地味で平凡な事務からMI6のスパイへ。大人気ドラマ『キリング・イヴ』に見る“なりたい自分”になることを諦めなかった女の人生

海外ドラマコラムニストの伊藤ハルカが、旬な海外ドラマ作品の中から、注目のパワーウーマンをご紹介! 強くて、知的で、お茶目で、美しい……個性的なキャラクターが続々と登場する海外ドラマから、女性の“働き方&生き方”を学んじゃおう!
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皆さんは、今の職場、今の仕事に満足していますか?
給料や福利厚生は悪くない。職場の人間関係だっていい。仕事内容も嫌いじゃない。でも、何かが物足りない……。そんな「満たされなさ」を抱えている女性は少なくないかもしれません。
今回紹介する作品、スパイ・サスペンスドラマ『キリング・イヴ』の主人公イヴ(サンドラ・オー)も、そんな“満たされない”日々を過ごす女性の一人です。

『キリング・イヴ』の主人公イヴ(サンドラ・オー)
イギリス保安局(MI5)で事務職として働きながら、プライベートでは穏やかな男性と結婚。刺激のない退屈な毎日に不満を募らせますが、ある事件をきっかけに、大胆なキャリアチェンジを決意。「なりたい自分」になることを諦めなかった女性の奮闘ストーリーです。
12月のオススメ作品『キリング・イヴ』

今、数々の賞レースを席巻する話題のスパイ・サスペンスドラマ『キリング・イヴ』。
本作では、長年MI5の事務職として働いていたイヴが、ヨーロッパ各地で暗躍する美人殺人鬼ヴィラネル(ジョディ・カマー)の存在をきっかけにイギリスの諜報機関(MI6)にスパイとして雇われ、ヴィラネルを逮捕すべく心理戦を繰り広げる様子が描かれます。
無慈悲な殺害現場に息を飲んだり、スリリングな銃撃戦に手に汗握ったり、従来のスパイドラマの魅力をしっかりと押さえつつも、斬新な2人のメインキャラの設定と、ブラックユーモア満載なストーリーがスタンバイ。これまでのスパイドラマのイメージを塗り替える大胆さが批評家から高く評価されています。
例えば、サイコパスな美人殺人鬼ヴィラネルによる犯行は身の毛がよだつほど残酷……。しかし、ドラマの中で描かれる殺人現場はどこか意味ありげで、「過去にトラウマを抱えているのでは」という余韻を残します。

殺人鬼ヴィラネル(ジョディ・カマー)
また、冷酷無比な殺人鬼なのに若くて華奢でスタイリッシュなのも印象的。変装をしている時でさえ、ファッションに強いこだわりを見せるなど、とても犯罪者には見えません。

一方、イヴも根っからのスパイというわけではなく、もともとはデスクワークばかりしていた事務職という珍しい設定。
銃撃戦どころか銃の使い方さえ分からない彼女だからこそ、捜査現場で目に映るものは全て新鮮で、喜怒哀楽も豊か。従来のスパイといえば感情を見せないキャラクターが多かったと思いますが、彼女はそれとは対照的な人物なのです。

また、ストーリーのところどころに辛辣でウィットに富んだ笑いが差し挟まれるのも従来作とは違う点。スパイコメディーとまでいかずとも、シリアスなのにくすっと笑える、このさじ加減が見事です。
犯罪者とスパイによって紡ぎ出される非日常を描きながらも、本作のテーマはトラウマや愛、セクシュアリティーに心の闇など私たちにとって身近なものばかり。まるで違う世界を生きる2人にじわじわと共感していく感覚を楽しめます。
今月のパワーウーマン:イヴ・ポラストリ(サンドラ・オー)

また、このドラマが世界中で大ヒットしている理由は、「最高の脚本」があるのはもちろんですが、主人公イヴのキャラクターも大いに貢献していると思います。
イヴを演じるのは、韓国系カナダ人女優のサンドラ・オー。世界中で大ヒットした医療系ドラマ『グレイズ・アナトミー』でクリスティーナ役を演じたことでも有名な、実力派の女優です。
今年1月に開催されたゴールデン・グローブ賞の授賞式では司会を務め、イヴ役で主演女優賞も獲得。米TIME誌の『最も影響力のある100人』パイオニア部門に選ばれるなど、彼女にとっては大躍進の1年となりました。
ゴールデン・グローブ賞で主演女優賞を獲得したことは、10歳の時から子役としてキャリアを積むサンドラにとって、37年目で初めて成し遂げた大快挙。「年齢なんて関係ない。いくつになっても私たちは夢を叶えられるし、功績を残せる」と教えてくれた女性でもあります。
ハリウッドでは今後、アジア系俳優の活躍がますます期待されていますが、サンドラ・オーはその一端を担う重要な人物。日本人がハリウッドで高く評価される日もいつかやって来るのかも……? なんて、淡い期待を抱かせてくれるほど、サンドラの活躍は夢を与えてくれるものです。
あなたのなりたい姿は?
“ちょっとした違和感”から目を背けないで
皆さんの中には、最初から希望の職を手に入れた方もいるかもしれませんね。でも、ほとんどの人はイヴ同様、そうはいかないもの。
働きながら「自分が本当にやりたいことは何か」を自問し、いろいろな人に相談し、時には転職して職場を変え、試行錯誤しながら理想の働き方や「なりたい自分」を探しているのではないでしょうか?
私が『キリング・イヴ』を観て改めて感じるのは、「自分の中にあるちょっとした違和感から目を背けてはいけない」ということ。
例えば、「今のままでいいのかな」「この会社で働き続けていいのかな」という疑問がふと頭をよぎることがあると思いますが、そういう小さな違和感を見落とさない方がいい。きっとその違和感をちゃんと深掘りしてみると、「これがやりたい」「ああなりたい」といった願望が隠れているはずだから。
スパイとして働く夢を叶えたイヴは、どんなに危険な犯行現場にいても楽しくて仕方がない様子。何となく違和感を抱えながら事務として働いていた頃には得られなかった“働く喜び”を噛み締めているのです。まさに、モノクロだった人生が、カラーに変わった、という感じ。
彼女のように自分の心に素直になって、やりたいことに取り組めるようになると、人生の景色はがらりと変わる。そう感じさせてくれたのです。
「シーズン2では、自分らしさを守るギリギリの線を越えて闇に突き進むイヴが印象的でした」とハリウッド外国人記者クラブのインタビューで語ったサンドラ。夢だった仕事を通じて進化を続けるイヴと、そんな彼女を演じる女優サンドラ・オーからの力強いメッセージをぜひ受けとってくださいね。
作品情報
『キリング・イヴ』
U-NEXTにて、2019年12月1日よりシーズン1が独占見放題。
© Sid Gentle Films
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