02 FEB/2024

「日本人の3分の2しか働かない」のにGDPで日本を抜くドイツに見る、令和版・生産性の高め方【田中美和】

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日本の名目GDP、4位転落の公算大 23年ドイツが抜く」‐‐こんな見出しのニュースが先日配信されました。「日本の2023年の名目国内総生産(GDP)がドイツに抜かれ、世界4位に転落する公算が大きくなった」というものです。

そこで今回注目したいのは、GDPで日本を抜く勢いながら、ドイツ人の勤務時間は日本人よりも短い点。

ドイツの平均年間労働時間は1,371時間で、日本の3分の2程度です。1日の労働時間も、法律により原則として1日8時間を超えて働いてはならないと決められています。それでいながら、年収は日本人の1.4倍です。

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これが可能な理由は、労働者の権利を守るドイツの風土の影響もありますが、高い労働生産性を実現できる環境が大きいようです。ドイツの単位時間当たりの労働生産性は、なんと日本の約1.6倍(※1)!

労働時間の短さに加えて職業訓練が充実しており、労働者一人ひとりのスキルアップへの意識の高さなどが重なり合って高い労働生産性を実現しています。

では、こうしたドイツの働き方を参考に私たち日本人が短時間で労働生産性を高めるために取り入れられる方法は何かあるのでしょうか?

2つのポイントから見ていきましょう。

ポイント1)スキルを身に付けて生産性を高める

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ドイツは、労働時間の短さにもかかわらず、高い労働生産性を維持しているわけですが、その背景には、職業訓練の充実や労働者一人ひとりのスキルアップへの意識の高さが挙げられます。

日本でも政府の経済財政政策の基本方針を示す「骨太の方針」の中でリスキリング(=新しいスキルを学んで新しい仕事に活かすこと)の重要性が示され、リスキリングプログラムが、政府の助成を受け安価で受けられるようになってきています。

みなさんの会社でもここ数年で会社主導でなんらかのリスキリングプログラムが導入されているケースが多いのではないでしょうか。

こうした機会を活かしてスキルアップをし、労働生産性の向上につなげましょう。特にオススメなのが、【プログラミング】や【データ分析】、【生成AI】に関する学びなどデジタルスキルに関するもの。簡単な活用例を職種別でご紹介します。

【事務系職種の方向け:おススメ生産性アップ術】

事務系職種だと、さまざまなデータを収集・整理・分析して、報告書や企画書などの資料を作成することがありますよね。こうした場合に【データ分析】のスキルを身に付けておくことで、データから有益な情報を抽出し、業務の効率化や改善につなげることができます。

実は、また、簡単な【プログラミング】を学ぶことで、2日近くかかっていた分析や集計作業がほんの10分程度で終わるようになったという事例もあります。

【営業系職種の方向け:おススメ生産性アップ術】

顧客管理ツールの使い方を習得することで顧客の行動履歴を分析し、適切なタイミングでアプローチすることが可能になります。

これにより、効率的に顧客との関係を構築し、営業活動の成果を向上させることができます。話題の【Chat GPT】を学んで提案書や企画書の骨子や構成案作成に活用する方法もおすすめです。

これらのスキルを身に付けることで、デジタル化に対応した新しい仕事や、今の仕事をより効率的に行うことへとつながっていきます。

ポイント2)オフを意識して生産性を高める

十分な休息とプライベートの時間を確保し、仕事に対するモチベーションや集中力を高めていくことは、仕事の効率性や生産性を上げるためとても重要と言われています。

実際、ドイツは世界でもトップクラスでワークライフバランスを重視する国です。

まず、ドイツでは残業は原則として認められていません。また、世界16地域における有給休暇の取得状況の比較(※2)を見てみると、ドイツ人は年間の有給休暇日数が30日と最も多い一方で取得率も9割以上と世界でもトップクラスの水準です。(ちなみに日本は年間の有給休暇日数は20日で取得率は6割程度)

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※エクスペディア・ジャパン「有給休暇の国際比較調査」より

日本にいる私たちが、意識的にオフの時間を確保するために日常的にできることとしては、仕事を終える時間を明確に設定して、そこから逆算して優先順位を意識しながら仕事を進めていくのがおすすめです。

私の場合、会社員時代はチャリティーマラソンの事務局でボランティアスタッフをしていて、だいたい夜の時間に事務局のスタッフミーティングをやっていたので、それには間に合うように仕事を切り上げるようにしていたんですよね。

自分の中で「ここまでには必ず終える」という明確な終了時間がなければだらだらと働いてしまいがちなタイプだったので、会社以外の「やりたいこと」の存在が今思えばメリハリにつながっていました

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今も娘のお迎え時間が絶対的にあるので、そこを目安に仕事を進めています。そのときに眼の前でどんどん「仕事上やらなければいけないこと」が発生するわけですが、

「①自分にしかできないこと」
「②自分がやったほうがいいこと」
「③他の人でもできること」
「④他の人がやったほうがいいこと」
の観点から業務をとらえるようにしています。

①②は自分で対応するようにしますし、③④については周囲や社外の委託先へお任せするように心がけています。

また、定期的に発生している業務であれば、ポイント1の話ともつながるのですが、自動化できないか、なども考えるようにしています。

日本にいる私たちにも出来ることはたくさんあります。
今年は働き方を少し工夫して、時間を有意義に使ってみてはいかがでしょうか。

(※1)「労働生産性の国際比較サマリー2023」(公益財団法人 日本生産性本部)より
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/summary2023.pdf

(※2)「有給休暇の国際比較調査」(エクスペディア・ジャパン)より
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000233.000003373.html

(※3)「フォルクスワーゲンが AWS ソリューションを使用し、生産性向上、コスト削減し、革新を続ける」
https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/volkswagen-increases-productivity-decreases-costs-and-continues-to-innovate-using-aws-solution/

書籍情報

田中美和 自分らしく働くための 39のヒント Live My Life

『Live My Life 自分らしく働くための 39のヒント』
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すべてが今につながっているし、振り返ればたどってきた道がある。

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田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事