「30代で100%仕事をしたから40代でご褒美をもらえた」――“決めつけない力”が引き寄せたキャリアと結婚

20代後半の女性たちがよく口にする、「30歳になっちゃう」という言葉。なぜ私たちはこんなにも30代になるのが怖いのだろう?
これからの人生について、一人であれこれ悪い想像をしてしまうから? それなら、少し先の未来を歩く先輩たちが、何に悩み、何に喜びながら30代を過ごしてきたのかを知れば少しは不安がなくなるかも。すでに30代を乗り越えた“40’sウーマン”たちが語る等身大の言葉に耳を傾けてみよう。
30代をがむしゃらに頑張ったからこそ
40代で働き方のペースを緩められた

だからもう転職はしないだろうと思っていたのですが、思いがけないきっかけがあり、昨年9月に三菱地所を退職しました。その年の春に建築デザイナーの男性と結婚し、彼から「自分の仕事を手伝ってほしい」と言われたからです。
主人と出会ったのは、38歳の時。私が知人に連れていってもらったビストロに、たまたま彼もお客として来ていたことで知り合いました。とはいえ、私たちは以前、仕事で顔を合わせたことがあるのです。主人はすぐ私に気付いたそうですが、こちらは全然覚えていなくて(笑)。でも、そこからお付き合いが始まって、自然と結婚に至りました。
でも「三菱地所を辞めてほしい」と言われた時はショックでしたね。「楽しく仕事をしているのに、どうして?」と。ただ、主人の考えを聞くと、なるほどと思う部分もありました。彼が言ったのは、「大企業で働いている人と、個人や小さな組織で仕事をしている人では、価値観が大きく異なる。大企業の中から見える価値観のまま、全てをとらえないでほしい」ということでした。確かにそうかもしれないと思いましたし、やってみないうちから結論を決めつけるのも嫌だったので、主人の事務所に入ることを決めました。現在は、案件のマネジメントが私の主な仕事。主人がデザインを作る前の段階で、クライアントのご要望を引き出し整理してまとめたり、どんなメンバーでチーム編成するかを考える役目です。
私が30代を通して一番成長した点を挙げるなら、この「決めつけない力」を身に付けたことかもしれません。転職のお誘いを頂いたら、未経験の仕事でも「自分には無理」と決めつけずに挑戦してきましたし、主人と結婚できたのもこの力のお陰なんですよ。30歳以降は、どんな男性とお付き合いしても、「どうせ自分とパーフェクトに合う人なんていないんだし」と決めつけて、聞き分けよく付き合っていましたが、やっぱりうまくいきませんでした。でも、ある友人と久しぶりに会った時、彼女はそんな私を諭したんです。「奈香は自分のことがよく分かっていないんじゃない? 自分の本当の好き嫌いや望んでいることが何か、ちゃんと考えないとダメだよ」と。その直後に出会ったのが主人でした。そして「見た目も中身も今まで好きになった人とは全然違うけど、よく考えたらこの人が私のタイプだわ」と気付けたんです。
私は今妊娠中で、来年1月に出産予定です。主人に言われて前の会社を辞めましたが、一方で「100%の力を注ぐという働き方のままでは、もし子どもを授かっても自分の納得いく形で仕事にも育児に関わるのは難しいだろうな」とも感じていたので、結果的には自営業になり、自分の意思で時間を自由に使える環境になってよかったと思っています。計画性のない私ですが、何事も決めつけないできたからこそ、40代になった今、この生き方や働き方を手にすることができた。そして30代をがむしゃらに頑張ったからこそ、40代で働き方のペースを緩めるというご褒美をもらえたのだと思っています。
取材・文/塚田有香 撮影/吉永和志
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