“Kawaii”パワーは人生迷子の突破口? サンリオピューロランド館長・小巻亜矢に聞く「働く目的」を知る方法

忙しい毎日を過ごしていると、つい働く目的を見失ってしまいがちなもの。「自分が何に対して情熱を持てるのかを、もう一度思い出したい」という人は多いのではないだろうか。

そんな人に届けたいのが、サンリオピューロランド館長の小巻亜矢さんのメッセージだ。

小巻亜矢さん

ハローキティやマイメロディ、シナモロール……。かわいいキャラクターたちに囲まれて働く小巻さんは、「かわいいものを見たり触れたりすることは、自分自身がどう生きていきたいのか、何に情熱を燃やせる人なのかを見つける手がかりになる」と話す。

それは一体どういうことなのだろうか? “Kawaii”が持つパワーについて教えてもらった。

Kawaiiは“素”の自分を思い出させてくれる

先日、PwCコンサルティングの髙木健一さんとの共著で『Kawaii経営戦略 幸福学×心理学×脳科学で市場を創造する』(日経BP)を出版させていただきました。

この本では、幸福学や脳科学の観点から、「かわいい」が私たちの感情や行動にどのような影響を与えるのかを「Kawaiiの力」として分析し、解説しています。

そして、今まさに仕事や人生に悩んでいる皆さんに知ってほしいのは、Kawaiiには「個のパーパス」、つまり自分が生きていく目的や働く意味、「このためなら頑張れる」と情熱を燃やせるものを発見したり思い起こさせたりしてくれる力があるということです。

それは具体的にどういうことなのか。まずは、私がKawaiiの力を実感したエピソードをご紹介します。

小巻亜矢さん

小巻さんのお気に入りのキャラクター、ウィッシュミーメルと

以前、社内研修の打ち合わせのために、講師の女性をピューロランドにお招きした時のことです。

その方はとてもクールな雰囲気の方で、きっとカバンの中には、キャラクターグッズのようなものは全く入っていなかったのではないかと思います。

帰り際に「少しピューロランドの館内をご覧になりますか?」とお誘いした時も、正直あまり気乗りしているようには見えませんでした。

ところがグッズ売り場の前に来た途端、急に彼女の足が止まり、「子どもの頃、親に連れてきてもらった記憶がよみがえってきた。あまり裕福な家庭ではなかったのに、私のことを思って親が連れてきてくれたんですよ」とぽろぽろと涙をこぼしていらっしゃったのです。

そして、「ああ、昔好きだったこの子、まだいたんですね」と懐かしそうにキャラクターグッズを眺めていらっしゃいました。

結局その女性は、けろけろけろっぴのグッズを大きなショッパー袋いっぱい購入してお帰りになったのです。

最後に見せてくださった笑顔は、研修の打ち合わせ中に見せていた表情とは全く異なる、彼女の“素”の笑顔でした。

小巻亜矢さん

いかがですか? 皆さんもきっと、かわいいものを見て癒されたり、やわらかい感情を抱いたことはあるのではないでしょうか。

先ほど例にあげた女性のように、かわいいものに触れて幼い頃の記憶を思い出す経験をしたことがある方も、いらっしゃるかもしれません。

そこでふと頭に浮かんだものの中に、自分が本当に好きだったものや、熱中していたこと、うれしかったことなどが含まれていると思います。

そう、Kawaiiは「素の自分」を思い出すきっかけをくれるのです。

小巻亜矢さん

忙しい毎日を送っていると、なかなか自分の心の声を聞く暇がありませんよね。

社会や会社の枠組みの中で「こうあるべき」「こうしなくちゃ」という考えに縛られて、素の自分はどんどん見えなくなってしまう。

そんな中で、「本当にこの仕事を続けていていいか?」「何のためにこの仕事をしているんだろう?」というモヤモヤもたまっていってしまいます。

そうした状況で自分自身を見つめ直すために必要なのは、大量に本を読んだり、フルマラソンを走ったりといった、大変なことではありません。

幼い頃に大切にしていたぬいぐるみやおはじきなど、自分が好きだったかわいいものに触れてみる。そんな小さなことで十分です。

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「子どもの頃はこのぬいぐるみで遊ぶのが好きだったな」とか、「小さい頃はキラキラしたものに夢中だったな」とか、すっかり忘れてしまっていた幼い頃の記憶を思い出してみてください。

すると、その感情が別の感情と結びつき、過去の自分について芋づる式に思い出すことができます。

そうやって“素”の自分と向き合ってみることで、自分が本当に好きだったことや熱中できるものなど、キャリア選択にも役立つ「個のパーパス」が見えてくると思います。

「個のパーパス」は、人生の選択の指針になる

確かに、「個のパーパス」は生きていくために必ずしも必要なものではないかもしれません。

それでも私は、これからの時代を生きる女性たちこそパーパスを持っていた方がいいと思います。女性の人生は、仕事もプライベートも選択の連続ですからね。

小巻亜矢さん

これから先、皆さんはあらゆる選択を迫られます。その中で「後悔しない道」を選びとっていくには、自分なりの指針となるものが必要です。そこで、個のパーパスが必ず役に立ちます。

