女性はなぜ管理職を敬遠する?「興味はあるけど不安」な女性のハードルを下げる3つの行動【田中美和】

3月8日は国際女性デーでした。関連するイベントやウェビナーなども最近は増えていますね。みなさんも何かご参加されましたか?
国際女性デーは女性の経済的、政治的、社会的平等を目指す活動ですが、経済的平等の点からは近年は特に「女性管理職」への関心が高まっています。
日本企業における女性管理職の比率は12.7%(※1)で先進国の中でも低くG7(主要7カ国)ではダントツの最下位です。
女性が管理職になると、給与や地位が上がるだけでなく、女性がより働きやすい環境も実現しやすくなります。
実はメリットも多いのに、女性管理職が増えない根本の原因は何なのでしょうか。国際女性デーを機に改めて考えてみましょう。
(※1)厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」より https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/02.pdf
若手は「管理職になりたくない」けれど、やってみると「良かった」と感じている
「女の転職type」が2021年に行ったアンケート結果によれば、実に半数以上の女性が「管理職になりたくない」と回答しています(下図)。読者のみなさんはいかがですか?

私が共同代表を務めるWaris(ワリス)でも今年、国際女性デーを前に「女性管理職に関する調査」を行いました。
「初めて管理職を打診されたとき、管理職になりたいと感じたか」という質問をしたところ、「はい」「どちらかというとはい」で8割を超えました(下図)。

若手のうちは管理職になることに抵抗があっても、経験を積んで打診される頃には「管理職になりたい」と感じるようになっている女性が多いことがうかがえます。
また、「女の転職type」が2023年に行った調査によれば8割近い女性たちが「管理職になってよかった」と回答しています(下図)。

管理職になってよかったと思う点については、1位「自身の成長に繋がる」67.4%、2位「部下の成長など新たなやりがいが増える」57.3%、3位「自分の裁量で決められることが増える」50.0%といった回答が上位にきています。
「よかったと思うことはない」と答えた人はわずか7.3%にとどまったので、多くの人が実際にやってみると管理職経験を前向きにとらえていることが分かります(下図)。

実際に打診を受けると前向きにとらえる人が8割超に達し、管理職になってみると「なってよかった」と回答する人が8割近くを占めるにもかかわらず、「管理職になりたくない」女性が半数以上を占めるのはなぜなのでしょうか? 女性たちは何に懸念を感じているのでしょうか?
前述の「女の転職type」での調査をもとに女性たちが管理職になりたくない理由を探ってみると、以下のような懸念を抱いていることがわかります(下図)。
「なりたくない理由」としては「責任が重くなる」「残業時間が増えそう」「自分にできる自信がない」といった声が多数を占めました。

では、実際に管理職になった女性たちはどのような点で苦労しているのでしょうか。
前述のWaris(ワリス)が行った「女性管理職に関する調査」から「管理職で苦労している点や課題に感じている点」を質問すると以下のような課題が浮き彫りになりました。
「男性中心のコミュニケーションや組織風土(39.6%)」「精神的なプレッシャーが大きい(37.3%)」「ワークライフバランスが取りづらい(長時間労働である)(33.8%)」といったことです。

女性たちが管理職になる上で懸念している点と、実際に苦労している点でリンクする部分もあるようです。
では、こういった懸念点を払しょくしながら女性が管理職として成果を出すために抑えておきたいポイントを3つの観点から探っていきましょう!
「管理職になるのが不安」な女性がやっておきたい3つのこと
【1】多様な人材が力を発揮しやすい環境に身を置く

