もう家に収まらない! 日本一のセーラームーングッズコレクター・小川満鈴の“美少女戦士への愛”に溺れる人生

<特集>#愛を語ろう

「愛」って恋愛だけじゃない――。この特集では、好きで好きでたまらないものがある人たちに、熱烈な“愛”を存分に語ってもらいます。自分の「好き」を深めるヒントや、「好き」を見つけるヒントをもらっちゃおう!

「月にかわっておしおきよ!」

幼少期、このセリフを声高らかに口にしながらポーズを決めたことがある20~30代女性は少なくないのでは?

雑誌『なかよし』(講談社)で漫画『美少女戦士セーラームーン(以下、セーラームーン)』の連載が開始されたのは、1992年のこと。その後、アニメ、ゲーム、ミュージカルとさまざまなメディアに展開され、最近では25年ぶりの劇場版最新作『美少女戦士セーラームーンEternal 前編』が公開となったばかり。2月11日にはその後編公開が控えるなど、いまだその人気は衰えを知らない。

国内外で世代問わず根強いファンを持つセーラームーンだが、「私こそ、日本一のファン」と、名乗りをあげる女性がいる。フリーライターとして活動する小川満鈴さん(27)だ。

小川満鈴

小川満鈴(おがわみな)さん

子役として活躍した後、現在はフリーライターとして活動中。日本一のセーラームーングッズコレクターを自称し、収集したグッズを紹介するコレクションサイトも運営している
Twitter:@ogawamina
Instagram:ogawa_mina03

これまでに数えきれないほどのセーラームーングッズを集めてきたという小川さん。「セーラームーンさえあれば、他にはもう何もいらない」とまで語る小川さんの愛の根源は、一体どこにあるのだろうか。小川さんが思うセーラームーンの魅力を、存分に語ってもらった。

部屋を埋め尽くすセーラームーングッズ
コレクションにかけた費用は3千万円以上

編集部

小川さんは熱心なセーラームーングッズコレクターだと伺いました。いつ頃から集め始めたのでしょうか?

小川さん

セーラームーンを好きになってからずっとなので、子どもの頃からですね。幼稚園生の時には、すでにセーラームーングッズに囲まれていました。

親も「セーラームーンの物を与えておけば大人しくする」と思っていたみたいで(笑)

小川さん

小学生になってからも、筆箱や下敷きなどの文房具は全部セーラームーンで揃えていて、授業中も休み時間もずっと眺めていました。

セーラームーンのグッズを見ているだけで、幸せな気分になれたんです。

セーラームーン

小川さんのお気に入り、「不思議なルナPボール」。後ろがパカッと開く。

編集部

グッズを買うときに、何か基準にしていることはありますか?

小川さん

強いていうなら、アニメ版の絵がしっかり載っているかどうかですね。個人的にはアニメの絵柄が好きなので、アニメシリーズの世界観が表現されているグッズを中心に集めてきました。

小川さん

でも、欲しいと思えるセーラームーングッズは、もうほとんど集めてしまったんです。オークションサイトなどに出品されているものを見ても、大体持っているな、って。

セーラームーングッズ

セーラームーングッズがぎっしり詰まった自宅の一室。

編集部

世に出ているものは、ほぼすべて持っていると。ちなみに、これまでどれくらいのグッズを集めてきたのでしょうか?

小川さん

コレクションしたアイテムの数はもう把握できていないのですが、金額でいうと総額3千万円くらいでしょうか?

おもちゃなどは、「使う用」「観賞用」「保存用」で3つは手元に置いておくようにしています。やっぱり直接触りたいけど、ボロボロになってしまったら悲しいので。

編集部

すごい……! それだけの数のアイテムを保管するのが大変じゃないですか?

