【西野七瀬・千葉雄大インタビュー】突然の妊娠発覚、家庭かキャリアか――夫婦役を演じて考えた「子育てと仕事」のこと

国際女性デー

結婚・妊娠・出産・育児・介護。さまざまなライフイベントの影響を受けやすい女性のキャリア。

第一子の平均出産年齢は30.7歳という現代社会で、仕事を続けることと母になることの間で揺れ惑う女性は少なくない。 そんな「仕事と家庭の両立」にまつわる葛藤と格闘を描いたのが、ドラマ『ホットママ』だ。

西野七瀬・千葉雄大

夢だったファッションディレクターの職に就き、新規事業のメンバーにも選ばれ、今は仕事一筋と考えていた矢先に、妊娠が発覚。

産むか、産まないか――。重大な選択と向き合いながら、自分らしい生き方を模索していくヒロインの姿が、ポップかつリアルに描かれている。

ヒロイン・松浦夏希を演じるのは、西野七瀬さん。夏希の大学時代の同級生・三村元哉には千葉雄大さんが扮する。現代の働く女性を取り巻く妊娠や育児というテーマに二人はどんなことを感じたのだろうか。

誰もが「今日は休みます」を普通に言える世界になれば

西野七瀬・千葉雄大

積み上げてきたキャリアが、出産・育児によって途切れてしまうことに対し、不安を感じる女性は多いのではないだろうか。

子どもを産んでも仕事を続けたい女性たちへの支援がまだまだ行き届いていないのが日本の現状。西野さんは 今回『ホットママ』で夏希を演じたことを通して、その現実に改めて向き合った。

西野さん

私は結婚したいとか子どもがほしいってあまり強く思ってこなかったタイプで。

今回、この作品に関わったことで、初めて母になること、子育てと仕事を両立することについて考えました。

ドラマの中では、ワーキングマザーがぶつかる壁が赤裸々に描かれている。

西野七瀬・千葉雄大
西野さん

子どもができると、夜あまり寝られないというのは聞いたことがあったんですけど、ドラマでもそんな場面があって。

私は人より睡眠時間が必要なタイプなので、これは大変だと。

他にも、早く仕事に復帰したいのに、なかなか保育園が見つからないということも。ニュースでも目にしていたことが描かれていて。

西野さん

私はあくまで演じただけで、当事者として何か体験したわけではないので大きなことは言えないんですけど、本当に子育てというのは大変だと感じました。

そして、仕事と育児を両立していらっしゃる方たちはすごいなと尊敬の気持ちが湧きましたね。

無事に保育園が見つかって職場復帰を果たしても、突然子どもが熱を出したり、思うようにいかないのが子育ての難しさ。千葉さんもまだまだ女性側に対して負担の大きい現状に疑問を感じている。

千葉さん

「子どもが病気だから休みます」とか「早退します」とか、別に悪いことではないのに、ちょっと気を使うところってまだまだあると思うんですね。

西野七瀬・千葉雄大

そう慮る一方で、千葉さんはサポートを求められる周りの気持ちにも優しい目線を向ける。

千葉さん

お子さんを育てる人たちが休んだり早退することで、独身の方たちが結局全部代わりにやらなくちゃいけないことになる。

そのことに対して「何でこっちばっかり」という気持ちになるのも分かります。

千葉さん

だから、どっちが悪いということではなくて、難しいですけど、この現状を変えるには、まず社会が変わるしかない。

例えば、子育てに限らず、何かあったときは誰でも「今日は休みます」「今日は帰ります」と普通に言える世界に早くなったらいいなと思います。

赤ちゃんとの撮影。初めて「子どもが欲しい」と思った

西野七瀬・千葉雄大

劇中では、二人が子育てに奮闘する場面も描かれる。

西野さん

撮影中にも赤ちゃんがよく泣いて大変でした。

赤ちゃんとどう接したらいいのか分からなくて、世の中の新米ママ、パパたちもこんな感じなのかなって思ったり。

ほんの少しだけですけど、子育ての苦労が分かった気がします。

千葉さん

最初は何を考えているのか分からなかったんですけど、何が好きか、何が嫌か、そういうことが少しずつ分かるようになってきて。

毎日一緒となるとそうはいかないと思うんですけど、良いとこ取りをさせてもらえたおかげで、初めて子どもが欲しいなと思いました。

西野さん

千葉さんはすごく子煩悩になりそう。撮影中も赤ちゃんをあやすのが上手だったんですよ。

千葉さん

泣いている赤ちゃんに僕が何かしたら泣き止んでくれたことが何度か続いて。

その後、また赤ちゃんがグズり始めたから、スタッフさんに「出番です!」って呼ばれるようになったんですよ。

西野さん

頼りにされていましたよね!

千葉さん

「千葉くん出番だよ!」って呼ばれてあやしに行ったら、そういう時に限って全然泣き止んでくれなかったりして。

ちょっと恥ずかしい思いもしましたね(笑)

