07 JAN/2022

SNS活用で最新技術のキャッチアップを習慣化。技術もマネジメントも「両方やる」エンジニアライフ

私たちのエンジニアライフ

「女性のロールモデル」が少ないエンジニアの世界。 “好きな仕事”を続けている女性たちのインタビューから、自分らしいエンジニアライフを築いていくためのヒントを探してみよう。

「新しい技術をキャッチアップすることが、あまり得意じゃなかったんです」

そう話すのは、サイバーエージェントでエンジニアとして働く中村親里さん。

私たちのエンジニアライフ

株式会社サイバーエージェント
AI事業本部
DX本部
中村親里さん

電気通信大学へ入学し、アメリカのWest Virginia Wesleyan Collegeへ編入。コンピューターサイエンスを学び、2016年6月の卒業とともに帰国。17年4月にサイバーエージェントへ新卒入社。AI事業本部で広告配信プロダクト『Dynalyst』のシステム設計・開発・運用に従事した後、21年11月DX本部へ異動。デジタル広告の運用・配信プラットフォームの立ち上げを経験し、現在も運用・改修に取り組む

新規事業の立ち上げメンバーに抜擢されたり、マネジメントができるエンジニアを育成するための組織横断プロジェクト「次世代マネジメント室」に参画したり、責任ある仕事を任されてきた。

だが当の本人は、エンジニアにとって欠かせない「学び」に対する苦手意識を抱えながら働いてきたという。

一体どうやって苦手を克服してきたのだろうか。中村さんがエンジニアライフを楽しめるようになった転機について聞いた。

「自分のやり方」が通用しない。入社2年目にぶつかった技術の壁

ーー中村さんがエンジニアを志したきっかけは何だったのですか?

高校時代から理系科目が得意だったので、理系の大学へ進み、その後編入したアメリカの大学でコンピューターサイエンスを専攻しました。

ひたすらコードを書く実践的な授業が多かったのですが、時間を忘れて熱中できたんですよね。学部2年のときに参加したAndroidのインターンも本当に楽しくて。

それで「自分はエンジニアに向いているんじゃないか」と思ったという、単純な理由です。

なので、帰国後はエンジニアを目指して就職活動をしました。

サイバーエージェントを選んだのは、若手のうちからさまざまな開発の最前線に立たせてもらえそうだったからです。

ーーエンジニアになってからはどんな開発に携わってきたのですか?

入社後は、『Dynalyst』というオンライン広告配信システムの設計・開発・運用を担当しました。

配信システムの構築からサービス画面の実装、パフォーマンス改善まで、業務範囲がとても幅広くて。

エンジニアになって間もなかったので覚えることがたくさんありましたが、早い段階からフロントエンド、サーバーサイド、インフラまでの全領域に携わることができたのは、今思うといい経験でした。

できることが増えていくたびに「成長している」という実感も得やすかったですね。

ーー順調なエンジニアデビューだったんですね。

そうですね。ただ、入社2年目でプロダクト内の別のチームに移ってからは、ちょっと苦しかったかも。

そこは、動画広告に特化したチームで、動画配信に必要な技術的な専門知識をゼロから身に付ける必要があり、基礎を理解するにも一苦労。

開発の進め方もチームによって違うので、「これまでのやり方」だとうまくいかないことも多くて……。

この頃から、自分のウィークポイントがどんどん浮き彫りになっていきました。

Twitter、はてブ……SNSの活用で最新技術の習得を習慣化

ーー具体的にはどんなことがウィークポイントだと感じたのですか?

いろいろありますが、特に新しい技術をキャッチアップするのが得意ではありませんでした。

目の前の問題を解くために必要な知識を付けるのは、エンジニアとして当たり前ですよね。その周辺情報を自ら吸収していくところまで到達すべきだと分かっていても、新卒1〜2年目の私には高い壁がありました。

手を動かしてコードを書くのはすごく好き。ただ、その頃は目の前にある仕事に集中するあまり「今すぐ必要がないもの」にまで意識を向ける余裕がなかなか持てませんでした。

とはいえ、日ごろからちゃんと勉強しておかないと、いざという時の武器がないんですよね。

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ーーいざという時の武器、というと?

例えば、新しいサービスを立ち上げるときとか、システム改修を行うとき、最新技術を知っていれば知っている分だけ、技術選定の幅が広がりますよね。

このままでは、古い技術しか知らない・使えないエンジニアになってしまうのでは、という危機感が膨らんでいきました。

ーーその危機感にどのように向き合ったのでしょうか?