小川さん

そうなんですよね。数年前に結婚して引っ越したので、グッズが新居に入りきらないんです。なので今は自宅、実家、別荘に分けて保管してます。

特に思い入れのあるものを中心に、半分くらいを今自分が住んでいる家に置いています。お気に入りが実家にあると、しょっちゅう帰っちゃうだろうな、と思って(笑)

編集部

小川さんのコレクションについて、パートナーの方の反応は?

小川さん

「すごいね」っていう感じです(笑)。あまり干渉せず、良い意味で無関心でいてくれるのでありがたいですね。

最近では「ちょっとセーラームーン見たくなってきたから、アニメつけて」って言ってきたりするので、一緒にDVDを見ることもありますよ。

小川さん

こういう話をすると、いつも「理解のある夫でいいね」と言われるのですが、私にとってはそれが疑問で仕方がありません。だって、自分がこれだけ愛しているものを否定されたり、好きなことを隠したりしなきゃいけない状況って、辛くないですか?

私にとって、セーラームーンはなくてはならない存在。好きなことを制限されてまで、その人と一緒いるのが幸せなのかな、って思うんです。

セーラーネプチューンが通う「無限学園」に入学するため、猛勉強した中学生時代

編集部

そもそも、小川さんが初めてセーラームーンと出会ったのはいつ頃だったのでしょうか?

小川さん

物心ついた時には、すでにそばにセーラームーンがあったんです。幼稚園生になる前には出会っていたと思います。

もはや好きになった、というより、セーラームーンと一緒に育ってきた、と言っても過言ではありません。『美少女戦士セーラームーンS』が一番好きで、再放送や録画をずーっと見ていました。

小川満鈴さん
編集部

セーラー戦士の中で特に好きなキャラクターは?

小川さん

『美少女戦士セーラームーンS』から登場したセーラーネプチューンです。ネプチューンのキャラクターボイスを担当されていた声優の勝生真沙子さんのことも大好きですね。

小川さん

ただ、高校生になる前までは「声優」として捉えていたというよりも、本当に「ネプチューンが存在する」と思っていたんです。セーラームーンのあの世界は実在するに違いない、って。

なので、彼女たちに会うために探しに行ったりもしたんですよ。

編集部

探しに行く、というと?

小川さん

セーラームーンの舞台となっている港区の麻布十番に行って、街中を歩き回っていました。劇中に登場する「火川神社」も、モデルとなる神社が実在しますしね。

セーラームーン

小川さんのInstagramより。

小川さん

あと、アニメの中でネプチューンたちは「無限学園」という学園の高等部に通っていたんですけど、私もそこに入学したくてたまらなくて……。成績優秀な学生しか入学できない設定だったので、中学生の頃は、無限学園受験に備えて猛勉強した記憶があります。

編集部

受験勉強まで! それはすごい(笑)

小川さん

はい。中学生になってまで無限学園が実在すると思い込んでいるなんて、呆れちゃいますよね(笑)

でも、当時は本気だったんです。今ほどインターネットが普及していたわけでもないし、「皆が知らないだけで、セーラームーンの世界はどこかに必ずあるんだ」と信じていました。

小川さん

もちろん、成長するにつれて現実との区別はちゃんとつけなきゃ、と思うようになりました。でも、今も心のどこかで「セーラー戦士たちは、やっぱりこの世に実在しているんじゃないか」と思っている私もいるんですよね。

それくらい、アニメで描かれているキャラクターや街並みがリアルで。見ているうちに「いつか皆に会えるはず!」と本気で思えてくるんです。

セーラームーングッズ

小川さんのコレクションより。画面内、向かって一番右がセーラーネプチューン(海王みちる)。

編集部

大人になってからも、セーラームーンを見ている時の胸の高鳴りは変わらないということですね。

小川さん

変わらないですね。もう彼女たちよりも年上になりましたが、作品を見ている時は、私の心は当時のまま。今でも、セーラー戦士たちが“お姉さん”に見えるんです。

いつ見てもみちるお姉さま(セーラーネプチューン)は美しいし、私の憧れの存在です。

子どもにとっては憧れで、大人にとってはリアリティーがある世界観

編集部

小川さんはどうしてそこまでセーラームーンに惹かれたのでしょうか?