西野七瀬・千葉雄大

今や性別を問わず、誰もが生涯働き続けることが前提の時代。西野さん、千葉さんは、今後の理想のワークライフバランスをどんな風に考えているのだろうか。

西野七瀬・千葉雄大
西野さん

結婚や出産はまだ予定もなくて、この先のことは全然分からないですけど、仕事は大好きなのでずっと続けたいですね。

理想を言えば、仕事と家庭で50:50が一番いいバランス。なかなかそうはいかないと思うんですけど。

千葉さん

僕は独身ですけど、いつか子どもができたりしたら、「もっと一緒にいたい」と思う日が来るのかもしれない。

だから、理想のワークライフバランスはその時々で変わっていくんじゃないかな、と思います。

でも、「これがいいな」と思う働き方を実現していけるように、しっかり今のうちに頑張っておかないとなっていうのが今の気持ちですね。

男だからこう、女だからこう、なんてものはない

また、本作への出演を通して、西野さんと千葉さんが感じたのは、属性や立場が違う人同士がお互いを理解し、尊重し合うことの大切さだ。

西野七瀬・千葉雄大
西野さん

子どもがいる人といない人とで、考え方が違ってくるのは仕方ないというか。

そこでお互いの間に埋まらないものが出てしまうのは、ごく普通のことだと思うんですよね。

ただ、そのときにお互いが相手に対して嫌な感情を持ってしまうのはすごく悲しいなって。

西野さん

相手のことは理解し切れるものではないけれど、ほんの少しお互いの事情を知るだけで分かち合えるものはあると思うんです。

私自身、このドラマに参加したことで、初めて出産や育児の大変さを知ることができたし、考えることも増えた。

そんな風に、このドラマが相手のことを知るきっかけになったらうれしいです。

西野七瀬・千葉雄大
千葉さん

家庭内での男女の役割もそうですね。

僕が演じた元哉のように、男性が主夫になる選択をしたっていいと思うんです。実際、そうしていらっしゃる方もいるだろうし。

今回、このお仕事を受けさせていただいたのも、そういう選択肢を持つことに共感したからでした。

千葉さん

僕自身、小さい頃から「男の子はこうすべき」「女の子はこれをしちゃダメ」みたいなことにずっと疑問を感じていて。

女の子と一緒に遊ぶことが多かったから、男子は少年漫画を読んでなきゃいけないみたいな空気もよく分からなかったんです。

男だからこう、女だからこう、なんてものはないと思う。もっとみんなそれぞれ自分の好きにしたらいいんじゃないかなと思います。

西野さんは26歳。千葉さんは32歳。自分らしい生き方を模索している最中だ。

西野七瀬・千葉雄大
西野さん

私が人生で大切だと思うのは、常に自分が楽しく過ごせるかどうか。仕事は好きだから頑張るし、手を抜かずにやっていきたい。

でも、仕事だけの人生もどうかな、っていう気持ちはあるので。できることはいろいろ経験して、ちゃんと息抜きもして、人生を豊かにしていければと思うんです。

千葉さん

30歳を過ぎた頃から、「周りはみんな結婚してますけど、結婚願望とかありますか?」って聞かれるようになったんですが、「する時が来たらする」としか言えないよなぁ、って(笑)

『ホットママ』は出産や育児の話ですけど、結婚や出産をせずに生きることを選ぶのだって、自分で決めたことであれば、それはそれで幸せですよね。

千葉さん

一人だからって可哀相ということは絶対ない。自分が人生を楽しめれば、それが一番だから。

人の声に振り回されず、生きたいように生きればいいのかなと思いますね。

西野七瀬・千葉雄大

結婚のかたちも、子育てのかたちも、十人十色。それぞれのやり方があるように、人生にこれが正解なんてものはない。

大人としての責任を持ってさえいれば、あとは好きに、自由に生きればいい。そうやって自分も他人も尊重することが、すべての人たちが生きやすい社会をつくることにつながっていく。


西野七瀬(にしの・ななせ)
1994年5月25日生まれ。大阪府出身。2011年、乃木坂46の1期生オーディションに合格し、12年に1stシングル『ぐるぐるカーテン』でCDデビュー。14年、8thシングル『気づいたら片想い』で初のセンターに抜擢。以降、数多くの曲でセンターを務める。18年をもってグループを卒業(※卒業コンサートは19年2月)。以降、『あなたの番です』(日本テレビ系)、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)などに出演。2021年には『孤狼の血 LEVEL2』(8月20日公開)、『鳩の撃退法』(8月27日公開)など映画作品の公開も控えている。女優として活躍する他、『ライオンのグータッチ』(フジテレビ系)、『グータンヌーボ2』(関西テレビ・フジテレビ系)でMCを務める

千葉雄大(ちば・ゆうだい)
1989年3月9日生まれ。宮城県出身。2010年、『天装戦隊ゴセイジャー』(テレビ朝日系)のゴセイレッド/アラタ役で俳優デビュー。以降、数々のテレビドラマ、映画、舞台に出演。近年の主な作品に、『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日系)、『いいね!光源氏くん』(NHK)、『ダブルブッキング』(日本テレビ系)、『40万キロかなたの恋』(テレビ東京系)など。21年はミュージカル『ポーの一族』でアラン役を演じ、話題を集めた。


取材・文/横川良明 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)西野さん:スタイリスト/鬼束 香奈子  ヘアメイク/森柳 伊知 千葉さん:スタイリスト/寒河江 健 ヘアメイク/堤 紗也香

作品情報

Amazon プライム・ビデオ『ホットママ』
配信開始日:3 月 19 日(金)より毎週金曜日夜20:00~3話ずつ公開(全12話)
西野七瀬 千葉雄大
味方良介 横田真悠/ 萩原利久/ 清水くるみ
矢野浩司 中丸新将/ 板谷由夏
原作「辣媽正伝」(新麗伝媒集団有限公司)
監督 宮脇亮 北川瞳 脚本 横田理恵 鹿目けい子 髙石明彦 音楽 福廣秀一朗 平野真奈
宣伝 ファントム・フィルム 制作プロダクション The icon 制作 ファントム・フィルム
製作著作 「ホットママ」製作委員会