「自信が持てる接客」を求めて転職。湘南美容クリニックの美容カウンセラーになって初めて知った“接客業の醍醐味”
この連載では、さまざまな働く女性たちが「なぜ今の仕事を選んだのか」にフォーカス。自分と同世代の女性たちの仕事観をのぞき、自分の目指すキャリアを明確にするための材料にしてみよう!
長く働く上で、大切なことは何だろうか。会社が用意してくれる待遇や福利厚生の充実を重視する人も多いが、「働きがい」が得られるかどうかはまた別の話だ。
では、働きがいはどんなところから生まれるのか。湘南美容クリニックで顧客へのカウンセリング対応を行う美容カウンセラーとして活躍している松久さんの転職ヒストリーから紹介したい。

湘南美容クリニック
美容カウンセラー
松久さん
服飾系の大学を卒業後、着物の販売スタッフとして接客・販売に従事。約5年勤めた後、湘南美容クリニックの美容カウンセラーに転職。2021年7月からチーフに昇格し、顧客対応に加えて業績管理やSNS運用なども手掛けている
前職では着物の販売を行っていたという松久さんは「当時から、接客の仕事は好きだった」と振り返る。
ではなぜ、松久さんは現在「美容カウンセラー」という立場で接客の仕事に関わるようになったのか。今の仕事、職場を選んだ転職軸を聞いた。
接客の仕事が好きだからこそ、「疲弊した自分」でいるのはイヤだった
松久さんと出会ってすぐに、「なんて気持ちの良い人なのだろう」と感じた。丁寧なしぐさや言葉遣いから、接客経験の厚さがにじみ出ている。
それもそのはず。前職では自分よりもずっと年上の顧客を相手に、着物という高額商品の販売を手掛けてきたのだ。
「私よりも着物に詳しいお客さまがたくさんいらっしゃいます。お客さまに私自身を認めてもらいたい、安心してお店に通ってもらいたいという思いで、毎日必死でした」
平日は朝7時前から夜9時過ぎまでの勤務が当たり前。休日出勤も日常茶飯事だった。そんな忙しい日々の中でも、商品を売る楽しさや顧客に信頼してもらう喜びを存分に感じていたと松久さんは語る。
しかし、接客という仕事のことも、働くことそのものも好きだからこそ「このままでいいのだろうか?」と考えずにはいられなかった。

「売り上げ目標を達成するために常連のお客さまにお付き合いで購入いただくこともあって、『これは正しい接客なのだろうか?』と疑問に感じる場面が多かったんです。過労がたたって体調を崩すことも増え、続けていけないかも、と考えるようになりました」
このままでは、肉体的にも、精神的にも持ちそうにない……。そんな不安が日増しに膨らんでいき、転職を決意した。
大好きな接客の仕事は諦めたくない。そのためにも、自分が納得して働き続けられる職場を探そう。
決意のもと、松久さんの転職活動がスタート。数多くある企業の中で湘南美容クリニックが目に留まったのは、業績や成長率の高さだけが理由ではなかったという。
「企業選びで大切にしていたのは、本当にお客さまのためになる商品やサービスをご紹介するスタンスであることと、お客さまはもちろんのこと、働きながら自分自身も充実感を得られる環境があること。
その中で湘南美容クリニックに心引かれた理由は、『究極の三方良しを実現する』という経営理念です」

湘南美容クリニックに興味を持った松久さんが最初にしたことは、SBCメディカルグループの代表である相川佳之氏の著書のチェックだ。「経営者の考えが、会社全体のカルチャーに直結する」と前職時代に感じたからこその行動だった。
「特に共感したのは、お客さまだけでなく、働くスタッフ、さらには社会全体にとって良い影響を与えられる企業を目指すという考え。
お客さまに愛していただける商品やサービスを長く提供していくためには、企業そのものが続いていかなければなりません。そのためにも業界全体をリードするような持続可能性のある企業で働きたいと思っていたので、理想的だと感じました」
「三方良し」の経営理念への共感がもたらす、自信が持てる接客
その後、松久さんは着物の販売職から美容カウンセラーへの転身を果たした。美容カウンセラーとは、顧客と医師の間に立ち、料金や施術内容、施術後のケアなどについて提案し、安心して施術を受けてもらうためのサポートをするポジションだ。
前職と同じ接客の仕事とはいえ、ファッション業界と美容業界では異なることも多いはず。迷いはなかったのだろうか?
「実は私、学生時代からずっと外見にコンプレックスを抱えていて。でも、痩せたり、メイクを覚えたりしていく中で、少しずつ人生が楽しいと思えるようになっていきました。以来、美容業界にも関心があったんです。
ファッション業界も美容業界でも、好きなものを扱えることに変わりはない。そう思ったので、不安や迷いはありませんでした」
期待を胸に新たなキャリアをスタートさせた松久さん。入社後、配属されたクリニックで衝撃的な体験をすることになる。
「お客さまへの対応方法について先輩に相談した時、先輩が『それって本当に三方良しなのかな?』と言ったんです。えっ? と思いましたね。本当に口に出して言うんだ、って(笑)
働いているうちに分かってきましたが、それはここで働く人にとってはごく自然なことでした。経営理念が形式的なものでないことに安心しましたし、ここまで浸透しているとも思っていなかったので驚きました」
経営理念が定着している理由の一つに、2カ月に1回行われる「理念研修」があるという。全社員が参加するこの研修では、会社が掲げる経営理念に対してどう考えているか、スタッフ同士でディスカッションをする。互いに口に出して理解を深めていくことで、日ごろの業務にも生かされていくのだ。