小川さん

まずは、ネプチューンというキャラクターと出会ったことが大きかったです。

当時の私から見たネプチューンは、とても大人っぽくて美しくて。でも、憧れる一方で、どこか自分に似たものを感じていたんです。

友達になりたいのに人とうまく接することができなかったり、そのせいで勘違いをされて陰口を言われてしまったり……。人間関係に不器用なところが私にそっくりで、いつか会ってお話ししてみたい、と思っていました。

編集部

“憧れ”と“共感”が両方詰まっているキャラクターだったんですね。

小川さん

はい。ネプチューンをはじめ、セーラー戦士たちの強さにはとても憧れていました。

仲間のためだったら、どんな強い敵にだって立ち向かう。当時の私は人間関係を築くことに苦手意識があったので、セーラー戦士たちの仲間を大切にする姿が素敵だな、と思っていました。

セーラームーン

小川さんのInstagramより。

編集部

1990年代は、セーラームーンの他にもたくさんの名作アニメが放送されていましたよね。小川さんにとって、セーラームーンのどのようなところが特別だったのでしょうか?

小川さん

今思うと、世界観が大人びていたところが良かったのかな、と思います。

例えば、ウラネプ(セーラーウラヌスとセーラーネプチューンのペアの通称)についても、幼い頃は単純に「仲の良いパートナーなんだな」と思いつつも、少しどきどきしたりして。今見ると、ジェンダーに関する知識が深まっているので、また違った見方ができるんですよ。

大人が見ても面白い、と思えるところが、セーラームーンのアニメの魅力ですね。

コロナ禍で実感した、好きなものがあることの強さ

編集部

セーラームーンを好きでいてよかった、と思うことはありますか?

小川さん

「好きなものがある」って最大の癒しだと思うんです。最近はコロナの影響で、家で過ごすことにストレスを感じている人も多いですよね。でも、私は真逆。自宅で大好きなセーラームーンの世界に浸っていられるので、幸せなんです。

毎日セーラームーンに触れているから、最近は頭の中が1990年代にタイムスリップしていて、ちょっと自分が心配になるくらい(笑)。それくらい、私の日常はセーラームーンに支えられているんだなと思います。

小川満鈴さん

空に浮かぶのはセーラームーンの凧。こちらも小川さんのコレクションの一つ。

小川さん

辛い時、家族や友人、恋人など、「人」を心の支えにする人も多いですが、人に依存するのって実は危険だと思っていて。人は環境によって変わっていくし、あくまでも人は人です。

私の場合、その対象がセーラームーンなので、変わらずにずっとそこにある。なので、心がほっと落ち着くんです。そんな大切なもの、信じられるものを、みんなが見つけられたらいいなと思います。

編集部

小川さんにとってのセーラームーンのような大切なものを見つけるためには、どのようなことを心がければいいでしょうか?

小川さん

やっぱり「人に依存しないこと」です。人に依存してしまうと、その“人”の影響を受けて自分が流されやすくなってしまう。人に合わせてばかりいては、心から好きなものやことは見つけられないと思うのです。

編集部

なるほど。人に合わせるのではなく、自分らしくあることが大切なのですね。

小川さん

そうですね。他人の視線を気にせず、「自分は自分」という気持ちでいられたらいいと思いますよ。

編集部

最後に、今後の夢を聞かせてください。

小川さん

今はグッズを3か所に分けて保管していますが、いずれはまとめて置けるような広いお家に住みたいです。友達が来たときに「これがセーラームーングッズのお部屋だよ」って、見せられるようになったら幸せですね。

小川さん

たまに「そんなにたくさんあるなら売ったら?」って言われるんですけど、売るなんてとんでもない! セーラームーングッズは、何があっても絶対に手放さない、私の人生の宝物ですから。

取材・文/太田 冴