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JUL/2020

CRAZYを独立した山川咲が死と向き合うシンプルな理由ーー結婚式も葬式も、どちらも「人生の編集作業」

既成概念にとらわれない完全オーダーメイドのオリジナルウエディングブランド『CRAZY WEDDING』を28歳で立ち上げ、ブライダル業界に革命を起こし続けてきた山川咲さんが、2020年3月にCRAZY役員の退任と独立を発表した。今後手掛けてみたいことの一つに、「葬儀」に関連する事業があるという。

独立当時のインタビューでは、会社を去ることへの葛藤に涙を流す姿も見せた。しかし、発表から3カ月。取材時、奈良県奥大和地方にあるume, yamazoeに滞在していた山川さんの表情は、自然体で軽やかな笑顔だった。

山川さんはどうして、自ら築き上げた会社を離れなければならなかったのか。なぜ、結婚式とは一見対極的な「死」を扱う事業に関心を持つようになったのか?

結婚式と葬儀は、私にとっては同じことなんです」と迷いのない表情で語る山川さんに、今の気持ちを聞いた。

山川咲さん
山川 咲さん
2006年に入社した人材系コンサルティング会社にて人事新卒採用責任者として活躍。数々のプロジェクトやイベントを立ち上げ、メディアの注目を浴びる。11年、同社を退職。オーストラリアでのひとり旅を経て、完全オーダーメイドのCRAZY WEDDINGを創業。ウエディングで業界に革新をもたらし、16年5月には毎日放送「情熱大陸」に出演。その後、産休・育休を経てIWAI OMOTESANDOの立ち上げに携わる。20年3月27日に独立
◆Twitter:@yamakawa_saki
◆Instagram:saki_view
note

愛するCRAZYを去って3カ月。「この道を選べて良かった」

独立の理由は、そうですね……もっと自由になりたかったのかな。

環境によって、自分は不自由だと感じてしまう人って多いと思うんです。例えば、夫の束縛が厳しいとか、子どもを一人で育てないといけないとか、経営をしていても四面楚歌だとか。

私の場合はそうではなく、環境には常に恵まれていました。

では何が私を不自由にしていたのか? それは、自分自身の思考だと気付いたんです。

私はもともと、内からこみ上げる衝動やパッションで物事を運んでいくタイプ。それが経営に入り、子育てをするようになると、慌ただしい日々の中でどこかそのパワーをセーブしてしまっている自分がいました。

「今はこうした方がいい」とか、「こうあらねばならない」とか。本当に少しずつの積み重ねですが、そう考える度に、私はどんどん不自由になっていった。

私という存在が、大きなものに飲み込まれていってしまう。そんな感覚がありました。

これまで私は、挑戦してから「やらなきゃよかった」と後悔したことは一度もないんです。進んでみれば、「やってよかった」と思えるのは分かってる。それでも今回はものすごく不安で、ものすごく悩みました。

自分の愛している場所であり、自分そのものでもあるCRAZY。辞めたくない理由も、辞めない方がいい根拠もたくさんあった……。でも、最後の最後は自分の直観を信じて、「もう行こう!」と(笑)

そして、2020年3月27日。私はCRAZYから離れることを発表しました。

山川咲さん

発表後すぐにコロナの流行が本格化し始め、独立後に入っていた仕事は全てキャンセルに。私も娘と二人、奄美大島に2カ月間滞在しました。良くも悪くも、本当の意味で「白紙」に戻ることができたんです。

「私はこれから、どうやって生きていくんだろう?」

オンラインで何でも解決できる世の中になりつつある。でも、オフラインでしか共有できないものも確かにある。豊かな暮らしってなんだろう? そもそも、人間にとって一番大切なものって何……?

奄美大島という環境に身を置きながら、人々の生活や価値観が変わっていく時代の節目を目の当たりにしたことによって、仕事の概念も、生きることの概念も、改めて問いただされた気持ちになりました。

アーティストとして初のエキシビジョン『Close Contact』を6月に行ったのは、奄美大島で過ごした自粛期間中の私の気付きを、周りの人と共有する必要があると思ったからです。

独立を発表してしばらくは、「これで良かったのかな」と思い悩むこともありました。でも、こうした経験を通じて少しずつ気持ちが整理されていき、「この道を選べて良かった」と、今の私はそう思っています。

多くの人は、自分の人生を“捏造”している

山川咲さん

お葬式関係の仕事をやりたいと思うようになったのは、何も結婚式がやりたくなくなったからではありません。結婚式も葬儀も、私にとっては“同じこと”なんです。

CRAZYでは、プランナーとして結婚式を挙げる人たちに向き合ってきました。結婚式を挙げるお二人が、どこで生まれ、どんな親に育てられて、どんな子ども時代で、どんな葛藤とともに大人になったのかーー。

1~2時間のヒアリングでその人の人生を知ると、いつも本当に感動するんです。

多くの人は、「自分の人生なんか大したことはない」と言います。でも、私がこれまで話を聞いてきた中で、「確かに普通だね、つまらないね」と思う人生は一つもありませんでした。

