菊池亜希子さんインタビュー「こだわりを手放せばもっと面白いものが生まれる」

another action starter
菊池亜希子

人の力を信じれば、面白いものができる

女優やモデル、またイラストエッセイの著者やムック本の編集者として軽やかに自分を表現しているように見える菊池さんは、実はかなり頑固なところがあると自己分析する。

「例えば本を作るとき、『こうしたい』という自分のこだわりをすごく強く持っていました。著者となる自分自身の意思を通すことが読者のためだと考えて、自分にプレッシャーをかけては苦しくなっていたんです」

しかしまりのように、こだわりを手放すことを覚えてからは、その方が断然うまくいくことを学んだという。

「私のアイデアを形にするには、必ずデザイナーさんやカメラマンさんなど、さまざまな人の手が加わります。私一人では何も作れないんですよね。それに、どんなに頭で考えても、現場でないと分からないこともたくさんある。そのことに気付いてからは、アイデアを伝えた後のことはそれぞれのプロの方たちにお任せして、自分は離れるようにしています」

こだわりを手放せるようになったのは「周囲の人の力を信じられるようになったから」と菊池さん。

「周りの人を信頼してお任せし、こだわりに固執するのではなく、柔軟に。そうすることで、元のアイデアが予想もしなかった方向に転がって行く。結果的にはるかに面白いものが生まれるということを知ったんです」

こうした柔軟な姿勢が、自身の著作はもちろん、出演する映画においても作品をより奥深いものにしているのだろう。

自分の中にサンプルがない、全く理解できない役を演じてみたい

菊池亜希子

そんな菊池さんが、この先新たに挑戦したいと思っていることについて聞いてみた。

「世田谷文学館で開催されていた『植草甚一スクラップ・ブック』を見に行ったとき、映画の評論をしていた時期の彼の言葉に衝撃を受けたんです。内容としては『たいていの批評家は映画を見終わった後で、その作品の一部分だけを自分の経験に照らし合わせて主張を始める。僕はそれが嫌いなのだ』というもの。この言葉がズシリと来て、『私のことを言っている』と思ったんです」

役を自分に引き寄せるやり方は、菊池さんが得意とするアプローチの方法。でも菊池さんは、「実体験にすり合わせることでしか芝居ができないのはプロ失格」と感じている。だから、菊池さんが望むAnother actionは明確だ。

「自分の中にサンプルを探すというやり方が通用しない役を通して、全く理解できないものをゼロから作ってみたい」

この先しばらくしたら、彼女らしさが見当たらない役を演じる菊池さんが見られるかもしれない。そのとき菊池さんは、どのような女優へと成長しているのだろう?

『海のふた』 2015年7月18日新宿武蔵野館他、全国公開

『海のふた』
2015年7月18日新宿武蔵野館他、全国公開

かつては観光地として栄えていた海辺の町を舞台に、大好きなかき氷の店を開くために帰郷した「まり」と、大切な人を亡くしたばかりのはじめ。自分らしく生きる道を探す2人の心の交流を描いたひと夏の物語 公式サイト:http://uminofuta.com/

取材・文/朝倉真弓 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)


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