時短勤務で仕事の成果を上げるには? 営業女性のモヤモヤに社外メンターが回答
長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
はじめまして、『Mentor For』公式メンターの長田正美と申します。
今回は、育休から復職した女性の「思うような成果が出せない」というお悩みに、私自身の経験談を交えながらご回答したいと思います。
先輩に聞きたい!
今回の相談内容
育休を終え、もといた営業チームに復帰しましたが、自分が納得する成果が出せません。時短勤務にあわせて目標も調整してもらっていますし、目標自体は達成しているのですが、以前のようにフットワーク軽く動けないことにもやもやしてしまいます。
とはいえ、時間の制約があるため商談できるお客さまの数は限られるし、フルタイムで働いている同僚に対する引け目もあり周囲にも相談できません。
もっとチームに貢献したいのですが、限られた時間の中で最大限の成果を出すにはどうすればよいのでしょうか?
もやもやの原因を3つに分解してみる
育休明けは、仕事に育児に、とにかく時間に追われる毎日が続きますよね。時短勤務であればなおさらです。
物理的に時間が限られるため業務の見直しも必要ですし、仕事を軌道に乗せるまでがとにかく大変。
加えて、小さな子どもは体調を崩しやすく、看護休暇を取ることもしばしば。そして会社を休めばまた業務時間が削られて……と、全く思い通りに働けません。
自分のペースで仕事ができないストレスを、とても感じやすい時期だと思います。
そんな中、営業として復職されたAさんは、目標を達成していらっしゃるとのこと。
営業は顧客のニーズをつかみ、そのニーズにお応えする仕事。そして、顧客ニーズに応えた結果が業績につながり、その業績成果が目標達成につながる仕事です。営業職を長く続けてきた身として、目標達成をしているというAさんを心から尊敬します。
私自身は復職後、全くパフォーマンスが発揮できず、最初の半期は目標を達成できなかったため、かなり焦っていました……。そして、なぜ育休に入る前と何もかもが違ってしまうのだろうと、もやもやもしてもいました。
そこで、私の育休復職当時と重ね合わせて、Aさんのもやもやの原因を以下3つの要素に分けて考えてみました。
【1】以前と同じように働きたいのに働けない
【2】もっとチームに貢献するために最大限の成果を出したい
【3】フルタイムで働けないことに引け目があって周囲に相談できない
私が復職した際の仕事は、営業職ではありませんでした。ただ、自分が営業マネージャーとして働いていた頃、営業職として復職するメンバーを何人も迎えてきました。
その時にメンバーと伴走した経験から、Aさんのもやもやポイントをひとつずつ、考えていきましょう。
【1】以前と同じように働きたいのに働けない
産休前と同じように、お客さまのニーズにお応えし、思いっきり働きたい。Aさんのご相談内容から、その真摯な思いが伝わってきます。これは、営業として誇りをもって働く女性の多くがもどかしく思うことなのではないでしょうか。
ただ、少しご自身の働き方を俯瞰してみませんか?
Aさんはいま、時短勤務という働き方を選んでいらっしゃるのです働く時間を短くした以上、。何かを手放さないと業務は回りません。
それは、担当するお客さまの数かもしれないし、営業工程の一部分かもしれない。
でも、ここで大事なのは、時短勤務は会社が認めた制度であり、Aさんもご自身でその働き方を選んだのだということ。以前と同じように働きたいというこだわりを、少し脇に置いてみるのはいかがでしょうか。
その上でさらに俯瞰してみると、Aさんはおそらく「人生100年時代」を生き抜く世代。仮に70歳まで現役を貫くとしたら、あと何年働くことになるでしょうか。
きっとまだ、現役時代を四分の一も過ごしていないのでは……?
そうした時に、自分が時短勤務をする期間は、とても短いということにも気付くはず。
実際、私の周囲のワーキングマザーも、お子さまが小学生になってからなど、年々フルタイムでのびのび働いている方が多くいらっしゃいます。
Aさんも、この先ずっと時短勤務するわけではないと考えると、少し目の前の日常が違って見えてくるのではないでしょうか。
【2】もっとチームに貢献するために最大限の成果を出したい
毎日限られた時間でお客さまに向き合いながら、Aさんは社内のチームのメンバーも気にかけていらっしゃるのですね。きっと、チームで働く醍醐味を何度も味わってこられたのではないでしょうか。
実際、営業職は個人とチーム単位で目標を持つことが多く、メンバー一人一人が強みを発揮しながら切磋琢磨し、みんなで助け合ってチーム目標を達成する喜びは、何物にも代えられません。営業チームは、一緒にスポーツをする仲間のようなものですよね。
ここで少し、営業マネージャーの立場からお話させてください。
チームの目標を達成するために、各個人の目標達成を支援することは、マネージャーの大事な仕事の一つです。マネージャーは、ひとりひとりのメンバーコンディションを見極め、成長支援しながら業績構築をサポートします。
いまAさんは、目標をきちんと達成されているとのこと。マネージャーの立場からすると、Aさんは、自立して目標を達成してくれる頼もしい存在です。
既に、チームに貢献してくれているメンバーとしてAさんを見ているはずです。
今後もAさん自身の目標を達成し続けることは、マネージャーのマネジメントパワーを必要なメンバーに集中させることとなり、それは確実にチームへの貢献につながります。
また、Aさんが業績の面以外でチームに貢献してみたいと思っている場合についても考えてみましょう。
Aさんは今、「チームへの貢献」を思い描いたときに、どんなことをしてみたいと思いますか?
