04
OCT/2019

ドイツの保育園・幼稚園で見た“擦り減らない働き方”ーー日独両方の園に息子を通わせて気付いたこと

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ドイツ人女性に学ぶ「豊かさ」のヒント
池原真佐子の日独ワークライフ通信

仕事と子育てを両立しながら日本とドイツの二拠点で生活を送る著者が、ドイツ人女性の働き方や生き方を見て感じたこと、学んだことをお届けしていきます。豊かな人生をつくるワークライフのヒントが見つかるかも!

池原真佐子

Woman type読者の皆さん、こんにちは。株式会社MANABICIA代表の池原真佐子です。私は現在、ドイツと東京を行き来しながら、仕事と育児の両立をしています。

連載5回目となる今回は、ドイツの幼稚園から見た、「サステイナブル(持続可能)な働き方」についてご紹介したいと思います。

ドイツの保育園・幼稚園に見る、サステナブルな働き方

先月、息子が晴れて保育園を卒業し、現地の私立幼稚園へと入学しました。ドイツでは3歳までは保育園(あるいは保育ママなど)、3歳以降は幼稚園に通うということで、春に3歳になった息子は、幼稚園に空きがでるまでの数カ月は保育園で待機し、そこからの入園となります(余談ですが、幼稚園発祥の地は、ドイツなのです)。

息子の保育園と幼稚園は、同じ系列で同じ園内にあるため、移行は非常にスムース。保育園から幼稚園に移る日は、先生たちが、ソーセージやプレッチェルを用意し、さよならパーティーを行ってくれました。いかにもドイツっぽいですよね(笑)

今回、息子の幼稚園移行にあたり、印象的だったことをいくつか紹介したいと思います(あくまでも息子が通う園の例なので、ドイツの幼稚園を代表しているわけではありません)。

日本同様、保育園では保育がメインですが、幼稚園ではより一層教育的なプログラムが増えていきます。そのせいなのか、新しいクラス担任(1クラス児童12名に3人の先生が付きます)を紹介する際に、先生がどのような大学を卒業し、どのような学位を持っているかということを丁寧に説明されました。

特に担任の先生は、幼児教育の博士号を持ち、この道20年ということを強調していたことが印象的です。また、副担任のうち1名は男性ですが、弁護士から幼稚園教諭に転身して幼児教育を学び直したとのこと。4人のお子さんを持ち、つい最近4人目の育児休暇から復帰したばかりだということを言っていました。幼稚園で、しかも男性が4回も育休を取れることにも驚きました。

いずれにせよ、教育に関して専門的な業務に当たる際、資格や学位、何より経験の長さがとても重視されているということが印象的でした。また、そのような人材を定着させるために、園のマネジメントも、働き方にとても気を配っている印象があります。

遅番の先生以外は、毎日17時ジャストにはほぼ全員いなくなります(就業時間の3分後には無人に近い状態になっています)。そして、先生たちは交代で休憩や仮眠を取っています。先生やゲスト用のコーヒーマシンやフルーツが常備され、お菓子をつまんでいる先生もよく見かけます。

さらに、時々「保育士の心の余裕をつくりより良い教育を行うために、ワークショップをします」と園が突然休みになることもあれば、先生の夏休みもクリスマス休暇もとにかく長い。また前述の通り、男性教諭も育休は取りやすいようです。ちなみに、ドイツでは他の園でも時折、保育士たちが賃上げのストも行うと聞いたことがあります。

保護者としては、時に「不便だな」と思うこともありますが、それでも、サステイナブルな働き方、その結果としてのプロフェッショナリズムの蓄積のためには必要な代償だと思っています。

日本人の働き方を変えるヒントは「楽しむ」こと

翻って、日本では、どうでしょうか。

息子が通っていた日本の園では、先生たちは遅くまで残り、昼ごはんの間も、連絡帳を書いたり制作物に追われていた印象があります。土曜日もイベントがあったり、息子が少しでもすり傷をつくれば園長先生が出て来て説明していただいたり……。

皆、誠実で熱意があり素晴らしい先生方でしたが、ある年齢になると退職してしまうようです。おそらく、ライフイベントや働き方との兼ね合いで、継続が難しいのかもしれません。幼保無償化によって、さらに負担が増すことも予想されます。

ただ、日本に限らずドイツでも保育士は不足しています。日本人は「子供のため! 保護者のため!」と、とても一生懸命に働こうとしており、それはそれで素晴らしいのですが、働く人自身がすり減っていってしまっている気がしてなりません。

特に教育現場では、滅私奉公を求められます。これでは優秀な人材はすぐに辞めてしまうでしょう。日本の教育現場に、大きな打撃です。一方ドイツでは、たとえ保育や幼児教育の現場でも、働く人の権利は守られています。

どれだけ専門性やキャリアがあっても、自分の健康やプライベートをすり減らさなければまわらないような働き方は、未来に続いていきません。

また、組織にとっても、人材不足が予想される中で、より優秀な人を惹きつけようとするのであれば、サステナブルな働き方を用意する必要があるはず。特に、「人を育てる」現場こそ、サステナブルな働き方で、心にも体にも余裕をつくることがとても大事だと、息子の幼稚園入園の経験を通じて強く思います。

先日、朝の幼稚園で、男性の先生が私にこう、大きな声で言いました。「Do you enjoy?」と。私は少し間を置き「Yes!」と答えると「Good!」と言って、とても楽しそうに、子供たちを抱えて教室に入っていきました。

楽しむ。この気持ちを生む働き方が、これからの日本のヒントにもなる、そう思いました。


【この連載の寄稿者】
(株)MANABICIA 代表 
池原 真佐子(いけはら まさこ)さん

池原真佐子

福岡県出身、早稲田大学・大学院で成人教育を専攻。PR会社、NPOを経てコンサル会社で勤務。在職中にINSEADのパートタイムのコーチングと組織開発の修士(Executive Master in Consulting and Coaching for Change : 現EMC)を取得。同時に、エグゼクティブコーチング等の人材育成を手がける(株)MANABICIAを創業。その後妊娠するも、臨月でパートナーが欧州に転勤、東京でワンオペ育児開始。産後1年半が経ったころ、女性のキャリアに特化したメンターを養成するスクール運営、企業の働く女性へのメンターをマッチング事業を行う『Mentor For(「育キャリカレッジ」から名称変更 )』を新規事業として立ち上げる。2年半のワンオペ育児を経て現在はドイツと二拠点生活。2017年に英ユニリーバDOVEでNourishing SecretのCMに、日本を代表する新しい女性として出演。ワーママオブザイヤー2018受賞。「第5回女性起業チャレンジ制度」グランプリ(2019)。その他、日テレNews等のメディア出演も多数。著書『自信と望むキャリアを手に入れる 魅力の正体』(大和書房:日本と韓国で発売)

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『日独ワークライフ通信』の過去記事一覧はこちら

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