のん「怒りがパワーになる」明るく変換した“負の感情”が、彼女を挑戦へとかき立てる

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Another Action Starter

日々の暮らしの中で、ちょっとしたチャレンジをすること。それが、Woman typeが提案する「Another Action」。今をときめく女性たちへのインタビューから、挑戦の種を見つけよう!

のんさん

「のん」になってから、新しい道を切り開くためにずっと挑戦を続けてきました。だから、チャレンジすることは好きです。

大きな瞳でじっとこちらを見つめ、彼女は穏やかな口調で話し始めた。

のんさん

俳優・創作あーちすととして活動するのんさん。2016年7月に自身が代表取締役を務める個人事務所・株式会社nonを設立し、俳優業を中心に、映画制作やYouTube配信などでユニークな表現活動を続けてきた。

そんなのんさんにチャレンジを続ける原動力を聞くと、「負の感情があるから挑戦できる」という答えが返ってきた。一体どういうことなのだろうか。

「大好きなことを絶対に諦めない」さかなクンとの共通点

今回のんさんが挑戦したのは、魚類学者でありメディアでも活躍するさかなクンの半生を描いた映画『さかなのこ』で主人公のミー坊を演じることだ。

「ミー坊」はさかなクンの小学生時代の愛称で、つまりさかなクン本人。実在する異性を演じるのは、のんさんにとって初めてのことだった。

ただ、意外にも「ミー坊と私には共通点があり、演じやすかった」のだという。

のんさん

ミー坊は、どんなことがあっても、大好きなお魚と向き合うことは絶対に諦めないんです。そういうところが私と彼の共通点だなって思いました。

例えば、私はお芝居が大好きだから、何か難しいことや辛いことがあっても「お芝居のことなら、絶対にどうにかできるだろう」って思っちゃうんですよ。好きなことのためなら、何でもできるというか。

のんさん
のんさん

あと、ミー坊の「お魚が好き」という明るいパワーは、周囲の人を知らず知らずのうちに救ってくれるんです。本人はただお魚を愛しているだけなんですけどね。

だから、人が何かを好きになる力って本当にすごいんだな、と改めて思いました。この映画を観てくれた人にも、そういうパワーが届くといいなって思います。

男でも女でもいい。「好きなことに一直線な人」を演じれば

のんさん
実在する人物を、異性が演じることをどう感じたのか。そんな質問に、「女性の私が演じるのは、チャレンジングな体験だと思った」とのんさんは出演のオファーがあった時のことを振り返る。

のんさん

お話をいただいた時はビックリしたし、見てくれる人が受け入れてくれるのか怖いと感じる部分もありました。

でも、いざ撮影が始まったら、ミー坊を演じることに何の違和感もなくて。ただただ面白かったですね。

本作の沖田修一監督は「さかなクンの物語の本質を描く上で、役者の性別はそれほど重要ではない」と語っている。撮影現場にも、監督直筆の「男か女かは、どっちでもいい」と書かれた紙が貼られていたとのんさんは明かす。

のんさん

その張り紙を見て、「私はただ大好きなことに真っ直ぐな人を演じればいいんだ」って思えて気が楽になりました。男か女かはこの物語に重要じゃない。

「人間ミー坊」を表現しよう、って決めてからは、自信を持って撮影に臨めました。

のんさん

人間ミー坊を表現するための一つとしてのんさんが撮影前に取り組んだのは、さかなクンの動きや声を研究すること。YouTubeの『さかなクンちゃんねる』を何度も視聴した。

のんさん

あとは、『TVチャンピオン 第3回全国魚通選手権』に出場していた、高校生時代の映像を探して見てみました。

10代のころのさかなクンと、大人になったさかなクンはどう違うんだろう、って思いながら映像を比較してみたりして。ご本人をよく観察しながら、「人間ミー坊」をつくっていきました。

