ClubT編集長 渡辺有希子さん/新卒入社したWebベンチャー「やるしかない状況」がわたしを変えた【連載:ワーキングビューティー・アルバム Vol.7】
仕事でもプライベートでも輝いている女性をクローズアップ! 自分らしいワーク&ライフスタイルで充実した毎日を送っている女性たちから、ハッピーに生きるヒントを教えてもらっちゃおう。

株式会社ClubT
編集長 渡辺 有希子さん
2008年、早稲田大学教育学部国語国文学科を卒業後、株式会社ClubTに入社。オンデマンドプリントサイト『ClubT』の運営からフリーペーパーの編集など“何でも”こなす。
今回紹介するワーキングビューティは、オリジナルTシャツをデザイン・販売できるサイト『ClubT』を運営する株式会社ClubTに勤める渡辺有希子さん。
少人数のWebベンチャー企業に入社して5年目、サイト運営だけでなく、フリーペーパーの編集やイベント開催など、彼女に任される仕事は毎年新しいものばかり。そんな渡辺さんの仕事観を覗いてみよう――。
本当は採用されるはずがなかった!?
Web業界のベンチャー企業に入社した理由
編集部:『ClubT』は、自分の好きなデザインでTシャツを作って売ることができるユニークなサイトですね。教育学部卒業ということですが、なぜこちらにご就職を?
大学は教育学部の国文学科でしたが、国語が好きという理由で選んだ学科だったので、教師になるかどうか決めあぐねていたんです。就職活動の時期になって、読書が好きだから出版系を受けたり、食べるのが好きだから食品系を受けたりしてみたのですがどれもピンとこなくて。どうしようか迷っていたときに、同じゼミの先輩からの「Web系もおもしろそうだよ」というアドバイスをきっかけに、web系企業でのインターンに応募しました。実際に経験してみて、「確かに面白いかも」とWeb業界への興味が深まってきたところで出会ったのがClubTでした。ITやWebの知識は皆無でしたが、Tシャツを扱うのは身近でおもしろそうだなって。正直、Web系企業だということ以外、自社のサービスの細かい仕組みはわかっていませんでしたね(笑)。
編集部:最初はWeb業界はまったく考えていなかったのに、まさに運命の出会いでは?
実は、入社前の懇親会で「本当はプログラマーを募集していた」という衝撃の事実を知りまして。どうやら国文学科の学生がのこのこ来る場じゃなかったらしい(笑)。
なので、社員の人からは「え、採るんですか!?ってか何であいつ応募してきたんでしたっけ?」とか思われたみたいです。いまだに何で採用されたか分からないんですよね。
編集部:えぇ! それでも迷わず入社されたなんてすごい決断力ですね。
そんなことないんですよ。ClubTに内定が出たあとに教育実習があり、子どもたちに教えるのも楽しいなと思って、教師になるか就職するか迷った時期もあります。
でも、実習先の校長先生との面談で就職か迷っている話をしたら、「社会人経験を積んでから教師になる人も多いし、その方が深みも増すよ」という言葉をいただき、就職することに決めました。
本当は面倒くさがりで腰が重いタイプ
でもわたしがやらなきゃ何も始まらない

