06 OCT/2022

「みんな敬語禁止~♪ 」企業の会議をアゲる『ギャル式ブレスト』発案者に聞く“心にギャルを飼う”が仕事に与える驚きの効果

今、『ギャル式ブレスト』なるサービスが巷で話題を呼んでいる。

企業のブレストにリアルなギャルが参加し、ギャルならではの直感的で忖度のないコミュニケーションにより、硬直化しがちな社内会議に風穴をあけるというものだ。

バブリー

「ビジネスの素人であるギャルが……?」と眉をひそめる人もいるかもしれない。

だが、すでに大手企業を含め20社以上に導入実績があり、『ギャル式ブレスト』で生まれたアイデアが新規事業として実現したこともあるという。

この『ギャル式ブレスト』発案者が、CGOドットコム総長のバブリーさん。会社勤めをする傍ら、この『ギャル式ブレスト』で働く大人たちの“欲望解放”に取り組んでいる。

「働く人たちがギャルマインドを取り入れて『こんなことやってみたい』って素直に自分の欲望を語れるようになると、もっと日本企業から面白いものが生まれるようになるんじゃね? って思ってます」と話すバブリーさん。

ギャルマインドがなぜ企業と働く人を変えるのか。その理由と効果について聞いてみた。

<プロフィール>
CGOドットコム総長 バブリーさん

1996年5月8日生まれ。山梨県出身。県内トップクラスの進学高を2年で中退。大阪へ家出し、4年間ギャル生活をした後、日本大学商学部入学。その後、中退し、立教大学コミュニティ福祉学部に入学する。同大在学中の2020年、CGO(チーフギャルオフィサー)ドットコムを設立。企業や団体にギャルを派遣する『ギャル式ブレスト』を展開する。「QWS AWARD 2020」グランプリ受賞。ちなみにバブリーという名前は、本名の竹野理香子の「竹(バンブー)」と「理香子」に由来するものであって、決してバブル世代ではない ■Twitter

現代人は「ギャルマインド」を求めていた

編集部

まずは『ギャル式ブレスト』のルールを教えてください。

バブリーさん

ルールはこれですね!(ドンッ)

バブリー
編集部

え。会議であだ名ですか。

バブリーさん

あだ名です。

編集部

それは、どんなにエラい人でも……?

バブリーさん

どんなにエラい人でもです。三菱鉛筆さんで『ギャル式ブレスト』をやった時は社長も参加してもらったんですけど、みんなから「しげピー」って呼ばれてました。

※注:社長の本名は数原滋彦さん。当然ですが、めちゃくちゃエラい人です

編集部

服装も一番派手なもの?

バブリーさん

はい。手持ちの中で一番アゲな服を着て参加してもらっています。

ある市議会議員さんはゴリゴリのギャル男ファッションで参加してくれて、あだ名は「ギャル男」になってました。

編集部

めちゃくちゃインパクトのあるサービスですが、そもそも『ギャル式ブレスト』を思いついたきっかけは何だったのでしょう?

バブリーさん

思いついたのは大学生の時。当時の私はまだ社会人経験もなかったけど、大手企業で働いている元・ギャル男の知り合いが「職場では上司にも後輩にも忖度してばかりで、自分のやりたいように生き生きと働けないんだ」って話をしてたんですよ。

それを聞いて、ビビッとひらめいたんです。みんな心のどこかでやりたいことや信念を持っているはずなのに、職場では正直に言えずに苦しくなってしまっているんじゃ……? って。

だから、みんな「ギャルマインド」を取り入れていければいいなって思ったんですよね。

編集部

ちょっと待ってください、「ギャルマインド」って何ですか?

バブリーさん

「ギャルマインド」を作る要素として私たちが定義しているのは、自分軸、直感性、ポジティブ思考の三つです。

つまり、自分の好きを貫き、己の直感に従い、ポジティブに突き進めってこと。

そんなギャルマインドを持った人たちが企業に増えれば、日本のバイブス上げていけんじゃね? というところから、ギャルマインドをビジネスと掛け合わせたサービスを考え、『ギャル式ブレスト』を各社に提供するようになりました。

2020年から開始して現在までにお手伝いをしてきた企業は20社を超え、ますます引き合いをいただいています。

編集部

なぜ『ギャル式ブレスト』は受け入れられたのだと思いますか?

