スキルと人柄、人事はどちらを重視する? 「経歴に自信がない転職者」の勝ち筋は〇〇にあった

大きな声では言えない本音、ぶっちゃけます!
採用担当者の覆面ガチトーク

表立って聞きにくい「これってどうなの?」という転職にまつわる女性たちの疑問を中途採用担当者に直撃!人事のリアルな見解とは……?

覆面座談会

仕事をする上で、スキルや経験があることはもちろん大事。同時に、組織で働く以上は「その会社に合うか」という人物面もまた、切っても切り離せない要素だ。

では採用活動の際、企業の人事担当者はスキル・経験と人柄のバランスをどのように見て、転職者の採用の可否を判断しているのだろう。

3名の中途採用担当者に、率直な意見を教えてもらった。

<お話を聞いた中途採用担当者>
●IT系メガベンチャーの採用担当者・加賀さん(仮名)
●大手アパレル企業の採用担当者・中野さん(仮名)
●スタートアップの採用担当者・石田さん(仮名)

スキルor人柄、どっちを選ぶ?

編集部

「スキル・経験は理想的だけど、人柄が自社に合わない人」と「自社にとって理想的な人柄だけど、スキル・経験はない人」のうち1名を採用する場合、どちらを選びますか?

加賀さん

どちらかを選ぶなら、後者の「理想的な人柄」ですね。

石田さん

私も一緒だな。

中野さん

同じく。

編集部

回答が一致しましたね。なぜ「理想的な人柄」なのでしょう?

加賀さん

人柄が合わない人が入ると、社内が荒れるんですよ。

他の人に悪影響を及ぼすくらいだったら、たとえ経験がなくても自社に合う人の方が絶対にいい。

石田さん

全く同意見です。特に社員数50人未満の立ち上げフェーズのスタートアップの場合、組織を荒らす採用は絶対に避けたいので圧倒的に人柄ですね。

中野さん

小さいチームや会社であるほど、一人の存在感は大きくなります。他のメンバーへの影響も大きいから「同じ志を持って働けるか」は本当に重要。

中野さん

あくまで経験則ですが、長い目で見た場合に、スキル・経験がいくらあっても人柄が自社に合わなければ、結局は活躍できないケースが多いようにも思います。

だから「スキルは理想的だけど、うちには合わないね」という理由で見送ることも結構あるんですよ。

条件付きで採用するなら……?

編集部

先ほどの2択は極端でしたが、「こういうケースであれば」という条件付きで採用する場合、スキル・経験と人柄のバランスはどう変わりますか?

石田さん

未経験歓迎の場合は人柄勝負になりやすいですね。営業やカスタマーサポートなど、「接客経験があれば未経験でもOK」といったポジションは人柄を重視します。

逆に即戦力を求められたり、エンジニアのような技術職だったりと、専門性が上がるほどスキル・経験がない状態でのチャレンジは、育成枠がない限り難しいと思います。

加賀さん

事業フェーズやチームの規模も影響しますね。3〜4人目の採用まではスキルも人柄もめちゃくちゃ重視しますが、5〜10人くらいのチームになってくると育てる余裕も生まれる。

スキルが足りない場合、そういう企業は狙い目だと思います。

覆面座談会
編集部

一言で大手企業やスタートアップといっても、募集している事業部やチームによって「育成の余力があるか」は異なるわけですね。

石田さん

人数が増えるほど、マネジメントクラス、ミドルクラス、メンバークラスとチーム構成ができていきます。そうなるとメンバークラスの採用要件は緩和される傾向にありますよね。

特に現場で動けるメンバーを増やす場合、スキル・経験よりも実行力があることを重視するケースも。そうなるとソフトスキルを武器にチャレンジしやすいと思います。

編集部

販売職の場合はいかがですか?

中野さん

販売職の場合、基本的には店舗のチームで働きます。ほとんどの店舗は少人数ですから、密にコミュニケーションを取りますし、チームワークが求められます。人間関係が退職の要因にもなりがちなので、人柄はとても大事です。

実際に販売員を採用する場合、配属予定の店舗の店長やスタッフの顔を思い浮かべながら、「この人が入ったらどうなるかな」とイメージしながら選考をしています。

編集部

スキル・経験より圧倒的に人柄が重要なのですね。

中野さん

人柄が良ければ、みんなが頑張って仕事を教えるんですよ。そうなればスキルは後から身に付けられますから、「チームに合うか」の方を重視しますね。

編集部

逆に「スキル・経験は理想的だけど、人柄が自社に合わない人」を採用するのは、どんなケースでしょう?

