サイト全体ハゲ一色!薄毛男性向けメディアを立ち上げた25歳起業家に聞く“外見コンプレックス”克服法
自分の外見にコンプレックスがあるせいで、
自信を持って話せない、
人としっかり向き合えない……。
見た目の問題にとらわれてしまい、自分をうまく表現できない人は多いかもしれない。
そんな中、「男性とハゲ」というテーマに対し、真っ向から向き合っているメディアがある。それが、イケてる薄毛男性のためのスタイルメディア『NOHAIRS(ノーヘアーズ)』だ。

『NOHAIRS』サイトTOP
このサイトに登場する薄毛男性たちは、ハゲというネガティブに見られがちな要素をまったく気にせず、溌剌と自分の人生を生きている。
彼らの姿から、外見コンプレックスから解放される手立てを見つけられないか――。そう思って、このメディアを立ち上げた高山芽衣さんを訪ねた。

株式会社Passion monster
代表取締役社長
高山芽衣さん
1994年生まれ。長野県出身。専門学校を経て、株式会社ケイト・スペード ジャパンに販売職として入社。その後、独立。現在はレディース向けアパレルブランド『GREET』と、イケてる薄毛男性のためのスタイルメディア『NOHAIRS』を運営している
高山さんは現在、25歳。もともとはアパレル業界で販売の仕事に携わっていたという。
外見コンプレックスとはまったく縁遠そうな女性だけに、なぜ薄毛メディア『NOHAIRS』を立ち上げることになったのか、その理由が気になる。
しかし、高山さんに話を聞いてみると「自分もずっと、見た目のコンプレックスに悩んでいた」という意外な答えが。
「今では、人の見た目も、自分の見た目も、一切気にならない。気にしな過ぎて、取材にもノーメイクで行ったりしていたもので、逆に人から注意されることもあるくらい」
そうあっさり笑って話す彼女に、なぜ外見コンプレックスから抜け出せたのか、『NOHARIS』を運営して学んだこととあわせて聞いた。
コンプレックスだった「おでこ」が、チャームポイントになった
実は私、ずっと自分の外見にコンプレックスがあったんですよ。それが、この広いおでこ。
今となってはなんでそんなに気にしていたのか分からないけど、中学生の頃までは嫌で嫌でしょうがなくて。だから、ずっと前髪で隠していました。

ただ、高校生の時にギャルデビューをしまして(笑)
いわゆるギャルマインドってやつで、「もっと自分の個性を貫き通せばいいじゃん」って思うようになったんです。
で、思い切っておでこを出して学校に行ってみたら、別に誰もバカになんかしてこなくて。むしろ「芽衣のおでこ、めちゃくちゃいい」って褒めてくれた。
そこから、ずっとコンプレックスだったおでこがチャームポイントになったんです。
それをきっかけに、自分のマインドもがらっと変わっていきました。
おでこを隠していた時は、脚が太いとか、腕が太いとか、自分の見た目に対して気になることがいっぱいで、全部「隠そう」としていたんですよ。
でも、おでこのことが気にならなくなったら、他のこともだんだんどうでもよくなって。
結局、私がおでこを隠そうとしていたのも、大した理由なんてなかったんですよ。何となく、「おでこが広いのはかっこ悪いんじゃないか」って思い込んでいただけで。
見た目のコンプレックスって、結局、捉え方次第という部分が大きいんじゃないかなと思っています。
薄毛、なぜ隠さなければいけないの?
私が『NOHAIRS』を立ち上げたのも、「そういえばどうして薄毛は恥ずかしいものなんだろう?」ってアパレルで働いていた時にふと感じたことがきっかけです。
私の父も薄毛なんですが、いつも堂々としていて、すごくかっこいいんですよ。
なのに、世の中は薄毛の男性に対して厳しい気がするし、多くの男性たちが「ハゲは隠す」方向にいくじゃないですか。

でも、さっきもお話しましたけど、それって自分で「良くない」って思い込んでいるだけかもしれないし、世の中にそう思わされてしまっているだけかもしれない。
『NOHAIRS』をやっていく中で改めて気付いたんですが、薄毛を個性に変えた人たちは、皆さんすごく潔いし、かっこいいんです。
なぜって、彼らはある種の痛みを伴いながら、自分のコンプレックスと向き合ってきた人たちだから。話せばすごく面白いし、優しい。人間としての魅力に溢れているんです。
でも、「ハゲたら終わり」みたいなことを口にする人は世の中にまだまだ多い。みんなでよってたかってハゲを「ダメなもの」にしようとしている気がしてしまいます。
私は、そういう空気や価値観を『NOHAIRS』で取っ払いたい。見た目だけで人をかっこ悪いとか、かわいそうだとか、勝手に決め付けたくない。
ハゲは良くないって規定しているのは 世の中の方だと思うから、そういう風潮を変えていきたいんです。

