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DEC/2020

【ソニン】涙と迷いの20代を乗り越えて。ミュージカル女優として魅せるプロ魂

20代後半は、誰もがキャリアに迷う時期。このままこの道を進んでいいのか。もっと他に別の道があるんじゃないか。見えない将来に不安を抱えて、悩むことも多い。

「私もずっとモヤモヤしていました。たぶん20代後半の女性って、みんなそういう悩みを通ってきているんですよね」

そう頷きながら答えてくれたのが、俳優のソニンさん。EE JUMPのメインボーカルとしてやソロアーティストとしてヒット曲を飛ばしたソニンさんが、今やミュージカル界で確かな地位を築いているのは、多くの人が知るところ。

ソニンさん

まさに自らの力で自分らしいキャリアを切り開いた一人のように見えるが、ソニンさんは20代後半のモヤモヤ期をどのようにして乗り越えたのだろうか。

20代後半、人生を守りに入ることの方が、仕事を失うことより怖かった

2000年代前半、『おっととっと夏だぜ!』や『カレーライスの女』などインパクトのある楽曲でミュージックシーンを賑わせたソニンさん。

その後は、ドラマ『高校教師』で演技の才能を示し、2004年、『8人の女たち』で初舞台。さらに2007年、『スウィーニー・トッド』でミュージカル初出演を飾ると、翌年、『ミス・サイゴン』のキム役で高い評価を獲得。アイドルからミュージカル俳優へ。着実に足場を固めていった。

さらに、2012年、文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員として、1年間、ニューヨークに演劇留学へ。当時、ソニンさんは29歳だった。

ソニンさん
ソニンさん

留学に行く4年前ぐらいから、ずっとモヤモヤしていたんです。

ミュージカルや演劇に身を置いていろいろな仕事に取り組む中で、少しずつ自分のやりたいことが見えてきた一方、うまくいかないことも多くて。

エネルギーがあり余っているのに、どこでどう使えばいいのか分からない、というのが当時の悩みでした。

ソニンさん

そんな時に一人でニューヨークに行って。直感で『ここに住んだら何か変わるかもしれない』と思ったんです。

エンタメ界における自分の居場所に悩んでいた私にとって、1年間の演劇留学は自分自身を見つける旅でもありました。

20代後半といえば、それなりに仕事の経験も積んできて、できることが増えてきた分、自分の価値や存在意義に悩む時期。

一方で、何かを変えたくても、背負う荷物が増えていくにつれて、決断することの難しさも増していく。

ソニンさん

ソニンさんもすでに多くの舞台で成果を残していた頃。1年間も留学をすれば、その間、仕事はストップする。そのことに対する恐怖はなかったのだろうか。

ソニンさん

怖くなかったです。もしお仕事がなくなったら、それはそういう運命だったんだと割り切ろうと思っていたので。

それよりも、今引っかかっているしこりをそのままにしておく方がよっぽど怖かった。きっと挑戦しなかったら後で絶対に後悔する。

今あるものを守るより、ニューヨークに住みたいという直感をとる方が、その時の私には大切でした。

そうして2012年の年末、ソニンさんはニューヨークへと渡った。頼る人がいない中、一人暮らしをスタート。1年間、腰を据えて演劇を学ぶことで、得たものは多かった。

ソニンさん
ソニンさん

理論を一からきちんと学べたことは大きかったなと思います。

舞台って毎日毎日同じステージを同じクオリティーでやり続けなきゃいけないんですけど、その時の直感や感覚に頼ってやっていると、どうしてもステージごとにムラが出てしまう。

