10 AUG/2022

越境体験が転機をつくる? 「やりたいこと」も「自分の強み」も分からない女性たちへ“アウェーとホーム”行き来のすゝめ【田中美和】

live your life
「自分が将来何をしたいのか分からない……」「今の仕事を続けていていいのかな……」

皆さんにはこんなキャリアの悩みや不安はありませんか? そんな人に私がおすすめしているのが「越境体験」です。

越境体験
「越境体験」とは「現在の自分が置かれている環境とは違う環境に身を置くこと」で、具体的には副業・兼業(パラレルキャリア)や職場以外の場所での学び直し、プロボノ(ボランティア)などを指します。

この「越境体験」がなぜ自分らしいキャリアを見つけるきっかけになるのか、今回はお話ししたいと思います。

20代後半で経験した「越境体験」がキャリアの転機に

法政大学大学院教授の石山恒貴さんは「『自分がホームと考える場所』と『 自分がアウェーと感じる場所』とのあいだを行き来し、 ホームとは異なる知・考え方を獲得していく学びのあり方」を、「越境的学習」と表現されています(※1)。

また、「越境体験」は「今いる会社の外」に出ずとも、職場内での新規事業の立ち上げや、全社横断的なプロジェクトへの参加、労働組合などの活動を通じてもできるといいます。

私自身も、20代後半のころ、キャリアにモヤモヤを感じていた時に「越境体験」をしたことで、自分のやりたいことが見つかりました

当時、私は出版社で働いていたのですが、「一緒にフィリピンに行かない?」という友人からの一言をがきっかけにで、非営利団体でプロボノとしてイベント企画や運営、広報の仕事をすることに。

彼女はフィリピン・カンボジアの児童養護施設の子どもたちを支援するチャリティー活動に参加していて、毎年、寄付金を持って現地を訪問していたのです。

越境体験

学生時代から海外を旅するのが好きだった私は、彼女の誘いを受けて「行ってみたい」と気軽に同行しました。

彼女が参加していた団体は学生や社会人が100名ほど集まって活動している団体で、国内でさまざまなチャリティーイベントを企画しては、寄付金を支援先の施設へ届ける活動をしていました。

現地を訪問して初めて支援先の子どもたちに会った時のことは今でも忘れられません。子どもたちはとてもかわいらしく、私たちへ感謝の気持ちを純粋に示してくれました。

帰国してからも会社員生活のかたわら、そのチャリティー活動にも参加することになり、チャリティーマラソンの企画・運営などにもかかわるようになっていきました。

越境体験で知った自分の「強み」と「本当にやりたいこと」

私が「越境体験」をして初めて気付いたことは、二つあります。

1:自分の強み

私は当時、出版社で編集記者をしていたので、書くことが仕事でした。ただ、周囲には文章が上手な人がとてもたくさんいるので、そのことが自分の強みだという認識はなかったんですね。

越境体験

でも「越境」してみると、その「書くスキル」「伝えるスキル」を周囲から必要としてもらうことができました。

例えば団体のホームページ作成やブログ記事の執筆、メルマガやSNSの運用。ボランティアの仲間たちから「(文章が)分かりやすい」と何度も言ってもらい、とても自信になりましたし、「ああ、これが自分の強みなんだな」と認識することができました。

人との出会いも大きな財産です。会社勤めをしていると、ともすると人間関係が固定化しがちです。

でも、ボランティアを通じて年齢も職業もバラバラの、多様な仲間たちとの出会いがありました。独立してフリーランスで活動しているメンバーや自分で会社を経営しているメンバーとの出会いもあり、私自身が独立する際の後押しにもなったと感じます。

2:自分の本当にやりたいこと

何より「自分の本当にやりたいこと」に気付けたことが最大の財産です。

越境体験

当時、私は女性の働き方に課題を感じていて、それを解決するようなことがしたいと思っていました。

そんな時にボランティアを経験したことで、やりたいことに取り組んでいる人たちとの出会いがあり、私自身も「自分が本当にやりたいこと」に焦点をあてて、生きていきたいと感じるようになりました。

それらに背中を押されて、フリーランスになり、仲間との出会いがあって今に至っています。

越境体験するための四つの方法

では、自分に合った「越境体験」をするにはどうしたらいいのでしょう? 四つの方法をご紹介します。

1)副業を始めてみる

皆さんの会社でもここ数年で「副業解禁になった」ケースは多いのではないでしょうか?

