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NOV/2019

【営業の心得】元リクルート全社MVPの私が営業時代に絶対にやらなかったこと・やってよかったこと

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営業の仕事って、大変ですよね。顧客リストづくり、アポイント取り、訪問、商談、受注、納品……そして毎月達成しなければならない目標数字と、目まぐるしい日々を過ごしている人が多いのではないでしょうか。

中には、クライアントに振り回されたり、営業成績がついてこなかったりと、仕事にやりがいを見い出せない人もいるのでは? 自分の売る商品がお客さまの役に立つのか、自分が数字を上げることに意味があるのか、悶々としている人もいるかもしれません。

今はフリーライターとしてビジネス系メディアで記事を書いている私も、新卒から3年間、リクルート(旧リクルートHRマーケティング)で、求人広告の新規開拓営業をしていました。当時はつらいことも多く、資料の入った重い紙袋をぶら下げて道ばたでよく泣いてたものです。

ただ、入社2年目の時には、契約社員ながら人材事業部2000人以上の中で全社MVPを獲得するという実績をあげることができました。今ではフリーランスとしてさまざまな企業から事業課題の相談を受けており、これも「20代で営業を経験したからこそ」だと思っています。

では、私が“つらい営業の仕事”で成果を出し、次の仕事につなげることができたのはなぜなのか。今回は、営業の仕事になかなかおもしろさを見出せない人に向けて、私が営業時代に「絶対にやらなかったこと・やってよかったこと」をお伝えしたいと思います。

ライター
【この記事を書いた人】
フリーライター 石川 香苗子

1982年千葉県生まれ。リクルートHRマーケティング(現・リクルートキャリア)で3年限定の契約社員として、求人広告の新規開拓営業を経験。06年第1Q全社MVP、年間全社準MVPを受賞。3年目はチーフとなりメンバーを率いる。その後出版社でWeb販促・新規事業企画・Webメディア運用などに携わり、2012年よりフリーランス。主にIT、マーケティング、HRなどの分野で執筆を行う。セールスフォース・ドットコムやオープンワーク等の採用HPインタビュー、TVISION INSIGHTSのコンテンツプランニング・立ち上げ等を担当。一児の母。主な仕事にエンジニアtype「シリコンバレーで働いて気付いた「技術力向上」だけに固執するエンジニアのダメさ【Sansan CTO 藤倉成太】」ハフポストジャパン「モード誌『SPUR』が渋谷で生理ナプキン7400枚を配布 「男性にこそ見てほしい」」ほか
◆HP

“言いなり営業”は仕事をつまらなくする

営業時代に“やらなくてよかった”たった一つのこと。それはずばり、クライアントと営業数字を「他人ごとだと思わない」ことです。

当時は、取引者数100社、見込み顧客200社の計300社を担当し、ゼンリンの住宅地図を拡大コピーして担当エリアのすべてのビルに飛び込み営業をする日々でした。今のように「インサイドセールス」という概念はなく、1日20~60件の電話営業も行っていました。一年目は引き継ぎ社数ゼロ。すべて新規開拓でした

その時によく思っていたのは、いくら上司に叱られたってクライアントの担当営業は自分だし、目標数字を達成するのも自分だということでした。すべてを「自分ごとにする」から、営業という仕事が楽しくなるんです。

では「自分ごとにする」とは、どういうことでしょうか。

シンプルに言えば、「誰かの言いなり」をやめることです。確かに、クライアントの言うことに「はい、はい」と従っていれば、一瞬は喜んでもらえるかもしれません。でも、それだけではあなたへの信頼感は上がっていきません。「呼べば来てくれる都合のいい人」くらいにしかなれないのです。

クライアントの事業に貢献する提案をし、信頼を勝ち得ながらもなお、自分の目標数字も達成していける。しかも、売った商品が、確実にクライアントの役に立つ。これが、すべてを「自分ごとにする」営業のあり方です。

「営業=商品を売る仕事」ではない

営業の仕事

後輩の営業パーソンから私がよく相談されるのは、「クライアントに振り回されてしまうのですが、どうしたらいいのか」ということです。

無理な値引きを要求されたり、明らかにその会社に合わない商品を買いたいと言われてしまう。異性の担当者から「二人きりで飲みに行こうよ」などと法的・コンプライアンス的に問題になりそうなお誘いを受けてしまう。そんな経験がある人もいるかもしれません。

もちろんコンプライアンス違反の依頼は全面的にクライアントが悪いですし、すぐ会社に相談すべきですが、「無理難題に答えたら、売上につながるかもしれない」「クライアントの言うことに全て応えれば、長い取引がもらえるかもしれない」と思ってしまうのは営業パーソンの悲しい性……。その気持ちは痛いほどよく分かります。

でも、あえて言います。

クライアントに振り回されるのは、担当営業自身が、「自分がクライアントの事業に責任を持つ」という意識が薄いから。営業の仕事は、商品を売ることだと考えているうちは、半人前どころか、「3分の1人前」ですらありません

