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SEP/2020

ウエンツ瑛士「自分のことをずっと認められなかった」留学先で学んだ“自己否定スパイラル”を抜け出すシンプルな方法

仕事をしていれば、自分のやりたいことと、周囲から求められることのギャップに戸惑う場面は少なくない。本当はもっと別のことがやりたいのに。胸にくすぶるそんな思いと、どう折り合いをつけていけばいいのだろうか。

ウエンツ瑛士さんも、その多才さゆえに各方面から引っ張りだこ。長年にわたってバラエティー番組で活躍する他、WaTとして4年連続でNHK紅白歌合戦に出場。主演映画『ゲゲゲの鬼太郎』で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、俳優としての評価も高い。

ウエンツ瑛士

そうしたマルチな活躍の一方で、ウエンツさん自身は「核となる強みがほしい」としばしば悩みを口にしてきた。そして、「いつかイギリスのロンドンで舞台に立ちたい」という夢を叶えるべく、2018年10月、ロンドンへ留学。日本での芸能活動を休止し、1年半にわたって演技の勉強を積んだ。

やりたいことがあってもアクションを起こせない。私たちの胸に渦巻くそんなモヤモヤを吹き飛ばす一言を3Dアニメーション映画『トロールズ ミュージック☆パワー』(10月2日(金)公開)で上白石萌音さんが声を担当する女王ポピーと共に冒険を繰り広げるブランチ役を務めたウエンツさんが教えてくれた。

「戻ってこられる場所」があれば、人はもっとチャレンジできる

「自分がやりたいことと人から求められていることにギャップがあるなら、僕はやりたいことをやった方がいいと思います」

開口一番、ウエンツさんはそう答えた。舞台の勉強がしたい。そう決めて、ロンドンへと飛び立ったウエンツさんらしい回答だ。

「きっとその選択肢の前で悩んでいるときって、どちらかの道を選んだらもう戻ってこられないと思っちゃうときなんでしょうね。僕はその構造に問題がある気がしていて。何か新しいことにトライした後に、ちゃんと戻ってこられる。そういう世の中や環境ができていれば、やりたいことに挑戦できる人ってもっと増えると思うんですよ」

ウエンツ瑛士

ロンドン留学を決めた当時、ウエンツさんは多数のレギュラー番組を抱えていた。生き馬の目を抜く芸能界。その座を捨てることは、他の人にチャンスを明け渡すことでもある。

「僕もロンドンに行く前は厳しい言葉をいただくことはありました。でも実際戻ってくるとありがたいことに今日のようにお仕事をいただけました。

それは周囲の皆さんの助けのおかげでもあるんですけど、そうやって助けていただける人間関係づくりを自分がやってきたおかげだとも思っています」

実際、帰国後もウエンツさんはブランクをものともせず、数々のバラエティー番組でその変わらない“いじられキャラ”を炸裂させている。ウエンツさんが周囲から求められる人間になるためにやってきたこととは何だろうか。

ウエンツ瑛士

「求められているのか、コイツには何してもいいやって思われているのか、よく分からないところもありますけど(笑)。バラエティーに出るときは、何のために自分が呼ばれているのかということは常にイメージしてきました。

特にその重要性は復帰後より強く感じていて。今はコロナの影響もあって、収録時間が大幅に短縮されている。限られた時間の中で、いかに必要とされているものを出して結果を残せるか。その能力がより問われている気がします」

自分に求められているものを敏感に察知し、パフォーマンスとして的確にアウトプットする。その器用さに信頼が寄せられているからこそ、ウエンツさんは一時的に身を引いても、また一線に返り咲くことができた。

人から求められていることを捨ててでも、自分のやりたいことに挑戦する。そのために必要なのは、まず求められていることで確固たる足場を築くこと。そうすれば、どんなリスキーなチャレンジもギャンブルではなくなる。

留学を経て強く感じた「褒める」ことの重要性

けれど、何かあったときに助けてもらえる人間関係をつくることは、そう簡単なことではない。ウエンツさんは日々どんなふうに周りの人たちとコミュニケーションをとっているのだろうか。

ウエンツ瑛士

「これは僕自身も留学前は全然できていなかったんですけど」と前置きを入れた上で、留学経験を経て強く感じたのが、「人を褒める」ことの大切さだと言う。

「あっちで生活をしてみて、もっと相手をフランクに褒めるべきだなと思ったんです。日本は上下関係の強い国なので、年下の人間が年上の方に『良かったです』と言うと、『えらそうに何を言ってんだ』みたいな空気になりがち。だけど、本来人を褒めることって、お互いの関係がどうあれポジティブなことだから、年齢なんて関係ないですよね。

そう気付いてからは、デイリーのお仕事でも、周りの人を見ていいなと思う瞬間があったら、『それ、すごくいいですね』って言ったり、一日の終わりに『今日も素敵でした』ってお礼を伝えたり。相手の仕事に対して一つ一つ褒めることを心掛けるようになりました」

褒められて悪い気がする人はいない。そして、自分のことを褒めてくれる人に対して悪い感情を抱く人もそういないだろう。

この人と一緒の現場はいつも気持ちがいい。この人と仕事をするとハッピーな気持ちになれる。そう思ってもらえる関係性を築いていければ、自分が何かやりたいことに挑戦しようとしたとき、必ず味方になってくれるし、もしうまくいかずに舞い戻ることになっても、きっと力になってくれる。

それが、ウエンツさん流の確固たる足場づくりのポイントだ。さらに、「人を褒める」ことは自分自身にも思わぬ副作用があったのだとか。

ウエンツ瑛士

「そうやって他人を褒めていたら、いつの間にか自分のことも褒められるようになっていたんです。自分を認めて評価するのって何だかおこがましいという空気が日本にはあって、いきなり『自分を褒めろ』なんて言われても、ハードルが高いと感じる人は多いはず。