でも、それってプロフェッショナルじゃないですよね。

ソニンさん

私も留学するまではセンスや感覚でやっている部分が多くて。それを理論から学ぶことで、どんな日でもちゃんと平均点を出せる技術を身に付けられた。

やっぱり何となくでやっているとあやふやになっちゃうんですよね。でも理論を説明できるようになったことで、自分の土台を確立できるようになりました。

カッコ悪い自分を野放しにしたら、肩の力が抜けた

けれど、留学で得た「本当の収穫」は、技術の面ではなかった。留学によって最も変わったのは、「俳優・ソニン」ではなく、「人間・ソニン」の部分だ。

ソニンさん
ソニンさん

ニューヨークに行って、カッコ悪い自分を受け入れられるようになりました。

若い頃から仕事をしていたのもあるかもしれないですけど、どこか模範の対象というか、憧れられる存在でいなきゃいけないという意識が強くて。

メディアに出ている時だけじゃなくて、普段からも常にカッコよくなきゃいけないって、ずっと自分に言い聞かせていたんですね。

ソニンさん

しんどいことがあっても、ネガティブに考えちゃいけない、逃げちゃいけない、と自分で自分に制限をかけて。そういう自分を、ニューヨークに行って捨てられたんです。

多様な国籍と文化がミックスする自由の街・ニューヨーク。そこで、ソニンさんは今まで自分が当たり前のものとして考えていたことが、まったく当たり前ではなかったことに気付いた。

ソニンさん
ソニンさん

ニューヨークでは誰も人の目なんて気にせず、ありのままの自分で生きているんですよ。

地元のコンビニに行くようなカッコで電車に乗って、メイクもしないし、靴もボロボロ。だけど、ほとんどの人はそんなこと気にしない。

日本だと女性がすっぴんで外に出たらあれこれ言う人がいるけれど、こっちではそんなこと誰も言わないし、たとえ言われても『なんで化粧する必要があるの?』で終わり。

待ち合わせにも平気で遅れてくるし。最初は、そういうルーズさに疲れちゃってプンプンしたりもしたんですけど(笑)、人から何を言われても微動だにしないニューヨーカーのことを、途中からすごいなって尊敬するようになりました。

いい子でいなくちゃいけない。カッコよくなくちゃいけない。そんな呪縛から解放された時、残ったのは、肩肘張らない自分だった。

ソニンさん

やりたくないことがあったらサボってみるとか、体型を気にせず好きなものを食べてみるとか。そんなカッコ悪い自分を野放しにしてあげたら、肩の力が抜けました。

ガチガチに固めていた自分をフリーにさせることが、私がニューヨークで得た一番の変化です。

紆余曲折の過去。すべての選択が、正解だった

1年の留学を経て、ソニンさんは日本へ帰ってきた。留学前に取り巻いていたモヤモヤが解決されたかと聞くと、決してそんなことはないと言う。

ソニンさん

留学は、決して万能薬ではない。というよりも、私たちの前に立ちはだかる悩みに、特効薬なんてものはない。時には「それでいい」と割り切ることこそが、大事なのかもしれない。

ソニンさん

今まではいろいろなことを全部真面目に受け止めていたんですけど、それだと社会では生きていけない。

ここは気にしない、ここは淡々とやろう、と折り合いをつけられるようになったおかげで、気持ちが楽になりました。

実際、ニューヨークでの日々も100%ハッピーだったわけではない。オーディションに落ちて涙を流した日もあった。

ソニンさん

やりたいことが叶わなくて毎日泣いていた時期もありました。

でも、ニューヨークって本当にタフでエネルギッシュな街なんです。いつまでもウジウジしていたりボーッとしていたら、あっという間に取り残されちゃう。

何があってもいつでも笑っているニューヨーカーを見て、私も笑おうと決めました。たとえ泣いても、次の日まで持ちこさない。すごく笑うようになってから、考え方も楽観的になりました。

ソニンさん

留学から7年余り。今やミュージカルの世界で堂々たるキャリアを築くソニンさんが新たに挑むのは、ミュージカル『17 AGAIN』。

全米初登場1位を記録した大ヒット映画『17AGAIN』を世界で初めてミュージカル化する。負け組人生を歩む35歳の元バスケットボール選手が、17歳の姿に戻って人生をやり直す再生ドラマだ。

ソニンさんは、竹内涼真さん演じる主人公の妻・スカーレットを演じる。

ソニンさん

このお話は癖のあるキャラクターがたくさん出てくるんですけど、その中で私が演じるスカーレットは一番まとも。

今まではどちらかと言うと個性の強い役をいただくことが多かったので、自分にとっては新境地。すごくチャレンジになる役だと思っています。

ソニンさん

お芝居の世界では、キャラクターの立った役よりも普通の人物を演じる方が難しいと言われている。スカーレットは、キャリアを積んだソニンさんだから任せられた役だと言えそうだ。