営業の仕事は、「クライアントの事業を成長させることである」。今この瞬間から、そう意識を変えてみてください。

クライアントの事業課題や事業フェーズを把握し、将来なりたい姿を共有できていたら、無理な依頼をされても毅然とした態度で「No」と断れることも多いでしょう。なぜなら、無茶な要求を飲んでも、その会社の成長にはつながらないから。そして、その会社の成長につながらないことを、経営者にさせてはならないからです。

これが、「クライアントの事業成長を自分ごとにする」ということです。

私の場合ですが、例えば「御社のニーズにはうちの商品は合わないので、今回は遠慮させていただきます」と取り引きを自ら断ったこともありますし、「これ以上は値引きできませんので」と帰ったこともあります。

新人の時、半個室の飲み屋さんで1対1の飲みに連れて行かれたことがありました。飲みの後で「タクシーを呼ぶからさ……」と誘われた時にハッとして、二度とその会社には訪問しませんでした。ビジネスで真剣にお付き合いができない会社にニーズはないし、そんな社長と取り引きしたところで、ワクワクした将来なんて描けっこありません。

一方で、「社長の求める商品では、御社のニーズは満たせません。予算からオーバーしますがこのプランでやらせてください」と提案し、お任せいただいた結果、求人広告で採用した人材が数千万円の売上をあげて、クライアントの事業フェーズが2段階ぐらい進んだこともありました。

大切なのは、クライアントの事業フェーズを一つ先に進めるような仕事を経験すること。営業の本質は「言いなり」や「商品売り」ではなく「クライアントの事業パートナー」へとステップアップすること。そうすれば、クライアントに振り回されて疲弊するような状況を極力減らすことができるんです。

初回訪問の前には、クライアントの事業分析を徹底的に行おう

営業の仕事

では、ただ商品を売る人から、クライアントの事業パートナーへとステップアップするためには、何が必要なのか。最も大切なファーストステップは、徹底的に担当クライアントの事業分析を行い、事業への深い理解を示すことだと思います。

若手のうちは、担当する全クライアントについて、初回訪問の前にビジネスモデルの分析をすることをおすすめします。おすすめは3C分析か、『新しい経営学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を書かれた三谷宏司先生のビジネスモデルの4要素分析(ターゲット・バリュー・ケイパビリティ・収益モデル)です。

私がやっていた方法は、3C分析がメインでした。企業のWebサイトや新聞、ネットニュースからわかる範囲でいいので、クライアントの「強み・弱み(Company)・顧客(Customer)・競合(Competitor)」について分析します。

それができたら、今のクライアントはどんな成長ステージにいるかを考えます。企業の成長ステージとは、「創業期」「成長期(拡大期)」「成熟期(安定期)」「衰退期(再成長期)」のことです。

3Cと、4つの成長ステージについて分析できたら、次は、3年後にクライアントがどんな状態になっているのが理想か仮説を立てます。そして、クライアントがなりたい姿になるために、自社の商品でどう貢献するのかを考えます。そして、初回訪問を迎えるのです。

最初は、1社の分析に2時間も3時間もかかるでしょう。実際、私もそうでした。しかし今では30分もあればできるようになりました。

今は効率化が叫ばれ、何ごとも最初から手早くできることが良しとされます。個人のスキルもそんな風に効率化できればいいのですが、なかなかそれは難しい。私も含め、「自分は人と比べて飛び抜けて優秀だ」と言い切れない場合、できるようになるまで何度でも諦めずトライするしかない。何百社もの事業分析をひたすら愚直にやっていたら、いつしか早く分析できるようになるものです。

そしていざ初回訪問では、3Cを念頭に置きながらヒアリングを行い、考えてきた仮説をぶつけ、相手の反応を見ます。

御社の競合はA社ですか? A社のこの商品の方が業績がいいようですが、その商品とどうやって差別化するのですか?
御社の強みは、このサービスですよね。これからどう伸ばしていくのですか?

クライアントから、今後事業をどう成長させていきたいと思っているのか、どうやってそれを実現しようとしているのか確認し、共通認識を持つこと。初回の訪問でここまでできたら合格です。また、もしできれば「御社にこんなニーズはありませんか?」と、ニーズの確認までできたらさらに理想的。100点満点中300点を自分にあげていいと思います!