また、「個のパーパス」は、一度決めたらずっと変えてはいけないというものではありません。

年齢を重ねるとともに、周りの環境も自分自身の考えも変化しますから、それに合わせてパーパスも変化するのが自然です。

ちなみに、私の現在のパーパスは「Kawaiiの力で世の中の幸福度を上げて、ギスギスした世の中にやさしさをとどけること」と「現在の立場や、これまでの経験をそのために使い切ること」の二つです。

この二つのパーパスは若い頃からずっと持ち続けてきたものではなく、コロナ禍をきっかけにはっきり言語化できました。

小巻亜矢さん

私は新卒でサンリオに入社していますが、当社の「ともに生きる仲間たちと信じあい、仲良く生きていくこと。それが私たち人間にとっての本当の幸せ」という理念への共感は昔からずっと変わりません。

その一方で、コロナショックで世の中の価値観が変わり、自分が置かれている立場も変わり、ふと立ち止まって「自分は今何をしたいのだろう」と考えてみたんです。その結果たどり着いたのが、先ほど申し上げた二つのパーパスでした。

現在のパーパスがクリアになってからは、仕事への意欲もさらに上がりましたね。目の前にある仕事も、その延長線上にある物事も、すべて意味を持ち始めたからです。

Kawaiiの力で世の中の幸福度を上げる。この目的に近づけるのであれば、困難なことでもどんどんチャレンジしていきたいです。

あなたの身近にある「Kawaiiスイッチ」を発見して

もし、Kawaiiの力に少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひサンリオピューロランドに足を運んでみてください。

小巻亜矢さん

私自身もここで働きながら、かわいいキャラクターたちにたくさんの元気をもらっていますが、きっと皆さんも童心に返る経験ができるはず。

ショーやパレード、グリーティングでお客さまの笑顔のために頑張るキティちゃんたちを見ていると、本当に感動しますよ。

ちなみに、当社の従業員はみんな、キャラクターたちを心から愛するあまり「一緒に働く仲間」として認識しています。

「ポムポムプリンくんってさ、ちょっと面白い一面があるよね?」「マイメロディちゃんがフリフリの可愛い衣装着てたの見て、クロミちゃんがうらやましがっていたよ。今度クロミちゃんにも着せてあげようよ!」などの会話も日常茶飯事です。

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従業員の一人一人が心から「もっとこのキャラクターを活躍させてあげたい」と考えているからこそ、ピューロランドで開催されるショーやイベントのアイデアは尽きないのだと思います。

大人たちがキャラクターに夢中になっている様子は、社外の人から見たらちょっと異様かもしれません。でも、私にとってはとてもいとおしい光景。「このかけがえのない場所を守るために、もっと頑張らなくては」と思うのです。

繰り返しになりますが、皆さんの身近にも、素の自分を思い出させてくれるKawaiiはたくさんあるはず。

キャラクターでもいいですし、お花や雑貨でも「かわいいな」と思うものならどんなものでもOKです。

自分だけの「Kawaiiスイッチ」を見つけて、いつも目に入るところや触れられるところにおいてみてください。

あなたが“素”の自分に戻り、人生において「情熱を燃やせる何か」を見つける上で、きっと大きな力になってくれますよ。

小巻亜矢さん

株式会社サンリオエンターテイメント 代表取締役社長
サンリオピューロランド館長
小巻亜矢(こまき・あや)さん

1983年に株式会社サンリオ入社。結婚退社、出産などを経てサンリオ関連会社にて仕事復帰。2014年サンリオエンターテイメント顧問就任、15年サンリオエンターテイメント取締役就任。16年サンリオピューロランド館長就任、19年6月より現職。その他、松竹株式会社 社外取締役、子宮頸がん予防啓発活動「ハロースマイル(Hellosmile)」委員長、NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事、一般社団法人SDGsプラットフォーム代表理事。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了 ■Twitter

取材・文/一本麻衣 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 編集/柴田捺美(編集部)

書籍情報

小巻亜矢さん

『Kawaii経営戦略 幸福学×心理学×脳科学で市場を創造する』(著者: 髙木健一、小巻亜矢 /日経BP 日本経済新聞出版)

PwCコンサルティングとサンリオエンターテイメントがタッグを組み、「Kawaii」を活用した企業の経営戦略を解説。脳科学、幸福学の観点でKawaiiのメカニズムを分析し、ビジネスへの応用を研究した一冊

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