26 FEB/2024

フリーランスになるなら今がチャンス? 会社員時代にやっておきたい、失敗しないための4つの準備【田中美和】

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「フリーランスとして働くことに興味がある」「将来的にフリーランスもアリだなと思う」ーー働き方が多様化する中で、こんな風に考えている人も少なくないのではないでしょうか。

実際、総務省統計局が昨年公表した調査結果によればフリーランスの総数は257万人(うち48万人は副業フリーランス)で女性は83万人にも及びます。

一方でフリーランスは不安定な働き方というイメージを持つ人もおり、実際に多くの課題を抱えています。

田中さん

そんな中、2024年秋に「フリーランス新法」が施行予定なのをみなさんはご存知ですか?

この法律は、近年増加するフリーランスの取引を適正化し、安心して働ける環境を作ることを目的として制定されました。

この法律には以下のような内容が示されています。一部をご紹介してみましょう。

■書面等による取引条件の明示:発注事業者がフリーランスに業務を委託する場合、書面等で「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払い期日」等の取引条件を明示することが求められます。

■報酬支払期日の設定と期日内の支払い:発注事業者は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うことが求められます。

■募集情報の的確表示:広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、「虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならないこと」「内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと」が求められます。

■ハラスメント対策に関する体制整備:発注事業者はフリーランスに対するハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備などの措置を講じることが求められます。

この法律が定められることで、フリーランスとして働く人たちはどの程度の安心を得られるようになったのでしょうか。

45%以上のフリーランスが「トラブル経験あり」。新法で解決に期待

フリーランスの実態調査である「フリーランス白書2020」によれば、企業との業務委託契約において、取引上のトラブルを経験したことがあるフリーランスは45.6%にものぼります(下図)。

田中さん

トラブル内容を見ると「報酬の支払いが遅延される」「契約の一方的な変更を受ける」「あらかじめ定めた報酬を減額される」といった内容が上位を占めています(下図)。

田中さん

今秋施行されるフリーランス新法によりこうした取引トラブルがなくなり、フリーランスが安心して働けるようになることが期待されます

フリーランス新法の施行はフリーランスとして働きたい人たちにとって間違いなく大きな支えであり、大きな転換点となるでしょう。

では、こうした法律も活用しながらフリーランスとして活躍し続けるためには何が必要なのでしょうか。

フリーランスで失敗しないためにやっておきたい4つのこと

田中さん

会社員からフリーランスに転身してよくある失敗事例としては必要なスキルや経験が不足したまま独立してしまい「仕事獲得が難しい」「思ったほど稼げない」といったことがあげられます。

時間管理やセルフマネジメントが苦手で「納期に間に合わない」「仕事とプライベートのバランスがくずれる」「モチベーション維持が難しい」といったこともありえますね。

会社員時代のような上司や同僚が常にいる状態ではないため、孤独感や不安感におそわれる人もいます。

フリーランスは自由な働き方ができる一方で、会社員時代とは異なる多くの課題があるのも事実です。これらを踏まえてフリーランスとして活躍するために会社員時代からやっておきたい4つのポイントを解説していきます。

1)上流工程から実行部分まで一貫して経験しておこう

フリーランスは持っている専門性やスキルに対して「この人に仕事を頼みたい」と発注が来るので、 専門性やスキルを磨くことが重要です。

営業、マーケティング、人事、経理、エンジニアなど会社員としてつちかったスキルを土台にフリーランスとして活動し始める人もいれば、「料理が好き」「イラストを描くのが得意」といった特技を軸にする人もいます。

これまでの経験や「得意なこと」を踏まえて、何のスキルでフリーランスとして活動していきたいかを決めて「フリーランスデビュー」へ向けて経験を積み重ねていきましょう。

田中さん

筆者は過去に年収1000万円以上のフリーランスについて記事を書いたことがあるのですが、その際の職種分布では①コンサルティング系(28.4%)、②エンジニア・技術開発系(26.9%)、③企画系(11.9%)がトップスリーを占めていました。(※1)