やはり、学習の習慣をちゃんと付けなきゃいけないな、と思いました。

ただ、いざ「学ぼう」と思っても、技術の最新動向を知らなければ、どの領域を深堀して、学習すればよいのか分からないですよね。

なので、少しでも技術の話題を目にする機会を増やすために、SNSを積極的に使うようにしました。

よく見るようにしたのはTwitterやはてなブックマーク。この二つは、最新の技術トレンドについて発信している人が多いですよね。流し見しているだけでも、プロダクトのリリース情報がすぐに目に入ってきますし。

それに、SNSを見るだけなら「勉強しよう」と構える必要もない。毎日の空いた時間に片手でさっと見る……SNSって、自分の日常生活にすでに組み込まれているものだから、そこがいいんです。

意識しなくても、技術に関する情報との接点を増やしていけるので。

ーー情報収集を習慣化する工夫をした、ということですね。

そうです。すでにやっている人も多いかもしれませんが、私にとってはこの方法が一番しっくりきています。

情報のキャッチアップって終わりがないので、無理なく続けていけるやり方を見つけるのがいいのかなって。

それに、SNSでの情報収集を始めてから、少しずつ自分からも発信できるようになったんですよ。

まだ社内のSlackなどの限られたメンバーに対してですが、技術についての雑談が楽しいと思えるようになったのは私なりの成長だなって。

ーーその他、SNSでの情報収集が仕事に役立ったことは?

20年11月に部署を異動したのですが、そこでは新しい広告配信システムの立ち上げに携わりました。

技術選定から手掛けたのですが、その際に比較検討できる技術が、以前より増えたことに自分でもびっくりしました。

以前の私だったら、なんの迷いもなく前の部署で使っていた技術を採用していたかもしれない。

でも、「確か類似した技術が最近話題になっていたな」とすぐにピンときて検証できたのは、引き出しが増えている証拠。

最近だと、SnowflakeというDWHサービスがSNSや社内でもちょっと話題になっていて。

ちょうどパフォーマンス向上のために新しいDWHの導入を検討していたので、他のサービスと比較してみることにしました。

結局、導入にはまだ至っていないのですが、ちゃんと比較検討できたことに意味があると感じています。類似サービスであるRedshift Serverlessも気になっているのでこれも試してみたいですね。

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ーー新しいシステムの立ち上げに携わったとのことですが、かなり大変だったのでは?

そうですね。ゼロからシステムを作り上げるのは初めての経験でしたし、リリース日厳守のプロジェクトだったので、やること・やらないことの判断も難しかったです。

でも大変だった分、自分が選定した技術で、自分が設計したシステムが思い通りに動いた時は、ものすごくうれしかったですね。

ゼロからシステムを作り上げたことはすごくいい経験になりましたし、このシステムに関しては、私が誰よりも詳しいプロ。周囲からも頼られるようになり、自分に自信がついた気がします。

コードも書くし、マネジメントもする。「どっちも両立」が私らしい

ーーエンジニアとして、今後の目標はありますか?

技術トレンドをキャッチアップする力は少しずつ付いてきたと思うので、その技術を自分のものにしていけるようになりたいですね。

知識として知っているだけでなく、実際に触ってみた方が理解度は上がるので。

技術選定をするときに「こんな技術もある」と選択肢を挙げるだけでなく、自分である程度試した上で「このプロダクトにはこの技術が適しているはず」と、サラッと言えたらかっこいいじゃないですか。

新システムの立ち上げを行った時は技術提案がしやすい環境だったので、今後は既存システムの改善に対しても積極的に提案できるようになりたいです。

あとは、後輩も増えてきたので、より良いチームづくりにも貢献していきたいと思っています。

ーーもうすぐ入社から丸5年、チームのマネジメントにも関わっていくタイミングでしょうか?

そうですね。サイバーエージェントには、マネジメントができるエンジニアを育成する社内組織として「次世代マネジメント室」があるのですが、昨年度はそこで活動する機会をもらって、エンジニアの評価に関するガイドラインを策定しました。

サイバーエージェントは一人一人に与えられる裁量が大きい分、事業・チームの拡大とともに自分がリーダーとなって評価者に回ることも珍しくありません。

そんなときでも、評価の基準を定めたガイドラインがあれば、評価する側もされる側も納得できるかな、と思ったんです。

次世代マネジメント室では、他部署のエンジニアや技術職以外の人とも一緒にプロジェクトを進めることができて、仕事の仕方や視点など、とても勉強になりました。

ーー将来的にはマネジメントに専念していく予定ですか?

いえ、私は基本的には技術者として現場に立ち続けたい気持ちが強いんです。

やっぱりコードを書くのが好きだし、システムを作っていくのが楽しい。だから、現場で思う存分コードを書きつつ、メンバーの育成に携わったり、組織横断型のプロジェクトに関わったりするような今の働き方がちょうどいいバランス。

もっといろいろなことにチャレンジしてみたい気持ちもあるけど、全部が中途半端にならないように、一つ一つ集中して取り組んでいきたいですね。

取材・文/古屋 江美子

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