バブリーさん

一つは社会の変化があったからだと思います。

コロナ禍の影響もあって、この先に何が起きるかなんて、誰にも分からないじゃないですか。そういう時代を生きていく上で何を大切にしなければいけないかというと、自分の心

バブリーさん

自分は一体何がやりたいのか。自分軸で生きていくことが、今、求められていると思うんです。

そんな時代の空気と、ギャルマインドを育てるっていう私たちのサービスがうまくマッチしたんだと考えてます。

編集部

潜在的に「ギャルマインド」を求めている人が多かったのかもしれないですね。

バブリーさん

そうですね。「ギャルマインド」をつくる要素として「直感性」があると言いましたが、ギャルって自分の欲望に素直なんですよね。

(CGOドットコムのメンバーである)リリースペイシーは「ダンゴムシ丸めたい~ドロンコに飛び込みたい~」ってずっと言ってて。 まあ、私は今、四万十川に飛び込みたいんですけど。

バブリー

ダンゴムシを丸めたいリリースペイシーさん

編集部

(子どもみたいだな)

バブリーさん

でも働く大人たちの多くは、何らかの制約によって、それができなくなっちゃってるんですよね。その制約を取っ払おうっていうのが、うちらのやっていること。

つまり、欲望の解放です

編集部

欲望の解放?

バブリーさん

そう。だって、多くの企業には技術もお金もナレッジも、ちゃんとあるわけじゃないですか。

なのに、なんでそこから何も生まれないかというと、社員一人一人が「これがしたい」という欲望を解放できずにいるからだと思うんですよね。

個人がやりたいことを、仕事を通して実現することが大事だし、そういう環境が整っている企業こそが、これからも生き残っていくはず。

開始と同時にまず祈る。ギャルの発案で生まれたサービスも

編集部

ギャルマインドの重要性はめちゃくちゃ伝わってきました。でも、実際、いきなりタメ語で会議しようって言われても、ためらってしまう人も多そうです。

バブリーさん

そうですね。『ギャル式ブレスト』の参加者も最初はみんなぎこちないし、いざギャルを目の前にすると「この人たち本当に大丈夫?」ってなることも多いです。

編集部

その壁を突き破るために、まずはどういうことするんですか。

バブリーさん

祈ります。

編集部

(おかしなことを言い出したぞ)

バブリー

※実際の「祈り」の様子

バブリーさん

(CGOドットコムのメンバーである)ぱにぱにぱにぱにともちんぱに相談したら、「祈ればいいんじゃない?」って言われて、なるほどなと。

企業さんの中にはギャルのことを怖いと思っている人もいるみたいなんですよ。だから、「ギャル怖くないよ〜、ギャル最高〜」って最初にアイスブレークとして祈ります。エンヤの曲を流しながら。

編集部

まさかのエンヤ。

バブリーさん

あと、タメ語ってすごい難しいから、ギャル語の練習時間をつくって、「アゲ~」とか「それな~」とか、このワードは使ってみようねみたいなルール設定はしています。

編集部

実際にこの『ギャル式ブレスト』の中で生まれたアイデアが、かたちになった事例ってあるんですか?

バブリーさん

三菱鉛筆さんが去年の6月から『Lakit』というオンラインレッスン配信サービスを始めたんですけど、それは『ギャル式ブレスト』から出た「手書きでなんかものづくりするのって良いよね〜」っていうアイデアが元で生まれたんです。

社長のしげピー(※数原滋彦さん)からサービス開始の報告を受けたときは、うちらが企業さんの力になれたんだ!って、すごくうれしかったですね。

心の中にギャルを飼って、自分の欲望に素直になってみて

編集部

「ギャルマインド」が日本の企業を変える可能性を、ビシビシと感じはじめてきました。ただ、普通の会社員がいきなり「ギャルになれ」と言われても、なかなか難しそうというのが本音です……。

バブリーさん

うちらは別に、みんながギャルになれって言いたいわけじゃないんですよね。大事なのは、心にギャルを飼うこと

編集部

心にギャルを飼う…?

バブリーさん

心にギャルを飼うと、問い掛けてくるんですよ。「あんた、本当は何がしたいの?」って。

いきなり自分の欲望に忠実になれないってときには、まずは小さなことでも自分の欲望に素直になってみたらいいと思う。

バブリーさん

「マックのハンバーガーが食べたいけど太っちゃうから……」って我慢しちゃう人もいると思うんですけど、そんなことを気にせず、食べたいと思ったらマックを食べる。

さっき「四万十川に飛び込みたい」って言ったけど、四万十川に今すぐ行くことはムズい。でも、マックなら秒で行けるじゃん?