どんな領域であっても、企画立案や開発設計など仕事全体の初期にあたる上流の工程を担当できるスキルをもっていたほうが報酬が高い傾向にあります。

フリーランスへの発注にあたって、企画などの上流業務から、施策の実行までをまとめて依頼したい場合も多いんですよね。

このため、会社員時代から日々の仕事経験を積むときに上流工程から実行部分まで一連の流れを経験できるようにすることをおすすめします。

2)書籍やブログ、ウェビナーを活用して情報収集をしよう

田中さん

2番目に意識しておきたいのが「積極的な情報収集」です。

会社員であれば、仕事に必要な知識や情報を会社が提供してくれることが多いですよね。けれどもフリーランスは企業に属さない働き方なので、常に自分自身で最新の情報収集が必要です。

冒頭にご紹介したフリーランス新法のような法令改正や市場動向など、自身の専門分野やビジネスに関わる情報を常に把握し、変化に対応することが求められます。

また、これも会社員との大きな違いなのですが、フリーランスとして成功するためには、自身のスキルと専門性を自分自身で高めていくことが不可欠です。

会社員だと、会社が用意してくれる研修やトレーニング機会がありますが、フリーランスはこういった機会を自分でつくる必要があります。情報収集を通じて、最新の技術やトレンドを学び、自身のスキルを磨き続けていくんですね。

フリーランス向けの書籍やブログ、ウェビナーを活用しながらフリーランスの働き方やメリット・デメリット、自分自身が興味のある領域でフリーランスとして活動するうえで必要なスキルなどを調べてみましょう。

3)仕事獲得経路の7割が「人脈」。人との繋がりをつくっておこう

田中さん

もう一つ会社員時代にやっておきたいのが、「人脈づくり」。

フリーランスの仕事獲得経路は知人紹介をふくむ人脈経由が7割以上と最も多く、「最も収入が得られる仕事の獲得経路」についても「人脈(33.6%)」「過去・現在の取引先(33.5%)」の2つで約7割に達しています(※2)。

それだけ人とのつながり、ネットワークの存在が仕事獲得と密接に結びついていることが分かります。

まずは目の前の仕事を通じて同僚、上司、取引先などと信頼関係を構築していくといいですね。社内外のイベントや交流会に積極的に参加することも豊かな人脈づくりにつながりますし、SNSの活用も効果的です。

4)時間やタスク管理など、セルフマネジメントを心がけよう

田中さん

4つ目のポイントが「セルフマネジメント」です。

フリーランスは、会社員と異なり、上司や組織による管理がないため、セルフマネジメントが必須です。

セルフマネジメントとは、時間管理、目標設定、タスク管理、モチベーション維持、健康管理など、仕事に関するあらゆることを自分で管理することです。

特に時間管理や目標設定、タスク管理は会社員時代から取り組みやすい内容なので、フリーランスに関心のある方はぜひ意識してみてください。

1日のスケジュールを明確に立て、ToDoリストやタイマーを活用して集中して仕事に取り組むことや、仕事量を把握し納期を意識しながら優先順位をつけて効率的にタスクをこなしていくことなどがあげられます。タスク管理ツールやアプリの活用もいいですね。

働き方の選択肢が広がる一方で、私たちが働く期間は長期化しています。私たちは70歳くらいまで働く世代ですから、人生のある時期、フリーランスとして働く人の数は今後も増えていくことでしょう。

ぜひお伝えしたポイントも意識しながら必要に応じて会社員とフリーランスを行き来しながら自分らしい生き方・働き方をつくっていってはいかがでしょうか。

(※1)一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会発行「フリーランス白書2020」回答結果をもとに算出
(※2)同「フリーランス白書2023」より。
https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2023/03/FreelanceSurvey2023.pdf

書籍情報

田中美和 自分らしく働くための 39のヒント Live My Life

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田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事