りゅうちぇるさんたちと考える「ダイバーシティ3.0」コロナによって多様性の未来はどう変わる?

6月26日(金)、これからの組織や社会、そして世界に必要な多様性の在り方を考えるオンライン・シンポジウム「【ダイバーシティ 3.0】個性を生かし合う世界へ ~コロナによって多様性の未来はどうなる?~」が、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社(以下、P&G)とビジネスインスピレーションメディアのAMPによって共催されました。

【ダイバーシティ 3.0】個性を生かし合う世界へ

りゅうちぇるさん(写真左)、治部れんげさん(写真右)

同日、リアルタイムで配信されたオンライン・シンポジウムには、タレントのりゅうちぇるさん、東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野の近藤武夫准教授、プライドハウス東京およびグッド・エイジング・エールズ代表の松中権さん、そしてファシリテーターとしてジャーナリストの治部れんげさんが登壇。

「ダイバーシティ&インクルージョン」を経営戦略として掲げるP&Gの営業統括本部アソシエートディレクター・市川薫さんを含めた5名で、コロナ禍によって多様性の未来はどのように変化していくかなど、ダイバーシティ&インクルージョンの今後について意見を交換しました。

※ダイバーシティ 3.0とは
今回の企画では、「企業と多様性」をテーマとした取り組みである「ダイバーシティ 2.0」からさらに発展させ、“社会と多様性”という 視点まで広げるシンポジウムとするため、「ダイバーシティ 3.0」というキーワードが使用されています

シンポジウムの様子

「コロナ禍で変わった生活の中で、さまざまな人が取り残されることなく、大事にされながら自分の能力を発揮できるような社会にするにはどうしたらいいか」

冒頭では、ファシリテーターを務める治部れんげさんが今回のシンポジウムのテーマや概要について解説。どのように多様性の問題と関わっているかを各パネリストに問い掛けました。

【ダイバーシティ 3.0】個性を生かし合う世界へ

治部れんげさん

2019年の「超ダイバーシティ芸術祭」でアンバサダーを務め、障害や性、世代、言語、国籍を超えて支え合う社会の実現を目指し活動に取り組んでいるりゅうちぇるさんは、「小さい頃から可愛いものが大好き、メイクも大好き、オシャレなものが大好きだけど、女の子が好きな男の子で、まわりからいろいろ言われる中で自分はどういう人なんだろう……と迷って過ごしてきた」と幼少期に抱えていた悩みに触れながら、次のようにコメントしています。

「大人になって仲間ができて居場所ができて、ようやく声を出せるようになった。ちょっとでも同じようなタイプの方や、全然分からないって思う人にも何か考えるきっかけを与えられるように発言していきたい」(りゅちぇるさん)

多様な障害のある人々に対し、教育や雇用現場で役立つテクノロジー活動や合理的配慮、修学、雇用制度の在り方などについて研究を行っている近藤武夫さんは、現在の仕事を目指したきっかけについて語りました。

「ある人にはチャンスがあっても、貧しいからとか出自が違うとか、そういうことで排除される人、いじめられる人がいることにモヤモヤしていた。非行少年・少女の勉強のサポートに関わっていく中で、発達障害と呼ばれる子どもが多く存在することに気付き、そうした経験からこうした活動に関わるようになった」(近藤武夫さん)

【ダイバーシティ 3.0】個性を生かし合う世界へ

「自分自身がLGBTQの当事者で、小学校の高学年くらいで、もしかしたら男の子が好きなのかな……と思ってから、ずっと自分のことを隠してきた」と自身の過去を話したのは松中権さん。

LGBTQと社会をつなぐ場作りを中心とした活動や、20年東京オリンピック・パラリンピックとレガシーづくりに関するプロジェクト「プライドハウス東京」などに取り組んでいる松中さんは、「大学に入って東京で就職をして、企業に入って10年目でカミングアウトして自分らしく働いた」と自らのエピソードを紹介し、こうした経験をシンポジウムで分かち合っていきたいと話しました。

P&Gで営業職の業務の傍ら、社長直下のダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクトを担当し、社外に向けての積極的な発信も行っている市川薫さんは、次のように語りました。

「子育てや、スイスのジュネーブで働いた経験から、ダイバーシティ&インクルージョンに興味を持つようになりました。多様性を生かすための管理職向け社内研修の講師なども務めているので、今日は皆さんの意見を聞いて勉強したいです」(市川薫さん)

多様性の概念とは?

