21 APR/2023

育休後に夫婦でフルタイム復帰しても子育てに支障はない? 「思う存分働きたい」営業職・妻が語った本音

「女性が時短勤務」だけじゃない。
変わる、育休後の働き方

コロナ禍以降に浸透した時間・場所にとらわれない働き方や、国が力を入れて取り組んでいる男性育休の取得促進によって、育休復帰後の女性の働き方が多様化している。「女性が時短勤務をする」以外に今はどんな選択肢が生まれているのか、識者・経験者が語る実例を通して紹介しよう

育休 フルタイム復帰

フリーランス女性と企業のマッチングサービス事業などを行うWarisで営業職として働く小中麻未さん。

彼女は第二子を出産した後、夫婦ともにフルタイムで仕事に復帰。現在は基本的に在宅勤務をしながら、早朝5時~22時までの柔軟性の高いフレックス勤務で働いている。

「夫は仕事が忙しくて、基本は私がワンオペで育児を行っているんですけどね」と話す麻未さん。それでも、夫婦でフルタイムで復帰したことに後悔はないという。

なぜ麻未さんは育休後にフルタイムで復帰することを決めたのか。現在の仕事と子育ての両立生活について聞いた。

(※)⽇々の始業・終業時刻、労働時間を⾃ら決めることのできる働き方・制度

Waris 

小中麻未さん
1983年生まれ。求人広告会社で求人広告営業、人事部新卒研修担当、新規事業部にて大学向けキャリア開発営業を担当。大手人材企業では新卒向け人材紹介事業の東京事業所立ち上げ、法人営業、リーダー職にて開拓~法人営業メンバーの育成などを担当。2018年4月に出産、1年の育休後、19年4月から時短勤務で復職。営業の育成、研修を担当する。20年4月にWarisへ入社。21年6月~2022年5月まで育休。22年6月から復職

働く場所にとらわれなければ「時短にする必要がない」

育休 フルタイム復帰

ーー麻未さんは直近、育休取得後にフルタイムで復帰したそうですが、復職後はどんなお仕事をしているんですか?

人材サービス企業のWarisで法人営業として働いていて、仕事を探しているフリーランス人材と、プロフェッショナル人材を必要とする企業との出会いを生み出す仕事をしています。

ワークスタイルとしては、週5日、1日7.5時間のフルタイムで勤務。普段は在宅で働くことがほとんどですが、商談のためにお客さま先を訪問したり、時にはオフィスに出社したりすることもあります。

ーー育休前も同じ仕事をしていたのでしょうか?

はい。一人目を産んだ時は別の会社にいたのですが、二人目を産む前にWarisに転職したので、産休・育休前から現在の仕事をしていました。

ーーなぜ、育休後は夫だけでなく麻未さんもフルタイムで復帰することにしたのでしょうか?

もともと在宅勤務をベースとした働き方をしていたのと、フレックス制だったので、働く時間や場所にとらわれなければ、あえて時短勤務にする必要はないなと感じたことが第一です。

実際、保育園の送り迎えもできますし、子どもが体調を崩したときも柔軟に病院に連れて行くことができる。そういうことができるのは、今の職場の環境があってこそだと思います。

さらに、現職は営業職なので、何時から何時まで働いたかというプロセスよりも、売上など営業として出すべき成果の方が重視されます。

なので、時間的な制約を取っ払って思う存分働けた方が個人的にも満足のいく成果が得られると思い、フルタイムで復帰することを選びました。

育休 フルタイム復帰

――フルタイム勤務だと時には残業が発生することもあると思うのですが、それでも育児との両立に支障はないですか?

そうですね、時にはどうしても今日中にやらなくてはいけないことも発生しますし、子どもが寝てからお客さまにメールを送ることもあります。

でも、フレックスで時間に融通がきくので顧客対応に支障がでることはあまりないですし、Warisの仲間たちにも時にはサポートしてもらっています。

―― 家庭のことをほぼワンオペでこなしているそうですね。

そうなんです。夫が働いている会社は長時間労働がデフォルトのようになっていて、毎日出社しているので、早朝に出て行き、帰宅時間も21時頃なんですよ。

なので、在宅勤務をしている私が平日の家事、育児を基本的にはこなしています。

ーー麻未さんのフルタイム復帰はお二人で話し合って決めたんですか?

いえ、私がそうしたいと思って決めたのですが、夫にはきちんと伝えていなかった気がします。

というのも、彼は普段から私の選択を尊重してくれる人なので。時短でも、フルタイムでも、どちらを選択しても反対されることはないと思っていたので。

ーーフルタイムの仕事をしながらのワンオペ状態で、きつくなることはありませんか?

そうですね、時々キャパシティーを超えたときに夫にあたってしまうことはありますね(笑)。保育園に行くとお父さんが送り迎えをしている家庭も多いので、時々うらやましくなることもありますし。

ただ、仕事を頑張っている夫を誇りにも思っているので、それぞれの家庭でそれぞれの子育てのかたちがあってもいいんだよな、なんて考えますね。

仕事で味わう喜びは、人生に欠かせないもの

育休 フルタイム復帰

――フルタイムで働いて家でもほぼワンオペ状態ということで、特に大変なのはどんなときですか?

