【福士蒼汰×戸田恵梨香】「頑張ろう」なんて言葉はいらない! 2人の20代が考える理想のリーダーシップとは
今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります。
この春最大の話題作として注目を集める映画『無限の住人』。不死身の肉体を持った片目の侍・万次(木村拓哉)と両親を殺された少女・凜(杉咲花)。次から次へと襲いかかる剣士たちと壮絶な斬り合いを演じる2人の前に、最大の敵として立ちはだかるのが、凜の仇討ちの相手である逸刀流統主・天津影久役の福士蒼汰さんと、逸刀流最強の剣客・乙橘槇絵役の戸田恵梨香さんだ。
「“ぶった斬り”エンタテイメント」の看板通り、鮮血飛び散る迫力の殺陣が見どころだが、福士さんも戸田さんも、時代劇による殺陣は今回が初めて。新しいフィールドで、自分たちの既存のイメージを打ち破るような仕事に2人はどのように取り組んだのだろうか?
「想定外の困難」にぶつかるのは仕事の常! 慌てたり、悩んだりせずにイレギュラーを楽しむ
「刀を使ったアクションは今回が初めて。いきなり現場に入るのは不安だなと思って、数カ月前からアクション監督に稽古をつけてもらい、撮影に挑みました。一番難しかったのは、武器の扱い方。天津の武器は通常の刀ではなく、斧のような形をした特殊なもの。これをいかにカッコよく見せるか、という点は苦労しました」(福士さん)
一方で、どれだけ入念に事前準備をして臨んでも、現場に入ってみて想定外の困難にぶつかるのは仕事の常だ。
「私も初のアクション撮影だったので、事前練習はしっかりやっていきました。でも、本番は練習とは全然違う。例えば、私が使った武器はヌンチャクと長刀を組み合わせたようなもの。それを振り回して戦うのですが、稽古で使っていたものと本番で使った実物では重さも感覚も全然違っていたんです。それに、何よりも想定外だったのが、セットの大きさ。私の戦闘シーンの舞台は狭い路地裏なんですが、これが想像以上に狭くて(笑)。無闇に振り回すと武器がセットにぶつかってしまうし、かといって遠慮がちに振り回してもかっこよくないし。どうやってアクションをすればいいんだろうって、現場に入った瞬間に頭を抱えました」(戸田さん)
不測の事態にどう対応するのか、「プロの力量」が試されるもの。そんな中、戸田さんの取った対処法はとてもシンプルだ。
「思うようにいかないことにぶつかったら、周囲の人とすぐ意見を交換して解決策を見つけるのが私のスタイルです。今回で言えば、一つ一つの動きをスタッフの皆さんと話し合って決めていきました。自分一人でどうにかしなきゃとか、練習通りにやらなきゃとか、そこに固執する必要はないと思っています」(戸田さん)
にっこり微笑む戸田さんから、不測の状況に陥ったときに大切なのは「イレギュラーを楽しむ気持ち」だということが伝わってくる。それは女優に限らず、会社員であっても同じことが言えるだろう。
「自分の能力以上のものを引き出してもらえた」木村拓哉さんに学んだ“中心に立つ人”の役割
着実にキャリアを重ね、チームの「中心に立つ人」としての役割を求められるようになってきた福士さんと戸田さん。本作でも非常に重要な役どころを任かされているが、木村拓哉さんというトップスターと共演したことで、仕事への取り組み方や“リーダーシップ”について改めて気付かされたことも多かったそうだ。
「最初はとにかく木村さんの存在に緊張してしまって、なかなか自分から話し掛けられませんでした(笑)」(福士さん)
そう照れ臭そうに木村さんとの共演を振り返る福士さん。木村さんと刀を交えるクライマックスシーンでは、その存在感に圧倒されたと語る。
「実は直接こうしようという話し合いをしたわけではないんです。でも、交えた刀から万次の気迫が伝わってきて。それは、今まで感じたことのない不思議な体験でした」(福士さん)
一度きりの木村さんとの真剣勝負。そこで、福士さんが味わったのは「頭で考えない、心の演技」だった。
「今までは天津らしい殺陣の型を意識してやっていたんですけど、木村さんとの殺陣だけは何も考えず、気持ちで刀を振れた。それは間違いなく木村さんが本気で自分にぶつかってきてくださったから。木村さんの本気に応えるためには、自分も本気で返さなきゃいけない。そうやって本気で戦っていくことで、自分の能力以上のものを引き出してもらえた気がします」(福士さん)
木村さんと間近で仕事をしたことで、中心に立つ人、つまり「リーダー」の役割は、「周囲の人を本気にさせること」なのだと福士さんは学んだという。
「自分一人がいい仕事をするだけじゃダメなんですよね。周囲の人の能力を最大限に引き出す能力こそ、リーダーに欠かせない素質なんだと痛感しました」(福士さん)
チームの士気を高めるのは“誰よりも本気”なリーダーの姿
戸田さんもまた木村さんの姿を見ながら、自身が目指したいリーダー像を再確認したそうだ。
「木村さんって、周囲への気の配り方が桁違いなんです。初のアクションを不安に感じていた私にも『こう動いたらカッコいいよ』って丁寧にアドバイスをしてくだったり。あと、一演者としての目線ではなく、作品全体をしっかり見渡しているところが素敵だなと思いました。役者にはあまりないことなんですが、すべてのカメラワークを把握していて、自分がどう動けばいいのか全部頭に入っているところも木村さんのすごいところです」(戸田さん)
通常、たとえ出演場面であっても自分がカメラに映らないカットであれば俳優は脇で待機するのが一般的。だが、木村さんは自分がカメラに映らないカットでも、相手が演じやすいように、共演者の目線の先に立って実際にその場で演技を再現するのだとか。また、マッサージ器具をロケ地に持ち込み、疲労のたまったスタッフに木村さん自らマッサージを施す場面も見受けられた。
「木村さんはいつでも仕事に真剣だし、一番楽しんでいる。そんな木村さんが中心にいるだけで、自然と皆のモチベーションが上がっているように感じました。分かりやすく『頑張るぞ!』なんて声を上げなくたって、チームの士気が高まっていくんです。それってすごく健全ですよね。私もそういう“背中で語れるリーダー”になれたらと思いましたね」(戸田さん)
重要な仕事を任されていくことが増える20代後半。「先輩」や「上司」の立場が自分には向いていないと、及び腰になることもあるかもしれない。でも、リーダーに求められる素質は、決して特殊なスキルというわけではないようだ。
まず大切なことは、自分が誰よりも仕事に対して本気になること。そして、一緒に働く仲間に敬意や感謝の気持ちを、行動や態度で示すこと。今回の共演で、俳優として、一ビジネスパーソンとして欠かせないリーダーシップを学んだ2人。今後もチームの中心に立つ者として、輝きを増していくに違いない。
取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太
【映画情報】
映画『無限の住人』2017年4月29日(土)GW全国ロードショー
原作:沙村広明「無限の住人」(講談社『月刊アフタヌーン』所載)
監督:三池崇史
脚本:大石哲也
キャスト:木村拓哉 杉咲花 福士蒼汰 市原隼人 戸田恵梨香 北村一輝 栗山千明 満島真之介 金子賢 山本陽子 市川海老蔵 田中泯 山﨑努
公式HP:http://mugen-movie.jp
『プロフェッショナルのTheory』の過去記事一覧はこちら
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