仕事は“子育ての邪魔”にはならない!? ワーク&ライフ・インターンに未婚社会人が挑戦してみた【前編/女性】
女性も男性も、共働きで仕事と家庭を両立することが当たり前になりつつある。だが、両立生活を実践しながらいきいきと働くロールモデルが身近におらず、将来に不安な気持ちを抱えている未婚世代も少なくないだろう。
そんな、「将来に漠然とした不安を抱える未婚世代」に向けて、仕事と家庭の両立生活を実際に体験し、イメージしてもらおうという試みで始まったインターンプログラムがある。スリール株式会社が実施する社会人向け『ワーク&ライフ・インターン』(※)だ。実際に、子育て中の共働き家庭に社会人がインターン生として出向き、仕事終りの保育園への迎えから、子どもの就寝までの一連の子育てを経験することができる。
そこで実際に、人材紹介サービス会社Shiftで働く柴田菜々子さん(25)に『ワーク&ライフ・インターン』に挑戦してもらった。

【インターン生のプロフィール】
氏名:柴田 菜々子さん
社名:株式会社Shift
職種:広報/ダンサー
年齢:25歳
(※)スリール株式会社の『ワーク&ライフ・インターン』は、「働くこと」=ワークと、「生活」=ライフのリアルを学べるインターンプログラムとして学生向けにスタート。2015年からは、社会人向けにも定期的にプログラムを実施する予定
事前研修への参加からインターンスタート!
実際に家庭に入る前に、子どもの発達過程や子どもへの接し方などを学べる事前研修に参加した柴田さん。スリール代表の堀江敦子さんによる講義と、ワークショップから構成されるこの研修を受け、「インターン当日が楽しみになりました。早く子どもと遊んでみたいし、共働き家庭のお母さんともぜひ話してみたい」と意気込みを見せてくれた。
また、柴田さんは、このインターンへの参加のきっかけを次のように語る。
「仕事柄、結婚や出産といったライフステージの変化を経て仕事を続けていくことに不安を感じている女性たちとお話をすることも多いのですが、私自身は結婚も出産も未経験。まだ周囲の友人たちも、『結婚より今は仕事を頑張りたい』という人たちが多いので、子育てはまだ少し先の未来の話という感じです。ただ、将来的には家庭を持ちたいと思っていますし、好きな仕事もダンスも続けていきたい。自分がやりたいと思っていることを実現しながら子育てをするのは現実的に難しいのではないかという不安があります。だから、実際に共働き家庭での子育てを経験して、改めて自分の将来のことを考えられたらなと思っています」
インターン当日
18時・・・長女(4歳)を保育園にお迎え
仕事を終えて、インターン先の家庭の長女ゆうちゃんのお迎えに向う柴田さん。仲良くなるきっかけになるような話のネタを考えながら、保育園へ。
保育園で初めて顔を合わせる2人。ゆうちゃんは初めて会う人に緊張してしまったのか、しばし無言……。「なんて話し掛ければいいんだろう……」と困惑気味なところから、インターンがスタートした。

保育園の帰り道によく立ち寄るという公園に到着。鉄棒に登ったゆうちゃんと同じ目線になり、初めて2人の目が合った。このことがきっかけとなったのか、鉄棒遊びをしながら少しずつ会話が弾むように。
18時半…帰宅後、長男(小3)と対面
家に着くと、すでに小学校から帰っていたお兄さんのあまねくんの姿が。柴田さんが声を掛けてみるもゲームに夢中で、なかなかコミュニケーションを取るのが難しい。
「あまりゲームに詳しくなくて……」と仲良くなるきっかけをなかなかつかめない柴田さん。「すぐ仲良くなりたいって思っちゃうけど、焦っちゃだめですね」と一言。

ゆうちゃんが、柴田さんに「アリの飼育キットを見に行きたい」と声を掛けてくれた。これは、アリの巣を立体的に観察できるキットで、自宅マンションの庭に仕掛けているものだそう。家に着き、一安心したのもつかの間。勢いよく外に出て行こうとするゆうちゃん。その後ろを柴田さんが必死に追い掛けていく。
「仕事が終わったらもう私はへとへとになっちゃうんですが、子どもたちは夕方もすごく元気なんですね(笑)。家に帰ってからも思った以上に活動的なので、びっくりしました」と驚きつつ、ゆうちゃんとアリを観察しに行った。
19時・・・夕飯の準備

