31 JAN/2022

【戸倉彩×池澤あやか】女性エンジニアが「好きな仕事」を長く続けていく方法/Woman type Meets!

出会う、つながる、新しい私が始まる――。Webマガジン『Woman type』が主催するウェビナー『Meets!』では、女性たちが「自分らしい未来」を自分の手でつくるためのきっかけとなる「出会い」と「気づき」を提供します

出会う、つながる、新しい私が始まる――。Webマガジン『Woman type』が主催するウェビナー『Meets!』では、女性たちが「自分らしい未来」を自分の手でつくるためのきっかけとなる「出会い」と「気づき」を提供します

男性比率が圧倒的に高いエンジニアの世界。女性エンジニアの中には、「身近なロールモデルがおらず、将来どんなふうに働いていくかイメージが湧かない」という人も多い。

そこでWoman typeでは、「女性エンジニアのキャリアを考える1DAYウェビナー」を2021年12月18日に開催。

日本アイ・ビー・エムの戸倉 彩さんと、タレント/ソフトウエアエンジニアの池澤あやかさんをゲストに迎え、トークイベントを行った。

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会社員として働く戸倉さんと、フリーランスとして仕事をする池澤さん。立場も働き方も違う二人のエンジニアが、技術者として「好きな仕事を長く続ける」ためにやってきたこととは?

この記事では、講演内容の一部を抜粋してお届けしよう。

戸倉彩さん


日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 第二カスタマーサクセス部長
フェデレーテッドデベロッパーアドボケイト
戸倉 彩さん

2011年11月より日本マイクロソフトにてテクニカルエバンジェリストとして『クラウディア窓辺』の「中の人」を担う。18年5⽉、日本アイ・ビー・エムに転職。セミナーやイベント登壇、執筆活動を通じてクラウドネイティブや開発ツールを軸に技術啓蒙を行う。21年7月からチームリーダーとしてマネージメントを行いながら、ビジネス案件の技術支援やオープンソースプロジェクトの貢献などにも取り組む
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池澤あやかさん

タレント、ソフトウエアエンジニア
池澤あやかさん

1991年7月28日 大分県に生まれ、東京都で育つ。慶應義塾大学SFC環境情報学部卒業。 2006年、第6回東宝シンデレラで審査員特別賞を受賞し、芸能活動を開始。現在は、情報番組やバラエティ番組への出演やさまざまなメディア媒体への寄稿を行うほか、フリーランスのソフトウェアエンジニアとしてアプリケーションの開発に携わっている。 著書に『小学生から楽しむ Rubyプログラミング』(日経BP社)、『アイデアを実現させる最高のツール プログラミングをはじめよう』(大和書房)がある
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技術の学習で挫折しない&頼れるメンターを見つけるためのコツ

過去に『女の転職type』が女性エンジニアを対象に実施したアンケート調査によると、半数以上の人が「最新技術をキャッチアップし続けられるか不安」だと回答している。

エンジニア助成アンケート

上記のような不安に対し、戸倉さんは「技術を学ぶ際には、軸を持つといい」とアドバイス。膨大な情報を前にして挫折しないためにも、「的を絞った学習を心掛けて」と呼び掛けた。

戸倉さん

私は英語力を駆使して、ネットに公開されている海外の記事から最新情報をキャッチアップすることが多いです。

ただ、ネットにはあらゆる情報が溢れているので、全部を拾うことはできません。ある程度、自分でふるいにかけることが必要となります。

戸倉さん

そこでおすすめなのは、「業務上、今すぐ必要な技術」と「知っておくと将来的に役立ちそうな技術」という二つの軸を持って情報収集を行うこと。

軸を二つ持つのは大変かもしれませんが、私の経験上、メリットは大きいと感じます。

戸倉さん

例えば、ライフステージの変化などでしばらく仕事を離れたり、働き方が変わったりしたときに、特定の分野の知識しかないと手詰まり状態になることも

今後ライフステージが変わってもエンジニアを続けていきたいと思う人は、「今すぐ必要な情報」だけでなく、「これから長く通用するテクノロジー」について意識的に学んでみるといいですよ。

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続いて池澤さんも、自身の学習方法を紹介。「フリーランスエンジニアならではの学び方がある」と明かした。

