“クリぼっち”で寂しいなんてバカみたい! 公認サンタクロースの「クリスマスは餃子を包もう」の新提案【まんきつ×パラダイス山元】

漫画家まんきつの
「あの人に聞きたい」セルフラブ

改名を機に、ありのままの自分を受け止め、自分を愛する生き方を選んだ漫画家まんきつさん。でも、そう簡単に人は変われないんだよ……!ってことで、現在もセルフラブへの道でもがき中。 そこで、まんきつさんが(勝手に)選んだ「生きざまがすてき」な人たちに人生相談していきます

まんきつさんが会いたい人と対談する本連載。

クリスマス特別企画に登場するのは、アジア唯一のグリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロース、アジア代表のパラダイス山元さん。

サンタ×まんきつ

世の中はすっかりクリスマスムード。一緒に過ごす相手がいないことで、孤独を感じている人もいるかもしれません。

そんな女性たちにお届けするクリスマスのセルフラブ術は、まさかの餃子……?

子どもの質問「サンタさんって本当にいるの?」の模範解答とは?

まんきつ

私、『さむがりやのサンタ』(福音館書店)という絵本が大好きで。パラダイスさん、まさにイメージ通りのサンタさんですね。

サンタ

ありがとうございます。

まんきつ

うちは息子がいるんですけど、クリスマス前って子どもが妙に聞き分けいい子になるんです。それも小学生までですが……。

パラダイスさんの絵本『サンタさんみっけ!』(YAMAVICO HAUS)を読んだら、子どもたちはよりいい子になりそうだなと思いました。

サンタ

うれしい感想だなぁ。まさにクリスマスの正しい知識やサンタクロースがどういう存在なのか、子どもたちに考えるきっかけを与える絵本を作りたかったんです。

まんきつ

パラダイスさん自身のクリスマスの思い出は何ですか?

サンタ

一番衝撃的だったのは、親に「東京の美大に行きたい」と話した高校2年生のクリスマスです。

枕元にはラッピングされた地元の大学の赤本があって。「普通の大学に行けよ」という無言の圧力を感じました。

サンタ×まんきつ

「もうサンタ来なくていいわ〜ってなりましたね」(パラダイスさん)

サンタ

まんきつさんのクリスマスの思い出はどうですか?

まんきつ

子どもが小学生の頃、『Nintendo Switch』が欲しいって言われて。でも当時手に入らず、やむを得ず転売ヤーから買っちゃったんです……。

サンタ

転売ヤーはサンタクロースの敵です。絶対に許せませんね。

まんきつ

うっかりサンタさんが転売ヤーから買っちゃう可能性もあるんですか?

サンタ

可能性は……あります。

まんきつ

あるんだ(笑)

サンタ

娘から楽器が欲しいと言われて、安いやつを買ったら商品が届かなかったことがありました。

サンタもその辺は真剣に対策をしないと駄目ですね……。

サンタ×まんきつ

当時を思い出して、少ししょんぼりするサンタさん

まんきつ

今はサンタさんの正体を簡単に調べられちゃう時代ですけど、子どもから「サンタさんいるの?」と聞かれたときの模範解答って何ですかね?

サンタ

「いるに決まってるじゃん」でいいと思いますよ。僕みたいな公認サンタがいるわけですから、「こんな人がいるんだよ」と伝えてもらえれば、僕も役割が果たせます。

「グリーンランドには長老サンタがいて、一人ではプレゼントを配りきれなくなっちゃったから、全世界にサンタがいるんだよ。それでも配りきれないときは、Amazonにも協力してもらってるんだって」と言ってあげてください。

まんきつ

現代のサンタクロースって感じでいいですね。

うちの子は小学2年生くらいまでサンタさんを信じていたけど、近所の友達から「それ親だぜ!」と言われちゃいました。

サンタ

そういうの、やめさせたいんですよ。

例えばデンマークでは、子どもがサンタクロースの正体に気付いても親には言わないんです。上手に知らないふりをして、毎年自分の好きなものをもらっちゃう。

僕は日本もそうなればいいなと思っているんです。だから「サンタはいつまで信じてた?」みたいなウェブニュースは本当にやめていただきたいです。

「サンタさん、ホラー映画は見ますか?」

サンタ

実は、公認サンタクロースには女性も多いんですよ。

まんきつ

へー!

サンタ

僕が公認サンタクロースになった1998年は、女性サンタは180人中50人ぐらいでした。でも今では120人中50人と、半数弱が女性です。

サンタクロース協会はデンマークから始まったこともあって、男女平等の意識は強いですね。

まんきつ

サンタさんが年に一度集まって「サンタ会議」をするんですよね? どういう話をするんですか?

サンタ

「トナカイに1年中乗るのはやめよう」という、そんなやついるのか? と突っ込みたくなるような議題を真面目に議論しています。

僕は2003年にトナカイのそりの免許を取ったんですけど、合格した翌年の議題が「トナカイの過剰労働」で、もうクリスマスの日以外にそりには乗れなくなってしまいました。

免許取るの大変だったのに……。

まんきつ

サンタ界でも働き方改革が……。

サンタ×まんきつ
まんきつ

素朴な質問なんですけど、サンタさんって「心のきれいなことをしなければいけない」っていう意識がきっとどこかにあると思うんですよ。

ものすごくホラー映画が見たくなったとき、どうするんですか?

