親からの“らしさ”という呪縛。自分軸の人生を生きるために必要なこと【連載:ITをカラフルにする現場から】

Waffle×Woman type
ITをカラフルにする現場から

現在、日本のIT業界における女性技術者の割合は15%以下。日本で理系分野の学部に所属する男女比は、OECDワースト1位。この、テクノロジー分野のジェンダーギャップを解消するには…?一般社団法人Waffleの二人が「ITと女子」を取り巻く問題や、課題解決に向けての取り組みを発信していきます。

こんにちは。一般社団法人Waffleの田中沙弥果です。私たちはIT分野のジェンダーギャップを解消するために女子中高生向けのIT教育と政策提言を実施している非営利法人です。

今回は、私の過去の経験から、女性が「自分らしい」生き方を実現するために必要なことについて、私なりの考えをお伝えしたいと思います。

「らしさ」という呪縛

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普段、女子中高生たちにIT教育プログラムを提供していると、さまざまな「らしさ」という呪縛があるなと感じることがあります。

「女の子なんだから文系でいい」など、性別役割分業の考え方によって、自分の興味・関心よりも、社会的な理想に当てはめるようなメッセージを発してしまっている大人もいるでしょう。

特に、中高生の段階は、文理や進路という将来の大きな方向性を選択する時期でもあります。平成30年度内閣府委託調査“働く上でのイメージや進路選択において影響をうけたもの”によると、女性の場合、中高生の時期及び大学等進学時に最も影響を受けるのは母親という結果が出ています。

実際にWaffleの活動に参加する女子高生から「データサイエンティストに興味があるのに、親から勧められている医療系の学部に行かないと学費を出してもらえない」という相談を受けたこともあります。

思い返せば、私も女子高生時代、父親よりも母親のたった一言にとても影響されてきました。

私はもともと「他人軸」で生きてきた

今でこそ私は一般社団法人Waffleを立ち上げ、自分らしく生きていると自負していますが、20代前半までは他人軸で生きてきた人間です。

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例えば、高校受験では母親からの「●●高校は進学校で自由な校風でいいらしいよ」という一言でその学校を第一志望校と決めたり、高校進学した後の部活も、中学生の頃から仲が良かった友達に「一緒の部活に入ろう!」と言われ、あまり興味のなかったバトントワリング部に入部したりしました(部活に関しては、その友達はバレー部に入部していて、私の聞き間違いだったことが後ほど判明しました(笑))。

その他にも、母親に「高収入で食いっぱぐれなくて、ライフイベントがあっても職場復帰しやすい薬剤師になったら?」と言われ、薬剤師を目指した過去もあります。

まるで自分の人生は他人が決めているといっても過言ではないほどの10代でしたが、私が徐々に自分軸で生きられるようになったのは、就職活動の時期でした。

自分らしく選択をしていくトレーニングをすることで、自分らしさに磨きをかける

とはいえ、私も新卒の就職時には、大手企業あるいは有名企業というような他人から見てすごいと思う会社ばかりを受けていました。

結局、そのような視点では就職活動もうまくいかず、最初に就職した会社もすぐに退職。違和感を抱きながらも自分探しをして、いろいろな職業を体験してみた時期もあります。

「果たして、私はこの業界、職種で自分の価値を最大限発揮し続けらるのか?」と常に自分に問い掛けていましたが、答えはずっと「否」でした。

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そんな時に、自分が理想とする会社・職種に巡り会えないのであれば、起業しかないと考え、さまざまなセミナーに参加したり、企業の代表に会ったりしました。その過程で、自分のアイデアをピッチするイベントに登壇し、自分の中でエネルギーが湧き上がるのを感じて「これだ!」と実感する瞬間があったのです。

それから起業家として生きるために、試行錯誤の日々を過ごしてきました。

そもそも起業家が周りに誰一人いなかったので、「起業 大阪 イベント」「起業 大阪 セミナー」などとネットで検索し、片っぱしから足を運び多くの方々とお会いしました。当時は名刺に「代表取締役」と書いているだけで「すごい……尊敬……」と思っていたほど。そして「どうやって起業しましたか? なぜ起業したんですか? 最初はどうやって稼ぎましたか? 今はどうやって稼いでますか?」と聞いて回ったのです。

その中でもらった「起業したいならシリコンバレーは1回見てみたほうがいい」「スタートアップで働いたほうがいい」というアドバイスも、どんどん実行に移しました。やがて、アドバイスをくれる方はたくさんいらっしゃるけれど、「誰に継続的にアドバイスをもらうか」が成功を大きく左右すると実感するように。

そこからは、上場企業の社長の方々がメンターのアクセラレータに参加。その後はさらに実経験を積むために、ラクスル共同創業者でNPO法人みんなのコードを起業したばかりの利根川裕太氏の下で修行しました。

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このように、たくさん自分で聞いて見て回ってを繰り返していくうちに、あらゆる情報から自分に合う選択ができるようになってきたのです。

今はまだ、Waffleを創業して1年半足らずですが、日本政府主催のジャパンSDGsアワードでSDGsパートナーシップ賞を受賞することもできました。

私が自分の経験から学んだことは、社会からの「らしさ」や他人軸から脱却するためには、筋肉をつけるのと同じで、毎日自分軸で意思決定をするトレーニングが必要であることです。

さらに、意思決定をする中で決めた事柄に対して、自分の心がどう思うかをモニタリングしていくことで、自分の「好き」「心地よいこと」がだんだん研ぎ澄まされて、自分軸、自分らしさが分かってくるようになります。

これを読んだ方々が、少しでも自分らしい人生を歩めるよう心から願っています。

田中沙弥果さん

【この記事を書いた人】
Waffle Co-Founder & CEO
田中沙弥果 Sayaka Ivy Tanaka

1991年大阪府生まれ。小中高は田舎の公立・共学に通う。2017年NPO法人みんなのコード入職。文部科学省後援事業に従事したほか、全国20都市以上の教育委員会と連携し、学校の先生方がプログラミング教育を授業で実施するための事業を推進。2019年にIT分野のジェンダーギャップを解消するべく一般社団法人Waffleを設立。2020年には日本政府主催の国際女性会議WAW!2020にユース代表として選出。SDGs Youth Summit 2020 若者活動家 選出。情報経営イノベーション専門職大学 客員教員。2020年Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞
@ivy_sayaka