「お客さまへの対応でイレギュラーな判断が必要になったときは、スタッフ間で忌憚なく意見を出し合います。お客さまのことだけではなく、スタッフの気持ちも踏まえて『この方針は私たちが本当に誇れるものか?』という議論が行われるのは特徴的ですね」
具体例として、松久さんは次のようなケースを教えてくれた。
会社としては、新しく導入した機械を使った施術を提案したい。しかし、以前から来院している顧客は新しい機械に不安を感じていたという。
無理に説得すると顧客が不安に思ってしまうし、スタッフにも後ろめたさが残る。しかし、提案を諦めてしまえば、最先端技術の効果を実感してもらう機会が失われる。
話し合いの結果、改めて診察の機会を設け、医師の見解を踏まえた上で顧客自身で判断できる状態を整えることに決めた。そのおかげで、納得して自ら新しい施術を選択する顧客も増えていったそうだ。
お客さまは安心を、スタッフは自信を持った接客をすることができる。「思い描いていた通り、理想的な環境です」と松久さんはほほ笑んだ。
“正しい行い”の積み重ねで成果を生む。納得感が後押しした自己成長
さらに、松久さんは「個人のノルマを設けないシステム」も、スタッフが気持ちよく働くために大切な要素だと強調する。数値目標として定めてられているのは、チームの目標だけ。だからこそチーム内には協力し合う雰囲気が自然と生まれるのだ。
「転職してからは、前職ではしたくてもできなかった『正しい接客』ができるようになりました。
昔は常に数字に追われていて、何とか達成しなければと悩んでばかりでしたが、今は考え方もがらっと変わって。お客さまのため、私たちスタッフのためになることを追求し、正しい行いを続けることで、ちゃんと成果につながっていくことを身をもって知りました。
これはもちろん、環境や制度のおかげでもありますが、転職してから自分の行動に自信が持てるようになったことも要因の一つだと思っています。自分が納得して働ける環境に身を置くことの大切さを実感しているところです」

その明るい表情には、職場に対する誇りがにじみ出ていた。理想の環境を手に入れた松久さんは、これから先のキャリアをどのように思い描いているのだろうか?
「まずは今の職場でしっかり成果を出すことに注力したいです。将来的には三方良しの経営理念をさらに浸透させるためにスタッフへの指導にも携わることができたらうれしいですね。
前職では、『自分が何もかもやらなくてはならない』という焦りが常にありました。でも今は、全部自分一人で背負っている感覚はありません。
同じ思いを持つ仲間とともに、気持ちよくお客さまと向き合える環境は本当に心地良い。この環境をより良いものに変えていくためにも、自分ができることを考えて、一つ一つ取り組んでいきたいと思います」
採用担当者から
当社では、経営理念への共感度を重視した採用を行なっており、候補者の方がどのように理念を行動に移したいと考えているのか、過去の職場で実践してきたのかを踏まえて選考を行っています。
松久さんの場合は経営理念への共感性に加え、洗練された立ち振る舞いや言葉遣いが群を抜いていました。クリニックには性別・年齢関係なくさまざまなお客さまがいらっしゃるので、「松久さんなら安心してお客さまを任せられる」と感じたのが採用の決め手です。
面接では「売る仕事が好き」と発言していただけに、入社後は皮膚科の売り上げ部門で一位になるなど営業実績も高く上げています。「三方良し」の実践者として周囲のスタッフにも良い影響を与えられるよう、さらなる活躍を期待しています。
取材・文/一本麻衣 撮影/吉永和久
『シゴトジャッジ・ルーム』の過去記事一覧はこちら
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