「夢は必ずかなう」ダンサーMiyuが前澤友作の月周回プロジェクト『dearMoon』バックアップクルーとして宇宙で挑戦したいこと

2022年12月、前澤友作さん(スタートトゥデイ 代表取締役社長)が主催する月周回プロジェクト『dearMoon』に参加する8人のクルーと2人のバックアップメンバーが発表された。

dearMoon

『dearMoon』は、イーロン・マスクが創業した宇宙開発企業スペースXが開発しているロケット『Starship』に乗り、民間人で初めて月を周回するプロジェクト。2023年、月に向けて打ち上げが予定されている/©︎dearMoonプロジェクト

『dearMoon』プロジェクトは、2021年に世界中から参加希望のアーティストを公募。249の国と地域から約100万人の応募があったという。

その倍率はなんと10万倍以上。その中からバックアップクルーの一人となったのが、ダンサーのMiyuさん(25歳)。本プロジェクトで月に向かうアーティストとして、日本人で唯一の参加者となる。

Miyu

『dearMoon』は、夢への通過点」と語るMiyuさん。宇宙へ飛び立つ人類初のダンサーとして、本プロジェクトに懸ける思いを聞いた。

バックアップクルーに決まったうれしさと、少しの悔しさ

——月旅行プロジェクト『dearMoon』に応募したきっかけを教えてください。

「アーティストであれば、誰でも無料で応募できる」とウェブで見たのがきっかけです。

もし月に行くことができれば、ダンサーとしての可能性をもっと広げられるかもしれない。そんな思いはありましたが、正直、最初は興味本位でしたね。

——月や宇宙への憧れが以前からあったのでしょうか?

私は、自分が知らないことに興味があるんです。

そういう意味で、月や宇宙にはもともと興味はあったのですが、『dearMoon』に参加する前は、どちらも自分からはすごく遠い存在でした。

Miyu

——『dearMoon』には世界中から約100万人の応募がありました。倍率は10万倍以上ですが、自分が選ばれると思っていました?

正直なところ、「いけるんじゃないかな?」という気持ちはありました。

100万人の応募があったと知ってからも、どこかで「選ばれるかも」と思っていましたね。確かな根拠があったわけではないけれど、私はかなりポジティブな性格なので(笑)

——選考ではどのようなことをしたのでしょう?

あまり詳しくお話はできないのですが、プロジェクトへの思いを英語で書いたり、映像を自分で作成したり、他のクルーとコミュニケーションを取る場があったり、という感じです。

——どのようなアピールをしたんですか?

自分が他の人に負けないところをまずは探しました。

私はポジティブで、不可能なことを努力して達成することができる人。そう思っているので、それをアピールしました。

Miyu

——バックアップクルーに選ばれた時の気持ちを教えてください。

前澤さんから「バックアップクルーとして決まりました」とZoomで直接聞きました。

最初はとにかく驚きでしたね。どこかで「選ばれるかも」と思っていましたけど、「まさか」という気持ちもあって。

同時にうれしさもあり、その反面バックアップクルーであることへの悔しさもちょっとあり……。

それでも、このプロジェクトに関わることで初めての感情を経験したり、初めての世界を知れたりすることは間違いないので、やっぱりうれしかったです。

月周回に向けた準備はこれから始まります。宇宙に向かうためのトレーニングも初めての経験ですし、今はとにかくワクワクでいっぱい。本当に貴重な機会をいただいたと思っています。

良くも悪くも、ダンスには生き方が全部出てしまう

——「自分が知らないことに興味がある」とおっしゃっていました。その理由は何でしょうか。

周りの人が体験したことがないことを、自分が体験する。

そこで得た感情や経験によって、自分のダンスも、人間としての自分も進化していく。その感覚が楽しいんです。

——未知の感情や経験でダンスが進化する、というのは?

ダンスには、自分の人間性や性格、生き方が全部そのまま出ます。

新しい経験が自分自身をつくり、それがダンスに反映されていく感じですね。

Miyu

——たとえ知らない人であっても、踊っている姿を見れば「こういう人かな」と何となくイメージできるものですか?

実際に合っているかは分からないですけど、イメージはできます。

「引っ込み思案で、まだ殻を破れていないんだな」「この人はいろいろな世界を見て、たくさんのことを感じてきた人なんだろうな」など、ちょっと見れば大体分かりますね。

ダンスは生物みたいなものです。型にハマったり、決められた動きをしたりするわけではないので、その時の感情がそのまま出てしまいます。

良くも悪くも、生き方が全部出てしまうのがダンスなんです。

——だからこそ、新たなチャレンジをする原動力にもなるのですね。

そうですね。あとは、私を応援してくれている人たちの言葉が原動力。

私のダンスを見て、「仕事を頑張ろうと思った」「楽しい気持ちになった」と言ってくれる皆さんを楽しませるためにも、自分自身がもっと新しい挑戦をしていきたいと思っています。

——バックアップクルーに選ばれたことが発表された時、ファンの皆さんからはどのような反響がありましたか?

