【成田凌×伊藤沙莉】「思いもよらない未来」を楽しめる大人でいるために欠かせないたった一つのこと

進学や就職などで一歩足を踏み出す時、「将来はこうなりたい」と先の自分を想像し、胸を躍らせる人は多いだろう。

だが、かつて思い描いた「こうなりたい」を、いま実現できていると自信を持って言える人はどれくらいいるだろうかーー。

2022年5月20日にHuluにて一挙独占配信開始となったHuluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』は、「夢をかなえる人生」から降りた大人たちの群像劇。主演に成田凌さん、共演に伊藤沙莉さんを迎え、20代後半のリアルな日常を描きだす。

成田凌×伊藤沙莉

本作への出演を通して、成田さん、伊藤さんは何を感じたのか。二人に話を聞くと、たとえこの先に想像したのと違う未来がやってきても後悔しない、いい人生の歩み方が見えてきた。

自分と重なる部分が少ない役には、「隠してきた感情」を引っ張り出して挑む

『あなたに聴かせたい歌があるんだ』には、役者やアイドル、小説家、バンド、モノマネ歌手など、願っていた未来とは違う今を生きる27歳の若者たちが登場する。

その中で成田さんは、役者になる夢を諦めきれない会社員・荻野智史を、伊藤さんは、アイドルに憧れ続ける前田ゆかを演じた。

成田さん

萩原(健太郎)監督から、荻野は「いつもヘラヘラしている人間」だと聞いていたんです。でも、脚本に目を通すと、荻野はただヘラヘラしているだけじゃなくて、少し情けなくて、見ていると胸の奥がキュッと切なくなるような男だと分かった。

そんな荻野に共感できる部分や自分と重なる部分は少なかったのですが、彼が持っている「切なさ」をちゃんと伝えたい。そう思って演じました。

成田さんにとって印象的なシーンは、第一話、高校生時代の教室でのワンシーンだ。

クラスメートの一人が、女性教師が過去にグラビアモデルをしていた事実を冷やかし、ちょっかいを掛ける。その様子を横目で見ていた荻野は、一人の男子生徒に絡まれてしまう。

成田さん

女性教師をからかっていたヤンキーの男子に「なんだよ」とすごまれるんですけど、それに対する荻野のセリフは「いや、僕も好きだなと思って。年上」だったんです。

でも、脚本を読みながら、ここは、「僕」じゃなくて「俺」の方が荻野っぽいなと感じたんですよね。

成田さん

絡まれてビビっているはずなのに、ちょっと無理して背伸びする様子に、彼らしい切なさがある。荻野は、きっとそういう人間なんじゃないかなって思って、撮影前に提案したんです。

成田凌

荻野を演じる上で「切なさ」を意識したと語った成田さん。一方の伊藤さんは、「意地」というキーワードを意識して前田ゆかを演じたと明かした。

伊藤さん

ゆかは、学生時代から10年以上もアイドルを夢見てきた女性。20代後半になった彼女を踏ん張らせているのも、そして彼女の邪魔をしているのも、全部『意地』なんですよ。

絶対に夢をかなえるという意地が、『かなえなくちゃ終われない』という足かせにもなっている。結果、ゆかはうまく笑うことすらできない状態になってしまうんです。

伊藤さん

素直になれなかったり、意地を張ってしまったりするのは分かるけれど、私はゆかのようにはなれない。だから、私の中にあるいろいろな感情や経験を集めて、ゆかという人物をつくっていきました。

ゆかのメインストーリーである第二話、彼女がオーディションを受けるシーンには、伊藤さんの経験が見事に生きている。

伊藤さん

脚本上では、『もう君はいいよ』と言われてオーディション会場を出ていくゆかが、別の女の子が褒められている言葉を去り際に耳にする……という流れでした。

でも、落ちると分かっているオーディションを最後まで見届けなきゃいけない状況の方が絶対にきついと思うんですよ。私も子どもの頃から何度も何度もオーディションを受けてきたから、その辛さがよく分かるんです。

