転職理由の伝え方は「きっかけ」と「キャリア軸」の切り分けがポイント! 人事にポジティブに伝えるのは危険かも?
表立って聞きにくい「これってどうなの?」という転職にまつわる女性たちの疑問を中途採用担当者に直撃!人事のリアルな見解とは……?
転職者の頭を悩ます、転職理由の伝え方。ネガティブな理由をどう伝えるのがベストなのだろう。
3名の中途採用担当者に聞いてみると、「ポイントは転職理由の切り分けにある」とのこと。一体どういうことなのか、詳しく紹介しよう。
●大手アパレル企業の採用担当者・中野さん(仮名)
●スタートアップの採用担当者・石田さん(仮名)
「うその転職理由」は墓穴を掘る?
転職理由はどう伝えるのがいいでしょう?
「その会社ではできない仕事に挑戦したい」といったポジティブな理由であればそのまま話してもらえればいいですけど、問題はネガティブな理由の場合ですよね。
転職理由を聞き出す難しさは採用側も感じています。
候補者が言いにくいのも分かるので、「本当のことは言っていないだろうな」と思いながら聞いている節はありますね。どこまでが本当なのかを精査する必要がある。
ちょっとでもうそが見えた時点で、疑いの目で見ますよね。「本当にこの仕事がしたいのかな」「本当にうちの会社で働きたいのかな」といちいち疑うことになる。
つまりうそをつくことは、自ら採用側の懸念点を増やしているともいえます。
転職理由の中には言いたくないこともあるだろうけど、退職には絶対に理由がある。だから、少なくとも変に取りつくろう必要はないと個人的には思いますね。
とはいえ、「上司が嫌でした」みたいな理由はなかなか言えません……。
それはそれでいいんですよ。大事なのはその先です。
その先、ですか?
転職理由には二つの要素がある
人事としては再現性を知りたいんですよ。
そういう意味では「上司が嫌」だけの転職理由は不安です。どんな環境でも合わない人はいますから、同じことを繰り返す可能性が高いじゃないですか。
だからこそ、「上司の何が合わなくて、それによってどんな問題が生じ、それに対して自分はどのようなアクションを取ったのか」が知りたいですよね。
その上で「何がクリアできれば続けられたのか」が言語化できていればいい。
その際のポイントは、他責にしないこと。組織にいる限り、全て自分の思う通りにはならないですからね。
転職理由を客観的かつ冷静に振り返り、「何がダメだったのか」を分析する必要があるのですね。
もう一つ大事なのは、キャリア軸の意識です。転職理由と一言でいっても、「転職のきっかけ」と「キャリア軸」の二つがあるはずなんですよ。
「転職のきっかけ」と「キャリア軸」ですか?
きっかけの多くは「上司が嫌」など環境や待遇への不満であり、ネガティブなものだと思います。でも、「じゃあ次はどういう会社を選ぼうか」というのは、自分のキャリア軸の話ですよね。
転職のきっかけが「給料が低い」だったとしても、「今後はこういう環境で働いて、スキルアップして給料をアップさせたい」など、何かしらキャリアに関する希望もあるはずです。
「あなたは何をしたいの?」を意識して
絶対にやってはいけないのは、「転職のきっかけとなる出来事=転職理由」にすること。多くの人がおちいりがちですが、重要なのはキャリア軸の方です。
本来は転職理由の中に「自分のキャリア軸に基づく理由」があって、そこに志望動機がつながるはず。それがなければ面接もうまくいかないし、良い転職にはなりにくいと思います。
キャリア軸と志望動機が重なっていれば、転職のきっかけは正直何でもいいですよね。給料が安かったら転職したくなるのはこちらも理解できますし。
ブラック企業やハラスメントなど、環境から逃げる転職があるのはこちらも理解しています。それは事実として伝えればいい。
一方、「次はどういう道を歩むのか」は自分の未来のキャリアの話です。それがきちんとある人はいいなと思います。
ネガティブな理由を解消するだけの転職はあまり意味がありません。
もちろん不満を解消できる会社を選ぶに越したことはないけど、100%解消できるかは分からないじゃないですか。だからこそ「次の会社で何がしたいか」に焦点を当てることが重要です。
特に女性に多いのは、「子育てと両立しやすい環境で働きたい」という転職理由。
私も子育て中なので理解はできますが、子どもはいつか大きくなります。「あなたは何をしたいの?」は意識してほしいですね。
退職理由を環境要因だけで終わらせないことがポイントですね。
「子育てと両立しながらこういう仕事で自分のスキルを発揮して、将来はこんなキャリアを描きたい」と話せる人の方が魅力的なのは明らかですよね。
単に「子育てと両立しやすい環境なので貴社で働きたい」と言われてしまうと、人事としては「それなら別の会社でもいいんじゃない?」と思ってしまいます。
キラキラした転職理由、それって本当?
「転職理由はポジティブに伝えよう」と言われることもありますが、それについてはどう思いますか?
むしろネガティブな理由を言ってくれた方が、採用側としては納得感があるんですよ。ほとんどの人がキラキラした転職理由をお話ししてくれますけど、「本当か?」って疑っちゃう。
ポジティブな理由ばかりが並んでいると違和感を抱きますよね。だからこそネガティブな理由は率直に伝えた方がいい。
本音を言ってもらえる方がありがたいし、「正直に話してくれる=信用できる」という意味で、私は一緒に働きたいと思うことが多いです。
とはいえ、ネガティブな転職理由は印象が悪くなってしまいそうな気がするのですが……。
だからこそ、キャリア軸が大事なんですよ。転職のきっかけはネガティブでよくて、ポジティブに伝えるべきはキャリア軸の方。その切り分けが大事です。
「転職のきっかけとなる要因があって、自分の力量ではどうすることもできないので会社を変えたい。
せっかく転職するのであればこういうチャレンジができる会社でスキルアップがしたい」という理由であれば前向きな印象ですよね。
転職理由がネガティブなのであれば、なおさらキャリア軸を意識した方がいいですよ。そこがしっかり話せれば、面接官もそっちにフォーカスしますから。
なるほど……!
キャリア軸がないと、ただ逃げるだけの転職になってしまいます。
気持ちは分かるし、あまりにひどい環境にいるなら逃げてほしいけど、企業は「しんどい人を救済する採用」はしません。
だからこそ「どういう仕事をしたいか」「どんなキャリアを築いていきたいか」はきちんと考え、説明ができるように準備しておいた方がいいと思います。
企画・取材・文・編集/天野夏海
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