04 DEC/2019

「私は休むのが怖かった」押切もえが振り返る“焦りと不安”に押し潰されそうだった20代。働き方と休み方を見直した30代

10代の時に読者モデルデビュー。40代を目前に控える現在も、第一線で活躍している押切もえさん。多忙な20代を経て、30代は仕事と子育てに奮闘してきた。

以前、英語学習番組『英語でしゃべらナイト』(NHK総合)でレギュラーを担当していた押切さんが今回挑戦したのは、イラストブック『たまには、やすんだら? ナマケモノさんが教えてくれる世界一かわいいマインドフルネス 』(飛鳥新社)の翻訳。

押切もえさん

押切もえさん

ティーン雑誌の読者モデルから、『CanCam』『AneCan』(ともに小学館)で専属モデルを務めた。モデル業のほか、二科展絵画部門での入選や山本周五郎賞候補へのノミネートなど、芸術分野でも活躍。NHKの英語学習番組『英語でしゃべらナイト』にもレギュラー出演。本作が初の翻訳書となる

「この本には今の自分にとって必要な言葉がたくさんあったし、過去の自分に贈ってあげたい言葉もいっぱい。日本人の方に自然に読んでいただけるように、一つ一つこだわりを込めて翻訳していきました」

そう言って、押切さんは笑顔を見せた。

たまには休んだら?」この言葉に、はっとする人も多いのではないだろうか。真面目に考え過ぎてしまったり、つい頑張り過ぎてしまったり。気付けばいつも無理をしている女性は少なくない。

20代だった頃の押切さんもその一人だ。「私は休むのが怖かった」そう、本音を明かす。その言葉の真意は何か、どうしたらもっとリラックスして毎日を過ごせるようになるのか、聞いてみた。

「いくらでも仕事を入れてください!」休まない生活が続いた『CanCam』専属モデル時代

押切もえさん

11月16日に行われた本書の出版記念イベントに登壇した押切さん。イベント終了後、Woman typeのインタビューに応えてくれた

雑誌『CanCam』(小学館)の専属モデルをしていた頃は、午前4時に現場入りして「今日は15ページ、100カットだからみんなよろしく!」っていう感じで、朝から晩までずっと撮影があって。撮影でいろいろな場所に行ったりもするので、睡眠時間が2~3時間なんて日がよくありました。

でも、20代の頃は体力には自信があったし、仕事も楽しくて仕方がなかった。だから全然休もうとせずに、「いくらでも仕事を入れてください!」「何でもやります!」なんて出版社の人に言っていたものです(笑)。『CanCam』で仕事をいただけるようになる前は全く仕事がない時期もあったので、仕事があること自体がすごくありがたかったんですね。

そして、休むことが怖かったんです。モデルって、以前は「歳をとったら仕事がなくなる」っていうのが何となく常識とされていたので、「ここで頑張っておかなきゃ」という焦りや不安が大きくて。

こんなに仕事が好きで経験も積んでいるはずなのに、30代になったら仕事がなくなっちゃうの……? 
そんなの嫌だ、どうにかしたいって、もがいていたのかもしれません。

30代って「次のステージ」に進まなくちゃいけないの?

そんな私が働き方を根本から見直したのは、30歳になる少し前のこと。『CanCam』を卒業して『AneCam』の専属モデルになった頃、周囲に変化が起き始めたんです。同期の子とか、友人とか、周りの女の子たちの中で結婚・出産をする人が増えてきて。いろいろな人から「もえはこれからどうするの?」って聞かれることが多くなりました。

押切もえさん

私はできればこれまで通りの道を進みたいと思っていたのですが、「もうすぐ30代なんだから、次のステージへ行かないとね」っていう見えないプレッシャーをかけられているように感じました。だから、すごく戸惑いましたね。「私、今までみたいに仕事をがんばっちゃいけないのかな?」って。

そんな風にモヤモヤしていた時、ある女性経営者の方とお話する機会があって。その方から、「今は納得いくまで仕事を頑張ったら? その経験はこれからのキャリアだけでなく、家庭生活を含め、あなたの人生を支えてくれるから」っていう言葉をいただいたんです。それで少し気が楽になって。私は私らしく、周囲の人に惑わされずにまっすぐ仕事に向き合っていこうと思いました。