池澤さん

技術って、OJTで学ぶのが一番身に付くんじゃないかなと思うんです。知識としていろいろ知っていても、実践に応用できないと技術を習得しているとはいえないので。

そこで私は、あえて難しい仕事にチャレンジして、「学ばないと作業ができない状況」に自分を追い込むようにしています。

池澤さん

ただ、戸倉さんもおっしゃっていたように、業務で今すぐ使う技術だけを学んでいると、似たような技術ばかりに偏ってしまいがち。

なので、周辺情報を本やWeb講座でキャッチアップしたりして、資格取得にチャレンジしたりして、学習範囲を広げるようにしています。

加えて、「周囲のエンジニアから学ぶ」ことも意識している池澤さん。人や組織との関わりを固定化せずに広げていくことで、自分のスキルを見直す機会を意図的につくるようにしているのだとか。

池澤さん

自分が身を置く環境や仕事をする相手を一定期間で変えていくと、その時々で自分のスキルの整理をする必要が出てきます。

そこから今の自分に足りないもの、これから必要な知識やスキルが分かることもある。

池澤さん

フリーランスなら新しいパートナーを開拓してみるのがおすすめ。

会社員なら、部署異動や転職などで新しい環境に移ってみて、環境を変える機会を意識的に設けることはできるのかな、と思います。

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また、「技術を挫折せずに学び続けるためにはメンターを持つといいですね」と戸倉さん。メンターを見つける方法を三つ教えてくれた。

戸倉さん

一つ目は職場で探す方法。自分が学びたい分野に詳しい人は意外と身近にいる場合も多いので、まずは社内で探してみるのが手っ取り早いですね。

戸倉さん

二つ目は、コミュニティーを活用する方法。最近はさまざまなコミュニティーがあるので、SNSなどを活用して探してみると、自分に合ったものが見つかると思いますよ。

エンジニアが多く所属しているコミュニティーであれば、「次世代の人を育てよう」というマインドを持っている人が少なからずいるはず。そういう人に、仕事やキャリアの悩みを相談してみる手もあります。

戸倉さん

三つ目はスクールに通う方法。お金はかかりますが、「講師」というメンターが必ず付きます。短期集中で学び、指導者を得たいときにはおすすめです。

池澤さん

私は上司も同僚もいないフリーランスなので、メンターが見つけにくくて。それで試行錯誤した結果、最近はチームで開発できる案件に積極的にジョインするようになりました。

自分にとって学びの多いチームを短期間で複数渡り歩いていけるのは、フットワーク軽く動けるフリーランスだからこそだと思っています。

長く働ける職場・自分らしい働き方を選ぶポイント

また、エンジニアとして自分らしく働き続けるために、「転職やロールチェンジ(※)を繰り返してきた」と戸倉さん。転職の時の会社選びでは、次の三つのポイントを意識してきたという。(※)役割の変更

戸倉さん

これまでに、日系の老舗企業や外資系企業、ベンチャー企業など、さまざまな職場を経験してきました。会社選びで意識したポイントは三つ。

一つは、「自分がやりたいことを実現できる環境か」ということ。例えば、「できそうな仕事がある」かどうかではなく、その職場で「やりたい」と思えることがあるかを考えるようにしてきました。

戸倉さん

二つ目は、「会社のミッションと、自分が仕事で成し遂げたいことが一致するかどうか」どうかです。

テクノロジーカンパニーの中でも自分に合う会社を見極めるために、企業が目指す方向性と、自分の理想に相違がないかを確認してきました。

戸倉さん

三つ目は、「ダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいる企業かどうか」。仮に女性比率が低い会社だったとしても、その状況を改善するために取り組んでいることがあるかどうかが重要です。