サンタ

ホラー映画はあまり得意ではないですけど、普通に見ますよ。

まんきつ

見るんだ(笑)

サンタ×まんきつ
まんきつ

『食人族(※)』とか見ちゃう?

(※)タイトル通り、食人をテーマにした残虐なイタリア映画

サンタ

サンタの格好をして見るわけじゃないですけどね。

クリスマスの映画といえば、テリー・ツワイゴフ監督の『バッドサンタ』が面白いですよ。

サンタのふりをした泥棒が出てきたりして、めちゃくちゃな話なんですけど。

サンタ×まんきつ

「現実には『バッドサンタ』に出てくるような悪いサンタはいないですけどね」(パラダイスさん)

まんきつ

サンタさん、お酒は飲みます?

サンタ

好きですけど、サンタの格好でお酒を飲んだら一発でクビです。

サンタの格好は暑いですが、このままビールを飲んではいけません。

まんきつ

サンタさんを気遣って枕元にビールを置いても飲んではもらえない?

サンタ

手はつけないですね。普通に『コカ・コーラ』がうれしいです。あとはミルクとか。

まんきつ

ちなみに、サンタさん的にミニスカサンタはどうですか?

サンタ

僕は好きですよ。かわいいから。

まんきつ

サンタさん、完璧に品行方正っていうわけじゃないんですね。

サンタ×まんきつ

「サンタさん、結構俗っぽいんだな……」という顔をするまんきつさん

サンタ

サンタさんだって人間ですからね。ついでに基礎疾患も持っていますし。

まんきつ

公認サンタでいるためには、確か体重120キロ以上をキープしないといけないんですよね。体形維持は大変なんじゃないですか?

サンタ

僕は普通にしていたら85〜90キロくらいなんです。

食べ続けないとこの体形は維持できないので、2日に1回は『餃子の王将』で意識的に脂っこいものを食べています

まんきつ

どの組み合わせが一番太ります?

サンタ

餃子とビール、締めにチャーハンや麺、デザートに杏仁(あんにん)豆腐を食べて、帰ったらすぐに寝ます。

まんきつ

サンタさんって体に悪そうな生活を送っているんですね……。

サンタ

それだけ太っているのに、公認サンタの試験では『SASUKE』みたいなことをやらされるから大変なんですよ。はしごで煙突に登って煙突から家に入ったり。

サンタ×まんきつ

なお、女性サンタに体重の規定はないそう。「比較的ふくよかな人が多いですけどね」(パラダイスさん)

まんきつ

サンタさんは大変だな……。サンタになってから、パラダイスさんの人生にはどんな影響がありました?

サンタ

子どもの頃、僕はあまり自分のことが好きではありませんでした。

今も、僕のことをうさんくさいと思って、「何がサンタだ」と真っ向から否定してくる人も結構います。

でも、否定されることを通して、だんだん自分のことが好きになってきました

まんきつ

え!?

サンタ

僕を否定するということは、何らかの影響を相手に与えているということ。

僕の存在を認めたくないというのは、裏を返せば既に認めていることでもある。

だから、逆に褒め言葉だと思うようになってきましたね。

まんきつ

私はブログのコメントを気にし過ぎてアル中になってしまいましたけど、受け止め方が全然違いますね。

サンタ

反論したくなることはありますけど、そんなやつに労力を使うのはもったいないですから。

「攻撃してくる人=構ってちゃん」だから、餌をあげちゃいけませんね。

「クリスマスに一人の寂しさを味わうだなんて、自虐がすぎますよ」

まんきつ

クリスマスは「一人で過ごすのは寂しい」「恋人と過ごすもの」みたいに言われてしまうこともありますよね。

周りからそう言われるから、女性たちもついそう思ってしまうというか。

サンタ

もうね、そんなのはバカみたいですよ。

まんきつ

急に辛辣……!

サンタ

本来のクリスマスは家族の絆を確かめる日です。恋人と過ごす日ではありません。

普段一人で過ごしている人が、クリスマスになって急に一人の寂しさを味わうだなんて、自虐がすぎますよ。何も悪い話じゃないでしょう。

まんきつ

確かに。

サンタ

同時に、クリスマスは自分自身を見直し、「誰に支えられて自分が生きているのか」を認識する日だとも言われています。

まんきつ

そうか。むしろ一人で過ごすことで、自分を見つめ直す機会にもなるわけですね。

サンタ

あれが駄目、これが駄目と否定するつもりはありませんけど、そんな自虐的にならないでほしいなとは思いますね。

あと、そもそもいい子のところにしかサンタは来ません。

仮にいい子に過ごしていなかったのだとしたら、そんな人の元に王子さまが現れるはずはないと個人的には言いたい。

サンタ×まんきつ

「サンタさん、過去に何かあったのかな……」(まんきつさん心の声)

まんきつ

そういえば、どうして大人のところにサンタさんは来ないのでしょう?

