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OCT/2019

台湾で活躍する日本人女優・大久保麻梨子が“不遇な時期”も夢を諦めずにいられた理由 「20代は、仕事も貯金もない自分に焦ってました」

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やりたい仕事はあるのに、なかなかチャンスが掴めない。
目標に向かって努力してはいるけれど、前に進んでいる感覚が持てない……。
少なからぬ人が、そんな停滞感を一度は感じたことがあるのではないだろうか。

もし、モヤモヤする気持ちを抱えたまま納得のいかない場所で足を止めてしまっているのだとすれば、思い切ってい全く違う環境に身を移してみるのもいいかもしれない。

そう思わせてくれたのは、今、台湾でブレイクしている日本人女優の大久保麻梨子さんだ。18歳で芸能界デビューを果たした彼女は、2000年代にグラビアアイドルとして活躍し、女優になることを目指していた。しかし、20代の頃はなかなか芽が出ず、不遇の時期を過ごしたという。

だが、台湾に仕事のステージを移したところ、台湾最大のテレビアワード『金鐘獎(きんしょうしょう)』最優秀助演女優賞を受賞し、連ドラ『幸福不二家』で主演を務めるなど、めきめきと実力を伸ばしている。

大久保麻梨子
女優
大久保 麻梨子さん

18歳の時、日本の『ミスマリンちゃんを探せ』オーディションでグランプリに選ばれ、 芸能界デビュー。9冊の写真集、各雑誌の表紙を飾り、グラビアなどで人気を博した。2010年より活動の拠点を台湾に移し、テレビCM、ドラマなどに多数出演。2013年に台湾最大のテレビアワード『第48回金鐘獎』最優秀助演女優賞を受賞、台湾で役者を中心に活動している。台湾連続ドラマ『幸福不二家』で主人公を演じ、金馬奨最優秀作品賞の映画『血観音』など多数出演。最近では、番組のMCも務めるように。2020年には、映画『種まく旅人~華蓮のかがやき~』が日本で公開予定

台湾に移住したきっかけは、自分を見つめ直すために出掛けた3泊4日の台湾一人旅だったという。縁もゆかりもない台湾に思い切って移住し、そこで女優としてステップアップできたのはなぜだったのだろうか。これまでの歩みを聞いた。

女優を目指して上京するもスケジュール帳は真っ白
「こんなはずじゃ……」

小さい頃からお遊戯会や文化祭で皆と一緒に何かをつくったり、役を演じたりするのが好きでした。女優を目指すようになったのは、10代の頃。鈴木京香さんや菅野美穂さんに憧れて、「私も彼女たちのような演技がしたい」と思ったからです。高校生の時、父の転勤で神戸へ引っ越したら、夏休みにモデル事務所にスカウトされました。声を掛けてくれた人の素性も分からなかったのに、二つ返事で「やります!」と答えていました。女優になるための第一歩だ! って思ったら、うれしくなったんです。

その後、何気なく受けたグラビアアイドルのオーディションで賞をいただいて。それ以来、グラビアのお仕事が増えていきました。事務所の社長やスタッフと一緒に神戸と東京を行き来しながら働いて、雑誌で表紙を飾らせてもらったこともあります。

大久保麻梨子

ただ、時折りドラマに出演させていただく機会があると、演じることの楽しさが忘れられなくて。「女優の仕事をやりたい」という気持ちがますます強くなっていきました。そこで、6年続けたグラビアアイドルを「卒業する」って23歳の時に決意して。東京の事務所に移籍して、女優として活動することにしました。

ところが、待っていたのは、一人きりの部屋で真っ白なスケジュール帳とにらめっこする日々です。グラビア時代は新幹線や飛行機に飛び乗って国内外での撮影に呼んでいただいていたのに、いきなり「何もやることがない」状態になってしまいました。家にいてすることがないから家事のスキルばっかり上がっていって(笑)。貯金も減っていくし、とにかく不安な毎日でした。

台湾へ一人旅へ。
直感的に「私にはここしかない」と感じた

空いた時間、寂しい気持ちを埋めるように、映画やドラマ、お芝居をたくさん観ました。でも、そういったものに触れる度に「お前には何もない」と言われているような気がしてきて、「私は女優になれないのか……」と落ち込みました。そうやってモヤモヤする気持ちを抱えて過ごした時期は、その後3年くらい続きます。なかなか長いですよね(笑)。

転機が訪れたのは、26歳の時です。何か新しいことを学びたいと思い、一人で台湾3泊4日の旅に出掛けたんです。特に明確な目的があったわけではないのですが、中国語を学びたいという気持ちと、旅に出て自分を見つめ直したいという気持ちから、近場の台湾を選んだんです。

大久保麻梨子

有名な観光地を一通り巡ったのですが、台湾のノスタルジックな街並みに魅了され、現地の方の温かさに心が救われる思いがしました。直感っていうんですかね、「あ、私ここに住みたい」って気持ちが芽生えてきて。自分でもはっきりと理由は分からないんですが、「ここだ」って思っちゃったんです。