ポイントの一つ目は「自分を生かせる環境を選ぶ」ことです。「自分を生かせる」といっても複数の観点があります。
前述のWarisの「女性管理職に関する調査」を見てみると、「管理職で苦労している点や課題に感じている点」として「男性中心のコミュニケーションや組織風土」を選んだ人が約4割に達しました。
ですからまずは「今いる環境が男女にかかわらず多様なメンバーが力を発揮しやすいかどうか」を見極めることはとても重要です。
女性管理職の比率は多様性への理解を示す一つの指標ですが、現状ではなかなか数字に結びついていない企業が多いのも事実です。以下のようなチェック項目も目安にしてみましょう。
明確に「経営理念」とうたっていなかったとしても、社長やCEOなど経営トップが「多様な人材の活躍が重要である」とホームページなど公開の場で明確にメッセージとして表明しているかどうか。
管理職になって「ワークライフバランスの取りづらさ(長時間労働など)」に悩む声は多く聞かれます。長時間労働を是正する仕組みやテレワーク、フレックスタイムなど柔軟な働き方を実現する制度があるかどうか、それらが実際に運用されているかどうか。
社員は自分の意見を気兼ねなく発言できているか、異なる意見や価値観を尊重しあえる風土かどうか。この点は公開情報からは見えにくいところなので実際に働いている人に「カジュアル面談」のような形で話を聞いてみるといいですね。
上記のようにいくつかチェック項目を書きましたが、現状では実現できていない企業も多いことでしょう。
ただその現状に対してどのような施策でいつまでにどのように多様なメンバーが活躍できる組織をつくるかなど、具体的な計画を持っているかどうか、実行しようとする経営の本気度が高いかどうかは確認したいですね。
現在の勤め先が上記のような観点から考えたときに変化が期待できないのであれば、今後のキャリアを考えたときに自分を生かせる場所への転職などで環境を変えていくのも一つの手です。
【2】メンターやロールモデルと出会う

女性が管理職として活躍するためには、ロールモデルやメンターと出会うことも重要です。
ロールモデルは、目指したいキャリアを歩んでいる人物であり、キャリアパスや目標設定の参考になります。
メンターは、自身の経験や知識を生かして、キャリアや仕事上の課題についてアドバイスやサポートをしてくれます。
「管理職になって苦労している点」として「精神的なプレッシャー」をあげる女性も多くいます。管理職として働く女性がまだ少ないからこそ、マイノリティーとしての発言やふるまいにやりづらさを感じたり孤独を感じたりする側面があります。
ロールモデルやメンターと出会うことで、女性は漠然としている「管理職像」の解像度を上げることができます。管理職として働くイメージを湧かせられるだけでなく、自信とモチベーションを高め、管理職になることへのハードルを下げることにつながっていきます。
「どこでロールモデルやメンターと出会ったらいいのか?」と疑問に感じる人もいることでしょう。
ロールモデルについては、社内の女性管理職、業界の著名な女性リーダー、または異業界であっても理想とするキャリアやワークスタイルに近い人物をお手本にできるといいですね。
出会い方としては書籍やSNS、ブログ、講演会やウェビナーなどを通じて探す方法もありますし、メンターマッチングサービスを使って出会う方法もあります。メンターについても同様です。
【3】共に学ぶ仲間をつくる

「管理職になって苦労している点」として「管理職の役割に見合うスキルや経験が足りない」というのも上位にくる悩みの声です。
管理職に必要なスキルにはいくつかありますが、組織を引っ張り目標達成へと導くリーダーシップや部下のモチベーションを高め、仕事に意欲を持たせるコミュニケーションスキル、問題や課題を分析し、解決策を導き出す課題解決能力などが考えられます。
これらのスキルは、日々の仕事を通して経験を積むことで磨くことができます。
たとえば仕事の目標達成に向けた計画を具体的に立て実行に移したり、自分から率先して行動するようにしたり、データや情報に基づいて分析を行い、客観的に意思決定することを意識したりするといいですね。
また、研修やセミナーに参加したり、書籍を読んだり、メンターに相談したりするのも効果的な方法です。
学ぶときにはともに学ぶ人同士の横のつながり(コミュニティー)があるかどうかも着目してみてください。
さまざまな学び直しプログラムを個人の方向けに提供してきた立場でいうと、横のつながりがある中で学ぶほうが学習した内容が定着しやすく、途中で挫折しにくくもなります。
多くの女性が管理職への意欲を持ちながらも、具体的な道筋が見えずに一歩を踏み出せない状況があります。
しかしとまどいながらも実際に管理職になってみれば「管理職になってよかった」と感じる女性がおよそ8割を占めます。「仕事を通じて成長したい」気持ちは、大きな可能性の証です。
ご紹介したポイントを意識することで、きっと今よりも「管理職」のハードルを低く感じられるようになると思います。
未来を切り開くのは、あなた自身の行動です。さあ、一歩踏み出してみませんか?
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すべてが今につながっているし、振り返ればたどってきた道がある。

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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