スマホの電源をオフにして、強制的に頭をリセット

ちゃんと休んだ方が、いい仕事ができる」そう思えるようになったのも、ちょうど頃ころ。28~29歳くらいの時のことです。思い切って長期休みをもらって旅行に出掛けたり、好奇心の赴くままにいろいろなものを見たり食べたり。そういうことをするようになったら気持ちも晴れやかになって、いつの間にか自分の表現の幅も広がっていることに気付きました。

未知の世界に触れてワクワクしたり、アートを観て感性を磨いたり。あらゆる経験や知識が自分の人生を豊かにし、それが仕事にも良い影響を与えてくれるています。

押切もえさん

「休むのが怖い」って思っていた頃は、ご飯を食べている時すら次の予定のことや、仕事のメールが気になっていたんです。でも、それじゃあうまくリセットできないですよね。そこで今は、意識的にスマホの電源をオフにする時間をつくるようにしています。

何もしないということを決める」という感じですね。いつでもどこでも仕事ができてしまう時代だからこそ、「休むこと」もちゃんと決めないといけないのかもしれません。

でも、ママになったらもっと「休む」って大変で(笑)。家にいたらいたで、子どもから目が離せないじゃないですか。常に「この子をちゃんと育てなきゃ」って考えているので、思うように休めないことも少なくありません。

皆さんの中にも、休みたいのに休めていない人はきっと多いですよね? そういう方に、寝る前の10分~15分でもいいので心からリラックスしてほしい。そういう願いも込めて、『たまには休んだら?』の翻訳に取り組みました。

「本を読むぞ」なんて張り切らなくてもいい。パラパラとページをめくって、好きな言葉を声に出して読んでみたり、目を閉じて深く呼吸してみてください。

眠れない夜は、深呼吸してリラックス「不安の種を書き出してみて」

最後に皆さんにお伝えしたいのは、「今、この瞬間を大事にしてほしい」ということ。仕事に全力投球するのも素晴らしいし、今は休む時期と決めてプライベート重視の生活を送るのも素敵です。自分で決めたことであれば後悔はしないし、今を大事に生きた経験はきっとこれからの自分を必ず支えてくれると思います。

押切もえさん

ただ、そう決めていたとしても、不安や焦りを完全に捨て去るのは難しいものです。39歳になった私も、SNSを見ては誰かのことを羨んでしまうこともあります(笑)

イライラしたり、モヤモヤしたり。そういう時の対処法としてまず有効なのは、ゆっくり深呼吸すること。そして、お天気のいい日にでも悩みをノートに書き出すこと。シンプルなことですが、これがまた効果があるんです。

悩みを書き出すと、何から解消したらいいのか、優先順位が分かるようになります。あれもこれもと数種類の悩みを一気に考えてしまうとどうにもならないような気になっちゃうんですけど、一個一個分解して、一つ一つ片付けていくようにすると、次第に解決策が見えてくるもの。物事をロジカルに考えると、「意外と悩む必要なかったな」なんてことも見えてきます。

そして夜寝る前には、ぜひその日に起きたことに感謝して、自分で自分のことを褒めてほしいです。できなかったことより、できたことに目を向けて「今日の仕事は結構よくできたな」なんて思いながら眠りについてください。

いいじゃないですか、自分を甘やかしたって。ほっとしていると、深く眠れて次の日の朝すっきり起きられますよ。

20代は漠然とした将来への不安に押し潰されそうだった私も、こうやって自分の労わり方が分かってくると、仕事も含めて人生そのものをますます楽しめるようになりました。

自分とうまく付き合えるようになる30代は、20代の私が思っていたよりずっとずっと楽しかった。もうすぐ40代を迎えますが、これからもきっと大丈夫。家族と自分のため、自分らしく働いて、休んで、前に進んでいこうと思います。

取材・文/石川 香苗子  企画・編集・撮影/栗原千明(編集部)

INFORMATION

押切もえさん

8カ国以上で出版!異例の海外ベストセラーが日本上陸! 読むだけでストレスが消え、心が満たされる物語

NHK『英語でしゃべらナイト』のレギュラー出演など、語学力の高さでも知られる押切もえさんが、初の翻訳書を刊行!これまで著書『永遠とは違う一日』が文芸賞の最高峰にあたる山本周五郎賞にノミネートされるなど、出版界で大きな話題を呼んできた彼女の“初の翻訳書”として、大注目されています。原書は、英語圏ですぐに発行部数3万部を超え、たちまち8カ国以上での翻訳出版が決定したベストセラー。「ナマケモノさん」という可愛いキャラクターが海外で大ブーム中の脳の休息法「マインドフルネス」のやり方を、
やさしく教えてくれる一冊。
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