サンタ

「クリスマスプレゼントは子どもだけがもらえるもの」というのは、日本のクリスマス最大の勘違いの一つです。

ヨーロッパでは大人になってからもプレゼントをもらい続けていますよ。

まんきつ

そうなんだ!

サンタ

大人同士の贈り物交換ですけど、「今年はサンタさん何持ってきてくれるかな〜。トイレの便座が調子悪いんだよな〜」なんてしらじらしい会話が家族の中で交わされるのが一般的です。

餃子こそ日本の国民食。好きなものを包んでハッピークリスマス!

サンタ

ところで、まんきつさんは欲しいものありますか?

サンタ×まんきつ
まんきつ

欲しいもの……ないんですよね。パッと出てこないのが悲しい……。

サンタ

いやいや、いいことでしょう! 僕はむしろそういう人にプレゼントを贈りたくなります。

「あれとあれが欲しい!」みたいな人には「自分で買えばいいじゃない」と思っちゃったりすることもあるけれど。

まんきつ

何をプレゼントしてくれますか?

サンタ

どうしようかな……。

まんきつ

『蔓餃苑(※)』の会員券……(ボソッ)

※公認サンタクロースのパラダイス山元さんが営む、会員制高級紳士餃子レストラン。厳格な会員制で、超予約困難店といわれている

サンタ

それはちょっとハードルが高いな(笑)。代わりにこれをあげましょう(袋をガサゴソ)

まんきつ

あ、『GYOZA』だ! うれしい〜!!

サンタ×まんきつ

公認サンタクロース・パラダイス山元さんによる秘伝の餃子レシピ集『GYOZA』をいただきました

サンタ

僕は“餃育”を提唱しているんですけど、餃子作りには性格が出るんですよ。

刻み方、包み方、焼き方と、工程が複雑だからこそ、餃子作りがその人の全体像を知るきっかけになるんです。

まんきつ

昔は粉から餃子の生地を作ったんだけどなぁ……。

最近は冷凍餃子に頼りまくりです。クリスマスに餃子パーティーもいいですね。

サンタ

餃子こそ日本の国民食ですからね。家族で餃子を包んで、ホットプレートで焼いて食べる。

フライドチキンよりそっちの方がいいんじゃないかな。

まんきつ

みんなで包んで、みんなで焼いて。めちゃくちゃいいですね。

サンタ

一人でクリスマスを過ごす人も、集中して餃子を作って、焼いて食べたらいいと思いますよ。

まんきつ

ひたすら餃子を包むのって、写経に近いですよね。余計なことを考えないし、確かにいいかもしれない。

サンタ

あるいは、友達に声を掛けるのもいいんじゃないかな。

餃子の良さは「餃子パーティーやろうよ」と簡単に言えること。

誰かに食べさせたい気持ちがコミュニケーションを生むきっかけにもなります。

まんきつ

ちなみに、餃子をおいしく作るポイントは何ですか?

サンタ

ひき肉を使わないことです。塊の肉をチョップしてみてください。おいしくなりますよ〜。

他にもマンゴーを入れたり、桜あんやスイートポテトを包んだりと、スイーツ餃子もおいしいです。好きなものを包んで、楽しいクリスマスを過ごしてくださいね。

サンタ×まんきつ

<プロフィール> グリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロースアジア代表 パラダイス山元さん

1962年、札幌市生まれ。富士重工業(SUBARU)のカーデザイナーを経て、『東京パノラママンボボーイズ』を結成、ミュージシャンとしてメジャーデビュー。98年、日本人として初めてグリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロースとなる。その他、会員制餃子の店『蔓餃苑』苑主、入浴剤ソムリエ、マン盆栽家元など、活動は多岐にわたる。著書に『パラダイス山元の飛行機の乗り方』『パラダイス山元の飛行機のある暮らし』『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』(ともにダイヤモンド・ビッグ社) 、『餃子の創り方』(光文社)、『うまい餃子』(宝島社)、『読む餃子』(新潮文庫)、『GYOZA』英語版(タトル出版)、『マン盆栽の超情景』(誠文堂新光社)など。最新著書は絵本『サンタさんみっけ!』(YAMAVICO HAUS)■Twitter

書籍情報

サンタ×まんきつ

絵本『サンタさんみっけ!』(出版社/YAMAVICO HAUS)
作/パラダイス山元、 絵/ソリマチアキラ

夏休み、家族旅行で空港にやってきたあーちゃんは、サンタさんを見つけます。

クリスマスにプレゼントをお願いするために、あとを追いかけて飛行機に乗り込みます。

たどり着いた先は、デンマーク コペンハーゲンでした。アメリカ、カナダ、ドイツ、スウェーデン……世界中からサンタさんが大集合!

体重測定をしたり、煙突を登ったり、山盛りのクッキーを食べたりと公認サンタクロースになるための試験がはじまります。

あーちゃんもサンタさんになれるのでしょうか。日本の公認サンタクロースと一緒に描いた冒険ストーリーの絵本です。

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企画・取材・文・編集/天野夏海 撮影/赤松洋太