meets

現在、戸倉さんは日本アイ・ビー・エムに所属しながら、会社の外では“職業・戸倉彩”として個人で活動。技術の啓蒙や、女性エンジニアのエンパワメントに力を入れている。

過去にはフリーランスで仕事をした経験もあるが、今はあえて「会社員でいること」を選択しているという。

戸倉さん

前職を退職した時に、数カ月間フリーランスとして活動した時期がありました。その時、「一人でできることは限られている」と実感したんです。

また、自分がどんな時に仕事のやりがいを感じるかを考えてみると、「技術の力で社会に大きなインパクトを与えられた時」という条件も浮かび上がってきて。

戸倉さん

それであれば、なるべく社会への影響力が大きなテックカンパニーで会社員として働き続ける方が、幸せなのでは。そう思って、今のような働き方を選んでいます。

一方、大学卒業以来フリーランスとして活動してきた池澤さんは「タレント活動との兼業が前提なので、フリーランスが一番自分に合っていた」と話す。

池澤さん

タレント活動との両立を考えると、今はフリーランスエンジニアとして働くのが自分にとってはベスト。

このパラレルキャリアの状態をキープしていくためにやっていることとしては、安定した収入源を確保しておくことですね。

池澤さん

フリーランスの場合、報酬の大半は案件ベースですが、「月いくら」という月間契約での案件を受けておくと気持ち的にも安心です。

金銭的な不安が軽減されると、新しいことにチャレンジする余裕が生まれますからね。

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これまではサービス開発を手掛けてきた池澤さん。今、このままサービス開発に携わり続けるか、インフラエンジニアやカスタマーサポートエンジニアなどに移行していくか悩んでいるのだという。

戸倉さん

新しい仕事に興味が湧いたときは、ロールチェンジのいい機会ですよね。私もこれまでにアプリ開発、インフラ、アーキテクト、アドボケイト……と10種類以上の仕事に挑戦してきました。

戸倉さん

ロールチェンジをする上で大切なのは、今までつちかってきた専門知識をどう次の仕事に生かせるかを自分の言葉で伝えられるようにしておくこと。

それさえちゃんとできれば、やりたい仕事に挑戦するチャンスは開けていくはずです。

戸倉さん・池澤さんが会場からの質問に回答!

本ウェビナーでは、参加者からの質問に二人が回答するコーナーも実施。

40代、50代と「年齢を重ねるとプロジェクトに参加しづらくなってしまうのでは?」というコメントに対し、戸倉さんは次のように答えた。

戸倉さん

確かに、今後の成長に懸けてもらえるようなポテンシャル採用のチャンスは減っていくかもしれませんね。

ただ、他の人に置き換えられない専門的なスキルを身に付けてきた人であれば、年齢に関係なくあらゆるプロジェクトの現場で必要とされるはず。

やる気や伸び代だけではない、確かな知識とスキルで貢献できるように、自分磨きを続けていくことが大事ですね。

戸倉さん

そして、その自分にしかない価値や能力を言葉でしっかり相手に伝えてアピールできるようにしておくことも大切です。

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最後に「なぜ二人はそんなにパワフルなの?」という問いに、戸倉さんと池澤さんがそれぞれ回答した。

戸倉さん

自分の心を燃やすものが何か」を正しく理解しているから、でしょうか。

『鬼滅の刃』の名フレーズで、「心を燃やせ」っていうのがあるじゃないですか。私の場合は、テクノロジーの可能性を追求すること。そこに自分の心が燃えるのを感じていて、それを仕事にできていることがパワフルでいられる理由かなと思います。

自分が何に「心を燃やせるのか」が分かっているから、働くモチベーションも保ちやすいんですよ。

池澤さん

分かります。私も自分の好きなことを見失わないように気を付けています。

仕事に追われていると、いつの間にか自分がなぜエンジニアになったのかを忘れてしまいがち。好きでエンジニアになったのに、淡々と作業をこなすようになってしまうというか。

池澤さん

なので、定期的に自分の仕事をまとめたポートフォリオを整理したり、作りたいものを作る個人開発をしてみたりして、「私はこれが好きだったんだ」と再認識するきっかけを作っています。

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今回の戸倉さん、池澤さんのトークセッションに参加したエンジニアの女性たちからは「会社員・フリーランス両方の視点での意見が聞けてよかった」「前向きなコメントをいただき、女性エンジニアの未来は明るいと感じた」などの感想が寄せられていた。

Woman typeでは今後も、働く女性たちが自分らしい未来をかなえるための気づきと仲間を得られるウェビナー『Meets!』を定期的に開催予定。ぜひサイトやSNSでチェックしていただきたい。

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文/赤池沙希 編集/秋元祐香里(編集部)