とにかく驚いていました。バックアップクルーに決まってから発表までは1年ほど期間があって、もう、早く言いたい気持ちでいっぱいでしたね(笑)

私の新しい挑戦を喜んでくれる、応援してくださっている皆さんを想像して「早く言いたい! 早く喜ばせたい!」と思いながら発表までの日々を過ごしていました。

夢は永遠に膨らんでいくもの

——25歳の今、このタイミングで月に行くことは、ダンサーとしてのMiyuさんにどのような影響を与えそうですか?

全く想像できないからこそ、とてもワクワクしています。

私は『dearMoon』でダンス作品を発信したいと思っていますが、そこに宇宙での体験が大きく影響するのは間違いありません。

宇宙での経験を経て、自分の作品やダンスそのものも変わるんじゃないかな。

考え方も180度変わるかもしれないですし、とにかく楽しみです。

Miyu

——無重力の感覚は、きっと普段の感覚とは全くの別物ですもんね。

普段は前にいる人にダンスを見せるのが基本ですけど、宇宙ではいろいろな方向や高さなど、空間を立体的に捉えられます。

無重力ならではの面白い状況を生かした、宇宙空間でしかできない作品もあるはず。

ダンスのイメージは頭の中で描けているので、もし宇宙に行けたら、そういう動画も発信していきたいです。

——ダンサーによる世界初の宇宙空間でのダンス、どのような作品になるのか楽しみです。

「ムーンウォークをやってほしい」というリクエストはたくさん来ているので、とりあえず練習しておきます(笑)

あとは、今回は私一人ではなく、すばらしいアーティストのクルーの方々と一緒です。みんなで何かをつくれたらいいなと思っています。

——クルーの皆さんはどんな人たちですか?

Miyu

とにかく明るいですね。私も明るい方だと思っているんですけど、それ以上に明るいです。前澤さんもムービーで言っていましたが、笑顔が多くて。皆さんすごく優しい、すてきな方です。

もう、みんなワクワクが止まらないんですよ。連絡を取ると、画面越しにワクワクが伝わってきます(笑)

一緒に時間を過ごすことでいろいろな刺激を皆さんからもらえると思うので、バックアップクルーとして、それもまた楽しみです。

——これから月への出発の日まで、どう過ごしたいですか?

まずは、今の自分がやりたいことを残さずやって、新しい気持ちでこのプロジェクトに参加したい。「あれもこれもやりたい」ではなく、このプロジェクトに専念する。そのための状態をまずは整えたいです。

ダンスに限らず、夢は永遠に膨らんでいくもので、終わりがないと思っています。

夢を達成したら、そこで新しい景色が見えて、それによって違う夢が新たにできて……と、夢はずっと続くもの。宇宙で新しい景色を見て、その時の私は次に何をしたいんだろう。それを知るのも、楽しみなことの一つです。

——過去のMiyuさんの夢と、そこから新たに見つかった夢は何ですか?

私は小さい頃、世界一のダンサーになるのが夢でした。

それを19歳で達成してからは、今度はダンサーがアーティストとして認められ、一人で輝ける世の中をつくることが新たな夢です。

Miyu

ダンサーは先生として人にダンスを教えたり、振り付けをしたりと、裏で活躍することが多いですが、私はその概念を壊したい。

ダンサーが一人のアーティストとして輝ける世の中をつくりたいと思っています。

常に新しいチャレンジをするようにしているのも、このプロジェクトに応募したのも、そんな私の夢のためです。『dearMoon』に参加することで、アーティストとしてのダンサーをもっと知ってもらえるはず。

このプロジェクトは夢への第一歩であり、通過点になるんじゃないかなと思っています。

そして、私は25歳ですが、同じ世代や下の世代の人たちに「夢は必ずかなうよ」と伝えられたらと思っています。何か刺激を与えられたらうれしいですね。

【Profile】Miyuさん
1997年12月3日生まれ。 世界最高峰のバトル大会『JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL』でワールドチャンピオンに輝くなど、国内外のバトルで多数のタイトルを持つ世界的ハウスダンサー。細かく速い超絶技巧のステップワークはSNSでも話題になり、『TikTok Awards 2022』では「Dance Creator of the Year」を受賞。自らの可能性を広げ、ダンサーの社会的地位向上を目指すため、単独公演の開催や映像作品の発表、教育現場・公共イベントでのワークショップや講演、ファッションモデルや広告出演など、さまざまな分野で活動を展開。2023年に予定されている民間人初の月周回プロジェクト『dearMoon』では、全世界約100万人の応募者の中から唯一の日本人として選出され、バックアップクルーとして参画する。「不可能を可能に」がモットー ■HP ■インスタグラムTwitterTikTok

取材・文/天野夏海  撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 企画・編集/栗原千明(編集部)