職場の「忙しぶる女」にイライラがとまらない! 脳科学者が解説する理由と対処法【黒川伊保子】

黒川さん

「忙しい」「大変だ」と言って騒いでいるわりに、仕事は全然進んでいないしこれといった成果も出さない……あなたの職場にもそんな女性がいませんか?

この記事では、『女女問題のトリセツ~イラつく女への7つの対処法』(SB新書)を上梓した、脳科学者・AI研究者の黒川伊保子さんがWoman type読者から寄せられた女性同士の人間関係の悩みに回答。

脳科学の観点から、問題の原因とイライラやモヤモヤを解消するのに役立つ考え方のヒントを紹介します。

Aさん
29歳/営業事務

同僚の女性でいつも「忙しい忙しい」と言っている割に、ただバタバタしているだけで全く仕事をしていない人がいます。

自分の部下でもないし、放っておけばいいのですが、見ているだけでも無性に腹が立ってきます。

彼女にイラっとする気持ちをどうすればいいでしょうか?

 

女性脳は「ことのいきさつ」に目を向ける傾向がある

多くの女性は、「ことのいきさつ」を瞬時に反すうすることが得意です。つまり、「ずーっとバタバタしている。その割に成果が出ていない」という、時系列の関連を認識しやすい傾向があります。

Aさんのように、時系列の関連の認知能力が高い女性は、会社でも「段取り上手」「気配りができる人」として評価が高いはず。

このため、大げさなプロセスを経ても小さな成果しかでない人を見ると、いや~な感じがするのです。時間や労力の無駄遣いを見た気がしてしまうから

黒川さん

ちなみに男性は、「成果」に集中するのでプロセスと成果の乖離には気付きにくいのですが、成果と報酬が乖離していると不快になる傾向があります。

つまり、自分より高い報酬をもらっているのに成果を出さない人を見ると腹が立つけれど、自分より時給の低い人がバタバタしていても、自分に悪影響さえなければあまり気にならないことが多いというわけです。

仕事のできない人がチームを救うこともある。イライラを同情心に変えてみて

そして、Aさんがこれ以上イライラしないようにするためにおすすめしたいのは、相手への見方を変えることです。

その人がわざと会社に損をさせようとか、周りに嫌がらせをしようとか、悪意からバタバタして成果を出していないケースは考えにくいですよね。本当は仕事ができるくせに「忙しいふうを装って仕事をしない人」ではないと思います。

なぜなら、成果を出せる人の脳は、ちゃんと「成果を出す方が気持ちいい」と分かっているのでそうするものだからです。

忙しいふうを装って仕事をせずに成果を出さないなんて労力の無駄。できる人なら、さっさと仕事を片付けてしまうはずなのです。

というわけで、大げさにバタバタしているけど仕事の結果が伴わない人というのは、単なる「できない人」というわけ。悪意がない人を憎んでも仕方ないわけですから、「仕事ができなくてかわいそうに……」と同情してあげて、気にとめないことが大事です。

黒川さん

また、どんな組織にも必ず、できる人とできない人が共存しているものです。そして、できる人は常にできない人のことを認知しつつ生きていくことになります。それは、チームプレーの避けられない定めのようなものです。

ただし、できない人は、できる人たちが全く気に留めていなかったような課題に気づいたり、精神的なタフさを持ち合わせていたりもします。そのため、日頃のパフォーマンスは低くても、不測の事態のときにその人の存在がみんなを救うこともある。

あとは、仕事のできない人が仮にチームに少しいたとしても、「欠点がたくさんあっても組織でやっていける」と思うと少しほっとしませんか? 同質の人だけでなく、いろいろな人がいるからチームは強くなる。そう考えると、仕事ができない人も少しは必要なのかもしれません。

黒川さん

とはいえ、この手の「バタバタしているけど仕事で成果は出さない」タイプの人が出世したり、起業して成功したり、人から尊敬を集めることはほぼありません。その人の良い部分を周囲が見落としていたなら話は別ですが、その人に追い抜かれてしまうようなことはきっとありませんから、脅威と見なす必要もないと思います。

というわけで、「忙しそうにしているだけで働かない人」ではなく、「かわいそうな仕事ができない人」と捉えて、その人の分まで稼いであげよう、くらいに思ってしまえれば、楽になります。

また、できない人に冷たい態度をとったり、その人のことを悪く言ったりしていると、あなたへの評価も下がってしまう。けれど、そういう人にも温かな目線を向けてフォローしていれば、周囲からも信頼されるようになる。

結局、人に対しておおらかでいることは、自分自身の利益につながります。そう考えてみると、少し楽になるのではないかと思います。

黒川 伊保子さん

<プロフィール>
黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)さん

1959年長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。富士通にて人工知能(AI)の研究開発に従事した後、コンサルタント会社、民間の研究所を経て、2003年(株)感性リサーチ設立、代表取締役に就任。脳機能論とAIの集大成による語感分析法を開発、マーケティング分野に新境地を開いた、感性分析の第一人者。また、その過程で性、年代によって異なる脳の性質を研究対象とし、日常に寄り添った男女脳論を展開している。人工知能研究を礎に、脳科学コメンテーター、感性アナリスト、随筆家としても活躍。著書に『恋愛脳』『成熟脳』(新潮文庫)、『人間のトリセツ ~人工知能への手紙』(ちくま新書)、『妻のトリセツ』(講談社+α新書)、『定年夫婦のトリセツ』(SB新書)、『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『思春期のトリセツ』(小学館新書)、『恋のトリセツ』(河出新書)など多数。毎週金曜日、らじるラボ(NHKラジオ第一、8:30〜11:50)にパーソナリティとして出演中(聴き逃し配信あり)

書籍紹介

黒川さん

『女女問題のトリセツ~イラつく女への7つの対処法』(SB新書)

女が女にイラつく原因とその対処法を教えます。女子の人間関係を脳科学で解明! 動物界最長の子育て期間を余儀なくされる人類の女性たちには、「わかる、わかる」でつながって互いを守り合おうとする本能がある。そんな中、一人勝ちする美人も、価値観の違う相手も危険なので、脳に赤信号がともる。それが「イラつく」の正体だ。いわば女性脳が健全な証拠。女の友情は、ちくりと痛いのが当たり前。その「イラつく」をうまく飼いならして、女の友情を全うするためのトリセツを紹介する一冊

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