こうした経験を通じて分かったのは、多くの人が自分の人生を客観的には見られていないということ。自分の主観の中で、「私は不幸だ」と思い込んでしまっています。

私も、自分の人生を“捏造”してきた一人です。「自分の人生は辛いから、それを糧に頑張る」というストーリーの中で生きてきたけれど、実際は違いました。

思っていたよりずっと楽しくて、幸せな人生を歩んできたことを、自分の結婚式を通じて知ったのです。

ドラマチックで、泣けるほど素晴らしい、一人一人違う人生。それを、私は表現したいんです。

山川咲さん

「自分の人生は素晴らしかったんだ」と。主観的過ぎて見えていなかった自分の人生に出会い直せて、周りの人たちも同じように、もう一度その人に出会えること。

「この人と関わってこられてよかったな」と思える場づくりをすることを、私は“人生の編集作業”と呼んでいます。

今まで結婚式でやってきたことの時間軸をもう少し伸ばすと、お葬式になる。そういう意味で、結婚式もお葬式も、やるべきことは同じだと考えています。

結婚式で約30年の人生を聞いていたのが、お葬式や生前葬ではその3倍近い分量の人生を聞くことになります。

ちょっと多くて心配ですが(笑)、死を待たずとも、結婚から死までの間のどこかで、そういう節目を作れるといいなと今の私は思っています。

36歳。「死」を扱えるだけの経験をしてきた

私が自分の人生を不幸だと思い込んでしまった理由は、幼少期に遡ります。

子どもの頃、私の家族は大自然の中で自給自足のような暮らしをしていたんです。お風呂を薪で焚いたり、野山のタンポポを摘んでサラダにしたり。

そういう生活をする“人と違う自分”に、ずっとコンプレックスを抱いていました。

「何のために生きてるんだろう」
「何で人と違う境遇なんだろう」

中学生の頃は、「生きるって何?」「人生とは?」みたいなことばっかり考えていました。

そんな中、たまたまお葬式のプロデュースについて書かれた本を読んだことをきっかけに、自分のお葬式のイメージをノートにまとめたんです。親には相当心配されました。当たり前ですね(笑)

今振り返ると、生きることについて考えることと、お葬式で自分の人生をどう表現するかを考えることに、何か共通項を感じていたのかな、と思います。

山川咲さん

でも、新卒の時の自分では、まだお葬式を扱うことはできなかったと思います。人事コンサルの会社に入社し、新卒の子たちへの影響力を発揮するのが、当時の経験に対して適正な輝き方だった。

そこから少し時間が経ち、24歳で自分の結婚式を挙げた時には、今の自分なら結婚式の事業ができると思えた。お葬式関連のビジネスも一瞬よぎったのですが、当時の自分に「死」を扱うだけの自信はまだなかったんです。

そして36歳のこのタイミングで、なぜ「死」と向き合えるかも、と思ったのか。……なぜでしょうね(笑)?

今思ったことですが、「あなたにだったら任せてもいい」と思ってもらえるだけの人生経験をしてきたように思えるから、かな。

起業して駆け抜けてきた8年間はもちろん、幼少期の辛かった経験も、人事として学生に向き合ったことも、出産し育児をしてきたことも。

全部が積み重なって、十分とはいつまで経っても言えないけど、「まだ足りない」とは自然と思わなくなった、そんな気持ちでしょうか。

人生の編集作業とは、何かマニュアルがあって、それに沿えば誰もができるものではありません。自分の人生に悩み、苦みもがき続けてきた人だからこそ、分かり合えるものや表現できるものがある。

それは私が、人生を通じて体得してきたスキルです。

「死」の場面でその力を役立てられると思えるのは、「この年齢になったから」というわけではありません。「あなたになら任せたい」と大切な人たちに感じてもらえる感覚があるから、というのが正直な気持ちです。

人生を振り返る機会が、結婚式だけじゃもったいない

山川咲さん

一般的なお葬式は、家族や友人が“今”知っているその人しか知らないまま、終わっていくものがほとんどだと思います。

でも、その人にも当然、子ども時代があり、大人になり、結婚して、仕事をして……と、これまで歩んできた人生があります。お葬式であっても結婚式と同じように、人生のプロセスを通じてその人を知ることができるはずです。

そのタイミングは、必ずしも本人が亡くなった後である必要はないと思っています。生前葬でもいいですし、40歳、60歳の誕生日でもいい。会社を辞める定年のタイミングでも構いません。

そのお手伝いが何かしらかのかたちでできたらいいな、って。だから、お葬式というのも一つの例なんです。

プランナーとして結婚式をする人たちのヒアリングをしていた頃、「自分の人生をそんな風に思ったことがなかった」とか、「結婚まで決めていたのに、相手のことを全然知らなかった」と仰る方が多くいました。

同じようにお葬式でも、本人が自分の人生について話すことで、知れることはきっとあります。自分の人生の認識が変わる素晴らしい機会になる。周囲の人だけでなく本人にとっても、その価値はあるはずです。

今後の具体的なプランはまだ決まってませんが、人生の編集作業を通じて、人の人生の美しさ、素晴らしさを伝えていきたい気持ちは、5年前もきっと10年後も変わりません。

今の私は、諦めない限り物事が成就することを知っています。「これだ!」と思えるものを見つけたときには、今までの人生で一番自由に、そして一番情熱的に、誰かの人生に向き合うことになるのだと思います。

今は焦らず、楽しみだなぁと少し遠目で、自分にとっての「その時」を待っています。

山川咲

取材・文/一本麻衣 撮影/やまね かおり

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