来なくなっちゃってそれはそれで寂しいんですけどね(笑)」

「真面目」も貫けば自信に変わる

ポリシーを曲げない生き方は、人から見れば「真面目で不器用」かもしれない。でも、荻上さんは自分の人生に「納得している」と胸を張る。

荻上直子

私が自分の人生を誇らしく思えるのは、自分が信じた道をまっすぐ進んできたからです。時には隣の芝が青く見えることもあるけれど、そこで道を間違えたら、自分が本来望んでいた場所と全然違うところに行ってしまう。何事も筋を通さないと、最後に痛い目を見るのは自分。『真面目であること』も貫き通せば、自信につながります

真面目な自分、“誰か”みたいにキラキラしていない自分を卑下する必要はまったくない。面白みに欠けていようが、損ばかりだろうが、「それも自分」。そう開き直ってみると、案外人生は楽になる。「自分には何もない」と嘆くよりも大切なのは、自分にとっての幸せが何かを知ること。改めて考えてみると、幸せは遠くないところにあったと気付くかもしれない。そして、“真面目な自分”のことも、ちょっぴり可愛く思えてくるはずだ。

取材・文/横川良明 ヘアメイク/笹浦麻記(emu) 撮影・編集/栗原千明(編集部)

<作品情報>

リラックマとカオルさん Netflix
『リラックマとカオルさん』(13話・各11分/4K対応)
【配信】 2019年4月19日(金)より全世界独占配信
【キャスト】多部未華子ほか
【スタッフ】監督:小林雅仁/脚本:荻上直子/音楽:岸田繁・主題歌:くるり「SAMPO」/クリエイティブアドバイザー:コンドウアキ/製作著作:サンエックス株式会社/監修:サンエックス“リラックマチーム”/アニメーション制作:ドワーフ
【Netflix作品ページ】 http://www.netflix.com/rilakkumaandkaoru
【リラックマごゆるりサイト】 http://www.san-x.co.jp/rilakkuma/
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