そうやってちょっとずつ、自分のやりたいこととか好きなことを許してあげる練習をするのが、大事かなって思います。

バブリー
編集部

まずは小さなことから始めるのはいいですね。

では、「ギャルマインド」の要素にもあった「ポジティブさ」を保つためには、どうすればいいと思いますか?

バブリーさん

なんでも自分のせいにしないのは大事かな。よく他責は良くないと言われてるけど、自責が強すぎるのも正直どうかと思うんですよね。

うちのギャルメンバーは、本当に自分軸で生きててすごい。例えば、私との待ち合わせに遅刻すると「バブたん待って。絶対YOSHIKIも遅刻してると思うの」とか言ってくる(笑)

編集部

YOSHIKIを盾に出してきたか〜。でもそうやって自分を肯定するのがコツなんですね。

バブリーさん

そうそう。 「雨が降っても自分のせい」って格言があるじゃないですか。私からすると、絶対そんなわけないじゃん! って思う。

編集部

それはそう(笑)

バブリーさん

たぶん自責グセが強い人は元々真面目な人だと思うから、やらなきゃいけないことはちゃんとやってると思うんですよ。

だから、たまには人のせいにすることも必要じゃん? って伝えたいですね。

あんたの人生は、あんたしかハッピーにできない

編集部

バブリーさんは今年から会社勤めもされてるんですよね。会社員になってみて、忖度しそうになった瞬間はありますか。

バブリーさん

ありますよ。風通しの良い会社ではあるのですが、やっぱり特有の文化を大切にしなければならない場面もある。

組織の一員として、そこで生き抜くためのコミュニケーション術を身につけなきゃいけないんだな~っていうのは、理解してきました。

編集部

それでも「ギャルマインド」を大切にすることで、会社で何か変化は起きましたか?

バブリーさん

ん~、上司を誘ってみんなでプリクラを撮りに行ったら、それまでめちゃくちゃカタい写真だった上司のTeamsのアイコンが、爆盛れのプリクラになってました(笑)

編集部

え、何それかわいい!

バブリーさん

そのアイコンを他部署の社員からも突っ込まれることがあるらしくて、その度「僕、ギャルなんで」って言ってるみたいです(笑)

編集部

プリクラがアイコンの上司ならチャットもガンガン送れるし、コミュニケーションも活発になりそうですよね。

忖度まみれの職場に気を遣ってしまって「やりたいことが実現できない」という人がいたら、どんな声を掛けてあげたいですか?

バブリーさん

うーん、まずうちらを呼び出してよ、かな(笑)。

編集部

それは確かに(笑)

バブリーさん

でもやっぱり、「どの選択肢が自分を最もアゲにできるのか? まず考えてみなよ」と言いたいかな。

あんたの人生はあんたしかハッピーにできないし、人生は1回きりなんだから。

一生懸命職場のエラい人に気を遣ったとしても、その人はあんたの人生の責任をとってくれないんだよって伝えたいですね。

バブリー
編集部

忖度ばかりして、つまらない人生を送るのはもったいないですよね。

バブリーさん

実は『ギャル式ブレスト』って、どちらかと言うと世の中に中指立てるつもりで始めたんですよ。

そしたら、中指を向けた相手側の人たちも、内心では同じく中指を立てたがってたことに気が付いて

編集部

と言うと?

バブリーさん

会社の中にいると、世代とか役職とか、いろいろなことで線を引きたがるけど、世の中に対して窮屈さを抱えているのはみんな一緒だって気付いたんです。

だったら、面白いことをやりたいと思っている人同士で、もっとどんどん絡んでいったらいいじゃないですか。

編集部

決して敵対し合うものじゃないんですね。

バブリーさん

そう。その突破口になるのがギャルマインド。ギャルを心に飼えば、みんな友達ですよ。

この間とある企業のカンファレンスに参加した時、いろんなエラい人たちの前で「うちらギャルといえば、拳でしょ。拳であいさつしましょう」って言ってみたら、みんなグータッチしだして。

編集部

めっちゃ良い光景……。

バブリーさん

だからみんな、どんどん「私はこれがやりたい」って言っていこう。それで、口だけじゃなくてやりたいことを遠慮なくやっていけばいいんですよ。

その姿を見た周りの人が、「自分もこんなふうに生きたい」ってどんどん波及していく。一人一人が変わったら、絶対変わると思うんですよね、日本は。

バブリーさん

だから、みんなでバイブス上げていこ〜!

取材・文/横川良明 写真/ご本人提供 編集/柴田捺美(編集部)