15 SEP/2022

仕事がうまくいく人は「いい人脈」を持っている? キャリアのピンチを救ってくれる人とつながる三つのアクション【田中美和】

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人生において最も大切にしたいものは何でしょうか? お金? 名誉? それとも……。

人それぞれの答えがあると思いますが、まず間違いなく、その一つには「人とのつながり」があるでしょう。

田中美和さん

日本でも大ベストセラーとなった書籍『LIFE SHIFT(ライフ・シフト): 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)では、著者の一人であるリンダ・グラットンさんは「人生100年時代を生き抜く上で、有形の金銭的資産だけではなく、『無形の資産』を築くことが重要だ」と指摘しています。

両方の資産のバランスを上手にとり、相乗効果を目指していきましょう、ということですね。

「無形の資産」とは、家族や友人関係、知識、健康など価値をお金に換算できないものを指しますが、「人とのつながり」は大切な「無形の資産」の一つです。

フリーランスの仕事獲得は「人脈」経由が最多

私が理事を務めるフリーランス協会が毎年公表している『フリーランス白書』でも、これを裏付けるデータがありました。(下図)。

田中美和さん

この調査はフリーランスとして働かれている方を対象に行ったのですが、「直近1年間で仕事獲得につながったことのあるもの」を聞くと、「人脈(知人の紹介含む)」が65.9%で最も多く、次に「過去・現在の取引先」が58.3%と続き、「人とのつながり」によるものがダントツに多かったのです。

また、「最も収入が得られる仕事をどこで見つけたか?」についても「人脈」が32.9%で最も多く、その次に「過去・現在の取引先」(30.9%)という結果になりました。

働き方の自由度が高いぶん不安定さもあるフリーランスにとって、「いかに仕事を獲得するか」は死活問題です。そのときに「人とのつながり」が大きな助けになっているという事実が、この調査を通して明らかになりました。

独立後のピンチは「人とのつながり」に助けられた

実際、私自身もこれまで「人とのつながり」に助けてもらったことがたくさんありました。

例えば、フリーランスとして独立して間もない頃。独立したのは約10年前の話になりますが、始めたての頃に仕事を発注してくれたのは、会社員として働いていた時の勤め先企業や、そこで知り合った人たちでした。

田中美和さん

その後、現在の会社を共同創業して、フリーランス希望の女性たちと企業をマッチングさせる事業を始めたのですが、初めはなかなかうまくいかずに困っていたんです。

マッチングサービスなので、そもそも「フリーランスとして仕事を獲得したい女性たち」と、「仕事を依頼したい企業」の両方が一定数集まらないと成立しないんですよね。

よくセミナーなどでこの話をすると「どうやって解決したのですか?」という質問を頻繁に頂きますが、魔法のような解決策は何もありません。小さな行動を積み重ねて地道に広げていった「人とのつながり」が、私たちを助けてくれたのです。

田中美和さん

というのも、私たちの会社は共同創業者が私をふくめて3名いるのですが、マッチングサービスを始めるにあたり、おのおの友人でサービスに興味を持っていただけそうな方に声を掛けて。

ぜひ利用したいという方にはサービスに登録していただいて……というのを、初めのうちは何度も繰り返していったのです。

現在このサービスには2万名以上の登録者がいらっしゃいますが、最初の100人くらいはそのようにして登録いただいた友人・知人たちや、そのまた友人・知人の皆さんでした。

「仕事を依頼したい企業」を増やす方法としても同様で、共同創業者3人が現在や過去の勤め先の人やプライベートの友人・知人の中で、人事関係や会社経営をしている人たちにアポを取って会いに行き、その中からサービスを使ってくださる企業さんが一社また一社と増えていったのです。

「ピンチを救ってくれる人」とのつながりをつくる三つのアクション

では、こうした仕事・キャリアのピンチを救ってくれるような「人とのつながり」はどのようにしたら得られるのでしょうか? 自分自身の経験も交えて、大きく三つのポイントをお伝えしたいと思います。

ポイント1:興味の赴くまま「探索」してみる

「良質な人脈って狙って作れるものじゃないですよね」とは、私が先日取材した、とある売れっ子フリーランスの言葉です。

その方は豊富な人的ネットワークを生かして、仕事の依頼が途切れず、年収1000万円を超えるような高収入を得ている人です。

どうやって仕事の依頼をもらっているかというと、会社員時代から興味のおもむくまま、さまざまな勉強会やイベントなどに顔を出していたからと言います。

仕事に直結したものにかかわらず、バーベキューやアウトドアなど趣味の集まりにも積極的に参加していたそう。

田中美和さん

結局、その時に出会った人たちとのつながりが今の仕事に生きているそうで、「行動の量を増やせば、それだけ良質な出会いにつながる可能性も高くなる」と主張するのもうなずけます。

ですので、「人脈をつくるぞ!」と気負うことなく、まずは仕事でも趣味でも自分自身の興味・関心の赴くままに、さまざまな場へ「顔を出す」ことから始めることが大切です。

ポイント2:共同作業をしてみる

ただ、出会いの総量を増やしても、そこから互いに助け合えるような関係性にはなかなか発展しにくい……という声も聞きます。

そんな人におすすめしているのが「「共同作業をする」ことです。

田中美和さん

「共同作業」というと難しく聞こえてしまうかもしれませんが、仕事はもちろんのこと、プライベートのちょっとしたイベントや勉強会の企画などを仲間と一緒に考え、手を動かす機会を持ってみましょう、という事です。

本連載でも過去に言及しましたが、私は会社員時代にフィリピンやカンボジアの子どもを支援するボランティア団体に参加しており、仕事とは別でさまざまなチャリティーイベントやチャリティーマラソンの企画・運営にたずさわっていました。

この時に出会った方々に助けられた場面が本当に多いのですが、イベント企画のためにともにアイデアを出して話し合ったりと、共同に作業する時間を長く持ったからこそだと思うのです。

だからこそ、会社を辞めた後も人と人として付き合うことができたし、信頼関係を築くことができたのだと感じています。

ポイント3:自分の思いを発信する

田中美和さん

「人とのつながり」は直接の知り合いに助けてもらうだけにとどまりません。例えば、「人が人を紹介してくれる」という形での広がりもあります。

私が独立した時も「女性が生き生きと働き続けられるような社会にしたい」と、会う人会う人に話していました。

するとその中で「だったらこの人に会ってみたらいいよ」「そういうことだったら田中さんに紹介したい人がいるよ」とつないでくれる人がいたおかげでどんどん人の輪が広がっていったんです。

実際、今の会社の共同創業者たちとの出会いも「友人からの紹介」でした。自分の思いややりたいことを発信していると人の輪がぐんぐん広がり、それにまた助けられていったのです。

田中美和さん

いかがでしたか? コロナ禍で人と直接出会う機会が減り、改めて人と人とのつながりを見直したり、その大切さに気づいたりした人も多いのではないでしょうか。

今回のお話が皆さんにとっての「ピンチを救う人とのつながり」に少しでも役立てばうれしいです。

田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事