子どもたちが体調不良になったときはやっぱり大変ですね。これはフルタイムの人に限らず、時短勤務を選択していても同じことだとは思いますが。

最近、子どもたち2人が同時に新型コロナとインフルエンザにかかって家にいた時は、私も仕事に全然手がつけられなくて、仕事も休まざるを得ませんでした。

そういう時に悲観的になってしまうこともありますが、「いっそ仕事を辞めて……」と想像すると、「やっぱり働きたい」という気持ちが自然と湧いてくる。子どもたちのことは大好きだし、家庭の時間は大切だけど、仕事も自分にとってはすごく大切なもの。

子育てや家庭のことだけじゃなくて、思い切り働ける自由も持つことで、ワークライフがより豊かになっていると感じます。

仕事ってつらいこともあるけれど、いいこともいっぱいあるじゃないですか。社内外の人たちから「小中さんのおかげで助かりました」と感謝していただけることもあるし、高く評価していただけることもある。

あと、営業職として目標達成できるとうれしいし、会社の業績に貢献できたら、それ自体が自分の活力になったりモチベーションが高まったりすることもあります。そういう喜びを得ることも、私の人生には欠かせません。

だから、子育ても仕事も自分がやりたいだけやれる環境をつくりたい。フルタイムで復帰して子育てと両立するのは楽なことではありませんが、個人的には、この先の人生にとって大事な時間だと感じています。

――ご自身にとっては、仕事に制約を設けないことが人生の充実度を高めているわけですね。

そうなんです。中には、ずっと子どもと向き合っていたい、育休復帰後も仕事はなるべく控えたい方もいらっしゃると思いますが、私は単にそういうタイプではなかったんですよね。

逆に、仕事が終わって気持ちを切り替えて子どもに向き合う方が、ギュッと愛情を注ぐことができるような気がしています。

そして、子どもの変化にはいつも気を付けているので、もし元気がなかったり、さみしそうにしていたら、たくさん抱きしめて、いっぱい話をするようにしていますね。

20代で挑戦を惜しまなかったから、フルタイムでもやりたい仕事や理想の働き方が見つかった

育休 フルタイム復帰

――麻未さんは子育てを大事にしながらも、「思う存分働きたい」という気持ちも大切にされています。なぜそのような気持ちに気付くことができましたか?

しっかり時間をとっているわけではないのですが、定期的に自分のことを振り返るようにしています。

例えば、「この働き方でいいのか」「仕事は続けるべきか」と悩んだときには、自分でとことん考える。たくさん考え抜いて結論を出すようにしているので、基本的に自分で選択したことに後悔はありません。

それでも「このままの働き方でいいのかな」とか「今の仕事でいいのかな」とか悩んだときは、信頼できる人たちに話して意見を聞く。

そうやって自分の思いを口に出していくと、本当にやりたいことや、望んでいることに気付くことがあります。

フルタイム復帰を決める前も、いろいろな角度から仕事と子育てについて考えました。そこで明らかになったのは、子育ても大事だけど、自分の人生を充実させるには仕事も大事だということ。

それがクリアになったから、フルタイムで復帰することについても迷いがありませんでした。

――これまでのことを振り返り、自分の本心に気付けたからこそ、後悔のない選択ができたわけですね。

そう思います。あとは、育休後にどんな働き方を選んだとしても、そもそも自分がやりがいを感じられる仕事をしていないと、長くは続かないはず。

私は営業の仕事が自分に向いていると思うし、好きだと感じられるものだから、「フルタイムで復帰したい」と思えた。

どんなカタチで復帰するにせよ、子育てと仕事を両立するのって楽なことばかりじゃないから、「好きな仕事ができている」と思える状況をつくっておくことは大事なのかなと思いますね。

ーー麻未さんは、「好きな仕事」にどうやって出会いました?

遠回りに思えるかもしれないけれど、自分の身をもっていろいろな仕事を経験してみるしかないような気がしますね。

私も今は営業の仕事をしていますが、20代の頃は人事職も経験したし、チームマネジメントにコミットしていた時もあるし、さまざまな仕事に挑戦してきました。

そこで、向き不向きであるとか、自分がワクワクすることやモチベーションを失うことであるとか、自分がどういう人間なのかを知ることができた。

ですから、変に近道しようとせず、チャンスがめぐってきたら何でもやってみるといいのかもしれません。「向いてない」ことが分かるだけでも儲けもの。ライフステージが変わった後も長く続けられる仕事を知るための、いいプロセスになりますから。

20代はいくらでもチャレンジできる時期。その頃にいろいろな経験を積めたから、心からやりたいと思える仕事にめぐりあえたし、育休後の自分らしい働き方も見つけられたのかなと思います。

取材・文/キャベトンコ ご本人画像/小中麻未さん提供