「私ならできる」っていつも思っている

のんさん

実在する人物を演じるプレッシャーはなかった? そう聞くと、「私、あまりプレッシャーを感じないんです」とのんさん。

のんさん

なぜか自信だけは人一倍あるんですよ、何の根拠もないのに(笑)役者としてデビューしたばかりのころから、「自分なら絶対いい役者になれるぞ」って信じて進んできました

撮影中も「私ならできる」「今の演技いい感じ」って思っています。

どこまでもポジティブなこの性格は、「育った環境にあるのかも」とのんさんは分析する。

のんさん
のんさん

私のお母さんは「テストの点数よりも、楽しいと思うことを優先してほしい」という考え方だったんです。そのおかげで、自分の好きなことに素直でいられたし、自信を持って行動できた。

俳優になりたい、上京したいと言った時も、応援して送り出してくれたことに感謝しています。

その上で今は、「自分のことを認めてくれる人や面白いと思ってくれる人の側にいて、そういう人たちからアドバイスをもらうようにしている」とのんさん。

信頼できる人たちと一緒に過ごす時間が、自己肯定感をますます高めてくれるという。

「誰かを驚かせたい」からチャレンジする

のんさん
表現者としてマルチに活動するのんさん。「独立してからの毎日は、チャレンジの連続」だという彼女の挑戦の原動力は、意外にも「怒りの感情」だという。

のんさん

私の原動力って、この世界に存在する「納得いかないこと」に対する怒りのパワーなんですよ。あとは、悔しさとか。

例えば、やりたいことをやりたいと主張したときに抑えつけられると「みんなをあっと言わせるようなことをやってやる!」 ってなるんですよね。それが“のんの原動力”でもあります。

のんさん

また、演技に限らず、のんさんの表現活動には一貫した思いがある。それは「驚きを与える」ことへのこだわりだ。

のんさん

誰かのことをあっと驚かせたい。そんな気持ちでいつも活動しています。でも、みんなの想像のはるか先にあるようなことをやっちゃうと、全く理解してもらえないこともある。

だから、どうすればちょうどいいバランスで新鮮な驚きを与えられる表現になるのか、チームメンバーとよく話し合うにしています。

誰かを驚かせることに成功した瞬間が、「最高に気持ちいい」とのんさんは笑顔を見せる。

のんさん

わーって驚いてもらえると、やってやったぞってうれしくなるんです。それでまた、新しいことがしたくなるし、また驚かせてやるぞーって思うんですよね。

今後も皆さんのことをどんどん驚かせていきたいので、ぜひ楽しみにしていてください!

のんさん

ギョギョギョのポーズ

【プロフィール】のんさん
女優、創作あーちすと。1993年兵庫県生まれ。 2016年公開の劇場アニメ「この世界の片隅に」で主人公・すずの声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭「審査員特別賞」を受賞、高い評価を得る。 作品は同映画祭で作品賞、第40回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を受賞した。17年に自ら代表を務める新レーベル『KAIWA(RE)CORD』を発足。シングル『スーパーヒーローになりたい』『RUN!!!』とアルバム『スーパーヒーローズ』を発売。 19年6月ミニアルバム「ベビーフェイス」を発売。20年5月よりオンラインライブ『のん おうちで観るライブ』を毎月開催。創作あーちすととしても活動を行い、18年自身初の展覧会『‘のん’ひとり展‐女の子は牙をむく‐』を開催 
■Instagram:non_kamo_ne/■Twitter:@non_dayo_ne

取材・文/阿部裕華 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 編集/秋元 祐香里

作品情報

映画『さかなのこ』
9月1日(木)よりTOHOシネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー

出演:のん 柳楽優弥 夏帆 磯村勇斗 岡山天音 
西村瑞季 宇野祥平 前原 滉 鈴木 拓 島崎遥香 賀屋壮也(かが屋) 朝倉あき 長谷川 忍(シソンヌ) 豊原功補 
さかなクン 三宅弘城 井川 遥
監督・脚本:沖田修一 
脚本:前田司郎
原作:さかなクン「さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜」(講談社刊)
音楽:パスカルズ 
主題歌:CHAI「夢のはなし」(Sony Music Labels)
製作:『さかなのこ』製作委員会
制作・配給:東京テアトル
公式サイトTwitter
©2022「さかなのこ」製作委員会