でもやっぱり自分を認めてあげることって、すごく大事。じゃないと自分が救われないですから。僕自身も帰国してから本当にいろんな人に助けてもらって。それに対しては感謝の気持ちなんですけど、全部周りの人たちのおかげですって言っているのも違うなと思って。

こんなふうにいろんな人が求めてくれるのは僕だからなんだって。僕じゃなきゃ皆もやってくれなかったんだよって褒めてあげないと、いつまで経っても自分は大したことないって気持ちから抜け出せなくなる。

僕みたいに自分自身を評価するのが苦手な人は、まず他人を褒めてみてください。そうやって人が喜んでいるのを見ているうちに自信もついて、少しずつ自分のことも褒めてあげられるようになると思います」

たとえ同じ場所に帰ってきても、「元に戻った」わけじゃない

留学中、ロンドンの劇場で二人芝居を打つなど、真摯に演技に取り組んだウエンツさん。その成果を示すのが、10月2日(金)公開の3Dアニメーション映画『トロールズ ミュージック☆パワー』だ。ミュージック・アドベンチャーとなる本作で、ウエンツさんは主人公・ポピーの幼なじみであるブランチの吹き替えを担当。ロンドンで鍛えた歌声も披露している。

ウエンツ瑛士

「吹き替えは何度かやらせていただいたことがあるんですけど、歌はまた別だなと思いました。普通、ミュージカルで歌うときは、とにかくクセを取るんですね。しゃくりやビブラートを入れず、まっさらな状態をつくるのがミュージカルの基本。

でも今回は(オリジナルの声を担当する)ジャスティン・ティンバーレイクが歌手ということもあって、節がすごくついていて。僕が何年もかけてレッスンをして取り除いたものを乗せなくちゃいけなかったので、最初のうちは『あれ? 節ってどうやって付けてたっけ?』と焦りました(笑)」

ウエンツさんにとって、本作は留学後初の映画。やりたいことを選び、異国の地で研鑽を積んできたウエンツさんのこれからを占う試金石となる1本だ。

ウエンツ瑛士

「そもそもやりたいことをやって、そのあと同じ場所に帰ってきたとしても、僕はそれは『戻ってきた』わけじゃないと思っているんです。たとえ周りからは『戻ってきた』ように見えても、新しい経験を積んで、進化をして、今までとは違う自分になって、また前に進んでいっているわけだから、決して元に戻ったわけじゃない。

今回のお仕事も、留学があったからいただけたものだと思っています。レコーディングマイクの前で歌うこと自体、僕にとってはWaT以来約10年ぶり。また一ついい勉強をさせてもらいました」

そう語るウエンツさんの表情は、まるで10代の少年のように瑞々しかった。守りに入らず、いつだって挑戦し続ける人の顔だ。

仕事は人生の一つのツール。そう思ったら、何でもやれる

最後に、そんなウエンツさんに留学という勇気ある決断をくだす上で、背中を押したものは何だったのか聞いてみた。

ウエンツ瑛士

「自分が芸能人でなくなることへの恐怖はありました。人から『最近テレビで見ないね』って言われるのって結構刺さるんですよ。子どもの頃からずっとこの世界にいたので、仕事がなくなるということは自分が終わっていく感覚だったんです。

でも、そんな時に地元の友達と遊んで。彼らにそんな話をしたら、『もし仕事がなくなっても、別に何にも変わらないじゃん?』『うち、中途募集してるから紹介するよ』って言ってくれたんです。その言葉を聞いて、失うことなんか気にせず、やりたいことをやろうって決めました」

芸能人・ウエンツ瑛士ではなく、ありのままの自分を受け入れてくれる仲間がいる。その気付きが、ウエンツさんの勇気となった。

「本来、お金を稼ぐ必要さえなければ、仕事ってしなくてもいいものなんですよね。仕事がなくても、僕自身は変わらない。仕事は自分の人生の『一つのツール』だと思えたことで、何でもやれる気になれたんです」

ウエンツ瑛士
ジャケット ¥48,000/EZUMI (RI Desigh)

今の仕事は自分の一部であって全部じゃない。だからたとえ何か選択をしても、それですべてが失われることなんてない。そう考えたら、確かに恐れることなんてない気がしてきた。

私たちは、もっとやりたいように生きればいい。自分の人生は、自分でつくり上げていくものなのだから。


ウエンツ瑛士(うえんつ・えいじ)
1985年10月8日生まれ。東京都出身。4歳でモデルデビュー。9歳で劇団四季のミュージカル『美女と野獣』のチップ役で役者デビュー。『火曜サプライズ』(日本テレビ系)をはじめ数々のバラエティ番組で活躍する一方、『天才執事 ジーヴス』、『スコット&ゼルダ』、『紳士のための愛と殺人の手引き』、『リトル・ナイト・ミュージック』などミュージカル俳優としても高い評価を得ている。

取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太 スタイリスト:伊達めぐみ(UM) ヘアメイク:輝・ナディア(Three PEACE)

3Dアニメーション映画『トロールズ ミュージック☆パワー』作品情報

監督:ウォルト・ドーン  
エグゼクティブ・ミュージック・プロデューサー:ジャスティン・ティンバーレイク 
声の出演:アナ・ケンドリック、ジャスティン・ティンバーレイク
吹き替えキャスト:上白石萌音、ウエンツ瑛士、仲里依紗、ミキ・昴生、ミキ・‎亜生ほか 
原題:TROLLS WORLD TOUR
配給:東宝東和、ギャガ 
◆公式HP:https://gaga.ne.jp/trolls/ 
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