ソニンさん

私は今37歳ですが、年相応の役をいただけた嬉しさはあります。スカーレットの悩んでいることも、現実世界の私たちが抱くものと変わらなくて、すごくナチュラル。

夫との結婚生活が破綻しかけているスカーレットの寂しさや不満をいかにリアルに出せるかが、今回の私の課題です。

ミュージカルという実力主義の世界で、自分の立ち位置を確立させたソニンさんは、傍目から見ればキャリアメイクの成功者だ。

だけど、ソニンさんは決して過去の自分を否定しない。

ソニンさん
ソニンさん

アイドル時代からいろいろなことを経験してきたので、過去の選択に後悔はないか? とよく聞かれるんですけど、私はどの時代の自分も正解だったと思っています。

確かに今の私が正解だとしたら、私が辿ってきた紆余曲折の中には間違いがあったように見えるかもしれません。

ソニンさん

だけど、その時期の私は私でちゃんと頑張っていたから、それを否定したくないんです。昔の自分を否定することは、今の自分を否定することにもなると思いますし。

どの時代の私もちゃんと愛でてあげたいな、と思います。

ソニンさん

「黒歴史」なんて言葉が当たり前のように使われる現代だけど、人の積み重ねてきたキャリアに「黒歴史」なんてものは一つもない。

そう考えたら、今こうやってモヤモヤしていることも、悩んでいることも、自分が全力で生きている証拠なのではないか、と思えてくる。

20代から30代へ。キャリアや人生のモヤモヤ期を抜けたら、ソニンさんのようにあの時の自分も本気で頑張っていたと言えるように。全力でジタバタすることが、今の自分にできることなのかもしれない。

取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴


<プロフィール>
ソニン

1983年3月10日生まれ。高知県出身。EE JUMPとしての活動を経て、2002年よりソロ活動
開始。2004年、『8人の女たち』で初舞台。2007年、『スウィーニー・トッド』でミュージカルに初出演。2012年12月より文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間アメリカ・ニューヨークに留学した後、2014年より芸能活動再開。2016年、第41回(2015年度)菊田一夫演劇賞演劇賞を受賞。2019年、第26回(2018年度)読売演劇大賞優秀女優賞を受賞
Twitter:@Sonim_official
Instagram:sonim_official
ブログ:Sonim blog
YouTube:SonimOfficialTube

舞台情報

ミュージカル『17 AGAIN』

<ストーリー>

主人公マイク(竹内涼真)はハイスクールバスケットボールのスター選手。有名大学のスカウトが見守る試合で、いつものプレイさえすれば、華々しい未来が待っているはずだった。ところが、恋人スカーレット(ソニン)の妊娠を知ったマイクは、すべてを捨てて彼女と人生を共にすることを決意する。しかしその後、35歳になった2人の結婚は破綻、会社では出世コースから外され、娘のマギー(桜井日奈子)と息子のアレックス(福澤希空)からは負け犬呼ばわり。家を出て親友ネッド(エハラマサヒロ)の家に転がり込むが、ある日不思議な現象に巻き込まれて17歳の頃の姿に戻ってしまい、子供たちと同じハイスクールに通うことに。マギーの彼氏スタン(有澤樟太郎)の存在や、息子がいじめられている光景を目の当たりにし、ショックを受ける。一方マイクの父親代わりを務めることになったネッドは、マスターソン校長(水夏希)に一目惚れしてしまい…。
果たしてマイクは、人生で一番輝いていた頃の自分を取り戻し、家族を再生することができるのか──?

<公演スケジュール>

▼東京公演
期間:2021年5月16日(日)~6月6日(日)
会場:東京建物Brillia HALL
主催:ホリプロ キョードーファクトリー

▼兵庫公演
期間:2021年6月11日(金)~13日(日)
会場名:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
主催:梅田芸術劇場 兵庫県/兵庫県立芸術文化センター

▼鳥栖公演
期間:2021年6月18日(金)〜20日(日)
会場:鳥栖市民文化会館 大ホール
主催:RKB毎日放送 インプレサリオ 鳥栖市 鳥栖市教育委員会 鳥栖市文化事業協会

▼広島公演
期間:2021年6月26日(土) 
会場:広島文化学園HBGホール 
主催:テレビ新広島

▼名古屋公演
期間:2021年6月30日(水)~7月11日(日)
会場:御園座
主催:御園座

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