「キャリアの棚卸し」ってどうやるの? コロナ禍の転職・独立で特に大切にしたい4つのポイント

「緊急事態宣言以降、会社がほとんど休業状態。これを機に転職か独立を考えています」
「周りの契約社員の同僚がコロナ禍で続々と契約終了に……会社とはまだ契約期間が残っているけれど、私も次の仕事を探さなきゃ」
「入社が決まっていた会社から内定を取り消されました……」
「テレワークしたいのに会社はいまだに出社前提。テレワークOKの職場に転職したい」
これらは今年になって私が共同代表を務めるWarisに登録にいらした女性の皆さんの言葉です。

4月に緊急事態宣言が発令されて以降、新型コロナ感染拡大に伴う業績の悪化や事業整理・縮小を理由に、今後のキャリアチェンジを考える女性たちが目立ちます。
そこで今回は、コロナ禍の転職・独立で大切にしたいことをお伝えします。
1)自身のライフ・キャリアをとらえ直す機会に
転職・独立を考えるきっかけが会社の業績悪化などのネガティブな理由からだったとしても、コロナ禍を一つの契機として、ご自身のライフ・キャリア・これからやりたいことなど「とらえ直す機会」にしてみてください。
不安や焦りなど、心情的につらい部分があると思います。
それでも、「何でもいいから仕事がしたい」ではなく、立ち止まって、「どんなキャリアにしたい?」「自分はどうありたい?」とご自身に問い掛け、考えを整理するところから始めてみましょう。
そうすることで、前向きな転職・独立につながります。

ここで、二人の女性の事例を紹介したいと思います。
一人目は、社員として広報の仕事をしているAさんです。Aさんの会社は、コロナ禍に業績が悪化。Aさんの担当業務も縮小ぎみになってしまいました。
しかし、以前からフリーランスとして働くことに関心があったAさんは、これを機会に会社と交渉し、自身の契約形態を雇用(正社員)から業務委託へ変更。
稼働時間も週5フルタイムから週2~3稼働にボリュームダウンし、残りの時間を複業にチャレンジしたいとWarisへ登録されました。
コロナ禍だからこそ、発想を転換し、新たなキャリアの形に挑戦しようとされているわけですね。
次は、フリーランスで研修講師のお仕事をしていたBさんの事例です。
Bさんも、Aさん同様にコロナ禍で仕事が減少。この先どうしようかと考えた末、「再び企業人としてマネジメント経験を積みたい」思いが生まれていたとのことで、社員の仕事を探したいとWarisに登録されました。
「コロナ禍だからこそ◯◯という雇用形態がいい」とか「コロナ禍だから◯◯業界がいい」と一概に言えるものでもありません。
100人いれば100通りのライフ・キャリアがあります。ぜひ、どうありたいか、何を実現したいか、立ち止まり考えるきっかけにしてみましょう。
2)あらためてキャリアの「棚卸し」をしよう!

その上で転職・独立すると決めたら、大切なのは「キャリアの棚卸し」です。これまでご自身がやってきたことを職務経歴書にまとめ、新たな仕事に応募するにあたってのアピールにつなげていく必要があります。
これまでやってきたことを、まずは書き出すところから始めまてください。
そして、やってきたことを次に生かせることとしてまとめたり、他者に伝わるように分かりやすく言い換えたりしながら振り返るのがポイントです。
ご自身の経験で「足りない」部分があったとしても大丈夫です。それは「今後チャレンジしたいこと」としてプラスに変換しましょう。
やってしまいがちなのが職務経歴書で単純に経験した内容を羅列すること。業務内容をまとめあげるのは重要ですが、必ず自分自身が果たした役割や実績、成果を言葉と(できれば数字と)セットで表現することを意識してみてください。
自己PRもできる限り入れていただくことをおすすめします。
仮に「実績」と語れるほどのものがなかったとしても、自分自身として意識したことや、周囲から評価されたことに焦点をあててご自身の強みとしてアピールしましょう。
皆さんの思考や人柄、強みが見えた方が「この人と仕事をしてみたい」と企業側に思ってもらうきっかけになります。

また、女性の皆さんとお話ししていると「私には強みがなくて……」と仰る方が少なからずいらっしゃいます。でも、強みが一つもない人はいません! それは断言できます。
キャリアを振り返る際のポイントとしては、まずは「変化のあったところ」に注目すること。職責が変わったとか、所属する部門が変わったとか、転職したといったことです。
これまでと違う環境(役割)に身をおいて、自分なりに努力したり改善したり……必ずやってきていることがありますから、意識して振り返ってみるといいですね。
また、「一定期間続けてきた仕事」も注目ポイント。ご自身のキャリアの中で一定程度の時間を投じてきたからこそ「やり切ったこと」「やり遂げてきたこと」があるはずです。
3)優先順位をつけつつ幅広めの検討を!
とはいえコロナ禍で市況感が悪化しているのは事実です。
主要な経済指標の一つである有効求人倍率(求人数を求職者で割った値)は新型コロナウイルス感染拡大を受け、下降傾向で、昨年10月には全国平均で1.58だったものが、今年10月には1.04となっています。

「コロナ禍だから絶対安定した企業に就職したい」「定年まで働けるような長くいられる会社に行きたい」「ベンチャーは不安定だからいや」などと安定・安心にこだわりすぎるあまり、選択肢を狭めてしまう人も少なくありません。
報酬も契約形態も会社の安定性も……すべて希望が叶えばいいですが、現実的には求人数が豊富にあるとは言えない状況です。
ご自身が大事にしたいことの優先順位をつけつつ、可能性を広げて検討する方がスピーディーに仕事を獲得することができると思います。
今は人生100年時代。一つの組織で定年まで働くとも限りません。こだわり過ぎたり慎重になり過ぎたりするのも考えものです。
「現在のキャリアにプラスになるのであれば、(今回の転職で)多少報酬が下がっても良しとする」など、最低限ここだけは叶っていればいいという軸を明確にしてアクションしましょう。
3年後くらいを見据えて今どうあるべきか、どうありあたいか、どんな経験を自身にプラスしていきたいか……考えていけたらいいですね。
4)ポータブルスキルを軸に異業界・異職種も視野に!

最後に、コロナ禍で働いている業界全体が大打撃を受けていらっしゃる方もいると思います。その場合、これまでの経験を生かして同一業界で転職しようにもなかなか難しく悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった場合はご自身の「ポータブルスキル」を軸に異業界や異職種へのチャレンジを視野に入れることをおすすめします。
「ポータブルスキル」とは、どこの会社や部署、職種でも生かせる「持ち運びできるスキル」のことです。 例えば、論理的思考力、コミュニケーションスキル、プレゼンテーションスキル、課題解決力といったことが挙げられます。
これまでホテル業界で接客のお仕事をされてきた方が、これまでの「対人関係構築スキル」を生かして別の業界で営業の仕事に転換するなどのケースが想定できます。
引き続き当面は厳しく不安定な市況感が続きそうではありますが、「他の業界・職種で通用するポータブルなスキル・経験って何だろう?」と前向きに発想の幅を広げていただければと思います。

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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