外から帰ったら、洗面所でゆうちゃんの手洗いとうがいのお手伝い。子どもたちがテレビアニメに夢中になっているときを見計らい、夕食の準備に取り掛かる。「ただご飯を作るだけじゃなくて、栄養バランスのいいご飯を作ろうと思うと本当に大変ですね。メニューも毎日いろいろ考えなくちゃいけない」と、毎日の食事の仕度のことを考えて少々不安そうにする柴田さん。しかしながら、夕食時には二人の向かいの席に座り、積極的におしゃべりを楽しんだ。

学校であったことや、最近読んだ本の話など、たくさん質問をして会話を続けた柴田さん。いつの間にか、子どもたちも一生懸命自分たちのことを話してくれるように。
20時・・・ゆうちゃんとリボンのレッスン
ご飯の後は、習い事の練習。ゆうちゃんは普段、体操教室に通っているそう。ダンサーとして活躍する柴田さんは、子どもの時から得意だというリボン体操を教えてあげた。難しい言葉は使わず、同じ動作を繰り返しながら丁寧に指導をする。「子どもと触れ合う機会がなくて、どういう風に教えたらいいのか迷いましたが、すごく素直に楽しんでくれてうれしかったです」(柴田さん)

リボンのレッスンを受けていたゆうちゃんだが、興味はいつしかあまねくんがやっているゲームに……。「リボンをしまってから、一緒にゲームをしようか」とお片付けを手伝う柴田さん。「子どもって、急に興味の対象が変わるんですね(笑)」と驚きつつ、臨機応変に、子どもたちの変化に対応する。
20時半・・・あまねくんとちゃんばらごっこ
今度はあまねくんからちゃんばらごっこのお誘いが。男の子とのコミュニケーションに戸惑っていた柴田さんだったが、すっかり仲良しになっていた。ゆうちゃんも交えて3人一緒に遊んでいたところ、あまねくんとゆうちゃんのママが帰宅。子どもたちも大満足の様子で、柴田さんのインターンは無事に終了した。
「仕事と家庭の両方があるからこそ、バランスが取れる」

「同じ家庭の兄弟でも、男女で遊び方が全然違うことに驚きました! それぞれの個性に合わせて遊んだり、会話をするのが楽しかったです」と柴田さん。2人との遊びを楽むことができた一方で、「やっぱり、仕事終りに家事をしながら子どもからも目を放せないというのは大変ですね……」とやっぱり不安な気持ちも拭いきれない。
しかし、共働きと子育てを既に両立しているあまねくん、ゆうちゃんのママからは次のような心強い言葉が。
「今日は初めてということもあって、柴田さんも注意を払って子どもを見てくれていたと思います。でも、子育ては気負いせず、気軽に考えてみてもいいと思います。何でもやってあげよう、教えてあげようとしてしまうと確かに大変なんですが、子どもって、意外と教えなくても自分でできることも多いんです」
「確かにそうですね! 今日、遊びを通じて自分からいろいろなことに挑戦する2人を見ていてそう思いました」と頷く柴田さん。
「あとは、仕事で落ち込んだり、忙しくて心の余裕がないときは、子どもや家族の存在が自分を癒してくれたり励ましてくれたりすることも想像以上に多いです。逆に、子育てで行き詰ったときは、仕事が自分の発散場所になることも。両方あるからこそ、自分のバランスが取れていると感じますね」(あまねくん、ゆうちゃんのママ)
「仕事と家庭、どちらかがどちらかの邪魔になると考えるんじゃなくて、両方あるからこそ相乗効果でどちらも気持ちよく続けられるっていうことが分かって、すごくためになりました」(柴田さん)
今回のインターンを経て「両立生活をしているからこそ得られるメリット」をも学ぶことができた柴田さん。自分のやりたいことを犠牲にするのでもなく、家庭をおろそかにするのでもなく、自分なりのバランスを保ちながら両立生活を送っていくことへの自信が付いたようだった。
また、共働きの両立生活にはパートナーの協力も不可欠。この記事に続く後編では、男性にも『ワーク&ライフ・インターン』に挑戦してもらいます!
取材・文・撮影/橋本岬(アバンギャルド)