きっとゆかも、そのつらい瞬間を何回も経験してきたはず。そう考えて、監督に『ゆかならこうすると思う』と提案させていただきました。

伊藤さん

ゆかと私は決して似ているわけではない。そういう役柄を演じることは少なくないけれど、結局のところ、自分の中にある感情を集めて演じる他にないなって思います。

成田さん

そうですよね。突き詰めて考えていくと、共感できる部分が見つかることもありますし。

成田さん

荻野は、僕とは全然違うタイプの人間。そう感じる一方で、もしかしたら荻野の情けなさと近しい部分が自分の中にもあるのかも……とも思うんです。

それは人に見せたくなくて、普段は隠している感情なのかもしれない。そうやって自分自身とも向き合いながら演じました。

成田凌×伊藤沙莉

人生は、どうなるか分からないもの

本作は、登場人物たちの「17歳の頃」と「27歳の今」を軸に物語が進行していく。成田さんも伊藤さんも、20代後半。演じた役柄と同じ年代だ。

「二人は、10年前に思い描いていた通りの自分になっている?」そんな疑問をぶつけると、成田さんは「想像とは全然違いますよ」と即答した。

成田さん

10年前は、まだ高校生。当時は美容師になるつもりでした。将来はカリスマ美容師としてバリバリやるんだ、って思ってたんですよ(笑)

成田さん

つい先日、ロケで美容・理容の専門学校の前を通りかかって、オープンキャンパスに訪れた高校生の方にお話を聞く機会があったんですが、10年前の自分を見ているようで「人生、どうなるか分からないな」なんてしみじみしちゃいました。

今この瞬間だって、「伊藤沙莉さんと一緒に取材を受ける日がくるとは」って思ってるくらいです。

9歳で子役デビューした伊藤さんはすでに芸歴20年目。子どもの頃からの夢をかなえているように見えるけれど、「10代後半の頃に想像していた自分とは、少し違う」と伊藤さんは言う。

伊藤沙莉
伊藤さん

まさか自分が『ヒロイン』と呼ばれるような役柄を演じさせていただくようになるとは思っていませんでした。

ここ数年は特にそういった役が増えましたが、その状況に一番驚いているのは多分、私自身だと思います(笑)

成田さん

分かります。僕も、俳優になろうと決めてから想像していたよりも早いペースでいろいろな作品に関わる機会をいただけているのは、うれしい想定外。本当にありがたいことですね。

成田さん

もちろん、思い通りにいかないことや苦しいこともありました。この1~2年はコロナ禍の影響で撮影予定だったものがなくなってしまうこともあったし、周囲の皆さんの期待に応えられていないと感じることも少なくなくて。

そんな時は、心に穴が開いたような気持ちにもなる。けど、そこで折れずにいれば、また新たなチャンスがちゃんとめぐってくるって信じているんです。上がり下がりを繰り返しながら、経験値を上げていきたいですね。

キャリア選択に迷ったら、自分の「好きなこと」を選ぶ

10年前を振り返る中で、伊藤さんは「実はあの頃は、俳優業を続けていくことに迷っていたんです」と明かした。

伊藤さん

10代後半、友人たちは進学先を考えているようなタイミングでした。だから、私も一度将来とちゃんと向き合おうと思ったんです。

9歳からお芝居をやってきたので、オーディションを受けるのも、撮影に行くことも、私にとっては当たり前。俳優業しか知らないままでいいのだろうか、という不安もありました。

そう当時の迷いを明かす伊藤さん。その不安をどのように解消したのだろうか。

伊藤さん

結局は、自分が「好き」だと思えることを選ぶのが一番だと思うんです。その結果、私は今もこの仕事を続けています。

仕事やキャリアの選択に悩んだら、「それ、私は好きかな?」って自問自答する。全部が楽しいことばかりだったわけではないし、想像とは違うこともあったけれど、「自分が好きだから選んだんだから」と思えるんです。

