逆境に負けない強さの秘訣は? Netflix『セルフメイドウーマン』に学ぶ、女性が前向きに生きるためのヒント

海外ドラマコラムニストの伊藤ハルカが、旬な海外ドラマ作品の中から、注目のパワーウーマンをご紹介! 強くて、知的で、お茶目で、美しい……個性的なキャラクターが続々と登場する海外ドラマから、女性の“働き方&生き方”を学んじゃおう!
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友達に会えなくなったり、楽しみにしていたイベントが中止になったり、欲しい物が手に入らなかったり……新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、思い通りにならない毎日を送っている働く女性も多いと思います。
また、そんな暮らしの中で、これからのことを前向きに考えられなくなっている人もいるかもしれませんね。
そこで今回ご紹介したいのが、貧困と差別のどん底生活から這い上がり、自力で全米屈指の大富豪になった黒人女性起業家のサクセスドラマ『セルフメイドウーマン ~マダム・C.J.ウォーカーの場合~』(Netflix)です。

さまざまな逆境を跳ね除け、成功者となったマダム・C.J.ウォーカーの人生から、強く、たくましく生きていく秘訣を学んでいきましょう。
※一部、作品の内容に触れています※
今月のおすすめ作品:『セルフメイドウーマン ~マダム・C.J.ウォーカーの場合~』

タイトルにある“セルフメイドウーマン”とは、「自力で道を切り拓いた女性」のこと。
昨今メディアでも「セルフメイドウーマン」特集が組まれるなど、既存のルールに縛られず、自らのやり方で世界にインパクトを与える女性起業家に注目が集まっています。
本作の主人公であるマダム・C.J.ウォーカー(以下、マダム)は、1900年代初頭に活躍した実在する女性起業家で、“セルフメイドウーマン”の先駆けといっても過言ではありません。
黒人差別が根強く残る時代に白人とビジネスをしたり、ミソジニーが当たり前な時代に資金調達を成し遂げたり、アメリカで初めて自力でミリオネアになった女性としてギネスにも認定されたりしています。
貧しい洗濯婦だったマダムは、いかにして大富豪になったのか。逆境に負けず、強く前向きに生きたのか。本作は、彼女の姿をリアルに映し出しています。
今月のパワーウーマン:マダム・C.J.ウォーカー(オクタヴィア・スペンサー)

幼い頃、両親に捨てられ、14歳で結婚、15歳で妊娠し、20歳で未亡人になったマダム。その後、ストレスで髪の毛がすべて抜け落ちる不幸に見舞われます。
しかし、この災難が、後の彼女の成功を呼び込む転機に。この時に使ったヘアケア商品が見事に効き、髪の毛が復活。髪を再び手に入れたことで自信を取り戻すことができ、「美しい髪は、素晴らしい機会をもたらしてくれる」と気付いたのでした。
それからマダムは、「世の中で虐げられている黒人女性の自信を取り戻そう」と奮起。学歴やビジネススキルも一切ない中で、黒人女性向けのヘアケア商品の開発に乗り出します。

1900年代初頭という時代背景を思えば、黒人女性がビジネスを始めることがいかに難しいことか、想像に難くありません。いくら運が良かったとしても、それだけでミリオネアになれることはないでしょう。
では、彼女が成功した要因とは?今の時代にも通用する、3つの心掛けを紹介します。
【1】逃げ道を残さない
事業が不調な時も、マダムは元の仕事(洗濯婦)に戻ることだけは決してしませんでした。
夫からどれほど反対されようとも、「やる」と決めたことを絶対に諦めなかったマダム。「失敗しても他の仕事がある」と考えるのではなく、「『やる』と決めたこと以外は絶対にやらない」と腹を決めていました。

私たちはいろいろな方法でリスクヘッジを考えてしまいますが、成すべきことに一直線に向かっていくには、逃げ道を捨てる覚悟も大事なのかもしれません。
【2】ファーストペンギンになり続ける
マダムはこれまで誰もやろうとしなかったことに果敢にチャレンジし、数々の偉業を残しています。
何事に対しても、「どうせ無理だ」と考えるのではなく、「どうしたらできるか」を常に考え続けてきた人なのです。

例えば、多くの人が行き交う市場の真ん中で女性たちに熱弁を振るったり、資金調達をして工場を開設したり、白人が経営する大手ドラッグストアと手を組もうとしたり……。
当時の常識で考えれば多くの人が諦めてしまうようなことを、次々に成し遂げていきました。
マイノリティーであることさえも強みに変え、一番初めに何かに取り組む“ファーストペンギン”になり続けたのです。それが、大きな成功へとつながっています。
【3】悩む時間は無駄。常に知恵を絞って考える
成功のために努力は必要だけど、「努力したからといって必ずしも成功するわけではない」というのがマダムの考え方。いい意味で人生に期待を持ち過ぎないからこそ、努力の末に失敗しても打ちのめされたりはしません。
また、差別や偏見にさらされ不条理だらけの環境で生まれ育ったマダムですから、悲劇に対する免疫力の高さも人一倍。夫の不倫現場を目撃しても、部下に裏切られても、商売敵にスパイされても、常に動じません。
自分にとって不都合なことや悲劇的なことが起きても、悩まないところもマダムの強さ。知恵を絞って「次の一手」を考え続けたことが、人生を好転させました。

この、パワフルなマダムを演じるのは、アラフィフ女優のオクタヴィア・スペンサー。2011年公開の、白人女性とメイドとの関係を描く映画『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』でアカデミー賞助演女優賞を受賞。
最近では、NASAの成功に陰ながら貢献した黒人女性の活躍を描く映画『ドリーム』や、アカデミー賞受賞作品の『シェイプ・オブ・ウォーター』に出演するなど、数々のヒット作で好演する実力派女優です。
ただ、これまでは主人公を支える「名脇役」のイメージが強かったオクタヴィア。ドラマシリーズの主演に抜擢されたのは今回が初めてで、パブリックイメージを良い意味で裏切るような熱演を見せています。
また、オクタヴィアは2015年から作家としての活動もスタートさせています。年齢やキャリアを重ねても新しいことに挑戦し、自分の能力を存分に発揮していこうとする姿は、まさにセルフメイドウーマンそのものです。
今、私たちは新型コロナウイルスの脅威に不安を抱えながら生きていますが、しっかり知恵を絞って「次の一手」を考えていけば、きっと大丈夫。
オクタヴィアが演じるマダムを見ていると、自然とそんな前向きな気持ちが湧き上がってくるから不思議です。
もうしばらく不安な日々は続いていきそうですが、いつか必ず終わりは来ます。数々の逆境を跳ね除け、不可能を可能にしてきたマダムにパワーをもらいつつ、皆で一緒にこの大変な時期を乗り越えていきましょう!
作品紹介
『セルフメイドウーマン 〜マダム・C.J.ウォーカーの場合〜』
Netflixオリジナルシリーズ。独占配信中。
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