編集部:現在の肩書きは「編集長」ですよね。入社してからはどんなお仕事を?
サイトと同じ『ClubT』という名前でフリーペーパーを去年から立ち上げまして、デザイン以外はほぼわたし1人で作っています。まだまだできてないことが多いので「編集長」と名刺に書かれるのは実はすごく恥ずかしいというか申し訳ないというか……。
入社して最初の仕事はカスタマーサポートでした。うちはTシャツをデザインして売る方もユーザーだし、そのTシャツを買う方もユーザーなので、その両側からの問い合わせ対応に追われながら仕事を覚えました。でもその頃から、メールマガジンを始めるなど新しい企画をゼロから任せてもらうなど、「新卒だからやったことがない」仕事ではなく、「社内で誰もやったことがない」仕事にチャレンジすることは多かったですね。
フリーペーパーも、ユーザーさんに、もっとモノづくりしている実感を得られて喜んでもらうにはどうしたらいいか、社長と考えて企画したもの。もちろん社長もわたしも出版も編集もぜんぜんやったことないのに、「やってみよう!」と決まるところがネットベンチャーの楽しいところかも(笑)。
編集部:誰も教えてくれない状況って大変そうですね。どうやって仕事を進めたのですか?
もちろん、社長は相談には乗ってくれるので1人で抱え込んでしまってつらい、みたいなことはあまりなくて。ただ、編集とは何かも分からないし撮影もしたことがないし、作業として何から始めたらいいかはぜんぜん分かりませんでしたね(笑)。いろいろな雑誌を真似しながら紙面のラフを書いてみたり、印刷屋さんに紙のサンプルをもらったり、とにかく1号目はカタチにすることが大事なんだと信じて突っ走りました。社内だけでなくTシャツ専門のサイトやイベント運営で精力的に活動されている方々に協力してもらったり、知り合いのツテで著名人に登場してもらったりもしました。ただ作るだけじゃなく、フリーペーパーですから、どこかに置いてもらわないとならない。置いてもらえそうな飲食店に飛び込むなど営業活動もしました。
1号完成すると、その次は「この雑誌のデザインを参考にしてみよう」とか「あのアイドルに出てもらいたいから電話してみよう」「あのお店にも置いてもらおう」とか、臆することなくできるようになり、ダメもとでも言ってみれば意外とイケることが分かってきたので、出てほしいと思った方ならどんな立場の方でもどんどんアポ電話をかけています!
編集部:思いつくことは何でもやってみる、アグレッシブさが必要ですね。
どんな仕事でもそうだと思いますが、「動きは早いに越したことはない」っていうのを実感しましたね。わたしはどちらかというと、ずぼらで面倒くさがりで腰が重いタイプなんです(笑)。でも、そんなこと言ってたら仕事がまったく動かないので、とにかくやるしかない状況。すぐ連絡する、すぐ会いに行く、すぐ返事する、そういうことが大事なんだと改めて気付くことができました。
人に言われた通りにやるということではなく
人の意見を素直に吸収できるタイプ
編集部:お話を聞いていると腰が重いタイプだなんて信じられません(笑)。
自分自身でアイディアを出してどんどん動き始めるのはどちらかというと苦手。1人で考えていると「うーん……」ってなってしまう性格なんです。ただ、そういうときにうまいこと周囲の人たちが良いアドバイスをしてくれるので、これまで生きてくることができました(笑)。
思えば、大学受験も就職もフリーペーパー作りも、人に背中を押してもらって何かを決めるってことが多かったかも。しかも食事や飲みの場でそうなることが多い! 行き詰ったからとりあえずごはん食べに行って人と話したらスッキリ、みたいな。
人に言われた通りにやるというよりは、比較的人の意見を素直に吸収できるタイプなのだと思います。始めるのは腰が重いけど走り始めちゃうとフットワーク軽いので、これからもどんどん背中を押して欲しいですね(笑)。
編集部:飲みに行くのがお好きということですが、それは仕事のリフレッシュのため?
飲みに行くのは趣味ですね! おいしいものを食べて寝たら嫌なことは忘れちゃう性格。リフレッシュにもなりますが、みんなでワイワイ過ごすのが大好きなだけかもしれません。
最近、高円寺で友人とルームシェアを始めたので家に友だちが集まって飲むことも多いですね。高校生までは女子特有の“群れてないと変わり者”みたいな文化が苦手でしたが、大学は、自分1人で行動しても誰も気にしない環境だったので、逆に人と過ごすことの楽しさを知りました。いまでは1人でいる方が寂しくなっちゃいました(笑)。
編集部:最後に今後の目標を教えてください。
さっき「いずれ教師に」と考えていたと言いましたが、いまでは仕事がおもしろ過ぎて現時点では教師への道は考えなくなりましたね。
行き当たりばったりにも見えるでしょうが、それで良い方向に進んでいると思えます。あまり先のことまで考え過ぎないのが性に合っているのかも。これからもいろいろな人に背中を押してもらって、行くことになったところがわたしの行きたいところだった、と思えたらいいですね。
ただ、いま現在勉強が足りないところが多いので、デザインなどもっと勉強したいですね。今後、会社でもデザイン関連のソフトの使い方を勉強させてもらえることになったので、もうちょっと編集に詳しくなって、脱素人を目指します!
実は今度、フリーペーパーを使ったリアルイベントをしようっていう企画も準備中なんです。もちろんイベントの運営なんてしたことありませんが、「やっぱりわたしがやるっきゃない」って感じですね(笑)。
渡辺さんは、「入社するまで業種さえよく分かってなかったけど、入ってみたらすごくステキな仕組みのサイトでした」と語るほど仕事への真っ直ぐな愛情を持っている。岐路に立たされたときに背中を押してくれる人が必ずいることは彼女のコミュニケーション力の賜物ではないだろうか。それはれっきとした彼女の実力であり、今後も道なき道を突き進むのに迷うことのない道しるべとなるはずだろう。




取材・文/根本愛美(編集部) 撮影/赤松洋太
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