それで、たった3泊4日の旅行だというのに、日本へ帰る飛行機に乗る時、わんわん泣いちゃったんですよ(笑)。キャリーケースを引きながら一人で号泣している日本人女性、空港でかなり目立っていたかも……。

帰国してからすぐ、当時所属していた芸能プロダクションのスタッフに、「私、台湾で働きます」と伝えて退社。語学学校や住む家を手配し、半年後にはもう台湾に住み始めていました。

台湾に来て3年、連ドラで初主演。
それでも「焦り」はずっとあった

親族はもちろん、友達すらいない。中国語も全く分からない。そんな台湾で突然一人暮らしをして仕事を探すなんて、「無謀」って言われることもあったし、「不安じゃない?」って心配されたこともありました。でも、台湾に移住すると決めた私は、全身からアドレナリンが出ているような感覚で、やる気に満ち溢れていました。「心機一転、新しい場所で頑張るぞ」っていう気合いの方が強かったんですね。

大久保麻梨子

ただ、台湾へ行ったからって女優として仕事ができるかは全く分かりませんでした。伝手も見通しもないし、完全なる見切り発車(笑)。だからこそ、なりふりかまっていられません。現地で知り合った人や、友だちを頼ったりしながら、何とか芸能事務所に所属して。できるだけ多くのオーディションを受け、中国語も猛勉強しました。

初めは、言葉が話せなくても出演できるCMの仕事に起用してもらって。それから半年後くらいに、台湾のドラマに初出演。「このチャンスを絶対に逃したくない」と、当時は必死の思いで撮影に参加していました。

それから連続ドラマの初主演が実現するまで、3年はかかりましたね。来る日も来る日もオーディションに落ち続けましたし、仕事が入っても単発のものばかり。安定収入は夢のまた夢。30代になったというのに、日ごとに減っていく預金通帳の数字を眺めながら、プレッシャーに押しつぶされそうになったことも……。台湾にいても、焦る気持ちは拭えませんでした。

そんな時に助けてくれたのが、台湾でできた友人たち。芸能事務所のオーディションを探してくれたり、新しい事務所の面接を取り付けてくれたり。台湾の人って、すごく面倒見がいいというか、人に対して遠慮がないんです。人の人生にどんどん介入してきてくれる。

お金がなくて一円でも惜しい時、友だちのお母さんが「うちにご飯食べに来なさい」って言ってくれたことも。「今日のご飯は何?」なんて図々しく聞いても、普通に歓迎してくれるし、世話を焼いてくれるんです。まったくの他人なのに、まるで自分のお母さんみたい。こういう出会いが得られたのも、思い切って台湾に来たからこそです。

大きな野望を叶える前に、
小さな目標の達成を重ねる

台湾に移住してから一番変わったのは、良い意味で、図太くなれたことと。人に頼るのがうまくなったこと。そして何より、自分に自信が持てたことです。本当に何もないところから、こうやって自分で仕事を見つけ、夢へ向かって一歩一歩進んでこられたんだから、私はどこに行っても大丈夫。そう胸を張って生きられるようになりました。

大久保麻梨子

私の人生、夢はあるけどなかなか届かない、みたいな時間がすごく長くて。皆さんからすると、そんな状態で「よくあきらめずにこられたなぁ」という感じかもしれません。事実、10年以上、もがき続けてきましたからね(笑)

でも、こうやって続けられた理由を考えてみると、大きな夢の手前に、小さな目標を立ててきたことがよかったんじゃないかという気がしていて。例えば、台湾の連続ドラマに出たいから「中国語を上達させる」とか、いつかアクションの仕事にも挑戦したいから「体を鍛えて腹筋を割る」とか、自分自身がちゃんと努力すれば叶うような目標をいっぱいつくってきたんです。

いきなり「アクション映画で主演を張る」なんて夢だけ設定してしまうと挫折しちゃいますよね。でも、そのための努力だったらできるじゃないですか。小さな目標を着実にクリアして、できることを一個一個増やしていった先に、大きな夢の実現が待っている。私はそう信じているから、今ここにこうして立てているんだと思います。

そして今、来年日本で公開される映画の撮影を終えたばかり。20代の頃の私からすれば、映画に出るなんてまさに“夢みたいな話”です。東京のワンルームで、真っ白なスケジュール帳を見つめて家に引きこもっていた20代の私に言ってあげたいな。「もっと外に出ようよ。そんな小さな部屋で膝抱えてないで、知らない場所に行ってみなよ」って。

あの時、自分の直感を信じて、海外に出てみて本当によかった。女優になれたことや、演じるお仕事が増えたこともありますが、何より、「自分が納得できる自分」になれたから――。

取材・文/石川 香苗子 撮影/赤松洋太 企画・編集/栗原千明(編集部)

Information

映画『種まく旅人~華蓮のかがやき~』2020年初夏公開
キャスト:栗山千明  平岡祐太  大久保麻梨子
監督:井上昌典
脚本:森脇京子
製作:KSCエンターテイメント  
制作プロダクション:松竹撮影所
配給:ニチホランド
>>公式サイト

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