こうやって初訪問で相手に「この人はわが社にとって大切なビジネスパートナーになりそうだ」と思ってもらえれば、営業側が主導権を握ることができます。「言いなり営業」から「クライアントの事業パートナー」へとステップアップできる道筋が見えてくるのです。

常に「戦略」と「武器」を考えよう

営業の仕事

次に、自分の目標数字に責任を持つこと。ニーズのあるクライアントがないからといって、達成を諦めてはいけません。うまくいかないときや苦しいときは、「だって、需要ないんだもん」「うちの商品が冴えないんだもん」なんてぼやきたくもなるもの。でも、1回その考えは脇に置いてみましょう。そうじゃなくて、「達成するためには、どんなクライアントから・いくら受注すればいいのか」を逆算して考え、“どうすればできるだろう”と考えるクセをつけてください。

このときに重要な考え方が、「戦略と武器」です。

戦国ゲームのプレーヤーになった気持ちで、クライアントを攻略し、数字を達成するためにどんな「戦略」を立て、どんな「武器」が必要なのかを考えるようにしてみてください。

「戦略」を練るとは、例えば……

「このクライアントの担当者は、自分一人で行っても動いてもらえないから、上司を連れて行こう」
「今日の商談相手は商品企画の人だから、提案する商品が誕生したプロセスについて話してみよう」

という感じで、攻略方法を考えることを差します。

目標数字の場合は、

「今季は賞与時期と重なるから、戦略商品としてこの商材をぶつけよう」
「競合企業を利用しているクライアントにリプレイスを仕掛けてみよう」

こんな風に、自分の目標数字を達成するために「どうすればいいのか」知恵を絞るということです。

中にはキャリアが浅く、「できないことばかりなんです」と嘆く人もいるでしょう。とはいえ、人間誰しも苦手なことや、今すぐできるようにならないことはあるものです。できないなら、できないままでかまいません。まず、今の自分には何が「できるのか」そして、何が「できないのか」を認識することから始めてみてください。

営業の仕事

ここで重要なのは、「できる人を“武器”として使う」という考え方です。

先ほどもお伝えした通り、人間ができることには限界があります。例えば20代の営業担当が、従業員5000人の会社を経営する50代と同じ目線に立つことは難しいでしょう。

この時、軍師(ぐんし)になったつもりで、社内のどこに「自分にはできないことができる人」がいるのかを探してみてください。上司や商品企画、その道の専門家などを商談に駆り出し、力を借りても良いでしょう。

例えば私は、直属の上司ではなく、エグゼクティブマネージャー(部長のさらに上のポジションです)に同行してもらい、クライアントの取締役との商談をしてもらったことがあります。また、エンジニア出身の社長との商談には、エンジニア向けメディアの商品企画をしている人を連れていったことも。クライアントの競合を担当している営業にヒアリングして、業界の動向を伝えたこともありました。

こんな風に、戦略と武器を考えると、「いやだな~」とか「めんどくさーい」というネガティブな気持ちと、今やるべきことを切り離しやすくなり、自分自身の武器は弱かったとしても、戦闘力を上げることができます。

営業がやるべきは、今の売り上げとお客さまの事業成長、両方を同時に考えることです。クライアントと数字に責任を持つと、「クライアントに信頼されて、達成し続ける営業」になれるんです。

フリーランスのライターになった今も、やっていることは営業時代と同じ

今、私はライターとして仕事をしています。そしてどこの組織にも属さない、フリーランスです。つまり自分一人で、営業→商品企画→制作→納品→料金回収まで行っています。毎月どのクライアントからどれくらい発注があるかを計算し、クライアントに自分の持つ「商品」を提案し、稼ぎたい数字を組み立てています。

今は、私の売る商材は「求人広告」から、「ライティングスキル」や「私という人間性」「築いてきた経験」に変わりました。けれどやっていることは、営業時代と同じです。

企業のWebサイトにコンテンツを提案してほしいと依頼されたら、3C分析をし、その企業の事業フェーズを考えて訪問していますし、その会社の成長に繋がらないと判断したら「それはできかねます」「それをやってはいけません」と、ダメ出しすることもあります。

言われた通りに受注するのではなく、クライアントの事業成長を見据えてお付き合いする。すると長期的な取り引きをしていただけるようになりますし、最終的には「石川さんはうちのことを思ってくれているから」と信頼されて、さらに仕事を任せていただけるようになっていきます。

例えば、ある企業に対して3C分析を踏まえた記事コンテンツの提案を行ったところ、その記事がヒットして、ヤフートピックスに取り上げられたことがありました。それをきっかけにクライアントに1000万円レベルの受注が上がり、事業成長に貢献することができました。

こんな風にクライアントに対して、事業成長を見据えた提案ができるようになれば、何を生業(なりわい)にしても、食べていくことができます。すると自分の「強み・才能」をお金に変えることができるし、自分のスキルでクライアントや世の中の誰かの役に立つことができます。

つまりそれは、自分の持つ「商材」がプログラミングでも、コンサルティングでもイラストでも、商売をしていけるということです。これぞ営業をベースにした生き方の醍醐味です

すべてを自分ごとにして、クライアントの未来を夢見て、クライアントの成長を後押しする。そんな営業という仕事は、かけがえのない仕事ですし、営業を通じて身に付けたスキルは、一生私の強力な武器になってくれる。そう確信しています。

文/石川 香苗子 著者撮影/加治 枝里子

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