石田さん

一人で完結する業務を任せる場合ですね。しかもその業務をできる人が少なく、候補者がほとんどいないような状況であれば採用するかもしれません。

「人柄が良い候補者」のために配置転換することも

編集部

実際に採用活動をする中で、「自社にとって理想的な人柄だけど、スキル・経験はない人」を採用したことはありますか?

加賀さん

結構ありますね。

中野さん

候補者自身に学ぶ姿勢があり、育成でカバーできそうだと判断すれば、採用することはあります。

石田さん

営業での応募だったけど、カスタマサポートから経験を積むのならありかも」と、別ポジションでの入社を打診し、採用となるケースもありますね

加賀さん

マネジメント経験はないけど人柄がめちゃくちゃ良い人からマネジャー募集に応募があった際、既存社員の配置転換をして、ジュニア層として採用をしたことがありました。

社内にマネジメント層がそれなりにそろっている前提ですが、人柄が良ければ社内の人事を動かす方針に切り替えることもあります。

石田さん

当社でも、急きょ育成枠を設けて採用したことがありますね。

中野さん

ポジションや給与など、条件面を調整して採用するケースは多いと思います。

覆面座談会
編集部

人柄がめちゃくちゃ自社に合う場合、時に人事異動をするなど社内調整をしてまで採用することもあると……!

石田さん

今は採用難ですからね。「良い人がいたら何としてでも採用したい」というのは人事共通の思いです。

会社側が候補者に合わせて動く姿勢は、以前より強まっているんじゃないかな。

編集部

その「良い人」は「仕事ができる」だけでなく、「人柄が良い」の意味も含まれているのですね。

石田さん

もちろんです。人柄、めっちゃ大事ですよ。スキル・経験なんて会社が変われば通用しないことの方が多いですから。

採用する側の観点としても、スキル・経験への意識が採用の邪魔をしている面もあると思っています。もちろん過去の積み重ねは大事ですけど、本当は全ての人に採用の可能性はあるはず。

それだと収拾がつかないから、分かりやすいスキル・経験で線引きをしているわけです。

スキル不足なら「フォーマット通りの書類」は避けて!

加賀さん

とはいえ、書類選考の段階で「めっちゃ良い人そうな人」っているんですよ。その場合、スキルが足りなくても「多分良い人だから会ってみてください」って面接官に依頼しちゃう。

編集部

「良い人そう」は書類のどういうところから読み取れるのでしょう?

加賀さん

「自己PRの内容が自社のスタンスに合う」といった内容ももちろんありますけど……書き方とか、言葉選びかな?

「人と真摯にコミュニケーションを取ってきたんだな」「手掛けてきたプロダクトが本当に好きだったんだな」とか、伝わってくる経歴書ってあるんですよ。

編集部

書類から感じる「良い人そう」は、実際に会ってみてもそんなにズレはないものですか?

加賀さん

そう思います。

石田さん

逆に「この人癖ありそうだな」と思ったら案の定そうだったりもする。書類の印象はある程度実際の印象と合致する感覚がありますね。もちろん外れることもありますが。

加賀さん

フォーマット通りの書類が一番分かりづらいですよね。何も感じないというか。

編集部

職務経歴書の書き方に悩んだ末、テンプレートをカスタマイズすることは多いように思いますが、それだと人柄のイメージがつかず、結果的に「スキルが足りないから」と不通過になってしまうことが起こり得る……?

加賀さん

フォーマットやテンプレートは全然悪くないんですけど、悪く言えば「人事にとって分かりやすい経歴書」ができ上がるので、採用要件に照らし合わせて明確にスキルで判断できちゃうんですよ

編集部

なるほど……!

加賀さん

逆に何かしら書類から魅力を感じられれば、通過の可能性も出てきます。採用要件を満たしていないのであれば、思いが伝わるような書類を作った方がチャンスは広がると思いますね。

覆面座談会
石田さん

そもそも自分の経歴をまとめるのは難易度が高い作業。きれいにコンパクトにまとめられる時点で「仕事ができそうな人」という印象にはなります。

たくさんの情報を精査し、分かりやすく人に伝えるのは仕事の基本ですから。

中野さん

だからこそ、長すぎないことも大事ですよね。

一生懸命伝えようと思うと情報量が多くなりがちですが、自己主張が強く見えてしまうなどネガティブに作用しがちです。「書類を長く詳しく書く」は避けた方がいいと思います。

加賀さん

職務経歴書は最初に自分をアピールするもの。採用要件に応じて「何をどうアピールするのか」を意識して書くことが重要ですね。

中野さん

ただし、「全ての会社にとって良い人」は存在しません。会社によって合う、合わないは絶対にあります。

だからこそ人柄をアピールする際は「自分らしさ」を意識してもらえるといいなと思います。

企画・取材・文/天野夏海