“プレッシャーに弱い”西野七瀬がそれでも挑戦を続ける理由「次の仕事があるのは当たり前ではない」
日々の暮らしの中で、ちょっとしたチャレンジをすること。それが、Woman typeが提案する「Another Action」。今をときめく女性たちへのインタビューから、挑戦の種を見つけよう!

新しい仕事に挑戦する前は、あまり頭で考えすぎないようにしているんです。現場はみんなで作るもので、それを大切にしたい。
大きな目を細めながら、丁寧に言葉を選んで話す。俳優・西野七瀬さん。
バラエティー番組などで見せるマイペースな印象を残しながらも、その発言の端々からは凛とした芯の強さを感じられる。
人気アイドルグループ・乃木坂46を2018年に卒業。現在は俳優として映画やドラマなど話題作へのオファーが続く彼女が新しい一面を見せるのが、24年5月24日全国公開の映画『帰ってきた あぶない刑事』だ。
昭和、平成、令和と時代を超えて愛される『あぶ刑事(でか)』シリーズに、港署捜査課の刑事・早瀬梨花役として出演し、作品に新たな風を吹き込む。
大御所俳優との共演、長年のファンが多いシリーズ作品への出演と、プレッシャーが大きかったことは想像にかたくない。だが、西野さんからはそんな重圧や不安は感じられない。
西野さんが軽やかに挑戦を続けられる原動力はどこにあるのか。
38年続く伝説の作品。「台本通り」ではない撮影の裏側
『帰ってきた あぶない刑事』は、言わずと知れた『あぶ刑事』シリーズの劇場版8作目。実に8年ぶりとなるファン待望の最新作だ。舞台は原点とも言える横浜。お馴染みのメンバーはもちろん、新たなキャストを迎えてタカ(舘ひろし)とユージ(柴田恭兵)のバディのその後を描く。
38年という歴史を持つ伝説の刑事ドラマへの抜擢に、オファーを受けた当時の心境を率直に振り返る。
作品の世界観やチームワークが出来上がっている中に自分が溶け込んでいけるのかな、という不安はありました。
でもそれより、どんな作品になるんだろう、とワクワクする気持ちが大きかったです。幼い頃から知っていた作品に参加させていただけるなんて、想像もしていなかったですね。

一抹の不安と期待。しかし、現場に入ってすぐにそれらは安心感に変わった。
『あぶ刑事』の現場は舘さんや柴田さんを中心にパワフルなチームワークが出来上がっていました。いつでも寛容に受け止めてくださる安心感がありましたね。
本作の出演者には、主演の二人や浅野温子さん、仲村トオルさんといったベテラン俳優が名を連ねる。彼らとの共演から学ぶことも多かった。
共演シーンが多かった舘さんは、現場でもダンディでとっても紳士的でした。作品のタカのキャラクターのままなんです。
私が緊張していたら『大丈夫だよ』と優しく声をかけてくださったり、『こうしたらもっと良くなるんじゃない?』と具体的なアドバイスをいただいたりと、たくさん支えていただきました。
その一方で、台本にないセリフやアクションがその場でどんどん足されていくことにはびっくりしましたね。役者とスタッフ全員が呼吸を合わせながら、現場で生まれた空気感を活かしてより良い作品を作り上げていくんです。その過程を間近で見て、すごく刺激を受けました。
現場で生まれた雰囲気に自分を馴染ませていく
西野さんが演じた早瀬梨花は、仲村トオルさん演じる町田透の部下であり、自身も2人の後輩を率いる巡査部長。西野さん自身、乃木坂46メンバー時代にはグループを牽引してきた印象だが「私は人を引っ張っていくタイプじゃないんですよ」と本人は至って謙虚だ。

梨花は正義感が強くて、上司にも臆さずズバズバ意見が言えるしっかり者。かっこよくて、同じ女性として憧れを感じました。そんな憧れの女性に、お芝居を通してなれる。俳優というお仕事は本当に面白いなって、つくづく思いました。
『あぶ刑事』シリーズの見どころは、緊張感溢れる銃撃戦。本格的なアクションシーンは初めてだったという西野さんは、本番の数カ月前から入念な練習を重ね、撮影に挑んだという。
拳銃の構え方すら分からない状態だったので、何度も練習場に通いました。それでも、実際に火薬を詰めて発砲するのは本番が初めて。最初は音の大きさや勢いに驚きましたが、慣れると大丈夫なものですね(笑)
拳銃と同じで手錠も上手く扱えなかったので、舘さんが練習に付き合ってくださって。舘さんに腕を貸していただきながら『もっとこうした方が自然に見えるよ』とアドバイスをいただき、心強かったです。