政府が「働き方改革」の一環で推進していることや、コロナ禍でリモートワークが浸透したことにより働く時間・場所の自由度が上がったことなどもあり、副業に踏み出す人が増えています。

でも、「どうやって自分に合った副業を見つけたらいいのか?」と悩む人も多くいらっしゃいますよね。副業探しには大きく「本業を生かす」方法と、「好きなことや趣味を生かす」方法があります。

前者は、本業でWebマーケティングの仕事をしている人が、同様の仕事をフリーランスのマーケターとして請け負うようなケース。後者は、本業とはまったく別のアクセサリー作りや占いなどの自分の趣味を生かすケースです。

越境体験

フリーランスの仕事のマッチングサービスやクラウドソーシングサービス、スキルシェアサービスなどさまざまなサービスが今はありますから、まずはそうしたサービスを検索してサイトを見てみることから始めてみてもいいでしょう。

また、フリーランスの仕事獲得経路は人脈経由が6割以上と最も多いので、副業に興味があることを友人や仕事仲間などに伝えてみるのも効果的です。

2)プロボノ(ボランティア)を始めてみる

「でも、私の会社、副業NGなんです」……はい、そういう会社さんもまだまだ多いですよね。

その場合は私が体験したようにプロボノ(ボランティア)として報酬は得ない形で活動するのも一つの方法です。

非営利団体はどこも人手に困っているところが多いですし、プロボノが活動の中心を担っているケースはめずらしくありません。ぜひ自分の興味・関心に応じて、支援したい団体を見つけてみてください。

越境体験

私のように子どもの支援に関心がある人もいると思いますし、教育や環境保全、動物愛護など、どんな領域だったら興味・関心を持って取り組めそうか? 考えてみましょう。周囲でプロボノ活動をしている人がいたら、話を聞いてみてもいいですね。

3)興味のある学びを掘り下げる

私の知人でも30代や40代から大学院に通う人が増えています。人生100年時代、自分自身をアップデートし続けて、自律的なキャリア形成をしていくことが必要。そのためには、「アウェー」と思われる環境で学んでみるのもおすすめです。

大学院やビジネススクール、興味のある資格取得なども新たな知識が習得でき、人的ネットワークの拡大にもつながります。

私自身、会社員時代にキャリアカウンセラーの資格を取得したことが、その後の起業にもつながっていきました。資格取得のための学びの場で企業の人事や大学のキャリアセンターの方々とも多く知り合い、会社とはまったく違う人間関係から新たな気付きが得られることも多かったです。

4)新規事業や会社横断的なプロジェクトへ手を上げる

「越境体験」は、社外での活動に限った話ではない……と冒頭で石山教授の言葉を紹介させていただいた通り、社内にいても「越境体験」はできます。

今いる部署のいつものメンバーとは異なる経験ができる機会を、自分から探していきましょう。新規事業の開発や、社内横断的なプロジェクトがこれにあたります。

ぜひ自分から積極的に手をあげて、「アウェー」な環境に挑戦してみましょう!

越境体験

自分に合った「越境体験」をどう見つけるか? 具体的なアクションとともにお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか?

いつもと同じ環境に身を置いているとそこから得られる学びも限定的なものになってしまい、それがキャリアの「モヤモヤ感」「停滞感」につながっていきます。同じことを続けていたら「モヤモヤ」や「停滞」を感じるのはごく自然なことなので、それをいかに打破していくか…自分から積極的に行動することで、成長できる状態をつくっていきたいですね。

(※1)石山 恒貴・ パーソル総合研究所著 『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』より

田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事