「幼い頃からの固定概念や色々な決めつけがある中で大人になるため、急に変わるのは難しいけれど、強要しないことはできる。多様性という言葉は、それを否定する人も認めてあげることが本当の意味。自分の意見を強要せず、理解できなくても認め合い、そんな世界で自分がどう生きるかが大切」(りゅうちぇるさん)

そう発言したりゅうちぇるさんに、「いきなり本質を突いている」 と治部さんが賛同。

松中さんも「多様性とは、一人一人が自分らしく楽しく平等に人生を送ること。自分が自分を大切にできないと、相手を気に掛けたりできないと教えられたことがある。“多様性”とは多くの人のことのように思えるが、自分自身のことだと思うと理解しやすい」とコメントしました。

近藤さんは、授業や会議における障がい者と健常者の扱いの差を例に挙げて話しました。

「障がい者のために何かをしてあげるのではなく、すべての人に分かりやすく伝えるために本質を考えることが大切です」(近藤さん)

また、かつてはダイバーシティにだけ注目が集まっていましたが、なぜインクルージョンも含めて扱われるようになったのか、市川さんは「ダイバーシティは多様性のある状態を指し、インクルージョンはそれを活用するスキルとアクション」であると解説。

「多様性は組織の中でも少しずつ認められるようになっているが、それを生かし合うことが次のステージで必要になってくる」とコメントしました。

コロナ禍でダイバーシティ&インクルージョンはどう変化したか

【ダイバーシティ 3.0】個性を生かし合う世界へ

りゅうちぇるさん

りゅうちぇるさんは不便なリモート収録に慣れ始めると共にかつての環境のありがたさを知り、キャリアに不安を覚えたことなど近況に触れながらも、テレビ出演に固執せずSNS活動にシフトしたことや育児セラピストの資格を取得したことなど、新しい挑戦を続けてきたことに助けられたと告白。

「一つの仕事に専念するのがいいという意見もあったけれど、笑顔で自分の居場所を保つためいろいろなことに挑戦し、自分の得意なものをつくろうとした。自己肯定感が高く、根拠のない自信が多かったから動けたと思う」(りゅちぇるさん)

今回のシンポジウムを通して、今後どのような活動を行いたいかという議題では、りゅうちぇるさんは「自分を好きになる」、 市川さんは「もっと相手を知る努力をする」とパネルに書き込み、「格差センシティビティ」と書いた近藤さんは「さまざまな場所に存在する格差に気づくセンスを社会の中で育てて行きたい」と発言。

松中さんは LGBTQについての同盟、仲間を意味する「アライ」という言葉を使用し、強く意識しなくても、ちょっとしたことで隣にいる人を気軽に救うことができるという想いを込め、「となりのアライ(になりたい)」と発表しました。

開催概要

【ダイバーシティ 3.0】 個性を生かし合う世界へ ~コロナによって多様性の未来はどうなる?~
■日時 2020 年 6 月 26 日(金)17:30~19:00
■登壇者<パネリスト>
りゅうちぇる(タレント)
近藤武夫(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 准教授)
松中 権(プライドハウス東京、グッド・エイジング・エールズ代表)
市川 薫(P&G ジャパン 営業統括本部 アソシエートディレクター)
治部れんげ(経済ジャーナリスト)※ファシリテーター
■プログラム
・オープニング
・第一部 トークセッション「多様性の概念/多様性の具体的なメリットの提示」
・第二部 トークセッション「コロナ禍によって D&I はどう変化した/変化によってメリットはどう変わるか」
・質疑応答
■見逃し配信について
開催当日にリアルタイムで視聴できなかった方に向けて、YouTube にて見逃し配信も実施しております。
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