新たな挑戦もスマートにこなしているように見える西野さん。「実はプレッシャーを感じやすいんです」と自称するが、現場と向き合う姿勢には彼女の誠実さが滲む。
私はどの作品でも、現場に入ってから周囲とのバランスを見て自分の立ち位置や振る舞い方を考えるタイプなんです。現場は演者とスタッフ、みんなで作るものなので、現場で生まれた雰囲気や、共演者との呼吸を合わせることを大切にしたいと思っています。
私が事前に準備できるのは、セリフをちゃんと覚えていくことくらい。今回も、アクションの練習とセリフの読み込みをしっかりして、現場に向かいました。
「次の仕事があるか分からない」だからこそ目の前の挑戦に感謝する
アイドル、モデル、役者としてキャリアを重ねている西野さん。今後の目標を尋ねると「特に決めていないんです」とはにかむ。

俳優は『次の仕事』が決まっているのが当たり前ではないんですよね。だから、一つ一つの作品や人との出会いに感謝して、今目の前のお仕事に精一杯取り組む。その方が、私に合っている気がするんです。
「数年後にお仕事があるか分からないので」と謙虚な姿勢をのぞかせる。しかし、そんな芸能界の厳しさを肌で知っているからこそ、求められることには全力で応え続ける。それが西野七瀬のキャリアの築き方なのだろう。
そんな彼女は現在29歳。新たな世代を目前に控えた今、「早く30代になりたい」と声を弾ませる。
学生の頃から、30代を迎えるのが楽しみだったんです。それは、仕事もプライベートも充実させて、自分らしく生き生きと働く先輩たちの後ろ姿を見ていたからかもしれません。
それに、ドラマなどで母親役のオファーをいただくようになってきて。年齢を重ねるごとに演じられる役柄や挑戦できるお仕事の幅が広がっていくのって素敵ですよね。その分責任もプレッシャーも増すだろうけど、それも含めて楽しんでいきたいです。
新たなチャレンジに付きまとう重圧すらも、自らの糧にして活躍のフィールドを広げる西野さん。軽やかに挑戦を続ける彼女の30代は、さらに輝きを増すに違いない。
■プロフィール
西野 七瀬(にしの・ななせ)さん
俳優。1994年5月25日生まれ、大阪府出身。O型。乃木坂46合同会社所属。アイドルグループ・乃木坂46の元メンバー。18年、乃木坂46を卒業。2015年から22年3月号まで、ファッション誌『non-no』の専属モデルを務める。ドラマ『あなたの番です』(19年)、ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(20年)、ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(21年)、ドラマ『ポケットに冒険をつめこんで』(23)、ドラマ『大奥』(24)、映画『イチケイのカラス』(23)、映画『シン・仮面ライダー』(23年)、配信ドラマ『ケンシロウによろしく』(23年)などに出演。21年公開の映画『孤狼の血 LEVEL2』では、『第45回日本アカデミー賞』優秀助演女優賞、新人俳優賞を受賞し、22年公開の映画『恋は光』で、『第44回ヨコハマ映画祭』最優秀新人賞を受賞
作品情報
映画『帰ってきた あぶない刑事』2024年5月24日(金)公開
監督:原廣利
脚本:大川俊道 岡芳郎
出演:舘ひろし 浅野温子 仲村トオル 柴田恭兵
土屋太鳳
西野七瀬 早乙女太一 深水元基
ベンガル 長谷部香苗 鈴木康介 小越勇輝/杉本哲太
岸谷五朗/吉瀬美智子
■公式サイト:https://abu-deka.com/
■X:@abudeka_is_back
©2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会
取材・文/安心院 彩 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 編集/秋元 祐香里(編集部)
『Another Action Starter』の過去記事一覧はこちら
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