例えば、チームの営業力を高めるために、ご自身の得意な営業ナレッジの共有でしょうか。例えば、ご自身が時短勤務の中で見出した、生産性向上につながる業務の進め方の発信でしょうか。
きっとその「してみたいこと」は、Aさんの強みがベースになっているはず。ぜひ、ご自身の強みを大いに発揮してみてください。
ちなみにGallup社の調査によると、強みを発揮している人は、毎日の生産性が8%向上するとのこと。時短勤務のAさんにはぴったりな考えですよね。
ぜひ、Aさんもご自身の強みをあらためて自覚化し、積極的に活用いただきたいと思います。
【3】フルタイムで働けないことに引け目があって周囲に相談できない
悩み事がある際は、身近な仲間に自分の気持ちを打ち明けてすっきりしたいものですよね。今のAさんの「フットワーク軽く働けない」というもやもやも、周囲の同僚に気軽に相談して解決できたらどんなに良いでしょうか。
ただ、おっしゃるとおり、フルタイムの同僚の手を止めてまで相談してよいものか、躊躇してしまいますよね。
私自身は復職した際、誰にも相談できず、大失敗しました。私はフルタイムで勤務していたのですが、それでも以前よりは勤務時間が短くなっていたため、仕事が全然終わらなかったのです。
そのため、子どもが起きる前と、子どもの就寝後に残業。すると、もともと子どもの夜泣き対応で睡眠時間が少ない中、ますます眠る時間が削られ、日中全然頭が回らない状態に……。
生産性がガタ落ちして焦る中、周囲から「お願い」と言われると仕事も断れず、今日のToDoリストが30行を超えているのを見て、朝から机で泣いたこともありました。
ある日、もうダメだと思って上司との定例ミーティングで打ち明け、業務整理してもらった記憶があります。
ちなみに数カ月前、当時の同僚たちと話す機会があったので、思い切って自分の気持ちを打ち明けてみたのです。すると、「全然気づかなかった、ごめんね」「言ってくれたら良かったのに」「本当に大変だったね」と、口々に温かい言葉をかけてくれました。
なので、ぜひAさんも勇気を出して周囲に相談してほしいと思っています。
同僚が難しければ、まずはマネージャーに声をかけてみてはいかがでしょうか。部下のもやもや解消は、マネージャーの責任でもあり、やりがいでもあるからです。
自分の歩いた跡が道になる
強いチームづくりに貢献するつもりで声をあげてみて
以前、私のメンバーで、2人目のお子さんを出産して営業に復職した方がいました。
彼女はいわゆる超売れっ子営業で、入社以来ずっと目標を達成しており、会社から表彰されることもしばしば。お客さまからの信頼も厚く、周囲からはいつも羨望の眼差しで見られていました。
もちろん2回目の復職後も、彼女は常に目標達成。ただ、以前に比べて元気がないのです。
心配になって私が声をかけると、「1回目の復職と違って、なかなか効率よく営業ができていない」とのこと。本気で悩み、疲れ切っている彼女を見て、私は表面的にしか彼女を理解できていなかったと心から反省しました。
その後、彼女も交えてチームメンバーで何度か話し合い、彼女が直行直帰で営業行為を完結できるよう、体制を整えました。
彼女はさらに効率よく働くようになり、ストレスも軽減。彼女の働き方は、その後全社の時短勤務モデルとなり、多くの後輩たちがその働き方を真似できるようになりました。
自分の歩いた跡が、道になることもある。「こんなことを言ったら迷惑になるのでは」と遠慮せず、声を出してみてほしいです。
そうやってお互いが自分のコンディションを率直に言い合える組織は、さまざまな方が活躍できるもの。これからは介護や闘病など、いろいろな状況の中で働く方が増えてきます。
どんな状況でも目標達成する強いチーム作りに貢献するつもりで、まずはAさんが気持ちを言葉に出してみてください。
もちろん、ご自身の気持ちを周囲に伝える目的は、自分のコンディションを整えることであり、それによってお客さまのニーズにしっかりお応えし、業績成果につなげてチームに貢献することです。
きちんと目標達成しながらチーム貢献を意識できるAさんの声ならきっと、周囲も喜んで耳を傾けるのではないでしょうか。
以上、3つのもやもやポイントにそってお答えしてきましたが、いかがでしょうか。
時短勤務は期間限定であると割り切って、ご自身の強みを発揮しながら、お客さまとチームに向き合って自分らしく貢献していく。その上で、自分の本音も周囲に伝えてみる。Aさんなら、必ずできるはずです。
営業は、自分自身の人間力が土台になる、難しくて面白い仕事です。今のもやもやを乗り越えた経験も、Aさんの人間力を高める糧にきっとなるはず。今後も営業として輝き続けるAさんを、心から応援しています。
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