成田さんも「自分で選んだことだったら『やるしかない』って思える気持ち、すごく分かる」と大きく頷く。加えて、思い通りにいかないときの成田さん流の対処法も教えてくれた。

成田さん

どんなに好きなことでも、ずっと力みっぱなしだと疲れてしまいますよね。うまくいかない時は、なおのこと。

そんな時には、思い切って休むことも大切。僕の場合、どうしようもなくなる前に「休もう!」と頭を切り替えるようにしています。

早く家に帰って、バラエティー番組やお笑いの動画を見たりして、仕事のことは考えない。そのままバタンと寝てしまえば、起きた時にはすっきりするんですよね。

成田さん

自分を追い込みすぎないで、適度に甘やかすこと。心が折れてしまう前に、試してみてください。

そして、頑張りすぎてしまっている大人たちにこそ、この作品を見てもらって、何か感じてもらえたらうれしいです。

成田凌×伊藤沙莉

最後に、「10年後の自分」について、成田さんと伊藤さんに聞いてみた。

伊藤さん

いろいろな人から頼られる存在になっていたいですね。どっしりとした存在感がある俳優になりたい。そのためにも、自分なりの軸をちゃんとつくりあげていきたいと思います。

成田さん

僕は、漠然とした表現になってしまいますが、何でもできるようになりたい。俳優業だけでなく、それ以外の仕事にも挑戦してみたいなって思ってるんです。

なのでこれからの10年間は、フットワーク軽くいろいろなことに挑戦していきたいですね。

これから10年後、多くの人はいま想像しているのとは違う未来を生きているだろう。けれど、どんな未来がやってきても後悔しないために大切なのは、自分の好きなことに素直でいることだ。

成田さんと伊藤さんは、そんなシンプルな答えに気づかせてくれた。


成田 凌(なりた・りょう)さん
1993年生まれ。2014年、『FLASHBACK』で俳優デビュー。近年の出演作は、映画では『カツベン!』『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』『窮鼠はチーズの夢を見る』、ドラマでは『逃亡医F』連続テレビ小説『おちょやん』、6月6日より舞台『パンドラの鐘』に出演、映画『コンビニエンス・ストーリー』が8月5日公開予定

伊藤沙莉(いとう・さいり)さん
1994年生まれ。2003年にドラマデビュー後、数々のドラマや映画、舞台などで活躍。21年にエランドール賞新人賞、ブルーリボン助演女優賞の栄誉に輝き、22年に主演を務めた映画『ちょっと思い出しただけ』は第34 回東京国際映画祭観客賞、スペシャルメンション受賞。近年はドラマ『いいね!光源氏くん』(20・21)、『ミステリと言う勿れ』(22)、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(21)など。映画『映画ざんねんないきもの事典』(声の出演)が7月8日公開、8月より舞台『世界は笑う』に出演

作品情報

Huluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』

あなたに聴かせたい歌があるんだ

©HJホールディングス

配信開始:2022年5月20日(金)Huluで独占配信<全8話>
原作:燃え殻
原作協力:萩原健太郎
脚本:藤本匡太、燃え殻、萩原健太郎
監督:萩原健太郎
出演:成田凌、伊藤沙莉、藤原季節、上杉柊平、前田敦子/田中麗奈
テーマ曲:キリンジ「エイリアンズ」(WARNER MUSIC JAPAN)
制作:C&Iエンタテインメント
製作著作:HJホールディングス
©HJホールディングス

取材・文/上野 真理子 撮影/赤松洋太 編集/秋元 祐香里(編集部)
【成田凌さん】ヘアメイク/宮本愛 スタイリスト/カワセ 136
【伊藤沙莉さん】ヘアメイク/岡澤愛子 スタイリスト/吉田あかね