【波瑠・成田凌インタビュー】仕事のオファーが絶えない20代がいつも心掛けていること
この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります
芸能界というとビジネスの世界とはまったく別世界のように見えるけど、第一線で活躍している人たちのマインドやコミュニケーションには、きっと私たちの仕事に通じるヒントがあるはず。
そんなプロフェッショナルのTheoryを紐解く本連載。今回お話を伺うのは、映画『弥生、三月 -君を愛した30年-』に出演する波瑠さん(28)と成田凌さん(26)。
20代後半となり着実にキャリアを重ねている二人は、どんなこだわりを持って仕事に取り組んできたのだろうか。
たくさんのクリエーターから「一緒に仕事をしたい」とラブコールを受ける波瑠さんと成田凌さんに、求められる人に欠かせないセオリーを見つけた。
「あなたと仕事がしたい」その言葉に心が動いた
――今回お二人が『弥生、三月 -君を愛した30年-』への出演を決めた一番の理由は何ですか?
波瑠:私は、これだけ自分のことを求めてくれる人と仕事がしてみたい、と思ったからです。
監督の遊川(和彦)さんから最初にお話をいただいた時、実は私、一度、オファーを受けるか迷っていたんです。
30年という女性の人生を一本の映画で背負うことは、並大抵の覚悟ではできないこと。自分にはとてもできない気がして、「私にはちょっと難しいかもしれません」とお返事をしたんです。
――そうだったんですか。
波瑠:だけど、その後、改めて遊川さんからご連絡をいただいて。一度、直接お話しすることになったんです。
私としても、自分の口からきちんと理由を説明した方がいいと思ってお伺いしたのですが、その場でいかにこの弥生という役を私にやってほしいか、熱い言葉でお話しいただいて。
これだけ自分のことを必要としてくれる方と一緒に仕事をしたらどうなるのか、私自身も試してみたくなりました。それで、気付いたら「分かりました」ってお受けしていたんです。
――仕事をする上で「人」って重要ですもんね。成田さんはどうですか?
成田:僕の場合はオーディションだったんですよ。だから、この作品をやってみたいと思った理由はシンプル。単純に楽しそうだったから。本を読んで面白かった。それが一番の理由です。
――楽しそう、面白そうと思えるのも大事な動機ですよね。
成田:30年もの人生を演じられる機会なんて、朝ドラでもない限りないと思いました。やったことのないことだったし、滅多にできることじゃなかった。だからやりたいと思ったんです。
「周囲を味方にする」のは、働く人にとって大事な能力
――お二人は今回が初共演ですが、現場を共にしていく中で、相手のどんなところが印象に残っていますか?
成田:波瑠さんはその場にいるだけで、チームの空気を引き締めてくれる人。周りの人に良い意味で緊張感を与えてくださるんですよ。
こういう素質って、みんなの真ん中に立つ人にとってはとても大切なことだと思っていて。波瑠さん自身が真面目で、物事をはっきり判断するタイプだから、それができるんじゃないかなと感じました。
波瑠:全然そんなことないですよ(笑)。もっとちゃんとできれば良かったって反省することがたくさんありましたから。
成田:いやいや。僕は波瑠さんのそういうところにすごく刺激をもらいました。
――波瑠さんから見て、成田さんの尊敬するところは?
波瑠:成田さんは人の懐に入るのが上手いなって思いながら見ていました。
すごく人懐っこいから、スタッフの皆さんが可愛がるんですよ、成田さんのことを。これは得する立ち居振る舞いを心得ているなって。
成田:(笑)
波瑠:こういう言い方をしちゃうと、すごくしたたかに聞こえるかもしれませんけど、そんなふうに懐に入ってきたら、自然と応援したい気持ちになるじゃないですか。
周りにいる人みんなを、成田さんは味方にすることができる。それは私にはない素質だから羨ましいなと思ったし、どんな仕事をする人にも欠かせない能力だと思います。
成田:あんまり意識的にやっていたわけではないんですけどね。ただ現場は楽しい方がいいなっていうのが僕の考えです。だから、垣根をつくらず、誰とでも仲良くなりたいと思っています。
信頼を築く第一歩は、相手を名前で呼ぶことから
――では、お二人が「いい仕事」をするために普段から大切にしている心掛けについて教えてください。
成田:さっきの話につながるんですが、一緒に仕事をする皆さんのことをよく知るようにするということですかね。
その第一歩が、スタッフさんの名前はちゃんと覚えるようにすること。
やっぱり、「照明さん」とかじゃなく、ちゃんと「○○さん」ってその人の名前で呼びたいじゃないですか。
――映画やドラマの撮影現場となると、関わる人はすごく多そうですよね。その分、名前を覚えるのも大変そうです。
波瑠:はい。でも、成田さんの言うとおりで、名前を覚えることや、相手をちゃんと名前で呼ぶって些細なことだけど大事ですよね。
お互いの心の距離が近づくだけで、仕事ってすごくやりやすくなりますから。
成田:実はこの『弥生、三月』でご一緒したスタッフさんと、昨日、あるCMの現場で一緒になったんですよ。そんなふうに仕事の関係ってその場限りで終わりじゃなく、また次につながっていくもの。
だから、ちゃんとコミュニケーションをとってお互いに信頼関係を築いていくことって大切だと思うんですよね。
――波瑠さんはいかがですか?
波瑠:私がいつも大切にしているのは、責任感を持つことですね。お芝居の場合、作品全体のことはいろんなセクションの方が見渡してくれますが、自分の役に向き合えるのは自分だけなんです。
役の人生を生きるって、自分の体を貸してあげるようなもの。私はいつも自分の役の気持ちを一緒に体験するつもりで演じているし、もしそれができないなら二度と自分の体を貸すことはできないぐらいの気持ちで、一つ一つのシーンを全うしたいと思っています。
それができるのは、演じる役者だけ。脚本家の方や演出家の方は作品全体のことを考えて、いろんなことを求めてきますが、それが「役として違う」と思ったら、ちゃんと私が責任を持って守ってあげなきゃいけないと思うんです。
――周囲の人と意見が食い違ってしまったとき、波瑠さんならどうしますか?
波瑠:ちゃんと納得できるまで話し合いますね。
もちろん、自分の意見を通すことだけが正解ではなくて。監督の要望をどれだけ反映させられるか、監督の注文に整合性をつけるために、前段階で自分なりに筋道を立てることも、役者ならできないといけません。
そういったことも含めて、ちゃんと自分の持ち場に対して責任を持つこと。
きっと会社のお仕事でもそれぞれみなさん役割があると思うのですが、ここから先は自分がちゃんと守らなきゃいけない領域だという線引きをして、そこに責任を持つこと。
そしてどうやったら異なる意見と折り合いをつけられるか調整することは、仕事をする上で大事なのかなと思います。
取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太 編集/栗原千明(編集部)
作品詳細
『弥生、三月 -君を愛した30年-』
公開:3月20日(金・祝)全国東宝系
脚本・監督:遊川和彦
出演:波瑠、成田凌、杉咲花、岡田健史、小澤征悦/黒木瞳
配給:東宝
©2020「弥生、三月」製作委員会
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