たとえば今、「ぽっちゃり女子」って一つのトレンドになったと思うんですけど、あんなふうにハゲもムーブメントにするのが私の目標。
女性も男性も、もっとあるがままの自分を出せる世の中になった方が、絶対生きやすいじゃないですか。
見た目の粗探しは、誰のことも幸せにしない
じゃあ、もっとみんなが自分の見た目に関する悩みから開放されるには、どうしたらいいか。
まずは、周囲の人に対するリアクションを見直してみることが、第一歩かなと思います。
例えば、私がおでこを出せるようになったのも、「おでこが広くて悩んでる」って言ったら、周りが「へーそうなんだ。全然気にならないけど」くらいの薄いリアクションが返ってきたから。
「あれ? 気にしてたのって、私だけ?」ってばかばかしく思えたんですよ(笑)
そこで「え、大変だね……」って必要以上に深刻な対応をされていたら、「やっぱりおでこが広いのはヤバいんだ」って余計に悩んでしまっていたかもしれない。
いい意味で、みんなが私の見た目になんて関心を持っていなかったから、私も気楽になれた。
自分も他人に対してそういうスタンスでいられれば、自分自身の悩みも「大したことないな」って思えるようになるかもしれません。

もちろん、中にはすごくセンシティブなコンプレックスがあることも分かっています。
だから一概には言えないけど、誰もが経験するような加齢による見た目の変化とか、「おでこが広い」くらいのありふれた悩みであれば、周りも過剰反応しない方がいいのでは?
「おでこが広い? だから何?」ぐらいのリアクションを取り合う方が、お互いハッピーになれるような気がしています。
逆に、絶対やっちゃいけないと思うのは、他人の見た目の粗探し。
よくいません? 「今日、めちゃくちゃ肌荒れてるね?」とか「最近太った?」とか、さらっと言ってくる人。
気遣いのように見えて、実はただのお節介というか、「そんなこと言われなくても、自分が一番分かってるよ!」って感じることも多いです(笑)

でも、こうやって他人の見た目の粗を突いてくる人は、自分がそこに同じようにコンプレックスを持っている人だったりもする。
自分が肌にコンプレックスを抱えているから、他人を見ているときもどうしても肌に目がいってしまって、つい口に出してしまったりするんです。
でも、それで自分の肌が良くなるわけでも、他人が変わるわけでもないから、やっぱり粗探しするだけ無駄で。そんなことするくらいなら、人のいいところを見つけて、褒め合う方が100倍健康的です。
これからの時代は、相手の短所を見つけてけなし合うより、長所を褒め合うことを私たちのスタンダードにしたい。その方が、絶対ハッピーな世の中になると思います。
“おっさん”へのレッテル貼りは、必ず自分に返ってくる
それに、人の見た目にあれこれ言うのって、結局ただのレッテル貼りになりかねません。
たとえば、「ハゲのおっさん」って言うだけで、「キモい」ってレッテルを貼って叩いていいものだと思っているところがありませんか?
確かに叩いている瞬間はちょっと気持ちいいかもしれない。相手より、上に立ったような気持ちになれるから。
でも、それが最終的に何を生み出すかと言うと、自分への壮大なブーメランなんですよね。
私たちも「若い女性」っていうだけで「責任のある仕事は任せられない」ってナメられたり、「いろいろアドバイスをしてあげなくちゃいけない」って余計な干渉をされたりするじゃないですか。
こういう状態も、「若い女性」っていう、本人にはどうしようもないことへのレッテル貼りが生んでいることだと思います。

自分たちがされて嫌なことは人にもしない。すごく当たり前だけど、それが基本。
だから「若い女性」って一括りにされて決め付けられるのが嫌だと感じるなら、自分たちも「おっさん」を一括りにして語らない方がいい。
嫌な人もいれば、善い人もいる。それはどの性別、どの世代だって一緒。一人一人、ちゃんと話をしていけば面白いところも尊敬できるところもたくさんあるはずです。
私が『NOHAIRS』をやる前からずっと考えているのは、自分の生き方や見た目について、「世の中の基準」じゃなくて、「自分の基準」で決められる人が増えたらいいなということ。
世間の声に流されるんじゃなくて、自分がいいと思うもの、自分の個性を大事にできる人をもっと増やしたい。
ハゲについてだって、カツラをかぶりたい人はカツラをかぶればいいし、植毛したいなら植えればいい。そういう人を否定したいわけでもないし、ハゲでもかっこよくいなくちゃいけない、なんてことも思っていません。
でもそれが、「自分は特に望んでいないけど、世の中的にハゲはよくないイメージだから」というのが動機なら、ちょっと違うんじゃないかなって。
要は、自分のあり方を決める判断基準が、自分以外のところにあるか、自分自身にあるか、その違い。
最終的に何を選択したとしても、自分の意思で選んだなら全部正解。その選択肢を広げるためにも、「ハゲもいいじゃん」っていう価値観をつくりたい。
で、最終的にそうやってみんなが自分の個性を大事に生きていくことができれば、コンプレックスとかレッテル貼りとか、そういうつまらないものも全部なくなっていると思うんですよね。
誰かを見た目で笑ったり、バカにしたりするんじゃなく、自分のカッコいいを貫き通す。
そんな社会を、せっかく令和になったんだし、つくっていきません?
取材・文/横川良明 編集・撮影/栗原千明(編集部)